【親子問題】きょうだいや配偶者にも暴力が及んでいる場合
成人した子が玄関の前に立ちふさがって外出を止める。財布や家の鍵を取り上げられて、出かけられない。出かけようとすると怒鳴られ、結局あきらめてしまう――。こうした状態が続くと、「これは監禁にあたるのではないか」と感じる親御さんもいらっしゃいます。家族の間のことだからと我慢を重ねているうちに、外に出られない時間が少しずつ長くなっていくこともあります。
この記事では、刑法上の「監禁」がどのような状態を指すのか、親子の間で監禁にあたるかどうかを分ける事情、監禁にまでは至らない場合に問題となる行為、高齢の親の場合に使える行政の仕組み、そして親の側でいまからできることを順に整理します。
2025年6月1日施行の改正刑法により、懲役刑と禁錮刑は「拘禁刑」に一本化されました。この記事の法定刑は改正後の表記で記載しています。犯罪が成立するかどうかは個別の事情によって判断されるため、一般的な考え方の整理としてお読みください。
刑法上の「監禁」とはどういう状態か
監禁罪は刑法220条に定められており、不法に人を監禁した者は、3月以上7年以下の拘禁刑に処するとされています。ここでいう「監禁」とは、人が一定の場所から出ることを不可能にするか、著しく困難にして、移動の自由を奪うことをいうと考えられています。
典型的なのは、部屋の外から鍵をかけて出られなくするような場面です。ただ、監禁にあたるかどうかは、鍵や壁があるかどうかだけで決まるわけではありません。出ることがまったく不可能でなくても、著しく難しい状態に置かれていれば、監禁にあたりうるとされています。
物理的な方法だけでなく、心理的な方法も含まれる
監禁の手段は、鍵をかける、出口をふさぐといった物理的なものに限られません。「外に出たらただでは済まない」と脅し、恐怖心から動けなくさせるように、心理的に出ることを難しくする方法でも監禁にあたりうると解されています。刑法の解説では、入浴中の人の衣服を持ち去り、羞恥心から浴室を出られなくする例が挙げられることもあり、手段の幅は広く捉えられています。
家族の間だからといって成立が否定されるわけではない
刑法には、窃盗など財産に関する一部の罪について、親子など一定の親族の間では刑が免除される特例(刑法244条など)があります。しかし、この特例は監禁罪には及びません。行為が監禁の要件を満たせば、親子の間であっても犯罪として扱われうることになります。
もっとも、家庭内の出来事は外から見えにくく、警察に相談しても「家族の問題」として受け止められるのではないかと、相談そのものをためらう方も少なくありません。親子間で起きた暴力が刑事事件として扱われるかどうかの考え方は、【親子問題】親子間の暴行・傷害は立件されるのか|特例が及ばない範囲で整理しています。
親子の間で問題になりやすい場面
ひと口に「外に出さない」といっても、その中身はさまざまです。親子の間で見られることの多い場面と、法的に問題となりうる点を整理すると、次のようになります。
| 場面 | 問題になりうるもの | 見方のポイント |
|---|---|---|
| 親の部屋や玄関に外から鍵をかけ、出られないようにする | 監禁罪 | 監禁の典型的な形で、閉じ込めた時間が長くなるほど重く見られやすい |
| 玄関の前に立ちふさがり、押し戻して外出させない | 監禁罪・暴行罪 | 身体を押し戻す行為があれば、それ自体が暴行にあたりうる |
| 「出かけたら家の物を壊す」などと告げて外出をあきらめさせる | 監禁罪・脅迫罪・強要罪 | 告げた内容、続いた期間、親が感じた恐怖の程度が問われる |
| 財布・スマートフォン・家の鍵・靴などを取り上げ、出られない状態にする | 監禁罪・強要罪など | 取り上げた物の性質や、ほかに外出の手段が残っていたかが関わる |
| 外出のたびに行き先を問いただし、帰宅後に激しく責める | 強要罪・脅迫罪など(事情による) | 直ちに監禁とはいえなくても、行動を縛る事情として記録しておく意味がある |
| 介護が必要な親を、介護サービスや受診に行かせない | 高齢者虐待防止法上の虐待など | 刑事の問題とは別に、行政が対応する仕組みがある |
なお、監禁の結果として親がけがをしたり体調を崩したりした場合には、より重い監禁致傷罪(刑法221条)の問題にもなりえます。
監禁にあたるかどうかを分ける事情
同じように「外に出してもらえない」と感じる状況でも、監禁にあたるかどうかは、個別の事情を積み重ねて判断されます。主に考慮されるのは、次のような点です。
- 出られない状態が続いた時間と、繰り返された回数。
- 鍵・見張り・脅しなど、出ることを妨げた手段。
- 親が外に出たいという意思を示したか、示せる状況にあったか。
- 別の出口や、電話など外に助けを求める手段が残っていたか。
- 親の年齢や体の状態から見た、自力で出ることの難しさ。
- 暴力や物を壊す行為など、その前後に起きていた出来事。
たとえば、口論の最中に数分間ドアの前に立たれたという一度きりの出来事だけで、監禁と評価されるとは限りません。一方で、外出しようとするたびに出口をふさがれ、脅されることが何日も続いているような場合には、監禁やそれに近い問題として扱われる余地が大きくなります。
また、高齢や病気で足腰が弱っている親の場合、若い人であれば容易に出られる状況でも、実際には出ることが著しく難しいことがあります。杖や車いすを取り上げられる、玄関の鍵を高い位置に付け替えられるといった事情は、親の体の状態とあわせて見ていく必要があります。
監禁にあたらなくても、問題がなくなるわけではない
監禁罪が成立するとまではいえない場合でも、身体を押し戻せば暴行罪、生命や身体に危害を加えると告げれば脅迫罪、脅して外出をやめさせれば強要罪(刑法223条、3年以下の拘禁刑)が問題となりえます。脅しの言葉がどこから罪として扱われるかは、【親子問題】「殺す」と言われた|脅迫罪として扱われる線引きもあわせてご覧ください。
親御さんにとって大切なのは、「監禁罪になるかどうか」の結論をご自身で出すことよりも、外に出られない状況を早く解消し、そのための材料を残しておくことです。罪名の当てはめは、相談を受けた警察や弁護士が事情を聞いたうえで検討します。
高齢の親の場合は、行政が動く仕組みもある
親が65歳以上で、同居する子から日常の世話を受けている関係にある場合、高齢者虐待防止法の対象となることがあります。国や自治体の資料では、養護者による身体的虐待の例として、外から鍵をかけて閉じ込める行為や、外部との接触を意図的・継続的に遮断する行為が挙げられています。
この法律のもとでは、市町村や地域包括支援センターが相談や通報を受け付け、必要に応じて事実の確認や、高齢者を一時的に保護するための措置がとられることがあります。警察とは別の窓口として、介護や生活の面も含めて相談できる点に特徴があります。子が親の世話をしているといえるかどうかで扱いが変わることもあるため、迷う場合はまず地域包括支援センターに状況を伝えてみるとよいでしょう。詳しくは【親子問題】高齢の親が被害者の場合|行政が動く仕組みをご覧ください。
親が65歳未満の場合はこの法律の対象にはなりませんが、警察への相談は年齢にかかわらず可能です。親に障害がある場合には、障害者虐待防止法にもとづく市町村の窓口が使えることがあります。
いま外に出られない状況にあるとき
閉じ込められている、出口をふさがれて身の危険を感じる、という状況であれば、まず身の安全を優先し、110番通報を含めて外部に助けを求めることを考えてください。スマートフォンを取り上げられている場合でも、固定電話を使う、近所の方に声をかける、訪問した介護職員に伝えるなど、外とつながる方法が残っていることがあります。通報の判断の目安や、その場で伝える内容は【親子問題】110番を呼ぶ判断基準|その場で何を伝えるかで解説しています。
その場が落ち着いた後も同じことが繰り返されるおそれがあるときは、一時的に親が家を離れることも選択肢の一つです。家を出ることは負けではなく、安全を確保しながら次の手を考えるための時間をつくる方法といえます。避難先の考え方は【親子問題】避難先の確保|一時的に親が家を出るという選択で整理しています。
後のために残しておきたい記録
家の中の出来事は、時間が経つと日時や順序があいまいになりがちです。後に警察や行政、弁護士に相談するときのために、できる範囲で次のような記録を残しておくと役立ちます。
- 外に出られなかった日時と、その状態が続いた時間。
- 子がとった行動(鍵をかけた、出口をふさいだ、物を取り上げたなど)と、そのときの言葉。
- 取り上げられた物と、返してもらえたかどうか。
- けがや体調の変化と、受診した医療機関。
- 警察や行政に相談した日時と、対応した担当者。
- 録音や写真の有無と、その保存場所。
記録は、子に見られにくい場所や、信頼できる家族・知人の手元に保管しておくと安心です。暴力を受けているときの記録の残し方は【親子問題】子から暴力を受けている|まず確保すべき安全と記録で、警察に相談した記録の意味は【親子問題】警察に相談した記録を残す意味|相談票と後の手続で詳しく解説しています。
親の側で鍵や出入りの仕組みを変えるときの注意
閉じ込められることを防ごうとして、親の側が玄関の鍵を替える、子を家に入れないようにするといった対応を考えることもあるかもしれません。ただし、子がその家に住んでいる場合、一方的に締め出すことには法的な問題が生じることがあります。親の部屋の内側に鍵を付けるといった自分を守るための工夫と、子を家から締め出すことは、分けて考える必要があります。この点は【親子問題】鍵を替える・締め出すことの可否|自力救済の限界で整理しています。
被害届を出すかどうか迷うとき
監禁や暴力について被害届を出すと捜査が進み、事情によっては子が逮捕される可能性もあります。わが子を罪に問うことへのためらいから、届け出に踏み切れない親御さんも少なくありません。被害届は相談とは別の手続であり、まずは警察に相談して記録を残しておくという段階を踏むこともできます。
また、監禁罪は告訴がなければ起訴できない罪(親告罪)ではないため、届け出の後に親が「もう大丈夫です」と伝えても、手続がそれだけで終わるとは限りません。届け出る前に、その後の家族の暮らしをどうするかも含めて考えておくことが大切です。判断の材料は【親子問題】被害届を出すと家族関係はどうなるのか|出す前に考えることにまとめています。
弁護士に相談すると何ができるか
子が親を外に出さない状態は、多くの場合、暴言や金銭の要求、ひきこもりといった別の問題と重なって起きています。刑事手続だけでは、家の中の関係そのものが変わらないこともあります。
当事務所では、弁護士が親の代理人として子との連絡の窓口となり、親への直接の要求や攻撃を受け止める役割を担います。必要に応じて警察とも連携しながら、安全に配慮して対応を進めます。あわせて、自立支援カウンセラーとチームを組み、子の住まい探しや仕事探し、生活の立て直しを支えることで、親子が適切な距離をとれる状態を目指します。対応の内容はご家庭ごとに異なるため、事情を伺ったうえで方針をご相談します。サービスの詳細は【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応をご覧ください。
外に出られない状況が続くと、相談に出かけることそのものが難しくなりがちです。電話など、家にいながら使える手段でご相談いただくこともできます。ご本人が動けない場合には、ほかのご家族が先に相談の窓口になることも考えられます。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


