【親子問題】子の精神障害者保健福祉手帳は、取ったほうがいい?
親が介護を必要とする状態になったのに、同じ家に住む子が手を貸してくれない。それどころか、ヘルパーを頼もうとすると「同居家族がいると使えないのでは」と言われた。ご相談の中で、このような戸惑いを伺うことがあります。
結論からお伝えすると、同居の子がいることだけを理由に、介護サービスがすべて使えなくなるわけではありません。ただし、訪問介護のうち掃除・洗濯・調理などを行う「生活援助」については、同居家族の有無が判断に影響します。この記事では、どのサービスが同居家族の影響を受けるのか、子が介護をしない事情をどう伝えればよいのか、子がサービスの利用そのものを妨げる場合にどう考えるのかを、順に整理します。
介護保険の運用は、国の基準をもとに市区町村ごとに細かな取扱いが定められています。この記事は一般的な考え方を説明するものであり、実際の可否はお住まいの市区町村とケアマネジャーの判断によります。
介護サービスを受けるのは親本人であり、子の同意は要件ではない
介護保険のサービスを利用するのは、要介護認定を受けた親ご本人です。要介護認定の申請、ケアマネジャー(介護支援専門員)との契約、各事業所とのサービス契約は、いずれも親ご本人が当事者になります。同居の子が反対している、あるいは無関心であるという事情があっても、親ご本人が利用を望み、判断能力を保っている限り、子の同意がなければ契約できないという仕組みにはなっていません。
また、同居家族の存在によって利用が制限されるのは、主に訪問介護の生活援助です。次のようなサービスは、同居の子がいるかどうかで利用の可否が左右されるものではありません。
- 入浴・排泄・食事の介助など、体に直接触れて行う訪問介護の「身体介護」。
- デイサービス(通所介護)やデイケア(通所リハビリテーション)。
- ショートステイ(短期入所生活介護など)。
- 訪問看護や訪問リハビリテーション。
- 車いす・介護用ベッドなどの福祉用具の貸与。
もちろん、どのサービスをどの程度使うかはケアプランの中で決まります。それでも「同居の子がいるから介護サービスは一切使えない」という理解は正確ではありません。
「同居家族がいると使えない」と言われるのは生活援助
生活援助の原則的な取扱い
訪問介護の生活援助は、国の基準で、ひとり暮らしの方、または同居する家族等に障害や疾病などの理由があって家事が困難な方に行うものとされています。さらに、障害や疾病がない場合でも、それと同様のやむを得ない事情で家事が困難な場合には行えるとされています。同居家族がいる場合は、まずその家族が家事を担うことが前提とされているため、「原則として算定できない」という説明を受けることになります。
同居家族の有無だけで一律に判断しないのが国の考え方
一方で、厚生労働省は2007年(平成19年)12月の事務連絡で、同居家族等がいることのみを判断基準として、一律機械的に給付の可否を決めないよう各市区町村に求めています。「やむを得ない事情」は障害や疾病に限られず、個々の利用者の状況に応じて具体的に判断されるという趣旨です。
自治体の取扱いを見ても、生活援助が認められ得る例として、同居家族も高齢で家事が難しい場合や、就労などで日中不在にしていてその間に必要な支援が行えない場合と並んで、家族関係に深刻な問題があって援助が期待できない場合を挙げているところがあります。
認められやすい事情・認められにくい事情
判断の傾向は自治体によって異なりますが、おおむね次のように整理できます。
| 同居の子の状況 | 生活援助の判断の傾向 |
|---|---|
| 子自身に障害や疾病があり、家事ができない | やむを得ない事情として検討されやすい |
| 子との関係に深刻な問題があり、援助が期待できない | 個別の事情を示したうえで検討される |
| 子が日中は仕事で不在 | 不在の時間帯に支援しないと生活に支障が出るかが問われる |
| 子が単に「やりたくない」と言っている | それだけでは足りないとされることが多い |
ある自治体の資料では、単に「家族が仕事」「日中独居」というだけではやむを得ない事情に当たらず、家族がいる夜間や休日に対応すれば足りる内容は対象にならないとしています。つまり、子が介護をしないという事実を伝えるだけでなく、なぜ子に家事を期待できないのか、その時間帯に支援がないと親の生活にどのような支障が出るのかを具体的に示すことが求められます。
「同居」は住民票ではなく生活実態で見られる
住民票を分ければ同居扱いを避けられるのではないか、と考える方もいらっしゃいます。しかし、多くの自治体は住民基本台帳ではなく生活の実態で同居かどうかを判断するとしており、住民票上は別世帯でも同じ家に住んでいれば同居として扱われるのが一般的です。世帯分離には保険料や各種負担の面での意味がありますが、生活援助の判断とは別の問題として考える必要があります。世帯分離そのものについては、【親子問題】世帯分離とは|住民票・保険・年金の扱いで解説しています。
子が介護をしない事情を、ケアマネジャーにどう伝えるか
同居家族がいる場合に生活援助を位置づけるときは、ケアマネジャーが理由書などの書面を市区町村に提出し、サービス担当者会議で必要性を確認する運用が多く見られます。そのため、ケアマネジャーに家庭の実情を正確に伝えることが出発点になります。家族の恥をさらすようで話しにくいと感じる方も少なくありませんが、ケアマネジャーは利用者の生活全体を見て計画を立てる立場にあり、伝えられていない事情はケアプランに反映されません。
伝える前に、次のような点をメモにしておくと説明しやすくなります。
- 子の生活時間帯と、家にいる時間・いない時間。
- 子がこれまで家事や介助をしてきたかどうか、頼んだときの反応。
- 子から暴言・暴力・金銭の要求などがあるかどうか。
- 子自身に病気や障害、長期のひきこもりなどの事情があるかどうか。
- 子が家事をしないことで、食事・衛生・服薬などに実際に生じている支障。
日付と出来事を簡単に書き留めたものでも、事情を裏づける資料になります。ケアマネジャーがまだ決まっていない段階であれば、お住まいの地域の地域包括支援センターが最初の相談先になります。
子がサービスの利用そのものを妨げる場合
ご相談の中には、子が介護をしないだけでなく、ヘルパーを家に入れさせない、訪問した職員を追い返す、「金がもったいない」と言ってサービスを解約させようとする、といった事情が含まれることがあります。
利用するかどうかを決めるのは親ご本人
先に述べたとおり、介護サービスの契約当事者は親ご本人です。親名義の家であれば、誰を家に招き入れるかも本来は親ご本人が決めることです。子が反対していることを理由に、親ご本人が必要なサービスをあきらめなければならない法的な理由はありません。ただ、子が強く反発する中でサービスを始めると、親ご本人や職員の安全に関わることもあるため、導入の進め方はケアマネジャーや地域包括支援センターと相談しながら決めるのが現実的です。
高齢者虐待防止法の対象になり得る場面
高齢者虐待防止法は、身体的な暴力や暴言だけでなく、高齢者を衰弱させるような長時間の放置など養護を著しく怠ること(いわゆる介護放棄)や、高齢者の財産を不当に処分したり不当に利益を得たりすること(経済的虐待)も虐待として定めています。同居の子が必要なサービスを拒ませて親を放置している場合や、親の年金を管理して介護に使わせない場合は、事情によってはこれらに当たり得ます。虐待かどうかは本人の自覚や悪意を問わずに判断されるとされており、相談を受けた市区町村や地域包括支援センターが事実を確認し、必要な支援を検討します。行政が動く仕組みについては、【親子問題】高齢の親が被害者の場合|行政が動く仕組みで詳しく説明しています。
子からの暴力がある場合は、まず親ご本人の安全を確保することが優先です。その際の考え方は【親子問題】子から暴力を受けている|まず確保すべき安全と記録をご覧ください。また、子が親の年金に頼って生活しているために介護費用の支出に反対しているような場合は、【親子問題】親の年金で生活している子|年金が止まった後の設計も参考になります。
子に介護をさせる法的な義務はあるのか
民法877条1項は、直系血族は互いに扶養をする義務があると定めています。ただ、この扶養義務は、一般に経済的な援助を中心とするものと理解されており、食事や排泄の介助といった日常の世話を子に強制する義務ではないと考えられています。そのため、同居の子に「介護をしなさい」と法的に求めることは難しいのが実情です。
見方を変えると、子が介護を担わないことを前提に、介護サービスで生活を支える組み立てを考えることが現実的な道筋になります。介護サービスの費用は、通常は親ご本人の年金や預貯金から支払います。親ご本人の資力だけでは足りず、子に経済的な余力がある場合には、扶養の程度や方法について話し合い、まとまらなければ家庭裁判所の扶養請求調停を利用する方法もあります。もっとも、同居の子自身が無職で収入がないといった事情があれば、経済的な援助を求めること自体が難しい場合もあります。
在宅での生活が難しくなったときの選択肢
生活援助が認められない、あるいは子との同居そのものが親ご本人の負担になっているという場合には、在宅にこだわらない選択肢も検討の対象になります。
- ショートステイを定期的に利用し、子と離れる時間をつくる。
- 施設への入所を検討する(特別養護老人ホームは原則として要介護3以上が対象)。
- 有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅への住み替えを検討する。
親が要介護になったときに同居の子の生活がどう変わるかは【親子問題】親が要介護になったとき、同居の子の生活はどうなるのかで、親が施設に移った後も子が実家に住み続ける場合の考え方は【親子問題】親が施設に入った後も実家に子が住み続けている|誰が退去を求められるのかで取り上げています。
親ご本人の判断能力が低下してきた場合
介護サービスの契約は、親ご本人がその内容を理解できることが前提です。認知症などで判断能力が低下すると、子が契約手続を代わりに担うことが多くなりますが、介護に関心のない子や、親の財産を当てにしている子に任せることには不安が残ります。
このような場合には、成年後見制度の利用が考えられます。後見人には親族だけでなく弁護士などの専門職が選ばれることもあり、誰を選ぶかは家庭裁判所が事情を踏まえて判断します。判断能力があるうちであれば、信頼できる人と任意後見契約を結んでおく方法もあります。
弁護士が関わることができる場面
介護サービスを入れるかどうかの判断そのものは、ケアマネジャーや市区町村の役割です。一方で、同居の子との関係がこじれている家庭では、子からの暴言や金銭の要求、親名義の家に居続けることなど、介護とは別の問題が重なっていることが少なくありません。
当事務所では、親ご本人の代理人として子との連絡窓口を引き受け、親ご本人への直接の働きかけを止めながら、ケアマネジャーや地域包括支援センターと役割を分けて対応することがあります。家庭の状況によっては、自立支援カウンセラーとチームを組み、子の生活の立て直しを並行して支える方法もとっています。詳しくは【親子問題】弁護士に頼むと何が変わるのか|窓口を代えるという選択や【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応をご覧ください。どこに相談すべきか迷う段階であれば、【親子問題】親子の問題はどこに相談すればよいのか|警察・行政・弁護士の役割分担も参考になります。
まとめ
- 同居の子がいても、身体介護やデイサービス、ショートステイなどは利用できます。
- 同居家族の影響を受けるのは主に訪問介護の生活援助ですが、同居家族がいることだけで一律に判断しないのが国の考え方です。
- 子に家事を期待できない具体的な事情と、生活に生じている支障を整理してケアマネジャーに伝えることが大切です。
- 子がサービスの利用を妨げたり、親の年金を使わせなかったりする場合は、高齢者虐待防止法に基づく相談の対象になり得ます。
- 子に介護を法的に強制することは難しいため、介護サービスや施設を軸に生活を組み立てる視点が現実的です。
介護をしない同居の子がいることで、親ご本人が必要な支援を受けられずにいる状態は、早めに見直したいところです。子との関係そのものに問題を抱えている場合は、介護の手配と並行して、親ご本人を守るための手立てを考えておくことをおすすめします。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
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