【親子問題】子がネットオークションで詐欺まがいのことをしていたら?

若井亮

若井亮

テーマ:親子問題

「落札したのに品物が届かない」「説明と違う物が送られてきた」。子が出品者になっているネットオークションの取引について、落札者からの苦情が実家に届いたり、親名義の口座に見覚えのない入金が続いていたりして、初めて事情を知る親御さんがいます。中には、落札者から「親として返金してほしい」と求められ、どこまで応じるべきか迷っている方もいるでしょう。

 この記事では、子のネットオークションでの取引が「詐欺まがい」と言われる場面を整理したうえで、親に支払う義務があるのか、親の名義や口座が使われていた場合に何が起きるのか、親が自分の財産と生活を守るために何から手をつければよいのかを順にご説明します。

この記事は2026年10月時点の法令にもとづいています。2025年6月の刑法改正により、懲役・禁錮は「拘禁刑」に一本化されています。


「詐欺まがい」と言われる取引にはいくつかの形がある


取引の形起きやすい場面問題になりうる法的な枠組み
代金を受け取ったまま品物を送らない入金後に連絡が途絶える、発送を先延ばしにする詐欺罪、契約上の義務を果たしていない状態(債務不履行)
説明と違う物を送る傷・故障・欠品を書かずに出品する契約内容に合わない物を渡した責任(契約不適合責任)、悪質な場合は詐欺罪
コピー品・偽ブランド品を売る「本物」と表示して出品する商標法違反、詐欺罪
仕入れた物を繰り返し売る中古品を買い集めて転売する古物営業法の許可の要否
親の名義・口座・アカウントを使う親の本人確認書類で登録する、売上を親の口座で受け取るサイトの利用規約違反、親が取引の当事者として扱われるおそれ


 同じ「詐欺まがい」という言葉でも、刑事事件として扱われる可能性のあるものから、返品や返金で解決する民事上のトラブルにとどまるものまで幅があります。親御さんが最初にすることは、子がどの形の取引をしていたのかを把握することです。フリマアプリでの取引も考え方はほぼ共通しており、フリマアプリのトラブルが詐欺になる場合で詳しく解説しています。転売を繰り返している場合は、転売が古物営業法違反になるのはどこからかもあわせてご覧ください。

詐欺にあたるかどうかを分ける点

 詐欺罪(刑法246条1項)は、人をだまして財物を受け取った場合に成立し、法定刑は10年以下の拘禁刑です。ネットオークションでは、取引の時点で品物を送る意思や能力が本当にあったかどうかが大きな分かれ目になります。

 たとえば、手元にない品物を出品して代金だけを受け取った、同じ品物を複数の落札者に売った、といった事情があれば、初めからだますつもりだったと評価されやすくなります。反対に、発送が遅れた、梱包の際に取り違えた、商品の状態を見落としていた、といった事情であれば、民事上の責任の問題として扱われることが多いでしょう。

 ただし、落札者の側からは事情が見えません。発送の遅れをきっかけに落札者が警察に相談し、売上を受け取った口座が取引停止(いわゆる口座凍結)になったという相談も見られます。振り込め詐欺救済法にもとづき、犯罪に使われた疑いがあると金融機関が判断した口座は、取引が止められることがあります。その口座が親名義であれば、親の生活費の引き出しにも影響が及びます。

親が子の代わりに払う義務はあるのか


成人した子の取引

 子が18歳以上であれば、取引の当事者はあくまで子本人です。返金や損害賠償の責任を負うのも子本人であり、親であるというだけで支払う義務を負うことは原則としてありません。落札者から「親なのだから払うべきだ」と言われても、その場で応じる必要はありません。

 この考え方は、子の借金についても同じです。詳しくは【親子問題】子の借金を親が返す義務はあるのかをご覧ください。

未成年の子の取引

 子が18歳未満の場合でも、自分の行為の責任を理解できる年齢であれば、損害賠償の責任は子本人が負うのが原則です。ただ、親が監督の義務を十分に果たしていなかったと評価されると、親自身の責任(民法709条)を問われる余地があります。未成年の子のトラブルは、親が早めに事情を確認し、相手方への対応に関わることが求められる場面といえます。

親の名義・口座・アカウントが使われていた場合

 注意が必要なのは、子が親の本人確認書類でアカウントを作っていた場合や、売上を親名義の口座で受け取っていた場合です。外から見ると親が出品者に見えるため、苦情や請求、警察からの問い合わせが親に向くことがあります。親が承知していなかったことを説明できるよう、いつ、どの名義が、どのように使われていたのかを確認しておくことが大切です。

 名義の問題については、【親子問題】子が親名義で契約した|追認しないという選択や【親子問題】子の携帯・車の名義を親が持っている場合のリスクでも取り上げています。

落札者や運営会社から親に連絡が来たとき

 落札者から実家に電話や手紙が届いたとき、親御さんとしては「申し訳ない」という気持ちから、すぐに謝罪や返金を約束したくなるかもしれません。しかし、取引の中身が分からないまま約束をすると、後で親自身の支払いの約束として扱われるおそれがあります。最初の対応では、次の点を意識しておくと落ち着いて進められます。

  • その場で支払いや肩代わりを約束しないこと。
  • 取引をしたのが子であることと、事実を確認してから改めて連絡することを伝えること。
  • 相手の氏名・連絡先・取引の内容・請求額を記録すること。
  • 電話の日時や話した内容をメモに残し、手紙やメールは保管すること。


 また、子のアカウントに親が勝手にログインして落札者とやり取りをすることは避けたほうがよいでしょう。本人の許可なく他人のIDとパスワードを使うことは、親子の間でも不正アクセス禁止法の問題を生じるおそれがあります。取引の画面を確認したい場合は、子に見せてもらうか、子の了解を得たうえで行うのが穏当です。

親が返金や示談金を立て替えるかどうか

 親に支払う義務がないとしても、被害の回復を早く済ませたい、子が刑事事件として扱われるのを避けたい、という理由から、親が立て替えを考える場面はあります。立て替えること自体は禁じられていませんが、進め方によっては同じことが繰り返されたり、親の負担だけが増えたりします。

  • 合意は子本人と相手方との間で結び、親は支払いを手伝う立場にとどめること。
  • 支払う範囲(品物の代金・送料など)と、これで解決したことを確認する条項を書面に入れること。
  • 親が出したお金を子に贈ったのか貸したのかを、親子の間でも書面にしておくこと。
  • 同じような取引が他にもないかを、支払う前に子に確認すること。


 立て替えの判断については、【親子問題】示談金を親が払うべきか|払う場合の条件で詳しくご説明しています。

警察から連絡が来た・被害届が出ていると分かったら

 落札者が被害届を出していると、子本人や名義人である親に警察から連絡が入ることがあります。この段階で弁護士に相談しておくと、事情聴取への備えや被害者との示談の進め方を早めに整えられます。詳しくは【刑事事件】警察から電話が来た段階で弁護士に相談する意味をご覧ください。

 成人した子の刑事事件で親が関われる範囲には限りがあり、弁護人を選ぶのも示談をするのも基本的には子本人です。親の立場で何ができるかは、【親子問題】成人した子の刑事事件で親ができること・できないことにまとめています。子が18歳未満であれば少年事件として家庭裁判所の手続に進むため、【親子問題】少年事件の流れ|家庭裁判所送致から審判までもあわせてご確認ください。

親の財産と生活を守るために、いまできること

 子のオンライン上の取引は、親から見えにくいのが実情です。問題が表に出た段階で、親の名義や財産がどこまで関わっているかを確かめ、これ以上巻き込まれないための手立てをとっておくことが大切です。

  • 親名義の口座の入出金履歴に、覚えのない入金や振込がないかの確認。
  • 親名義のクレジットカード・決済サービス・アカウントの利用状況の確認と、必要に応じた停止や変更。
  • 運転免許証・健康保険証・マイナンバーカードなど本人確認書類の保管場所の見直し。
  • 実家の住所が発送元や返送先として使われていないかの確認。
  • 落札者や運営会社とのやり取り、子との話し合いの内容の記録。


 本人確認書類を人に使わせることの問題点は、【刑事事件】身分証やマイナンバーカードを人に貸した|罪に問われるかを分ける使い道と、その後の対応でも解説しています。

 オークションでのトラブルが、子からの度重なるお金の無心や、生活費をめぐる衝突の延長として起きていることもあります。その場合、取引の後始末をするだけでは同じことが繰り返されやすく、子の生活の立て直しまで視野に入れる必要があります。

弁護士が親の代理人として関わる場合

 当事務所では、弁護士が親の代理人として落札者や運営会社とのやり取りの窓口となり、親に向けられた請求を整理したうえで、親が支払う必要のないものには応じない形を整えます。窓口が弁護士に代わることで、親御さんが一人で対応に追われる状態から離れやすくなります。考え方は【親子問題】弁護士に頼むと何が変わるのか|窓口を代えるという選択でご紹介しています。

 あわせて、民間の自立支援カウンセラーとチームを組み、子の仕事探しや日々の金銭管理の支援にも取り組んでいます。サービスの全体像は【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応をご覧ください。

よくあるご質問


子は「発送が遅れただけ」と言っています。それでも詐欺になりますか

 発送の遅れや取り違えだけで、直ちに詐欺罪が成立するわけではありません。ただし、落札者には事情が見えないため、連絡が途絶えたままだと被害届が出されることがあります。まずは子と一緒に発送状況や返金の対応を落札者に伝え、そのやり取りを記録に残しておくことが大切です。

親名義の口座が凍結されました。生活費が引き出せません

 凍結を解くには、金融機関に事情を説明し、口座が犯罪に使われていないことを示す必要があります。どの取引が原因になったのかを確認し、落札者との間で返金などの解決ができているかを含めて整理することになります。生活に関わる問題ですので、早めにご相談ください。

 子のネットオークションでのトラブルは、取引の形によって刑事・民事のどちらの問題になるかが変わり、親の名義が使われていれば親自身も巻き込まれることがあります。払う義務の有無と、親の財産を守る手立てを分けて考えることが、落ち着いて対応するための出発点になります。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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