【ストーカートラブル】警察に相談したのに警告が出ない|次に取れる手段
この記事は、2026年10月時点の法令(2025年に改正されたストーカー規制法を含みます)をもとに作成しています。個別の事案でどの法律が適用されるかは、具体的な事情によって異なります。
別れた元恋人との連絡を断った後、注文した覚えのない商品が自宅に届くようになった。伝票の注文者欄には自分の名前が書かれていて、代金引換や着払いになっている。ストーカー被害のご相談の中には、こうした形の嫌がらせも含まれています。
直接会いに来るわけでも、メッセージを送ってくるわけでもないため、「これはストーカーにあたるのか」「どこに相談すればよいのか」と迷う方が多いのも、このタイプの嫌がらせの特徴です。この記事では、身に覚えのない荷物が届いたときの対応、記録の残し方、関係する法律、警察や弁護士への相談の進め方を順に整理します。
身に覚えのない荷物が届いたら、まず確かめること
荷物が届いたときは、受け取る前に伝票を確認するのが基本です。送り主(販売店)の名前、品名、支払方法(代金引換・着払い・後払いなど)を見て、自分が注文したものかどうかを確かめます。
代金を支払う義務は原則としてありません
売買の契約は、注文した人と販売店との間で成立するものです。名前を勝手に使われた方は注文をしていないため、通常は代金を支払う義務を負いません。代金引換や着払いの荷物は、配達員にその場で受取りを断ることができます。日本郵便も、心当たりのない代金引換の郵便物が届いた場合の扱いを案内しています。
すでに受け取ってしまった場合や、後払いの請求書が同封されていた場合も、慌てて支払う必要はありません。販売店に「注文していない」と伝え、扱いを相談します。
販売店に連絡して伝えること
販売店への連絡では、次の点を伝えたり確認したりしておくと、その後の対応に役立ちます。
- 自分は注文しておらず、名前を無断で使われた可能性があること。
- 注文の日時と方法(電話・ウェブサイト・アプリなど)。
- 連絡先として登録された電話番号やメールアドレスが自分のものかどうか。
- 同じ名義・同じ住所での今後の注文を止めてもらえるかどうか。
- 商品の返送方法や引取りの方法。
販売店によっては、個人情報の扱いを理由に注文者の情報を教えてくれないことがあります。その場合も、問い合わせた日時、担当者の名前、回答の内容を記録に残しておけば、後で警察や弁護士に相談するときの材料になります。
届いた商品は自己判断で処分しない
注文していない商品であっても、すぐに捨ててしまうのは避けた方が無難です。特定商取引法には、販売業者が一方的に送りつけた商品を受け取った人が処分できるという規定がありますが、第三者が他人になりすまして注文した場合にそのまま当てはまるかは、状況によって判断が分かれます。販売店と相談して返送するか、引取りを待つ方が、後のトラブルを避けやすくなります。開封した場合も、中身と梱包の写真を撮ってから保管しておくとよいでしょう。
被害の記録はどう残すか
このタイプの嫌がらせは、一つひとつの荷物だけを見ると小さな出来事に見えやすく、全体の状況が伝わりにくいという難しさがあります。届くたびに同じ形式で記録を残しておくと、回数や期間、内容の傾向が見えるようになります。
| 記録する項目 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 届いた日時 | 配達された日と時間帯、受取拒否をしたかどうか |
| 送り主 | 販売店の名前、所在地、連絡先 |
| 品名と支払方法 | 伝票の品名、金額、代金引換・着払いなどの別 |
| 伝票と商品の写真 | 伝票の注文者欄・届け先欄、開封した場合は中身 |
| 販売店とのやり取り | 問い合わせた日時、担当者、回答の内容 |
| 元恋人を疑う事情 | 別れた時期との重なり、交際中の話題に関係する商品、同時期に届いたメッセージなど |
特に、届いた商品が交際中の出来事を連想させるものだったり、二人しか知らない話題に関係するものだったりする場合は、その事情も書き留めておきます。注文者が誰かを直接示す証拠がなくても、こうした事情の積み重ねが、相談先に状況を理解してもらう手がかりになります。
どのような法律の問題になるのか
名前を使った注文と送りつけは、一つの行為で複数の法律に関わることがあります。
販売店に対する偽計業務妨害罪
虚偽の注文によって販売店に商品を発送させる行為は、偽計業務妨害罪(刑法233条)にあたる可能性があります。法定刑は3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。知人の名前で商品を虚偽注文し、業者に配達させた人物がこの罪で逮捕された報道例もあります。
ただし、この罪で業務を妨害されたのは主に販売店です。そのため、名前を使われた方が警察に相談した際に「被害者は業者なので、あなたからの被害届は受けにくい」と説明されることがあります。このような場合は、販売店にも被害の申告を検討してもらうよう依頼する方法があります。
ストーカー規制法との関係
ストーカー規制法は、恋愛感情やそれが満たされなかったことへの恨みの感情から、特定の人に一定の行為を繰り返すことを規制しています。規制される行為は「つきまとい等」として類型が定められており、商品の注文と送付そのものが類型として明記されているわけではありません。
もっとも、送りつけの態様によっては、次のような類型にあたるかどうかが検討されることがあります。
- 荷物に手紙やメモが同封されていた場合の文書の送付。
- 汚物や動物の死体など、著しく不快な物が送られてきた場合。
- 名誉を害する物や、性的羞恥心を害する物が送られてきた場合。
- 転居先や勤務先に届いたことで、行動を見張っていると思わせるような事情がある場合。
どの類型にあたるか、繰り返しといえるかは、送られてきた物や回数、ほかの接触の有無などを総合して判断されます。荷物以外にも連絡や待ち伏せなどがある場合は、それらとあわせて相談することで、ストーカー規制法の手続につながりやすくなります。
名誉やプライバシーの問題
勤務先や実家に、本人が注文したと誤解されやすい商品や、人に知られたくない内容を連想させる商品が届いた場合は、名誉毀損やプライバシー侵害の問題になることもあります。周囲の受け止め方によって影響が大きくなるため、早めに勤務先や家族に事情を伝えておく方がよい場面もあります。
損害賠償の請求
注文者が元恋人だと特定できれば、民事上の損害賠償を求めることも考えられます。対象になり得るのは、対応に要した費用や、繰り返しの嫌がらせによる精神的な苦痛に対する慰謝料などです。認められる範囲や金額は、行為の回数、期間、内容などによって変わります。
警察に相談するときの進め方
警察への相談は、最寄りの警察署の生活安全課などが窓口になります。相談の際は、先ほどの記録、伝票や商品の写真、販売店とのやり取りのメモを持参し、元恋人との関係や別れた経緯、荷物以外の接触があればその内容もあわせて伝えます。
荷物の件だけでは対応が難しいと言われた場合でも、相談した記録は警察に残ります。その後に別の接触があったときに、これまでの経緯をふまえて対応してもらいやすくなるため、状況が変わったら改めて相談することが大切です。ストーカー規制法にあたる行為と判断されれば、警告や禁止命令といった手続に進むこともあります。
警察への相談後、思うように手続が進まない場合の考え方は、【ストーカートラブル】警察に相談したのに警告が出ない|次に取れる手段でも解説しています。
転居先や勤務先に届いたときに考えること
別れた後に引っ越したにもかかわらず新しい住所に荷物が届いた場合は、住所がどこから知られたのかを考える必要があります。共通の知人、SNSの投稿、郵便物の転送、住民票の写しの取得など、経路はさまざまです。
住民票や戸籍の附票については、ストーカー被害を理由として、市区町村に閲覧や写しの交付を制限する支援措置を申し出ることができます。申出には警察などへの相談が前提になることが多いため、荷物の件を相談する際に、あわせて確認しておくとよいでしょう。住所を知られないための対策は、引っ越したのに住所を突き止められた|居場所を知られない対策や【ストーカートラブル】引っ越した先を知られないための手続の順序で詳しく取り上げています。
勤務先に届いた場合は、受付や総務の担当者に事情を伝え、心当たりのない荷物は受け取らないよう依頼しておく方法があります。勤務先への連絡が続く場合の対応は、【ストーカートラブル】元恋人が私の勤務先の取引先に連絡してきたら?も参考にしてください。
弁護士に相談するとできること
弁護士に相談すると、状況に応じて次のような対応を検討できます。
- 記録を整理し、ストーカー規制法やほかの法律にあたる可能性を見立てること。
- 販売店への照会や、弁護士会を通じた照会によって注文者の手がかりを探すこと。
- 元恋人に対して、嫌がらせをやめるよう求める通知を送ること。
- 接触をしないことや違約金を定めた誓約書・合意書を取り交わすこと。
- 警察への相談への同行や、告訴の準備をすること。
- 損害賠償を請求すること。
弁護士会を通じた照会は、弁護士法に基づいて照会先に情報の報告を求める制度ですが、回答するかどうかは照会先の判断に委ねられるため、必ず注文者が分かるとは限りません。それでも、弁護士が窓口になることで、ご本人が元恋人と直接やり取りせずに済むという点は大きな意味を持ちます。
元交際相手からのなりすまし被害に弁護士が対応した例として、【解決事例】元交際相手からの恐喝・なりすまし被害|受任通知で嫌がらせを止めた解決事例もご覧ください。警察と弁護士のどちらに先に相談するかについては、【ストーカートラブル】警察と弁護士のどちらに先に相談するか|ストーカー被害での順序で整理しています。
よくあるご質問
代金引換の荷物の代金を払ってしまいました。取り戻せますか
注文していないことを販売店に伝えれば、商品の返送と引き換えに返金に応じてもらえることがあります。支払った日時や金額が分かる控えを保管したうえで、販売店に連絡してください。販売店が応じない場合は、注文者が特定できれば、その人に対して支払った金額の賠償を求めることも考えられます。
元恋人の仕業だという証拠がありません。相談してもよいのでしょうか
注文者を直接示す証拠がない段階でも、相談はできます。別れた時期と荷物が届き始めた時期の重なりや、商品の内容など、元恋人を疑う事情を整理しておくことが、次の手立てを考える出発点になります。証拠が十分でないまま元恋人を問い詰めると、かえって関係がこじれるおそれがあるため、直接の追及は控えた方がよいでしょう。
実家に荷物が届いて、家族が受け取ってしまいました
ご家族にも、注文していない荷物であることを伝え、今後は受取を断ってもらうよう依頼してください。受け取った荷物は、伝票と中身の写真を撮ったうえで保管しておくと、記録として役立ちます。ご家族が販売店とやり取りした内容も、あわせて書き留めておいてもらうとよいでしょう。
名前を使った注文と送りつけは、一つひとつの出来事が小さく見えやすい一方で、受け取る側には「どこまで自分のことを知られているのか」という不安が積み重なっていく嫌がらせです。荷物が届いた段階から記録を残し、販売店・警察・弁護士への相談を並行して進めることで、取れる手段が見えやすくなります。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


