【親子問題】本人の同意なく連れ出すことが違法とされる理由|親の依頼では代わりにならない
この記事は、成年年齢を18歳とする民法改正(2022年4月施行)と、親の懲戒権の規定を削除し体罰などを禁じた民法改正(2022年12月施行)を反映した内容です。相談窓口の対象年齢や支援の内容は自治体によって異なるため、お住まいの地域の窓口で確認してください。
中学校や高校に行けなくなり、そのまま家から出なくなった10代の子について、「今は見守るべきか、早めに動くべきか」と迷う親御さんは少なくありません。休む時間が必要な時期もあるため、どちらが正しいと一律にはいえませんが、10代という時期には、ほかの年代にはない事情がいくつか重なります。
この記事では、10代のひきこもりで「早めに」と言われる理由、18歳を境に親の立場がどう変わるか、家族だけで動ける範囲と相談先の限界を、順に整理します。
10代のひきこもりで「早めに」と言われる理由
自治体のひきこもり支援の現場でも、10代の相談が増えていることを受けて、初期の段階で家族を支える取組みを始めた例があります。早めの関わりが勧められる背景には、主に次の2つの事情があります。
学校という支援の窓口から離れやすい時期
在学中であれば、担任やスクールカウンセラー、教育委員会の教育支援センターなど、学校を通じた相談の経路があります。ところが、義務教育を終えて進路が決まらないまま過ごしたり、高校を中途退学したりすると、こうした経路から外れ、家族だけで抱え込む形になりやすくなります。
ひきこもりの状態が長く続くと、年齢相応の学習や社会での経験を積む機会が少なくなり、後から社会生活を再開するときの負担が大きくなることがあると指摘されています。学校とのつながりが残っているうちに、次の相談先へ橋渡しをしておくという意味で、早めに動く意味があります。
18歳で成年になるという区切り
もう一つは法律上の区切りです。2022年4月から成年年齢は18歳になりました。18歳になると、子は親権に服さなくなり、契約や住む場所、医療の受け方などを原則として自分で決める立場になります。10代のうちに動くかどうかで、親が使える手段の幅が変わる場面があるのは、このためです。
たとえば、18歳未満の子が通信契約や高額な買い物をする場面では原則として親権者の同意が必要になり、医療機関でも保護者の関与を前提に進むことが多くあります。18歳を過ぎると、こうした場面で親が関わるには本人の了解が必要になり、本人が拒めば親の側からできることは限られます。
「早めに動く」は「子を急いで動かす」ことではない
ここで注意したいのは、早めに動くことと、子に登校や就職を急がせることは別だという点です。本人の気持ちが追いつかないまま外に出そうとすると、親子の会話がさらに途切れたり、反発が強まったりするおそれがあります。
10代のひきこもりで最初に「早めに」したいのは、親が外の相談先につながることです。本人が相談を拒んでいても、家族だけで相談に行くことはできます。親が先に情報と見通しを持っておくと、本人が少し動けそうになったときに、慌てずに次の一歩を示しやすくなります。本人が相談を嫌がる場合の考え方は、【親子問題】本人が相談を拒む場合|家族だけで動ける範囲でも整理しています。
18歳未満と18歳以上で、親の立場はどう変わるか
10代の後半は、18歳の誕生日をまたぐ時期でもあります。主な違いを表にまとめます。
| 項目 | 18歳未満 | 18歳以上 |
|---|---|---|
| 親権 | 親が親権者として監護・教育にあたる | 親権は終わる |
| 住む場所 | 親権者が指定できる(民法822条) | 本人が決める |
| 本人がした契約 | 親の同意のない契約は、原則として取り消せる(民法5条) | 本人の契約として扱われ、原則として取り消せない |
| 主な相談先 | 児童相談所、学校・教育委員会なども使える | 児童相談所は原則として対象外になる |
| しつけの範囲 | 子の人格を尊重し、体罰など心身に有害な言動は禁じられる(民法821条) | 親が子の生活に介入できる法的な根拠は限られる |
18歳未満の間は、親権者として子の生活に関わる立場と責任があります。一方で、2022年12月の民法改正で懲戒権の規定は削除され、体罰や子の心身の発達に有害な言動は許されないことが明確になりました。親としての責任はあるが、力で動かしてよいわけではないというのが、今の法律の立て付けです。
18歳を過ぎると、親が法的に介入できる範囲はさらに狭くなります。成人した子との関係については、【親子問題】成人した子の問題に親が介入できる法的な範囲で詳しく扱っています。
10代のうちに家族が動ける範囲
本人が動かない段階でも、家族の側で始められることはあります。
- 学校に在籍している間に、担任やスクールカウンセラーと今後の相談先について話しておくこと。
- 家族だけで、ひきこもり地域支援センターや教育相談の窓口に相談に行くこと。
- いつから、どのような様子が続いているかを、日付とともに書き留めておくこと。
- 小遣いや通信費など、家庭内のお金のルールを親の側で一度見直しておくこと。
- 同居するきょうだいの生活や、親自身の健康にどのような影響が出ているかを把握しておくこと。
記録は、相談先に状況を伝えるときの土台になります。相談の前に整理しておくとよい事柄は、【親子問題】相談の前に整理しておきたい5つの情報にまとめています。
家族が相談に通い続けるうちに、子への声のかけ方や家の中の雰囲気が変わり、それをきっかけに本人が窓口に顔を出すようになることもあります。家族の相談は、本人が動くための準備であると同時に、親自身が孤立しないための手段でもあります。
10代の相談先と、それぞれの限界
10代のひきこもりで使える窓口は、成人後よりも選択肢が多い一方、それぞれに対象や役割の範囲があります。
| 窓口 | 主な対象 | できること | 限界 |
|---|---|---|---|
| 学校・教育委員会(教育支援センターなど) | 在籍中の児童・生徒 | 登校や学習の相談、居場所の提供 | 卒業や退学で関わりが薄れやすい |
| 児童相談所 | 18歳未満の子と家族 | 家庭内の問題や非行を含む子どもの相談 | 18歳以降は原則として対象外になる |
| ひきこもり地域支援センター | ひきこもりの本人と家族 | 家族相談、家族教室、訪問支援の調整 | 本人に何かを強制する権限はない |
| 地域若者サポートステーション | 15歳から49歳の就労に悩む人 | 働くことに向けた相談や講座 | 本人が通えることが前提になりやすい |
| 精神保健福祉センター・医療機関 | 心の不調が疑われる人と家族 | 専門的な見立てや治療の相談 | 本人の受診が難しい場合がある |
どの窓口も、本人の意思に反して生活を変えさせることはできません。窓口ごとの役割については、【親子問題】ひきこもり地域支援センターでできること・できないことと【親子問題】親子の問題はどこに相談すればよいのか|警察・行政・弁護士の役割分担もあわせてご覧ください。
心の不調が背景にあるかもしれないと感じる場合は、【親子問題】ひきこもりと精神疾患の切り分け|医療につなぐ判断も参考になります。
暴力や金銭の要求が加わっているとき
ひきこもりに、親やきょうだいへの暴力、物を壊す行為、お金の要求が加わっている場合は、見守るかどうかとは別に、家族の安全を先に考える必要があります。10代であっても、身の危険を感じる場面では110番通報をためらう必要はありません。
14歳以上の子が暴力をふるった場合、刑事責任を問われうる年齢にあたり、家庭内のことであっても少年事件として扱われる可能性があります。ただし、通報や相談をしたからといって、すぐに家庭裁判所の手続に進むとは限りません。まず確保したい安全と記録については、【親子問題】子から暴力を受けている|まず確保すべき安全と記録、手続の流れについては【親子問題】少年事件の流れ|家庭裁判所送致から審判までで解説しています。
急いで動くときに避けたいこと
早く何とかしたいという気持ちが強いときほど、次のような動き方には注意が必要です。
- 本人の同意のないまま、業者に依頼して施設へ連れ出すこと。
- 体罰や長時間の叱責で、登校や外出を迫ること。
- 内容や解約条件を確かめないまま、高額な支援契約を結ぶこと。
ひきこもりの「自立支援」をうたう業者が、本人を無理に連れ出して施設に閉じ込めたことについて、裁判所が不法行為にあたると判断した例があります。親が契約していても、本人の同意のない連れ出しは問題になりえます。詳しくは【親子問題】連れ出し型の支援をめぐる裁判例|「引き出し屋」訴訟で示された判断の枠組みと【親子問題】民間の自立支援施設を選ぶ前に確認すべきこと|契約・担い手・解約・本人の意思で取り上げています。
親子の距離を取る支援という選択肢
弁護士ドットコムにも、10代の子のひきこもりが続き、親が心身ともに限界を感じて「家から出す方法はあるか」と尋ねる相談が寄せられています。10代の場合、親権者としての監護の責任があるため、成人した子と同じように家を出て自活する形をとることは難しく、年齢や本人の状態に応じた慎重な判断が必要です。
それでも、親と子が近すぎる距離で向き合い続けることで、互いに身動きが取れなくなっている家庭は少なくありません。当事務所では、弁護士が親の代理人として子との窓口を担い、自立支援カウンセラーが子の生活や進路の相談に関わる形で、親子それぞれの自立を目指す支援を行っています。10代のうちは、進学や就学の相談につなぐことを中心に考えるなど、家庭ごとの事情に合わせて方針を決めます。サービスの内容は【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応でご紹介しています。
まとめ
- 10代のひきこもりでは、学校とのつながりが切れやすいことと、18歳で成年になることから、早めに動く意味があります。
- 早めに動くとは、子を急かすことではなく、親が先に相談先につながることを指します。
- 18歳未満の間は、児童相談所や学校など使える窓口が多い一方、体罰や力ずくの対応は許されません。
- 暴力や金銭の要求がある場合は、見守りよりも家族の安全を先に考えます。
- 本人の同意のない連れ出しや、条件の不明確な高額契約は避けることが大切です。
10代のひきこもりは、時間をかけて回復していくことも多く、焦りすぎる必要はありません。ただ、相談先を知っておくことや記録を残しておくことは、本人が動き出すかどうかにかかわらず、今から始められます。18歳を迎える前後で選べる手段が変わることもあるため、迷っている段階で一度、外の意見を聞いてみてください。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


