【親子問題】子が出ていった後に荷物だけが残っている、処分していい?

若井亮

若井亮

テーマ:親子問題

子が家を出ていったあと、部屋には衣類や家具、家電、書類などがそのまま残されている。連絡しても返事がなく、片付けを進めたいけれど、勝手に捨ててよいのか分からない。こうしたご相談は、成人した子が家庭内暴力やひきこもりの末に家を出た場面や、関係が悪くなったまま独立した場面で少なくありません。

 結論からいうと、子が残していった荷物は、家を出たからといって親の物になるわけではありません。処分を考える前に、誰の物なのかを確かめ、子本人の意思を記録に残す手順を踏むことが大切です。この記事では、処分にあたって注意したい法律上の点と、連絡がつかない場合も含めた現実的な進め方を整理します。

本記事は、成人した子が親と同居していた家を出たあと、その家に荷物が残っている場面を前提にしています。未成年の子の場合や、子が別に借りていた部屋に荷物が残っている場合は、考え方が異なるところがあります。


子が残した荷物は、原則として子の物

 家を出ていった子の荷物であっても、子が所有している物の所有権は、本人が手放さない限り子に残ります。「出ていったのだから放棄したはずだ」と親の側で判断しても、それだけで所有権がなくなるわけではありません。

 迷いやすいのは、親がお金を出して買った物です。子が成人してから、または子どもの頃に親が買い与えた物は、多くの場合、その時点で子に贈与されたものとして子の物と考えられます。一方で、親名義で契約している家電や、家族で使うために親が買って子の部屋に置いていた物などは、親の物と整理できることがあります。

荷物の例誰の物と考えやすいか処分前に確かめたいこと
子が自分の収入で買った物子子の意思
親が子に買い与えた衣類・パソコン・家具など多くの場合は子(贈与)子の意思
家族共用として親が購入し、子の部屋に置いていた物親購入の経緯が分かる記録
親名義で契約・分割払いしている物契約内容による契約書・支払いの記録


 親の物だと整理できる物は、親の判断で処分できます。ただし、子が「自分の物だ」と考えている可能性があるときは、処分の前に一言確認しておくほうが、後のもめごとを防げます。

勝手に処分した場合に起こりうること

 子の物を本人の了解なく捨てたり売ったりすると、民事と刑事の両面で問題になるおそれがあります。

 民事では、他人の財産を損なったとして、不法行為に基づく損害賠償(民法709条)を求められる可能性があります。衣類や家具のように金額が大きくない物でも、写真やアルバム、手紙のように本人にとってかけがえのない物は、後になって強い不満の原因になりがちです。

 刑事では、他人の物を捨てて使えなくする行為は、器物損壊罪(刑法261条)にあたる可能性があります。器物損壊罪は、被害者からの告訴がなければ起訴されない罪です。また、子の物を売ってお金に換えた場合は、横領罪(刑法252条)が問題になり得ます。横領罪や窃盗罪には、直系血族などの間で起きた場合に刑を免除する特例(刑法244条・255条)がありますが、器物損壊罪にはこの特例が定められていません。いずれの場合も、民事上の責任は特例とは別に残ります。

 実際に親が処罰される場面は多くはありませんが、処分をきっかけに子が強く反発し、関係がさらにこじれたり、荷物を理由に再び家に来るようになったりすることがあります。法律上の責任よりも、こうした後の展開のほうが現実的な心配といえるかもしれません。

処分を考える前に整える手順


  1. 残っている荷物の一覧づくりと写真での記録。
  2. 誰の物かの仕分け。
  3. 子本人への意思確認。
  4. 期限を区切った引き取りの依頼。
  5. 子の回答を記録として保存。
  6. 送付・引き渡し、または合意に基づく処分。


荷物を一覧にし、写真で残す

 まずは、どの部屋に何が残っているかを一覧にし、全体と主な物の写真を日付が分かる形で残します。後から「大事な物を捨てられた」「あったはずの物がない」と言われたときに、残っていた物の範囲を示す手がかりになります。

子に意思を確かめる

 連絡が取れる場合は、「部屋に残っている物をどうしたいか」を尋ねます。電話で話がついたとしても、その内容をメッセージや手紙で送り直し、子からの返事が残る形にしておくと安心です。

期限を区切って引き取りを求める

 返事がない、あるいは引き取ると言ったまま動かない場合は、一覧を添えて「○月○日までに引き取るか、送り先を教えてほしい。期限までに連絡がなければ処分を検討する」と書面で伝える方法があります。期限は、数日といった短すぎる設定ではなく、本人が対応できる程度の期間を置くのが一般的です。配達の記録が残る方法で送っておくと、伝えた事実を後で示しやすくなります。

 ただし、こうした通知を送っても、返事がないことだけで「処分に同意した」とまでは言い切れない点には注意が必要です。通知は、親として誠実に対応した経過を残す意味が大きいと考えておくとよいでしょう。

「捨ててよい」と言われたら記録に残す

 子から「全部捨てていい」「これだけ送って、あとは処分して」といった返事があれば、それ自体が大切な記録です。どの物について処分してよいと言ったのかが分かるよう、一覧と照らし合わせて保存しておきます。口頭で言われた場合は、確認のメッセージを送り、返事をもらっておくと後の食い違いを防げます。

連絡がつかない、住所が分からないとき

 子と連絡が取れず、どこに住んでいるかも分からない場合、すぐに処分するのではなく、まずは送り先を確かめる方法を検討します。

 親は子の直系尊属にあたるため、子の本籍地の市区町村で戸籍の附票を取得し、住民票上の住所を確認できる場合があります(住民基本台帳法20条)。ただし、子がDV等の支援措置を受けている場合などは交付が制限されることがあり、また、住所が分かっても、そこに本人が実際に住んでいるとは限りません。住所が分かったら、いきなり荷物を送るのではなく、手紙で荷物の一覧と送付方法(着払いなど)を伝え、届いたかどうかを確かめてから送るのが穏当です。

 どうしても連絡がつかない場合は、当面は保管を続け、場所をとる物はトランクルームなどに移すことも選択肢です。保管にかかった費用は、後に子と精算を話し合う材料になり得るため、領収書を残しておきましょう。他人の動産でも長期間占有すれば時効により所有権を取得できる制度(民法162条)はありますが、原則20年という長い期間が必要で、現実的な解決策とはいいにくいところです。

 子と連絡が取れなくなった場合の安否確認については、【親子問題】独立した後に連絡が来なくなったら|安否確認の順序と「報告の枠組み」で詳しく整理しています。

すぐに手をつけてよい物と、慎重に扱いたい物


荷物の種類扱いの目安
食品・生ものなど傷みやすい物衛生上の理由から処分もやむを得ない場面がある。処分前に写真を残す
子あての郵便物開封せず保管する。開封は信書開封罪(刑法133条)にあたるおそれがある
身分証・通帳・印鑑・カード類処分せず、紛失や悪用が起きないよう別に保管する
写真・アルバム・手紙など思い出の品金額にかかわらず、特に慎重に扱う
家具・家電・衣類など一覧と写真を残したうえで、子の意思を確かめる


 郵便物が届き続ける場合は、子本人に郵便局への転居届を出してもらうよう伝えるのが基本です。親が代わりに転居届を出すことはできないため、届いた郵便物は封を開けずにまとめて保管し、送付や引き渡しの際に一緒に渡すとよいでしょう。

荷物の受け渡しが、再び家に来るきっかけになるとき

 家庭内暴力や金銭の要求が続いたすえに子が家を出た場合、荷物の受け渡しが、子が再び家に入るきっかけになることがあります。「荷物を取りに行く」と言って来訪し、そのまま居座ったり、話し合いが言い争いに発展したりする例もあります。

 こうした心配があるときは、受け渡しの場所を自宅以外にする、配送業者を使う、第三者に立ち会ってもらうなど、親子が直接顔を合わせずに済む方法を選ぶことが考えられます。弁護士が親の代理人となり、荷物の一覧の送付や引き取り日時の調整を窓口として担うこともできます。子が再び家に戻りたいと言ってきた場合の考え方は、【親子問題】独立した子が家に戻りたいと言ってきた|再同居を断るときもあわせてご覧ください。

よくあるご質問


何年たてば処分してよいという決まりはありますか

 子が残した荷物について、「何年たてば親が自由に処分してよい」という一律の決まりはありません。経過した期間よりも、子の意思を確かめる手順を踏んだかどうか、その記録が残っているかどうかが大切になります。

親が買った物でも子の物になるのですか

 子に与えるつもりで買った物は、贈与によって子の物になっていると考えられることが多いです。購入の経緯や使い方によって整理が変わるため、判断に迷う物は処分前に子に確認しておくほうが安心です。

子が「全部いらない」と言ったので処分しました。後で返せと言われたらどうなりますか

 処分してよいという意思表示があったのであれば、親の側で大きな責任が生じる可能性は低くなります。そのため、その言葉がいつ、どのような形で伝えられたかの記録が重要です。メッセージの履歴や手紙は、処分を終えた後もしばらく保存しておくことをおすすめします。

関連する解説記事



 子が残した荷物の扱いは、片付けの問題に見えて、実際には子との連絡の取り方や、家を出た後の関係をどう保つかという問題と結びついています。直接やり取りするのが難しい場合や、受け渡しをきっかけに再び衝突が起きないか心配な場合は、第三者を窓口にすることも一つの方法です。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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