【親子問題】成人した子の刑事事件で親ができること・できないこと

若井亮

若井亮

テーマ:親子問題

成人した子が逮捕されたと知らされたとき、多くの親御さんは「何とかしてやりたい」という気持ちと、「どこまで口を出してよいのか」という迷いの両方を抱えます。刑事手続は本人を当事者として進むため、親が代わりに決められることは多くありません。一方で、法律が親(直系の親族)に独自に認めている手続もあり、手続の外側で家族にしか担えない役割もあります。本記事では、成人した子の刑事事件について、親ができること・できないことを整理します。

本記事は2026年9月時点の法令に基づいて解説しています。18歳・19歳の方の事件は少年法の手続の対象となるため、本記事では主に20歳以上の子を念頭に置いています。


出発点は「親は事件の当事者ではない」ということ

 刑事手続で責任を問われるのは、罪を犯したと疑われている本人です。子が成人していれば、親が子に代わって刑事責任を負うことはありません。取調べを受けるのも、起訴・不起訴の処分を受けるのも、判決を言い渡されるのも本人です。

 民事の賠償責任も、原則として本人が負います。民法714条は、責任能力のない人が他人に損害を与えた場合に監督義務者が責任を負うと定めていますが、成人した子について親がこの規定で責任を問われる場面は限られます。示談金や被害弁償を親が用意するのは、あくまで親の判断による支援です。ただし、親自身が示談書に「連帯して支払う」と書いた場合などは、その約束に基づく責任が生じる点に注意が必要です。

 なお、民法上は18歳で成年になりますが、18歳・19歳の方が事件を起こした場合は「特定少年」として少年法の対象となり、家庭裁判所に送られる流れになります。20歳以上の子とは手続が異なるため、まず年齢を確認しておくことが大切です。

【親子問題】成人した子の問題に親が介入できる法的な範囲

法律が「直系の親族」に認めている手続

 当事者ではない親にも、刑事訴訟法が独自に認めている権限があります。条文に「直系の親族」と書かれている部分がそれにあたり、父母は直系の親族に含まれます。主なものは次のとおりです。

手続根拠親ができること留意点
弁護人の選任刑事訴訟法30条2項本人とは別に、親の名義で弁護人を選任できる弁護活動は本人の利益と意思を軸に行われる
勾留理由開示の請求刑事訴訟法82条2項勾留の理由を公開の法廷で示すよう求められる理由が示されても、それだけで釈放されるわけではない
勾留取消の請求刑事訴訟法87条1項勾留の理由や必要がなくなったときに取消しを求められる事情の変化を示す資料が求められる
保釈の請求刑事訴訟法88条1項起訴された後に保釈を求められる起訴前の勾留中には保釈の制度がない


 もっとも、これらの請求を親が単独で行うことは、実際には多くありません。裁判所に何を示せば認められやすいかは事案ごとに異なるため、通常は弁護人が本人と打ち合わせたうえで行います。親にとって最も大きな意味を持つのは、表の一番上にある「弁護人の選任」です。

本人が依頼できない状況でも、親が弁護人を選べる

 逮捕された本人は外部と自由に連絡が取れず、自分で弁護士を探すことが難しい状態に置かれます。刑事訴訟法30条2項は、親などが「独立して」弁護人を選任できると定めています。本人から頼まれていなくても、親の判断で弁護士に接見(面会)を依頼し、弁護人として選任することができます。

 勾留された後であれば、本人の請求によって国選弁護人が付く制度もあります。私選と国選の違いや途中での切り替えについては、次の記事で解説しています。

国選と私選はどう違う|途中で切り替えられるのか

費用を払うのが親でも、弁護人が守るのは本人

 親が弁護人を選任して費用を負担した場合でも、弁護人は被疑者・被告人である本人の利益のために活動します。本人が親に知られたくないと話した事柄を、弁護人が本人の了承なく親に伝えることはできません。事件の見通しや方針を親に説明できる範囲も、本人の意向を踏まえて決まります。親としてはもどかしく感じる場面もありますが、本人が弁護人を信頼して事実を話せることが、弁護活動の土台になります。

手続の外側で親が担えること

 刑事手続そのものとは別に、家族だからこそ担える役割があります。主なものは次のとおりです。

  • 勾留が決まった後、接見禁止がついていなければ、警察署で面会や差し入れができます。
  • 釈放や保釈の場面で、本人の生活を見守る立場として身元引受人になることができます。
  • 示談金、保釈保証金、弁護士費用など、身体拘束中の本人には用意しにくい資金を工面することができます。
  • 起訴された場合には、情状証人として法廷で今後の監督や生活環境について話すことがあります。
  • 釈放後の住まい、仕事、通院など、本人が生活を立て直すための環境づくりに関わることができます。


 いずれも、親が「しなければならない」義務ではありません。どこまで引き受けるかは、本人との関係や家庭の状況を踏まえて親が判断してよい事柄です。それぞれの具体的な進め方は、次の記事で解説しています。


親にはできないこと、控えたほうがよいこと

 親ができることがある一方で、本人に代わってはできないこと、善意からでも控えたほうがよいことがあります。

捜査の中身を詳しく聞き出すこと

 警察や検察は、捜査中の事件について、家族であっても詳しい内容を説明しないのが通常です。どの警察署にいるのか、どのような容疑かといった基本的な事項を確認できることはあっても、取調べで本人が何を話したか、どのような証拠があるかまでは教えてもらえないと考えておいたほうがよいでしょう。また、勾留されたことの通知は、弁護人がいない場合、本人が指定した家族1人に対して行われる仕組みであり(刑事訴訟法79条・207条1項)、親に必ず連絡が来るとは限りません。

事件番号・担当検察官はどう確認するのか|家族が問い合わせる方法

国選弁護人を請求すること

 国選弁護人の選任を請求できるのは本人です(刑事訴訟法37条の2)。親が本人に代わって国選弁護人を付けるよう求めることはできません。親として弁護人を付けたいと考える場合は、私選弁護人を選任するか、弁護士会の当番弁護士制度の利用を検討することになります。当番弁護士については、家族からの申込みを受け付けている弁護士会もあります。

被害者と直接やり取りして示談をまとめること

 示談は、本人と被害者との間の合意です。親が示談金を用意することはできても、本人の意思を離れて内容を決めることはできません。また、被害者の連絡先は、捜査機関から加害者側に直接伝えられないことが多く、弁護人を通じて被害者の意向を確認するのが一般的です。家族が直接謝罪に出向いたり連絡を重ねたりすると、被害者の負担になるだけでなく、受け止め方によっては圧力と感じられるおそれもあります。謝罪の気持ちを伝える場合も、弁護人と相談してから方法を選ぶことをおすすめします。

かくまうこと、口裏を合わせること

 逮捕前の段階で、子から「しばらく家に置いてほしい」と頼まれたり、事情を話さないよう求められたりすることがあります。犯人をかくまう行為は犯人蔵匿罪、証拠を隠したり消したりする行為は証拠隠滅罪にあたるおそれがあります。親族が本人の利益のために行った場合には刑が免除されることがあるという特例(刑法105条)がありますが、免除するかどうかは裁判所の判断であり、必ず免除されるわけではありません。本人の処分にとっても不利な事情になりかねないため、こうした頼みには応じないことが大切です。

家族をかくまった|犯人蔵匿罪と親族の特例

どこまで支えるかは親が決めてよい

 子が逮捕されると、親は「自分の育て方に原因があったのではないか」と考え、できることはすべて引き受けようとしがちです。しかし、ここまで見てきたとおり、成人した子の刑事事件で親が法律上負う義務は基本的にありません。身元引受人になることも、示談金を出すことも、釈放後に同居を再開することも、親が選ぶ事柄です。

 事件の前から家庭内での暴力や金銭の要求があった場合や、ひきこもりの状態が長く続いていた場合には、釈放後にそのまま実家へ戻ることが、本人にとっても親にとってもよいとは限りません。親が身元引受人になれない、あるいはならないと判断したときでも、住まいや支援先を別に確保することで、釈放や保釈に向けた環境を整えられる場合があります。

【刑事事件】家族が身元引受人になれない|代替の環境調整

 また、事件の被害者が親自身である場合には、親は「支える家族」であると同時に「被害を受けた当事者」でもあります。この場合の考え方は、次の記事で整理しています。

【親子問題】被害届を出すと家族関係はどうなるのか|出す前に考えること

 当事務所では、成人した子との関係に悩む親御さんの代理人として子と向き合い、民間の自立支援カウンセラーと連携して、子の住まい探しや仕事探しなど日常生活の立て直しを支える取組みを行っています。刑事事件をきっかけに、親子の距離の取り方を見直したいというご相談もお受けしています。

【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応

よくあるご質問


子が「弁護士はいらない」と言っている場合でも、親が弁護人を付けられますか

 刑事訴訟法30条2項により、親は本人とは別に弁護人を選任することができます。ただし、弁護活動は本人との面会や打ち合わせを通じて進むため、本人が強く拒んでいる場合には、活動が難しくなることがあります。まずは弁護士に接見を依頼し、本人の考えを聞いてもらうところから始める方法もあります。

本人が事実を認めない・家族と話さない|家族が相談できる範囲

親が警察から事情を聞かれたら、答えなければなりませんか

 捜査段階で家族が参考人として話を聞かれる場合、応じるかどうかは任意です。また、起訴後の裁判で証人として呼ばれた場合でも、自分の子が刑事訴追を受けたり有罪判決を受けたりするおそれのある証言は拒むことができると定められています(刑事訴訟法147条)。一方で、事情を話すこと自体が本人に不利に働くとは限らず、生活状況や今後の監督について伝えることが本人のためになる場面もあります。記憶があいまいなことを推測で話さないよう注意し、迷うときは弁護人に相談してから応じるとよいでしょう。

親が用意した示談金や保釈保証金は、子に返してもらえますか

 親が出したお金を子に返してもらえるかは、親子の間でそれを贈与としたのか、貸したのかによって変わります。後で行き違いが生じないよう、貸す場合には金額や返済の方法を書面にしておくことをおすすめします。保釈保証金は、本人が条件を守って裁判を終えれば原則として返還されますが、逃亡や条件違反があると没取されることがあります。親が保証金を用意する場合は、この点も踏まえて判断することが大切です。

まとめ


  • 成人した子の刑事事件で、親が子に代わって刑事責任を負うことはなく、民事の賠償責任も原則として本人が負います。
  • 親には、弁護人の選任、勾留理由開示や勾留取消の請求、保釈の請求など、法律が直系の親族に認めた手続があります。
  • 捜査の中身を聞き出すこと、国選弁護人の請求、本人に代わって示談をまとめることは、親にはできません。
  • かくまう、口裏を合わせるといった行為は、善意からであっても控える必要があります。
  • 身元引受や資金の援助をどこまで担うかは、親が家庭の状況を踏まえて決めてよい事柄です。


 子の逮捕は、親にとって突然の出来事です。すべてを抱え込まず、法律で親に認められていることと、専門家に任せたほうがよいことを分けて考えることが、本人を支えるうえでも、親自身の生活を守るうえでも大切です。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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