【親子問題】ひきこもりの子のSNSを親が見るのは、問題になる?

若井亮

若井亮

テーマ:親子問題

ひきこもりの状態が続く子が、部屋の中で何を考え、誰とつながっているのか分からない。そうした不安から、子のSNSを見てみようと考える親御さんは少なくありません。外との接点がほとんどない子にとって、SNSは数少ない「外の世界」であることが多く、そこに子の状態を知る手がかりがあるのではないかと感じるのは自然なことです。

 もっとも、SNSを「見る」といっても、誰でも閲覧できる投稿を読むことから、子のアカウントにログインして非公開のやり取りを読むことまで、方法には大きな幅があります。法律上の評価もその方法によって変わり、なかには家族の間でも刑事罰の対象になりうるものがあります。この記事では、親が子のSNSを見ることがどのような場合に問題になるのか、見た内容が心配なものだったときにどう動けばよいのかを整理します。

本記事は、2025年6月に施行された刑法改正(懲役・禁錮の拘禁刑への一本化)を反映しています。また、主に成人した子(18歳以上)を念頭に置いて解説し、未成年の子との違いは別に触れています。


見る方法によって、法的な評価は分かれます

 親が子のSNSを見るという行為は、ひとまとめに「問題がある」「問題はない」と言えるものではありません。誰に向けて公開されている情報なのか、どのような手段でその情報にたどり着いたのかによって、評価が大きく変わります。おおまかな目安を表にまとめると、次のとおりです。

見る方法法的な評価の目安気をつけたい点
誰でも見られる公開アカウントの投稿を読む通常は法的な問題になりにくい保存した投稿を親族などに広めると、別の問題が生じることがある
ロックのかかっていない子のスマホを手に取り、アプリを開いて読む直ちに刑事罰の対象とはされにくいが、プライバシーの問題が残る成人した子については、親権を理由に正当化することはできない
子のIDやパスワードを入力して、別の端末からログインする不正アクセス禁止法に触れるおそれがある家族であることによる例外は設けられていない
子に知らせずに監視アプリを端末に入れる刑法の不正指令電磁的記録に関する罪などが問題になる余地がある発覚したときに信頼関係へ与える影響が大きい
別人を装ったアカウントで、非公開アカウントをフォローする直ちに犯罪とはされにくいサービスの利用規約に反することがあり、発覚すれば関係が悪化しやすい


 以下では、それぞれの場面について、もう少し詳しく見ていきます。

公開されている投稿を見るだけなら

 SNSの投稿のうち、誰でも閲覧できる状態で公開されているものは、本人が不特定多数の人に見られることを前提に発信している情報です。親がそれを読むこと自体は、通常、法的な問題にはなりにくいと考えられます。

 ただし、見ること自体に問題がなくても、その先の行動によっては問題が生じることがあります。たとえば、子の投稿を保存して親族の集まりで回覧したり、本人を責める材料として繰り返し突きつけたりすると、プライバシーや名誉に関わるトラブルに発展するおそれがあります。また、公開された投稿であっても、子が「親に見られている」と知ったときにどう受け止めるかは別の問題です。この点は後ほど改めて触れます。

ログインして見る場合は、不正アクセス禁止法に注意が必要です

 子のIDやパスワードを使って子のSNSアカウントにログインし、ダイレクトメッセージなどの非公開の情報を見る方法は、法的な評価が大きく変わります。他人のIDとパスワードを無断で入力してアカウントにアクセスする行為は、不正アクセス禁止法が禁止する「不正アクセス行為」にあたるおそれがあり、3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が定められています(不正アクセス禁止法3条、11条)。

 この法律には、親子や夫婦といった家族の間であれば処罰しないという例外はありません。また、被害者からの告訴がなければ起訴できない親告罪でもありません。弁護士ドットコムなどの法律相談サイトでも、配偶者や家族のアカウントにログインしてやり取りを見た行為について、不正アクセスにあたる可能性を指摘する回答が多く見られます。

 「以前、子から教えてもらったパスワードだから」「部屋で見つけたメモに書いてあったから」といった事情があっても、子がいま親のログインを認めているとは限りません。本人の了解の範囲を超えてログインすれば、同じように問題になりうると考えておくのが安全です。また、ログインしたままの状態になっている子のスマホを操作して読む場合は、パスワードを入力していないため不正アクセスにはあたらないと考えられる場面もありますが、それでもプライバシーの問題が残ることに変わりはありません。

親名義で契約したスマホでも、扱いは変わりません

 ひきこもりの子のスマホは、親が契約者となって料金を支払っていることも多いと思います。しかし、通信契約の名義が親にあることと、SNSアカウントの中身を見てよいことは別の話です。SNSのアカウントは、あくまで子がサービス事業者との間で利用しているものであり、端末や回線の契約者であることを理由にログインが正当化されるわけではありません。名義の問題については、【親子問題】子の携帯・車の名義を親が持っている場合のリスクや【親子問題】子の携帯料金やサブスクを止めたい|名義と契約の整理で整理しています。

成人した子と未成年の子とでは、前提が異なります

 未成年の子については、親は親権者として子の監護と教育を担う立場にあり(民法820条)、子の安全を守るために必要な範囲で、スマホやSNSの使い方に目を配ることが認められる場面があります。もっとも、親権を行う際には子の人格を尊重し、年齢や発達の程度に配慮することが求められています(民法821条)。未成年であっても、子のIDで無断ログインするような方法は避け、フィルタリングやペアレンタルコントロールの機能を本人と話し合ったうえで使うほうが、後々のトラブルを防ぎやすいといえます。

 これに対して、18歳以上の子には親権が及びません。ひきこもりの状態にあっても、法律上は一人の大人として、自分の通信やプライバシーについての権利を持っています。無断で非公開の情報を見たり、それを第三者に伝えたりすれば、不法行為(民法709条)としてプライバシーの侵害が問われる余地もあります。成人した子との関わりで親がどこまで踏み込めるのかについては、【親子問題】成人した子の問題に親が介入できる法的な範囲もあわせてご覧ください。

監視アプリを入れたり、別人を装ったりする場合

 子のスマホに、本人に知らせないまま監視アプリや位置情報を共有するアプリを入れる方法も考えられます。しかし、本人の意図に反する動作をさせるプログラムを他人の端末で動かす行為は、刑法の不正指令電磁的記録に関する罪(刑法168条の2)が問題になる余地があります。どのアプリがこれにあたるかは、アプリの機能や設定の経緯によって判断が分かれるため一概には言えませんが、少なくとも安全な方法とはいえません。

 また、別人を装ったアカウントを作り、子の非公開アカウントにフォローを申請して投稿を見る方法は、直ちに犯罪とされるものではないと考えられます。とはいえ、多くのSNSは偽りの身元でのアカウント作成を利用規約で制限しており、何より、親が別人のふりをしていたと子が知ったときの影響は小さくありません。

ひきこもりの子にとって、SNSが持つ意味

 法律上の問題とは別に、親御さんに考えていただきたいのが、子にとってのSNSの位置づけです。家族ともほとんど話さない子でも、SNS上では趣味の仲間とやり取りをしていたり、自分の気持ちを言葉にしていたりすることがあります。そこが子にとって、安心して外とつながれる数少ない場所になっている場合もあります。

 その場所を親がひそかに見ていたと知れば、子は家の中だけでなく、SNS上でも居場所を失ったと感じるかもしれません。アカウントを消したり、親との会話をさらに避けたりするようになれば、子の状態を知る手がかりがかえって少なくなります。SNSを見ることで得られる安心と、見ていることが知られたときの影響とを、あわせて考えておくことが大切です。

心配な書き込みを見つけたときは

 公開されている投稿を見て、子の状態について心配な内容を見つけることもあると思います。その場合は、内容に応じて相談先を選び、親だけで抱え込まないことが大切です。

書き込みの内容考えられる相談先・参考記事
命に関わることをほのめかしている緊急性が高ければ110番・119番。保健所や精神保健福祉センターへの相談。【親子問題】子が自室から出てこない|安否確認はどこまで許されるか
高額報酬の仕事への応募や、違法な勧誘とのやり取りがうかがえる警察相談専用電話(#9110)。【親子問題】子が闇バイトに関わっていると分かった|親の立場でできること・してはいけないこと
SNSで知り合った相手にお金を送っているようだ消費生活センターや警察。【親子問題】SNSで知り合った相手に子が金を送り続けている|ロマンス詐欺・投資勧誘の構造と、止められない理由
家族の悪口や自宅の住所などを書いている弁護士への相談。【親子問題】子がSNSに家族の悪口や個人情報を書いている|削除の求め方と家族の守り方


 記録を残す場合は、公開されている投稿について、画面の保存に加えて投稿の日時やURLが分かる形で控えておくと、後で相談するときに状況を伝えやすくなります。一方で、ログインして得た非公開のやり取りを記録として残そうとすると、その取得の方法自体が問題になるおそれがあります。

見つけたことを、子にどう伝えるか

 心配な書き込みを見つけると、すぐに子に問いただしたくなるかもしれません。しかし、いきなり投稿の内容を突きつけると、子は「監視されていた」と受け止め、話し合いの入口そのものが閉じてしまうことがあります。公開されている投稿であれば、見えたこと自体を隠す必要はありませんが、責めるためではなく心配していることを伝えるために触れる、という順序を意識することが大切です。命に関わる内容など緊急性が高い場合は、子との話し合いよりも安全の確保を優先してください。

よくあるご質問


子のSNSの投稿を見ていたことを、子に謝るべきでしょうか

 公開されている投稿を読んでいただけであれば、法的に謝罪が必要になるものではありません。ただ、子が強く反発している場合には、どのような気持ちで見ていたのかを率直に伝えることが、関係の立て直しにつながることもあります。ログインして非公開のやり取りを見ていた場合は、それ以上の対応をやめ、今後の関わり方について専門家に相談されることをおすすめします。

子のアカウントにログインしてしまった場合、どうすればよいですか

 まずはそれ以上のログインや操作をやめてください。そのうえで、見た内容を第三者に伝えたり、記録を広めたりすることは控えましょう。今後どのような問題が生じうるか、子との関係をどう立て直すかは事情によって異なりますので、弁護士に個別にご相談ください。

親だけで抱え込まずに相談するという選択

 子のSNSを見たいと感じる背景には、子と直接話ができない、子の状態がつかめないという、より大きな悩みがあることが多いと思います。SNSを見ることは、その悩みに対する一つの手がかりにはなっても、問題そのものを解決するものではありません。

 当事務所では、弁護士が親の代理人となり、自立支援カウンセラーと役割を分けながら、子との対話や自立に向けた支援を進める取り組みを行っています。詳しくは【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応をご覧ください。子が相談に応じない段階での動き方については、【親子問題】本人が相談を拒む場合|家族だけで動ける範囲でも解説しています。

 子のSNSを見るかどうか、見た内容をどう受け止めるかは、ご家庭の状況によって適切な判断が変わります。見ることが目的になってしまう前に、子とどう関わっていくかという全体の中で位置づけを考えることが、結果として子の状態を知る近道になることもあります。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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