【ストーカートラブル】防犯カメラの映像を証拠にする|設置と保存の注意点

若井亮

若井亮

テーマ:ストーカートラブル

この記事は、2026年10月時点のストーカー行為等の規制等に関する法律(以下「ストーカー規制法」)、民事訴訟法、刑事訴訟法、弁護士法などの規定と、公開されている裁判例をもとに作成しています。個別の事案での扱いは、事情によって異なります。


「家の前に何度も来ている気がするが、警察に話せるだけの材料がない」「防犯カメラを付けたら証拠になると聞いたが、どこに向ければよいのか分からない」。ストーカー被害のご相談では、防犯カメラについてこうしたお話を伺うことがあります。また、「管理会社のカメラに映っていたはずなのに、問い合わせたときには消えていた」という声も少なくありません。

 防犯カメラの映像が、つきまといや待ち伏せを示す有力な材料になること自体は、よく知られています。ただ、カメラを付ければそれで足りるわけではありません。撮影の範囲を広げすぎると近隣とのトラブルの種になりますし、保存の仕方によっては、肝心の場面が上書きされたり、後から「本当にその日時の映像か」と問われたりすることもあります。

 この記事では、防犯カメラの映像を証拠として生かすために、設置の段階と保存の段階で気をつけたい点を整理します。マンションの管理会社やオートロックを含めた住まいの防犯対策全般は【ストーカートラブル】自宅マンションに来られている|管理会社・オートロック・防犯カメラでできることで、メッセージや通話を含めた証拠全般の残し方は証拠の残し方|あとで警察・弁護士に通用する記録とはで扱っていますので、あわせてご覧ください。

防犯カメラの映像で示せること・示せないこと

 カメラを設置する前に、映像で何を示したいのかを考えておくと、向きや保存の方法が決めやすくなります。

規制法の「住居等の付近」での行為と映像

 ストーカー規制法は、恋愛感情などを充足する目的で、住居や勤務先など通常いる場所(住居等)の付近で見張りをすること、住居等に押し掛けること、住居等の付近をみだりにうろつくことなどを「つきまとい等」として挙げています(ストーカー規制法2条1項1号)。自宅の玄関まわりや建物の出入口を映すカメラは、まさにこうした行為を記録するのに向いています。

 郵便受けへの投函や、玄関前に物を置いていく行為なども、その場面が映っていれば、誰がいつ何をしたかを示す材料になります。

一場面より「繰り返し」を示す

 規制法上の「ストーカー行為」は、同一の者に対してつきまとい等を反復して行うことです(同法2条3項)。そのため、1回の映像が鮮明であることよりも、同じ人物が日を変えて何度も来ていることを、日時とともに示せるかどうかが重要になる場面が多くあります。

 顔がはっきり映っていない映像でも、服装、体格、乗ってきた自転車や車、来る時間帯といった共通点が積み重なれば、同一人物であることを示す材料になり得ます。

映像だけでは足りない部分

 一方で、映像からは、相手がなぜそこにいたのかという目的までは分かりません。規制法の適用には恋愛感情などの目的が必要とされるため、交際していた時期のやり取りや、復縁を求めるメッセージなど、相手との関係を示す資料とあわせて示すことになります。

 また、相手が誰か分からない段階では、映像だけで身元を特定できるとは限りません。相手をたどる方法については【ストーカートラブル】相手が誰か分からない|匿名のつきまといで相手をたどる方法と、たどれないときの守り方で詳しく説明しています。

設置の前に考えておきたいこと

 自分の住まいを守るためのカメラであっても、設置の仕方によっては、近隣の方のプライバシーとの関係が問題になります。

撮影範囲は自分の玄関まわりに絞る

 裁判例では、防犯カメラによる撮影が違法になるかどうかについて、撮影の場所、範囲、態様、目的、必要性、画像の管理方法、制約される程度などを総合的に考慮し、社会生活上受忍すべき限度を超えるかで判断する枠組みが示されています(名古屋地判令和元年9月5日)。

 この事案では、建設現場の防犯と証拠保全のために設置されたカメラについては違法とされませんでしたが、撮影機能のないダミーカメラを、合理的な理由なく特定の住民の自宅に向けて設置したことについて、平穏な生活を害したとして慰謝料の支払いが命じられました。映像を残す目的に必要な範囲に絞り、隣家の玄関や窓、ベランダが大きく映り込む向きは避けることが、後のトラブルを防ぐうえで大切です。

マンションでは共用部分のルールを確認する

 マンションでは、廊下や玄関扉の外側は共用部分として扱われることが多く、国土交通省のマンション標準管理規約でも、玄関扉は錠と内部塗装部分のみを専有部分としています(同規約7条2項)。玄関扉の外側や廊下に個人でカメラを取り付ける場合は、管理規約を確認し、管理組合や管理会社に相談しておくと安心です。

 共用部分にはマンション側のカメラがすでに設置されていることもあります。自分で取り付けるより先に、既存のカメラの撮影範囲と保存期間を確認しておくと、二重の手間を避けられます。

音声の録音と、映り込む第三者

 家庭用のカメラには、音声を録音する機能が付いているものがあります。相手が玄関先で発した言葉が記録されれば有用な場合もありますが、通行人や近隣の方の会話まで常時記録することには慎重であるべきです。必要がなければ音声機能は切っておく、録音する場合も範囲を限るといった配慮が考えられます。

 また、録画した映像に映った第三者の姿は、警察や弁護士に示す以外の目的では使わないようにしてください。

映像を証拠として残す保存の手順

 防犯カメラの映像は、保存の段階で失われたり、信用性を疑われたりすることがあります。設置した後の扱いこそ大切です。

上書きされる前に書き出す

 多くの防犯カメラは、記録媒体の容量がいっぱいになると古い映像から順に上書きされます。家庭用の機器では、数日から数週間程度で消えていく設定になっていることも珍しくありません。

 相手が映っていると気づいたら、その日のうちに該当部分を書き出し、カメラ本体とは別の場所にも保存してください。保存先は、パソコン、外部記憶装置、クラウドなど複数に分けておくと、機器の故障や紛失にも備えられます。

元のデータに手を加えない

 見やすくするために切り取ったり、明るさを調整したり、字幕を入れたりした映像は、説明用としては便利です。しかし、加工した映像だけを残すと、元の映像との同一性を問われたときに説明が難しくなります。

 加工したものを作る場合でも、カメラから書き出したままの元データは必ず別に残してください。録画機器やアプリそのものも、データを書き出し終えるまでは初期化や買い替えを控えるのが無難です。

時刻のずれと、記録メモの併用

 カメラの内部時計がずれていると、映像に表示される日時と実際の日時が合わず、他の資料との突き合わせで疑問が生じることがあります。設置時に時刻を合わせ、定期的に確認しておいてください。

 映像を書き出した際には、次のような内容を一覧にしておくと、後で警察や弁護士に説明するときに役立ちます。

記録する項目内容の例
映像の日時カメラ表示の日時と、時計のずれの有無
映っている内容玄関前に立っていた時間、郵便受けに何かを入れた様子など
カメラの位置どのカメラの、どの向きの映像か
保存先ファイル名、保存した場所、書き出した日
そのときの状況在宅していたか、インターホンが鳴ったかなど


 映像に残らなかった場面も、日時や様子をメモしておくと、繰り返しの経過を示すうえで映像と補い合う資料になります。

自分のカメラ以外の映像を確保する

 つきまといの場面は、自宅のカメラではなく、マンションの共用部分、最寄りの店舗、駐車場などのカメラに映っていることもあります。

管理会社・店舗に保存を頼む

 第三者が設置したカメラの映像は、個人が頼んでもその場で見せてもらえないことが多いのが実情です。それでも、見せてもらえなくても、該当する日時の映像を消さずに残しておいてほしいとお願いしておくことには意味があります。保存期間が過ぎると上書きされるため、気づいた時点で早めに連絡してください。

 依頼する際は、日時と場所をできるだけ特定して伝えると、管理者も対応しやすくなります。

警察を通じた確保

 警察に相談している場合、捜査として、事業者などに映像の提出や照会を求める方法があります(刑事訴訟法197条2項、221条)。管理会社や店舗が個人からの依頼には応じにくい場合でも、警察からの求めであれば対応されることがあります。相談の際に、映像が残っていそうな場所を伝えておいてください。

弁護士を通じた取り寄せ

 弁護士に依頼している場合、弁護士会を通じて事業者などに照会する制度があります(弁護士法23条の2)。また、映像が失われるおそれがあり、裁判所が必要と認めるときは、訴訟を起こす前に証拠保全の手続を申し立てる方法もあります(民事訴訟法234条)。どの方法が使えるかは、映像の管理者や事案の内容によって異なります。

映像の使い道と、やってはいけない使い方

 残した映像は、どの手続で使うかによって求められる水準が変わります。

警察への相談・被害届

 警察に相談する段階では、すべての行為が映像で揃っている必要はありません。映像と、日時を整理したメモを持参して経過を説明することで、警告や禁止命令の検討につながることがあります。被害届と告訴のどちらを選ぶかについては被害届と告訴の違い|ストーカー・脅迫でどちらを選ぶで解説しています。

禁止命令・仮処分・慰謝料

 公安委員会による禁止命令や、裁判所への接近禁止の仮処分、慰謝料の請求では、行為が繰り返されていることや、生活への影響を具体的に示すことが求められます。民事の裁判では、映像の証拠としての価値は裁判所が他の証拠とあわせて判断します(民事訴訟法247条)。手続の使い分けは接近禁止を実現する2つの道|ストーカー規制法(警察)と民事保全(裁判所)の使い分けをご参照ください。

SNSに投稿しない

 相手の姿が映った映像を、注意喚起のつもりでSNSなどに投稿することは避けてください。記録として残すことと、広く公開することは別の問題であり、内容によっては相手から名誉毀損や肖像権の侵害を主張されるおそれがあります。相手を刺激して行為がかえって激しくなることもあります。

 映像は、警察や弁護士に示すために使うものと考えてください。相手を刺激せずに関係を断つための考え方はストーカーを刺激せず関係を断つ|安全な接触遮断と証拠の残し方で紹介しています。

よくあるご質問

ダミーカメラでも効果はありますか。

 設置されていること自体で、行為を思いとどまらせる効果が期待できる場合はあります。ただし、映像が記録されないため、証拠としては役に立ちません。また、前述の裁判例のように、ダミーであっても特定の住宅に向けて設置すると、近隣とのトラブルの原因になり得ます。証拠を残すことが目的であれば、録画できるカメラを選んでください。

相手の顔がはっきり映っていないと意味がありませんか。

 顔が鮮明でなくても、服装、体格、持ち物、来る時間帯などの共通点が複数の映像で重なれば、同一人物であることを示す材料になり得ます。メッセージの内容や目撃した方の話など、他の資料と組み合わせることで意味を持つ場合も多いため、映像が不鮮明でも消さずに残しておいてください。

カメラを付けたことを相手に知られても大丈夫ですか。

 カメラが目に見える位置にあることで、抑止の効果が期待できる一方、相手が撮影範囲を避けて行動するようになることもあります。どちらを優先するかは状況によりますので、身の安全を第一に考え、警察や弁護士と相談しながら決めることをお勧めします。撮影のためにご自身が相手に近づくことは避けてください。

まとめ


  1. 防犯カメラは、住居等の付近での見張りや押し掛け、うろつき(ストーカー規制法2条1項1号)を記録するのに向いている。
  2. 1回の鮮明な映像より、同じ人物が繰り返し来ていること(同法2条3項)を日時とともに示せるかが重要になる。
  3. 撮影範囲は目的に必要な範囲に絞り、隣家の玄関や窓を大きく映さない。受忍限度を超える撮影は違法とされ得る(名古屋地判令和元年9月5日)。
  4. マンションでは玄関扉の外側や廊下が共用部分とされることが多く、管理規約を確認する(マンション標準管理規約7条2項)。
  5. 上書きされる前に書き出し、元データは加工せずに複数の場所へ保存する。時刻のずれも確認しておく。
  6. 第三者のカメラの映像は、管理者への保存依頼、警察からの照会(刑事訴訟法197条2項)、弁護士会照会(弁護士法23条の2)、証拠保全(民事訴訟法234条)などで確保を図る。
  7. 映像はSNSに投稿せず、警察や弁護士に示すために使う。


弁護士法人若井綜合法律事務所では、ストーカー被害に関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。防犯カメラの映像をどう残せばよいか、手元の映像で何が示せるかといった段階からのご相談にも対応しています。
すでに映像や記録が手元にある方も、まだ十分な材料がないと感じている方も、一人で抱え込まずにご相談ください。弁護士が窓口となることで変わる点については【ストーカートラブル】弁護士に依頼すると何が変わるのか|ストーカー被害で代理人を立てる意味でもご紹介しています。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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