身分証の写真を送ってしまった|個人情報を握られた後の対処
フリマアプリでの取引がうまくいかず、相手方から「詐欺ではないか」と言われた、あるいは警察から連絡が来たというご相談が寄せられます。個人どうしの売買である以上、行き違いや遅れは起こり得ますが、そのすべてが刑事事件になるわけではありません。
もっとも、フリマアプリの取引は、出品画面も、やり取りも、入金も配送も、記録として残ります。相手方が警察に相談すれば、その記録はそのまま資料として提出できる状態にあります。対面の個人間取引とは、この点が大きく異なります。
この記事では、フリマアプリのトラブルのうち、どこからが刑法上の詐欺として扱われるのかを、フリマ特有の分かれ目に沿って整理します。
フリマアプリで「詐欺ではないか」と言われやすい場面
まず、実際にご相談の多い場面を挙げます。
- 代金を受け取ったまま、商品を発送できていない。
- 発送したものの、購入者から「中身が違う」「偽物だ」と言われている。
- 商品説明に書いた状態と実物が違うと指摘されている。
- 手元にない商品を出品し、仕入れが間に合わなかった。
- 購入した商品を受け取った後、支払いが止まっている。
- 返品した商品について、出品者から「別の物が返ってきた」と言われている。
立場も原因もさまざまで、この中には刑事の問題にならないものも含まれます。まずは、詐欺罪がどのような犯罪なのかを確認しておきます。
詐欺罪はどのような犯罪か
人を欺いて財物を交付させた場合に成立し(刑法246条1項)、法定刑は10年以下の拘禁刑です。罰金刑の定めはありません。未遂も処罰され(同法250条)、公訴時効は7年です(刑事訴訟法250条2項4号)。
ここで押さえておきたいのは、発送が遅れた、説明と実物が違ったという結果そのものが詐欺罪の成否を決めるわけではないという点です。問われるのは、出品したとき、あるいは購入したときに、相手方に何を伝え、何を伝えなかったかです。
分かれ目は「重要な事項」を偽ったかどうか
最高裁は平成22年7月29日の決定で、人を欺く行為について、相手方が財物を交付するかどうかを判断する基礎となる重要な事項を偽ることという考え方を示しています。
フリマアプリに置き換えれば、購入者が代金を払うかどうかを決めるにあたって効いてくる事柄が「重要な事項」です。商品が実在するのか、正規品なのか、いつ届くのかといった点はここに含まれやすく、一方で、細かな傷の見落としや表現の行き違いは、直ちにここに含まれるとは限りません。
フリマの取引を四つの分かれ目で見る
| 分かれ目 | 見られていること | 典型的な場面 |
|---|---|---|
| 商品が手元にあったか | 渡せる商品を持っていたか | 画像だけの出品、仕入れ前の出品 |
| 偽った点が重要だったか | 代金を払う判断を左右したか | 状態の書き方、正規品かどうか |
| いつそう決めたのか | 受け取る前か、受け取った後か | 発送前の翻意、入金後の放置 |
| 受け取った側の行為か | 支払う、返す前提だったか | 支払いの停止、返品時の入れ替え |
以下、順に見ていきます。
一つ目・商品が手元にあったか
出品の時点で商品を持っておらず、渡せる見込みもないまま代金を受け取った場合は、購入者の判断を左右する事柄を偽ったと評価されやすい類型です。他人の出品画像を転載していた、同じ画像が別の出品にも使われていたといった事情は、その裏付けとして見られます。
もっとも、手元にない商品を出品したこと自体が直ちに犯罪になるわけではありません。仕入れ先を確保したうえで出品し、結果として仕入れが遅れたという場合と、初めから渡す当てがなかった場合とでは、評価が分かれます。分かれ目になるのは、出品時点で調達の見通しがどの程度あったのか、遅れが生じた後にどう対応したのかという点です。
二つ目・偽った点が重要な事項だったか
「美品」「目立った傷なし」といった状態の表記は、書き手によって幅が出ます。実物との差が主観の範囲にとどまるのであれば、民事の話し合いや返品で処理される場面がほとんどです。
これに対し、正規品でないものを正規品として出品した、別の商品を送った、動作しないと分かっていて動作品として出したといった場合は、購入するかどうかの判断そのものに関わります。書き漏らしたのか、知っていて伏せたのかという違いも、ここで問われます。
三つ目・いつそう決めたのか
出品したときには送るつもりだったが、その後に気が変わった、あるいは受け取った代金を先に使ってしまったという相談も少なくありません。詐欺罪で問題になるのは相手方を欺いた時点の認識であるため、代金を受け取った後に生じた事情だけで詐欺罪の説明がつくわけではありません。
ただし、その後の対応は別に評価されます。発送していないのに発送済みと伝えた、追跡番号を偽って知らせたといった場合には、その連絡自体が新たな問題として取り上げられることがあります。事情が変わったのであれば、その時点で正確に伝え、取引のキャンセルや返金の手続を取るほうが、結果として説明がつきやすくなります。
四つ目・受け取った側が問われる場合
詐欺として扱われるのは出品者側だけではありません。商品を受け取りながら支払いを止めた、届いているのに「届いていない」と申告して返金を受けた、返品にあたって中身を入れ替えて送り返したといった行為は、出品者が商品を渡すか、返金するかを決める判断を左右する点で、同じ枠組みで問題になります。
配送の追跡記録や、梱包時の写真、事務局とのやり取りが残っていることが多く、後から説明を組み立て直すことが難しい類型でもあります。
詐欺罪のほかに問題になる法律
偽ブランド品の出品では、商標法も関わります。登録商標を無断で使用して商標権を侵害した場合は10年以下の拘禁刑もしくは1000万円以下の罰金、またはその併科(商標法78条)、登録商標に類似する商標の使用や、そうした商標を付した商品を譲渡のために所持する行為など、侵害とみなされる行為については5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金、またはその併科と定められています(同法37条、78条の2)。法人については両罰規定も置かれています(同法82条1項1号)。
また、個人であっても出品が一定の規模に達すると、特定商取引法上の販売業者として扱われる場合があります。消費者庁が示すガイドラインでは、過去1か月に200点以上または一時点で100点以上を新規出品している場合、落札額の合計が過去1か月に100万円以上または過去1年間に1000万円以上である場合などが例示されています。該当すれば、氏名や住所などの広告表示義務(同法11条)がかかります。さらに、仕入れた中古品を反復継続して売る形態であれば、古物営業法上の許可が必要になり、無許可営業には罰則が定められています(同法31条)。
規約違反と犯罪は同じではない
アプリの外でのやり取りに誘導した、個人の口座に直接振り込ませた、手元にない商品を出品したといった行為は、多くのサービスで規約上禁止されています。違反すれば、利用制限や補償の対象外といった不利益が生じます。
もっとも、規約に違反したことと、刑罰の対象になることは、別の話です。逆に、規約の範囲内の取引であっても、相手方の判断を左右する事柄を偽っていれば詐欺として問題になり得ます。「規約に違反していないから大丈夫」「規約違反だからもう終わりだ」と極端に振れないことが大切です。
フリマの取引は記録が残る
警察庁は、この種の被害の相談にあたって、出品ページのURLや画像、取引相手の情報、やり取りの内容を時系列に整理して持参するよう案内しています。フリマアプリでは、これらが購入者の手元にそろっていることが通常です。
言い換えると、こちらの説明も記録で裏付けられるということです。発送した事実、相手方に事情を伝えた事実、返金を申し出た事実は、いずれも記録に残ります。連絡を絶ってしまう対応は、後から事情を説明することを難しくします。
言われた側が早い段階でできること
相手方から強い抗議を受けている段階、警察から連絡があった段階のいずれでも、次の点を整えておくと見通しが立てやすくなります。
- 出品ページ、商品説明、掲載した画像を保存しておく。
- 取引メッセージと、相手方との連絡の全体を時系列に並べる。
- 発送の記録、追跡番号、梱包時の写真を確認する。
- 入金と返金の履歴、事務局への申告内容を控える。
- 仕入れ先とのやり取りなど、渡す当てがあったことを示す資料を探す。
- 返金やキャンセルに応じるかどうかを、事実関係を確認したうえで判断する。
避けたい対応
- 連絡を止める、アカウントを削除する。
- 事実を確かめないまま発送済みと伝えるなど、その場をしのぐ説明をする。
- 逆に、事実確認の前に「詐欺ではない」と言い切って話し合いを閉じる。
- 相手方の強い要求に押され、内容を確かめずに支払いだけ約束する。
- 警察からの連絡を放置する、出頭の求めに応答しない。
まとめ
- 結果として届かなかった、説明と違ったという事実だけで詐欺罪が決まるわけではない。
- 判断されるのは、相手方が代金を払うかどうかを決める重要な事項を偽ったかどうか。
- 出品側は、商品が手元にあったか、偽った点が重要か、いつそう決めたのかが分かれ目になる。
- 受け取った側の支払い停止や返品時の入れ替えも、同じ枠組みで問題になる。
- 偽ブランド品では商標法、出品規模によっては特定商取引法や古物営業法も関わる。
- 規約違反と犯罪は別であり、記録が残る取引だからこそ、連絡を絶たない対応が意味を持つ。
フリマアプリのトラブルは、民事の話し合いで収まるものから、刑事事件として捜査が進むものまで幅があります。相手方から抗議を受けている段階か、被害届が出された後かによっても、取るべき対応は変わります。当事務所では初回のご相談を無料でお受けし、24時間ご相談を受け付けています。ご自身の取引がどこに位置するのか判断がつかない段階でも、記録が残っているうちにご相談ください。


