【ストーカートラブル】元恋人が私の子どもに接触しようとしてきたら?
元恋人と別れたあと、自宅の玄関先やドアノブ、郵便受けに手紙が置かれていることが続くと、内容が穏やかでも、相手が家まで来ていることに不安を覚える方は少なくありません。この記事では、元恋人による置き手紙が繰り返される場合に法律上どのように扱われる可能性があるのか、見つけたときに何を残し、どこに相談すればよいのかを順を追って整理します。
この記事は、2025年12月30日に施行された改正ストーカー規制法(警察の職権による警告の創設など)を踏まえた内容です。個別の事案が規制の対象になるかどうかは、行為の態様やそれまでの経緯によって判断が分かれます。
こんな状況でお困りではありませんか
- 別れたあとも、玄関の前に手紙が置かれていることが何度もある。
- 手紙には「会って話したい」「待っている」と書かれている。
- 差出人の名前はないが、筆跡や内容から元恋人だと思う。
- 家を知られているので、引っ越すべきか迷っている。
- 警察に相談するほどのことなのか、判断がつかない。
いずれも、ストーカー被害のご相談でよく伺う状況です。
繰り返される置き手紙はストーカー規制法の対象になり得る
ストーカー規制法は、恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことへの怨恨の感情を充足する目的で、特定の相手やその家族などに対して行う一定の行為を「つきまとい等」として規制しています(同法2条1項)。元恋人による置き手紙は、次のような複数の角度から問題になり得ます。
拒まれた後も手紙を置き続ける行為
2021年の法改正で、拒まれたにもかかわらず、連続して文書を送付する行為が規制対象に加わりました(同法2条1項5号)。改正に先立って取りまとめられた有識者検討会の報告書では、郵便で送る場合だけでなく、相手の郵便受けに直接投函する場合も規制することが適当とされ、氏名だけが書かれた封筒や白紙の便箋なども文書に含まれ得るという考え方が示されています。玄関先に直接置いていく手紙も、この類型との関係で検討されることになります。
ここで大切なのは「拒まれたにもかかわらず」という部分です。別れ話の際やその後に「連絡しないでほしい」「手紙も置かないでほしい」と伝えた経緯があるかどうかが、評価に影響することがあります。
手紙を置くために家まで来ている点
置き手紙は、相手が自宅のすぐそばまで来ていることを意味します。住居の付近で見張りをすること、住居に押し掛けること、住居の付近をみだりにうろつくことも、つきまとい等の類型に挙げられています(同法2条1項1号)。来訪の繰り返しそのものが問題として扱われる可能性もあります。車で家の周りを回られている場合の考え方は、【ストーカートラブル】相手の車が家の周りを走っている|うろつきとして扱えるかで解説しています。
手紙の中身によって関わる類型
手紙に何が書かれているかによって、ほかの類型が関係することもあります。
| 手紙に書かれている内容の例 | 関係し得る類型 |
|---|---|
| 「昨日は遅くまで出かけていたね」など、行動を把握していると示す文面 | 監視していると思わせる事項を告げる行為(2号) |
| 「会って話したい」「よりを戻したい」など、面会や復縁を求める文面 | 面会・交際その他義務のないことの要求(3号) |
| 乱暴な言葉で相手を責め立てる文面 | 著しく粗野または乱暴な言動(4号) |
| 性的な内容の文面や画像を含むもの | 性的羞恥心を害する事項を告げる行為など(8号) |
「つきまとい等」と「ストーカー行為」の違い
つきまとい等を同じ相手に繰り返すと「ストーカー行為」にあたり、刑事罰の対象になります。ストーカー行為をした者は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金、禁止命令に違反してストーカー行為をした者は2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金とされています。類型によっては、身体の安全や住居の平穏などが害される不安を覚えさせるような方法で行われたことも要件になります。回数と評価の関係は、連絡は1回だけだった|つきまとい等とストーカー行為の違いでも取り上げています。
ストーカー規制法以外で問題になり得る法律
置き手紙をめぐっては、次のような法律が関係する場面もあります。
- 住居侵入罪(刑法130条):門扉の内側やマンションの共用廊下など、住人が管理する場所に正当な理由なく立ち入って手紙を置いた場合に検討されることがあります。集合住宅の共用部分に立ち入ってビラを投函した行為について、住居侵入罪の成立を認めた最高裁の判断もあります。
- 脅迫罪(刑法222条):生命や身体などに害を加えることを告げる文面であれば、それ自体が脅迫にあたる可能性があります。
- 名誉毀損罪(刑法230条):ドアに貼り付けるなど近隣の人が読める状態で、社会的な評価を下げる事実が書かれている場合に問題となり得ます。
- 迷惑防止条例:恋愛感情や怨恨とは別の動機によるつきまといについては、都道府県の条例で規制されていることがあり、東京都の条例にもつきまとい行為などを禁じる規定があります。
置き手紙を見つけたときの順序
見つけた直後は、次の順序を目安に動いておくと、その後の相談がスムーズになります。
- 周囲に相手がいないかを確かめ、身の危険を感じるときは室内から110番通報します。
- 手紙に触れる前に、置かれていた場所と状態を写真に残します。
- 手紙と封筒をまとめて袋やクリアファイルに入れ、手を加えずに保管します。
- 見つけた日時と状況を書き留めます。
- 警察や弁護士に相談します。
その場の安全を優先する
手紙が置かれた直後であれば、相手がまだ近くにいる可能性もあるため、ドアを開ける前にインターホンのカメラなどで様子を確かめてください。相手が待っている様子があるなど差し迫った不安を感じるときは、ためらわずに110番通報してください。緊急でない相談は、警察相談専用電話(#9110)や最寄りの警察署でも受け付けています。
手紙を動かす前に写真を撮る
どこに、どのような形で置かれていたかは、相手が家まで来ていたことを示す手がかりになります。ドアノブに掛けられていた、郵便受けに差し込まれていたといった状態を、手紙を取る前に撮影しておきます。
手紙は捨てずにそのまま保管する
手紙は経緯を示す大切な資料です。封筒、便箋、同封物をひとまとめにし、書き込みや折り直しをせずに保管してください。何通も届いている場合は、届いた順に番号を振った袋に分けておくと、警察に経緯を説明するときに役立ちます。
記録は一覧にしておく
手紙が置かれるたびに、次のような項目を書き留めておくと、繰り返しの状況が伝わりやすくなります。
| 項目 | 書き留めておく内容の例 |
|---|---|
| 日時 | 見つけた日と時刻、その前に玄関を確認した時刻 |
| 場所 | 玄関ドア、郵便受け、門扉、車のワイパーなど |
| 内容 | 手紙の要旨(会いたい、見ている、責めるなど) |
| 周辺の状況 | 相手や相手の車を見かけたか、防犯カメラの映像があるか |
証拠の残し方と、相手を刺激せずに距離を置く方法については、ストーカーを刺激せず関係を断つ|安全な接触遮断と証拠の残し方もあわせてご覧ください。
してしまいがちだが避けたい対応
次のような対応は、状況をこじらせるおそれがあるため慎重に考えてください。
- 手紙に返事を書いたり、相手に連絡して内容を問いただしたりすること。
- 手紙を相手の自宅に返しに行くこと。
- 一人で相手に会って話をつけようとすること。
- 手紙の画像をSNSに投稿して相手を批判すること。
- 手紙を処分してしまうこと。
返事をすると、相手がやり取りが続いていると受け止め、置き手紙が続くきっかけになることがあります。相手の自宅に手紙を返しに行けば、こちらから接触する形になり、思わぬ衝突につながるおそれもあります。SNSへの投稿は、内容によっては相手のプライバシーや名誉との関係で別のトラブルを招くことがあります。
手紙が謝罪の形をとっている場合の受け止め方については、【ストーカートラブル】相手から謝罪の手紙が届いた|受け取るかどうかで解説しています。
「やめてほしい」という意思をどう伝えるか
先に触れたとおり、文書の連続送付が規制の対象となるには、拒まれたにもかかわらず続けていることが前提になります。ただ、ご自身で直接伝えると相手を刺激するおそれもあります。
すでにLINEやメールで「連絡しないでほしい」と伝えている場合は、そのやり取りを消さずに保存しておきます。まだ伝えていない場合は、次のような方法が考えられます。
- 警察に相談し、警告などを通じて行為をやめるよう相手に伝えてもらう方法。
- 弁護士が代理人となり、手紙の投函や来訪をやめるよう求める通知書を送る方法。
- ご自身で伝える場合に、短い文面で一度だけ、記録が残る手段を使う方法。
どの方法がよいかは、相手のこれまでの言動によって変わります。相談先の選び方は、【ストーカートラブル】警察と弁護士のどちらに先に相談するか|ストーカー被害での順序で整理しています。
警察に相談したときの主な手続
警察に相談すると、事案に応じて次のような対応がとられることがあります。
| 手続 | 内容 |
|---|---|
| 警告 | つきまとい等をやめるよう、警察が行為者に求める行政指導です。2025年12月30日施行の改正で、被害者の申出がなくても警察の職権で出せるようになりました。 |
| 禁止命令 | 都道府県公安委員会が、つきまとい等を繰り返さないよう命じる行政処分です。違反した場合は刑事罰の対象になります。緊急の場合は、事前の聴聞を経ずに出されることもあります。 |
| 検挙 | ストーカー行為罪や住居侵入罪などにあたる場合に、刑事事件として捜査されます。 |
相談したのに警告が出ない場合は【ストーカートラブル】警察に相談したのに警告が出ない|次に取れる手段、警告の後も置き手紙が続く場合は【ストーカートラブル】警告が出たのに接触が続いている|禁止命令への切り替えをご覧ください。禁止命令の申出の流れは、【ストーカートラブル】禁止命令を出してもらうには|申出の方法と出るまでの期間で解説しています。
住まいの守りを固める
置き手紙が続く場合は、法的な手続と並行して、住まいの側でもできることがあります。
- 管理会社や大家さんに事情を伝え、共用部分の防犯カメラ映像の保存や、オートロックの運用の確認を依頼します。
- 玄関先を撮影できる位置に防犯カメラを設置し、映像を一定期間保存できるようにしておきます。
- 同居の家族にも状況を共有し、手紙を見つけたら処分せず保管するよう伝えておきます。
防犯カメラを設置する際は、隣家や公道を必要以上に映さないなど、周囲への配慮も求められます。詳しくは、【ストーカートラブル】自宅マンションに来られている|管理会社・オートロック・防犯カメラでできることと【ストーカートラブル】防犯カメラの映像を証拠にする|設置と保存の注意点をご覧ください。
弁護士に相談・依頼してできること
弁護士は、警察とは異なる立場から、置き手紙をやめてもらうための手立てを講じることができます。
- 代理人として相手に通知書を送り、手紙の投函や自宅周辺への来訪をやめるよう求めます。
- 今後接触しないことを約束する誓約書や合意書を、相手との間で取り交わせるよう交渉します。
- 裁判所に対し、自宅への接近などを禁じる仮処分を申し立てます。
- 精神的な苦痛などについて、損害賠償を請求します。
相手との連絡の窓口を弁護士に一本化すれば、ご自身が相手と直接やり取りする必要はなくなります。依頼によって変わる点は【ストーカートラブル】弁護士に依頼すると何が変わるのか|ストーカー被害で代理人を立てる意味、警察の手続と裁判所の手続の使い分けは接近禁止を実現する2つの道|ストーカー規制法(警察)と民事保全(裁判所)の使い分けで解説しています。
よくあるご質問
手紙の内容が穏やかなものでも、相談してよいですか
相談して差し支えありません。「元気でね」といった穏やかな文面でも、別れた後に繰り返し家まで来て手紙を置いていく状況に不安を覚えるのは自然なことです。規制の対象になるかどうかは、文面だけでなく、回数や期間、これまでの経緯などを踏まえて判断されます。
差出人の名前が書かれていない場合はどうすればよいですか
筆跡や文面、置かれた時間帯などから元恋人だと考える理由があれば、その根拠もあわせて記録しておきます。防犯カメラの映像が手がかりになることもあります。相手を特定しきれない場合の考え方は、【ストーカートラブル】相手が誰か分からない|匿名のつきまといで相手をたどる方法と、たどれないときの守り方で取り上げています。
家を知られている以上、引っ越すべきでしょうか
引っ越しは選択肢の一つですが、負担も大きいため急いで決める必要はありません。警察の警告や弁護士からの通知をきっかけに行為が止まることもあります。転居を考える場合は、新しい住所を知られないための手続もあわせて検討してください。具体的な順序は【ストーカートラブル】引っ越した先を知られないための手続の順序で解説しています。
置き手紙が続いて不安なときは
元恋人による置き手紙は、一通ずつ見れば小さな出来事に思えても、繰り返されることで暮らしの安心を少しずつ損なっていきます。見つけた手紙と記録を手元に残し、一人で相手と向き合う前に、警察や弁護士に状況を伝えてください。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


