【親子問題】20歳前後の子の家庭内暴力は、少年事件として扱われる?

若井亮

若井亮

テーマ:親子問題

この記事は、2022年4月施行の改正少年法(18歳・19歳を「特定少年」と位置づけた改正)と、2025年6月施行の拘禁刑の導入を反映して記載しています。個別の事件の見通しは、事実関係によって異なります。


19歳の子が家で親に手を上げ、警察を呼ぶことになった。あるいは、20歳の誕生日を迎えたばかりの子の暴力について、被害届を出すかどうか迷っている。こうした場面で親御さんから寄せられることが多いのが、「この年齢だと少年事件になるのか、それとも大人と同じ扱いになるのか」というご質問です。

 少年事件として扱われるかどうかは、20歳未満かどうかで決まります。ただし、基準になるのは事件を起こした時点の年齢だけではありません。家庭裁判所で手続が行われる時点の年齢も関わるため、20歳の誕生日が近い時期には、同じ出来事でも扱いが変わることがあります。

 この記事では、20歳前後の子の家庭内暴力について、少年事件になる場合とならない場合の分かれ目、手続の流れ、家庭内暴力の事件ならではの論点を、親の立場から整理します。

少年事件になるかどうかは「20歳未満かどうか」で決まる

 少年法は、20歳に満たない者を「少年」と定めています(少年法2条1項)。2022年4月に民法の成年年齢が18歳に引き下げられましたが、少年法の対象年齢は20歳未満のまま維持されました。そのため、18歳・19歳の子は、民法上は成人であっても、罪にあたる行為をした場合には少年事件として扱われます。

18歳・19歳は「特定少年」として一部の扱いが異なる

 18歳・19歳の少年は「特定少年」と呼ばれ、17歳以下の少年とは一部の扱いが異なります。主な違いは次のとおりです。

  • 事件がすべて家庭裁判所に送られる点は、17歳以下と同じです。
  • 家庭裁判所が原則として検察官に送り返す(逆送する)事件の範囲が、17歳以下より広く定められています。
  • 保護処分は、犯した罪の重さを考慮し、相当な限度を超えない範囲で選ばれます。
  • 検察官に送り返された後に正式な裁判にかけられると、実名などの報道の制限が解除されます。


 また、17歳以下であれば、犯罪に至っていなくても、保護者の正当な監督に従わないなどの事情から将来罪を犯すおそれがある場合に「ぐ犯少年」として家庭裁判所の手続の対象になり得ます。特定少年はこの対象から外されています。18歳・19歳の子については、暴行や傷害、脅迫、器物損壊などの具体的な罪にあたる行為があったかどうかが、手続に乗るかどうかの出発点になります。

20歳の誕生日をはさむと扱いが変わることがある

 少年として家庭裁判所の審判を受けられるのは、審判の時点で20歳未満の人です。事件の時に19歳であっても、手続の途中で20歳を迎えると、少年事件としては扱えなくなります。家庭裁判所は、調査や審判の段階で本人が20歳以上であることが分かった場合、事件を検察官に送ることになっています(少年法19条2項、23条3項)。一般に「年齢超過による検察官送致」と呼ばれる扱いです。

事件の時の年齢手続の時点の状況主な扱い
17歳以下20歳未満のまま家庭裁判所で審判を受ける少年事件(ぐ犯も対象になり得る)
18歳・19歳20歳未満のまま家庭裁判所で審判を受ける少年事件(特定少年としての特例あり)
18歳・19歳家庭裁判所に送られる前、または審判の前に20歳になった成人と同じ刑事手続(検察官が起訴するかどうかを判断)
20歳以上事件の時点で成人成人と同じ刑事手続


 20歳の誕生日まで数か月しかない時期に事件が起きた場合、捜査や家庭裁判所の手続にかかる期間によっては、少年事件として最後まで進まないことがあります。誕生日が近いことを踏まえて手続の日程が組まれることもありますが、見通しは事案ごとに異なります。成人の手続に移ると、保護処分ではなく刑罰の対象となり、起訴されて有罪となれば前科が残ります。誕生日が近い場合は、早めに弁護士に状況を伝えておくことが大切です。

少年事件として進む場合の流れ

 親への暴力で子が逮捕された場合、捜査の段階では成人とおおむね同じように、警察での取調べや勾留が行われることがあります。捜査を終えた事件は、犯罪の嫌疑がある限り、軽重にかかわらずすべて家庭裁判所に送られます。全体の流れは【親子問題】少年事件の流れ|家庭裁判所送致から審判までで解説していますので、ここでは家庭内暴力の事件で押さえておきたい点に絞ります。

観護措置と家庭裁判所調査官の調査

 家庭裁判所に送られた後、必要に応じて少年鑑別所に収容する「観護措置」がとられます。期間は通常4週間程度までで、その間に心身の状態について鑑別が行われます。あわせて、家庭裁判所調査官が本人や親と面接し、生い立ちや家庭環境、暴力に至った経緯などを調べます。家庭内暴力の事件では、親は被害者であると同時に、子の生活環境をよく知る立場として話を聞かれることになります。

審判と処分の種類

 調査の結果を踏まえて、審判を開かずに終える「審判不開始」、審判を開いたうえで処分をしない「不処分」、保護観察や少年院送致といった「保護処分」などが決まります。特定少年の保護処分は、6か月の保護観察、2年の保護観察、3年以下の範囲で期間を定める少年院送致に限られています。

 また、特定少年の事件のうち、故意の行為で人を死亡させた罪や、死刑・無期または法定刑の下限が1年以上の拘禁刑にあたる罪(強盗罪や現住建造物等放火罪など)は、原則として検察官に送り返されます。家庭内の暴行や傷害の多くはこれにあたりませんが、それ以外の事件でも、刑事処分が相当と判断されれば検察官に送られることがあります。

家庭内暴力の事件ならではの論点


親は「被害者」であり「帰る先」でもある

 少年審判では、処罰よりも、本人が立ち直るためにどのような環境に戻すのがよいかが重視されます。家庭内暴力の事件では、暴力を受けた家庭がそのまま本人の帰る先になるため、この点が大きな論点になります。弁護士ドットコムに掲載された解説でも、少年をそのまま元の家庭に戻すことができるのか、それが本人にとって望ましいのかは、審判を担当する裁判官にとっても難しい判断になるだろうという趣旨が述べられています。

 親として「少年院には行ってほしくないが、同じ家で暮らし続けるのは難しい」と考える場合には、家庭以外の帰住先を探すことも選択肢になります。どこで暮らし、誰が生活を支えるのかという見通しは、審判の判断にも関わります。

被害者としての立場と、子を支える立場の調整

 少年事件には、被害者やその家族が家庭裁判所に意見を述べたり、審判の結果について通知を受けたりする制度があります。親は被害者として気持ちを伝えることもできますが、同時に子の更生を支える側でもあるため、何をどこまで伝えるかに迷う方は少なくありません。

 子に付く付添人の弁護士は、子の立場から活動します。親の安全や、今後子とどのように距離を取るかを親の側に立って考える役割とは、必ずしも一致しません。親自身の安全や生活を守る観点からは、親の側で相談できる窓口を別に持っておくことが考えられます。

お金を持ち出された場合の扱い

 暴力とあわせて、親の財布や口座からお金を持ち出されている場合もあります。親子のような直系の血族の間で起きた窃盗や恐喝など、財産に関する罪の一部については、刑を免除する規定があります(刑法244条1項、251条)。一方、暴行や傷害、脅迫にはこのような特例はありません。詳しくは【親子問題】親子間の暴行・傷害は立件されるのか|特例が及ばない範囲と【親子問題】親の預貯金を勝手に引き出された|刑事と民事の分かれ道をご覧ください。

20歳を過ぎていれば成人の刑事事件として進む

 事件の時点で20歳以上の場合や、手続の途中で20歳を迎えた場合は、成人の刑事事件として扱われます。家庭裁判所調査官による調査は行われず、検察官が起訴するかどうかを判断します。親子間の事件では、被害の程度や本人の反省、親の意向、今後の生活の見通しなどを踏まえて、不起訴や罰金で終わることもあれば、正式な裁判になることもあります。成人の事件で親が関われる範囲は【親子問題】成人した子の刑事事件で親ができること・できないことで整理しています。

 少年事件の保護処分は前科にはなりませんが、成人の手続で有罪となった場合は前科になります。どちらの場合でも、捜査を受けた記録である前歴は残ります。

親として考えておきたいこと

 年齢による扱いの違いを知っておくことは大切ですが、目の前で暴力が起きているときに、少年事件になるかどうかを考えて通報をためらう必要はありません。身の危険を感じたときは、まず安全を確保し、110番することを優先してください。警察が介入したからといって必ず逮捕されるわけではなく、事情を聴いたうえで対応が決められます。

 そのうえで、次のような点を整理しておくと、その後の手続やご相談が進めやすくなります。

  • 子の生年月日と、暴力があった日付。
  • 暴力の内容、けがの有無、診断書の有無。
  • これまでの警察への相談歴。
  • 今後も同居を続けるのか、離れて暮らすのかという親の希望。
  • 子の通院歴や、飲酒・薬物などの問題の有無。


 家庭内暴力の背景には、本人の不安定さや依存の問題、親子の距離の近さなど、さまざまな事情が重なっていることがあります。刑事手続は暴力を止めるきっかけになり得ますが、それだけで親子の関係や子の生活が立て直されるとは限りません。手続が終わった後の暮らし方まで見据えて考えることが大切です。初動については【親子問題】子から暴力を受けている|まず確保すべき安全と記録、被害届については【親子問題】被害届を出すと家族関係はどうなるのか|出す前に考えることも参考になります。

よくあるご質問


19歳の子が親を殴った場合、必ず逮捕されますか

 必ず逮捕されるわけではありません。逮捕は、逃亡や証拠隠滅のおそれなどから必要があると判断された場合に行われます。けがが軽い場合や本人が落ち着いている場合には、逮捕せずに事情を聴いて手続を進めることもあります。一方、暴力が繰り返されている、けがが重いといった事情があれば、身柄を拘束される可能性は高まります。

事件の後に20歳になったら、少年事件にはならないのですか

 家庭裁判所で審判を受ける時点で20歳以上になっていれば、少年事件としては扱われず、成人と同じ刑事手続に移ります。事件の時に19歳であっても同じです。誕生日が近い場合は、早めに弁護士へ相談し、見通しを確認しておくことをおすすめします。

特定少年の事件は、実名で報道されますか

 特定少年のときに犯した事件で、検察官に送り返された後に正式な裁判にかけられた場合は、実名などの報道の制限が解除されます。家庭裁判所の保護処分で終わる場合や、略式手続で罰金となる場合は解除されません。報道への備えについては【親子問題】子の逮捕が報道されそう|家族の生活を守るためにで解説しています。

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20歳前後の子の家庭内暴力でお悩みの方へ

 弁護士法人若井綜合法律事務所では、家庭内暴力やひきこもり、金銭の要求などに悩む親御さんからご依頼を受け、親の代理人として子との間に入る取り組みを続けています。自立支援カウンセラーと役割を分け、弁護士が親の安全と生活を守る窓口となり、カウンセラーが子の住まいや仕事探しなど生活面の立て直しを支える形です。子が20歳前後で、刑事手続になるかどうかの見通しが立たない段階でも、事実関係を伺いながら対応を一緒に考えます。サービスの内容は【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応でご紹介しています。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
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早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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