【親子問題】金銭要求に応じ続けた記録は、後で意味を持つか
中学生や高校生の子が、親に手を上げる、物を壊す、暴言を繰り返す。そうした状況で「学校に話してよいのか」「児童相談所は虐待の窓口ではないのか」と迷い、どこにも相談できないまま時間が過ぎてしまうご家庭は少なくありません。結論からいえば、子が18歳未満であれば、学校にも児童相談所にも相談することができます。この記事では、それぞれの窓口が担える役割と限界、子の年齢による違い、相談の前に整理しておきたいことを解説します。
本記事は2026年10月時点の法令・制度に基づいて記載しています。各窓口の受付時間や対応の詳細は変更されることがありますので、利用の際は各機関の案内をご確認ください。
学校にも児童相談所にも相談できる
児童相談所は、児童虐待だけを扱う機関ではありません。児童福祉法上の「児童」は18歳未満の者をいい、児童相談所はその子に関するさまざまな相談を受け付けています。国が定める児童相談所の運営指針では、反抗や家庭内暴力などの行動上の問題を抱える子についての相談が、「性格行動相談」という区分で受け付ける相談の一つとして挙げられています。東京都の児童相談所の案内でも、暴力や金銭の持ち出しといった問題行動を含む相談が「ぐ犯等相談」として示されています。
つまり、親が子の暴力に悩んでいるという相談は、児童相談所にとって想定された相談の一つです。「家の恥を持ち込むようで気が引ける」と感じる必要はありません。
一方、学校は家庭の中に直接入っていく権限を持っていませんが、子の日常を知る立場にあります。窓口ごとに得意な領域が異なるため、一つに絞るより、役割を分けて使う考え方が現実的です。
| 窓口 | 主に担えること | 限界 |
|---|---|---|
| 学校(担任・スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカー) | 学校での様子の共有、本人へのカウンセリング、関係機関へのつなぎ | 家庭内の出来事に直接介入する権限はない |
| 児童相談所 | 面接・心理検査などによる見立て、継続的な指導、一時保護、施設入所の検討 | 対象は18歳未満、一時保護や施設入所は児童相談所の判断による |
| 区市町村の子供家庭支援センター | 子育てや家庭のあらゆる相談、児童相談所との連携 | 強制的な措置はとれない |
| 警察 | 危険が差し迫った場面での対応、少年相談 | 家庭内の継続的な調整は役割の外 |
子の年齢で使える手続が変わる
同じ「中高生」でも、14歳になっているかどうか、18歳に達しているかどうかで、手続の枠組みが変わります。刑法は14歳に満たない者の行為を罰しないと定めているため、中学1〜2年生で14歳未満の子が親にけがをさせた場合でも、刑事事件として処罰の対象にはなりません。この場合、警察が関わったとしても、主な受け皿は児童相談所になります。
| 子の年齢 | 主な手続の枠組み | 児童相談所の関わり |
|---|---|---|
| 14歳未満 | 刑事責任は問われない。家庭裁判所の審判に付されるのは、児童相談所などから送致を受けた場合に限られる | 中心的な窓口となる |
| 14歳以上18歳未満 | 暴行・傷害などにあたれば、逮捕や家庭裁判所での少年審判の対象になり得る | 相談・指導・一時保護の対象になる |
| 18歳以上(高校3年生など) | 少年法上の「特定少年」として扱われる | 原則として対象外となる |
高校3年生で18歳の誕生日を迎えた子については、児童相談所の対象から外れるのが原則です。この場合は、警察、精神保健福祉センター、弁護士など、成人した子の問題を扱う窓口が中心になります。
児童相談所に相談すると何が起きるのか
相談から援助方針が決まるまで
児童相談所では、親からの聞き取りに加え、必要に応じて子本人との面接や心理検査を行い、家庭の状況を踏まえた見立てをします。そのうえで、所内の会議で援助の方針を決めます。児童福祉法には、児童相談所が検討する主な対応として、次のようなものが定められています。
- 親や子への助言、継続的な面接による指導。
- 児童福祉司などによる指導。
- 児童自立支援施設や児童心理治療施設などへの入所。
- 一時保護。
- 家庭裁判所への送致。
どの対応になるかは、暴力の程度、子の状態、家庭の状況によって異なります。相談すれば直ちに子が家から離れるというものではなく、まずは面接や指導から始まることが多いと考えておくとよいでしょう。
一時保護は児童相談所が判断する
一時保護は、子の安全を確保したり、子の状況を把握したりする必要があるときに、児童相談所長の判断で行われます。国のガイドラインでは、虐待の場合に限らず、子の行動が本人や他人の生命・身体・財産に危害を及ぼすおそれがある場合も、一時保護を検討する場面として挙げられています。
ただし、親が希望すれば必ず保護されるわけではありません。期間は原則として2か月以内とされ、一時保護所では通学が制限されることもあります。2025年6月からは、親権者の同意がない一時保護について裁判官の審査を経る仕組みが始まりましたが、親が自ら相談して保護に同意している場合は、この手続は必要ありません。
また、中高生の年齢であれば、本人が保護や施設入所を強く拒むこともあります。2024年4月からは、一時保護や施設入所などの際に、子本人の意見を聴く手続が整えられています。親の希望と子の意向の両方を踏まえて判断される、という前提で相談に臨むことが大切です。
「親が虐待を疑われるのでは」という不安について
児童相談所に相談すると、親の関わり方についても聞かれることがあります。子が「親に叩かれた」と話す場合もあり、それをおそれて相談をためらう親御さんもいます。
児童相談所は、子の暴力の背景を含めて家庭全体の状況を見立てる機関ですので、親子双方の言い分を聴くのは自然なことです。暴力を止めようとしてもみ合いになった、思わず手が出てしまった、といった経緯があれば、隠さずに伝えておく方が、後から食い違いが生じにくくなります。
学校に相談するときに知っておきたいこと
学校には、担任のほか、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーが配置されていることがあります。スクールカウンセラーは子本人や親の心理面の相談に、スクールソーシャルワーカーは家庭の状況を踏まえて福祉の窓口につなぐ役割に、それぞれ強みがあります。
学校に伝えておく利点は、家での様子と学校での様子を照らし合わせられることです。学校では落ち着いているのか、学校でも荒れているのか、不登校が続いているのかによって、見立ても次の窓口も変わってきます。
一方で、学校に話した内容が子に伝わることを心配される方もいます。相談の際には、「本人には伏せてほしい」「児童相談所と情報を共有してもらってかまわない」など、扱いの希望をはっきり伝えておくとよいでしょう。学校と児童相談所、区市町村などは、要保護児童対策地域協議会という枠組みで情報を共有することがあり、この協議会の構成員には守秘義務が課されています。
警察への相談・通報との関係
刃物を持ち出す、首を絞めるなど、命に関わる危険が差し迫っている場面では、学校や児童相談所への相談を待たず、110番通報を優先してください。
差し迫った危険がない段階でも、警察には少年相談の窓口があります。警視庁のヤング・テレホン・コーナー(03-3580-4970)は、20歳未満の子に関する相談を家族からも24時間受け付けています。また、東京都教育相談センターの教育相談一般・東京都いじめ相談ホットライン(0120-53-8288)でも、家庭内暴力を含む相談を受け付けています。
なお、少年法には、14歳以上18歳未満で問題行動が続いている子について、保護者が直接児童相談所に通告できるとの定めもあります。警察に被害届を出すかどうかと、児童相談所に相談するかどうかは、二者択一ではありません。どの順で動くかを、状況に応じて組み立てていくことになります。
相談の前に整理しておきたいこと
どの窓口に相談する場合でも、次の点を整理しておくと、話が具体的に進みやすくなります。
- 暴力や暴言が始まった時期と、頻度の変化。
- 直近の出来事の日時・内容・けがの有無。
- けがの写真、診断書、壊された物の写真などの記録。
- 学校での様子(登校状況、友人関係、学校からの連絡の有無)。
- これまでに相談した窓口と、そこで言われたこと。
- 親として最も避けたいことと、目指したい状態。
記録は、立派なものである必要はありません。スマートフォンのメモに日付と出来事を短く残しておくだけでも、後から状況を説明するときの支えになります。
弁護士に相談する意味
学校や児童相談所は、子の福祉を中心に考える機関です。そのため、親が受けている被害や、親自身の生活をどう守るかという点については、十分に手が回らないことがあります。
弁護士は、親の側に立って事情を整理し、学校・児童相談所・警察のどこに何を伝えるかを一緒に考えることができます。子が14歳以上で、警察が関わり少年事件になった場合には、手続の見通しや付添人としての関わりについても相談できます。また、18歳を目前にした子や、すでに18歳に達した子については、児童相談所の対象から外れることを見越して、次の支え方を早めに準備しておくことが大切です。
当事務所では、家庭内暴力やお金の無心に悩む親御さんの代理人として、自立支援カウンセラーとチームを組み、親の保護と子の生活の立て直しを並行して進める取り組みを行っています。
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中高生の子の家庭内暴力は、学校・児童相談所・警察のどこか一つに任せきりにするより、それぞれの役割を知ったうえで組み合わせることで、親子双方の安全を保ちやすくなります。子の年齢が18歳に近づくほど使える窓口が変わるため、迷っている段階で一度状況を整理しておくことをおすすめします。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


