【親子問題】大麻の使用が罪になった|改正後に何が変わったか
本記事は2026年9月時点の法令・公表資料に基づいて作成しています。
「息子が執行猶予になった。二度と同じことをさせないよう、家で見張るしかない」「刑務所から戻る娘を引き受けると答えたが、自分たちにそこまでできるのか分からない」。お子さんが事件を起こした後、ご家族からはこうした声を伺うことが少なくありません。
再犯防止について調べると、家族が身元引受人になる、情状証人として出廷する、出所後の生活を支える、といった説明が多く見つかります。いずれも誤りではなく、手続の中で家族の存在が意味を持つ場面は確かにあります。ただ、その説明だけを読むと、再犯を防ぐ責任の大部分を家庭が負わなければならないように受け取られがちです。
この記事では、再犯防止に関する法律や更生保護の制度が家族をどう位置づけているかを確かめたうえで、家庭が担える部分と担いにくい部分を分けて整理します。逮捕から判決までの間に家族ができること(身元引受や情状証人)の実務は家族としてできること|身元引受・治療・監督体制の組み立てに譲り、ここでは裁判や処分が終わった後の日常に焦点を当てます。
再犯防止は「家族の責任」として組まれた制度ではない
再犯防止推進法が責務を置いている先
2016年(平成28年)12月に施行された再犯の防止等の推進に関する法律(再犯防止推進法)は、再犯防止の施策を進める責務を国と地方公共団体に置いています(再犯防止推進法4条)。基本理念を定めた規定では、犯罪をした人の多くが安定した仕事や住まいを確保できず、社会復帰が難しい状況にあることを踏まえ、社会の中で孤立させずに支援することが掲げられています(同法3条)。
この法律に基づいて政府は再犯防止推進計画を定めており、現在は2023年度から2027年度末までを期間とする第二次計画が進められています。国、地方公共団体、民間の協力者が一体となって取り組むという位置づけで、法律の上で再犯防止の担い手とされているのは家庭ではなく、公的機関と地域社会です。
更生保護の制度は家族を「協力を求める相手」としている
刑務所や少年院から出る人の帰り先を整える手続を「生活環境の調整」といいます。保護観察所の長は、必要があると認めるときに、本人の家族などを訪ねて協力を求めるといった方法で、釈放後の住まいや就労先を調整します(更生保護法82条1項)。家族はこの過程で引受けの意思を尋ねられますが、条文の組み立ては、家族に協力を「求める」というものです。
また、身柄の拘束を解かれた人が親族からの援助を受けられない場合などに、国が宿泊場所の提供や就職の援助などを行う「更生緊急保護」という仕組みもあります(同法85条1項)。制度そのものが、家族が支えられない場合があることを前提に組み立てられているといえます。
数字から見える再犯の背景
令和7年版犯罪白書によると、2024年(令和6年)の刑法犯の検挙人員に占める再犯者の割合(再犯者率)は46.2%でした。2021年から4年連続で低下しているものの、検挙される人の半数近くが過去にも検挙された経験を持つ状況が続いています。
平成27年版犯罪白書が取り上げた性犯罪者の調査では、刑期を終えて出所した人のうち、帰住先が親族等(雇主や更生保護施設なども含む)だった人が何らかの再犯に及んだ割合は31.4%、適当な帰住先がなかった人は45.1%でした。対象が限られた調査ではありますが、戻る場所があることの意味と同時に、その「場所」が家族に限られないことも読み取れます。
家庭が担える部分
帰り先の候補になること、なれないと伝えること
身元引受人になることや、仮釈放の際に帰住先として名乗り出ることは、家族が担える代表的な役割です。引き受けるかどうかは、同居できる住環境があるか、家族の健康や仕事と両立できるか、本人との関係が落ち着いているか、といった現実の条件で判断してよいものです。
引き受けられない場合に、そのことを正直に伝えるのも大切な役割です。無理に引き受けて同居が早々に破綻するより、最初から別の帰り先を含めて調整してもらう方が、本人にとっても安定しやすいことがあります。書面の書き方は身元引受書は誰が何を書くのか|記載事項と文例、引き受けられない場合の考え方は【刑事事件】家族が身元引受人になれない|代替の環境調整で解説しています。
小さな変化に気づき、専門機関につなぐこと
生活リズムの乱れ、交友関係の変化、お金の使い方の変化など、再犯の手前で表れる兆しに最初に気づきやすいのは、日常を共にする家族です。家族の役割は、気づいた変化を自分たちだけで解決することではなく、保護観察中であれば担当の保護観察官や保護司に、治療中であれば主治医や支援機関に伝えることにあります。
家庭が担える中心は「気づくこと」と「つなぐこと」と考えると、背負う範囲が見えやすくなります。
失敗を打ち明けられる相手であり続けること
依存症や性的な問題行動の治療では、再発の兆しを早い段階で周囲に話せるかどうかが大切だとされています。家族が頭ごなしに責めると、本人は問題を隠すようになり、周囲が気づくのが遅れることがあります。見張る側ではなく、打ち明けられる相手でいることは、家族だからこそできる関わり方の一つです。
家庭が担いにくい部分
24時間の監視や行動の管理
「目を離さなければ再犯は防げる」と考え、外出に付き添う、スマートフォンを確認する、お金をすべて管理する、といった対応をとるご家族もいます。しかし、成人した子の行動を家族が継続的に管理することは現実的に難しく、親に法的な監督の権限があるわけでもありません。管理が強まるほど本人の反発や家族の疲弊を招き、関係そのものが悪化することもあります。
再犯防止の目的で家族が監視役を引き受けるほど、家族の生活が本人の行動に縛られていくという点には注意が必要です。親が法的に関われる範囲については、【親子問題】成人した子の問題に親が介入できる法的な範囲で整理しています。
依存症や問題行動への専門的な治療
薬物、アルコール、ギャンブル、窃盗症(クレプトマニア)、性的な問題行動などが背景にある場合、本人の意思や家族の説得だけで行動を変えることは難しいとされています。治療プログラムや自助グループ、専門の医療機関が担う領域であり、家族が代わりを務めるものではありません。
治療の場の選び方や手続上の評価については、ダルク・依存症治療への参加|情状としてどう評価されるかや性犯罪の再犯防止プログラムはどこで受けられるのかも参考にしてください。
仕事・住まい・お金の自立そのもの
再犯防止推進法が就労と住まいの確保を施策の柱に置いているとおり(同法14条〜16条)、仕事と住まいは再犯防止の土台です。ただ、親が生活費を出し続け、住まいを用意し、就職先まで探すと、本人が自分で生活を組み立てる経験を持てないまま年月が過ぎることがあります。親が高齢になれば、その支えも続けられなくなります。
自立の手前の部分は、家族以外の第三者が担う方が本人にとって受け入れやすい場合があることも知っておきたいところです。前科がついた後の就職や住まいへの影響は、事件が終わったあと|前科がついた場合の就職・住居・海外渡航で解説しています。
担える部分・担いにくい部分の整理
ここまでの内容を表にまとめます。「外部が担う」は家族が関わってはいけないという意味ではなく、主な担い手を家庭の外に置いた方がよいという意味です。
| 場面 | 家庭が担える部分 | 主に外部が担う部分 |
|---|---|---|
| 帰り先 | 引受けの可否を伝える、住環境を整える | 保護観察所による調整、更生保護施設・自立準備ホーム |
| 日常の見守り | 変化に気づく、話を聞く | 保護観察中は保護観察官・保護司による指導監督 |
| 治療 | 通院や参加を後押しする | 医療機関、治療プログラム、自助グループ |
| 仕事 | 応援する、生活リズムを整える | ハローワーク、協力雇用主、就労の支援機関 |
| お金 | 使い道の相談に乗る | 第三者による金銭管理の支援、生活保護の相談窓口 |
| 家族自身 | 休む、相談する | 家族会、精神保健福祉センター、弁護士 |
家庭が抱え込むことで起きやすいこと
「家族のために立ち直る」構図の危うさ
家族が全面的に支えるほど、本人にとって立ち直りが「家族のため」のものになり、家族にとっても本人の行動が自分の責任のように感じられるようになります。互いに相手の行動で気持ちが大きく揺れる距離感は、共依存と呼ばれる関係に近づくことがあります。どちらかが疲れ切ったときに、関係全体が崩れやすい構図です。
家族自身の安全が脅かされている場合
本人からの暴力や金銭の要求が続いている家庭では、再犯防止を考える前に、家族の安全を確保することが優先されます。同居の親族間での財産の持ち出しには刑が免除される特例がありますが、暴行や傷害にはそのような特例はありません。
家族が被害を受けている状況で「支える役割」を続けることは、本人の再犯防止にもつながりにくいと考えられます。まずは【親子問題】子から暴力を受けている|まず確保すべき安全と記録や【親子問題】避難先の確保|一時的に親が家を出るという選択をご確認ください。
同居が前提ではないという選択肢
更生保護施設や自立準備ホームなど、家族のもと以外の帰り先も制度として用意されています。いったん離れて暮らし、生活が落ち着いてから関係を結び直すという道筋もあります。物理的な距離を取ることで、家族と本人の双方が落ち着きを取り戻すことは少なくありません。
外部の担い手を置くという発想
公的な相談先
再犯防止や立ち直りに関わる公的な窓口には、主に次のようなものがあります。対象や利用の条件は窓口ごとに異なります。
- 保護観察中であれば、担当の保護観察官と保護司。
- 帰住先の調整や更生緊急保護を担う保護観察所。
- 依存症などについて家族からの相談も受け付ける精神保健福祉センター。
- 非行や問題行動について本人や家族からの相談に応じる法務少年支援センター。
- 高齢や障害のある人が出所後に福祉サービスを利用できるよう支える地域生活定着支援センター。
どこに相談すればよいか迷う場合は、【親子問題】親子の問題はどこに相談すればよいのか|警察・行政・弁護士の役割分担もあわせてご覧ください。
弁護士と自立支援カウンセラーが役割を分ける形
公的な支援は対象や期間が限られており、保護観察の期間が終われば定期的な関わりはなくなります。その後も続く日常の支えを、家族だけで担い続けることは容易ではありません。
当事務所では、親子の問題について、弁護士が親の側の代理人として本人との窓口に立ち、民間の自立支援カウンセラーが本人の住まい探し、仕事探し、生活保護の申請の支援、日々の金銭管理や悩みへの対応を担う形で取り組んでいます。家族が抱えていた役割を弁護士とカウンセラーに分けて移すことで、家族は本人との距離を保ちながら関わり続けることができます。人が関わる問題のため結果をお約束することはできませんが、距離を取ること自体が双方に変化をもたらすことがあります。取り組みの詳細は【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応でご紹介しています。
よくあるご質問
身元引受人になった後に再犯があった場合、家族が責任を問われますか
身元引受書は、本人の生活を見守る意思を裁判所や検察官などに示す書面です。一般に、署名したことを理由に、後の再犯について家族が損害賠償などの法的な責任を負うものではないと考えられています。ただし、次の手続で再び身元引受人を求められた場合、前回の経緯が考慮されることはあります。引き受ける前に、家族として何ができて何ができないかを整理しておくことが大切です。
保護観察中の子とは同居しなければなりませんか
保護観察を受ける本人には、届け出た住居に住むことなどの遵守事項がありますが(更生保護法50条1項)、家族に同居の義務があるわけではありません。生活環境の調整の段階で引受けが難しいと伝えれば、更生保護施設なども含めて帰住先が検討されます。同居を続けるうちに難しくなった場合も、保護観察所に相談することができます。遵守事項の内容は保護観察付き執行猶予の遵守事項と、取り消される場面で解説しています。
成人した子が治療や相談を拒んでいます。家族にできることはありますか
本人が拒んでいる治療を家族が強制することは、原則としてできません。一方で、精神保健福祉センターや依存症の専門医療機関の中には、家族だけの相談や家族向けのプログラムを受け付けているところがあります。家族が関わり方を学ぶことで、本人が支援につながるきっかけが生まれることもあります。
まとめ
- 再犯防止推進法は、再犯防止の施策を進める責務を国と地方公共団体に置いている(再犯防止推進法4条)。
- 同法の基本理念は、仕事と住まいの確保を踏まえ、社会の中で孤立させずに支援することにある(同法3条)。
- 更生保護の制度は家族を協力を求める相手とし、親族の援助が得られない場合の保護も用意している(更生保護法82条1項・85条1項)。
- 家庭が担える中心は、帰り先としての可否を伝えること、変化に気づくこと、専門機関につなぐこと。
- 24時間の監視、依存症などへの専門的な治療、仕事・住まい・お金の自立そのものは、外部の担い手が主に担う領域。
- 保護観察中の本人には住居に関する遵守事項があるが、家族に同居の義務はない(更生保護法50条1項)。
- 家族への暴力や金銭の要求がある場合は、再犯防止より先に家族の安全を確保する。
お子さんの再犯に不安を抱えるご家族へ
弁護士法人若井綜合法律事務所では、親子の問題に関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。弁護士若井亮は5年以上にわたり、北海道から沖縄まで全国のご家庭の問題に取り組んできました。遠方にお住まいの方からのご相談にも対応しています。
お子さんが事件を起こした後の生活に不安を抱えている方、家族だけで支えることに限界を感じている方は、一人で抱え込まずにご相談ください。家族の関わり方そのものを見直したい場合や、少年事件で付添人を必要とする場合も、状況をお伺いしたうえで対応を検討します。


