【ストーカートラブル】元恋人が私の勤務先の取引先に連絡してきたら?
SNSでやり取りをしていただけの相手が、ある日突然、勤務先の受付や店舗に現れることがあります。交際をしていたわけでも、実際に会ったことがあるわけでもない相手に職場を知られていたと分かると、「この程度で相談してよいのか」「会社に迷惑をかけてしまうのではないか」と迷い、一人で抱え込んでしまう方も少なくありません。この記事では、SNSで知り合っただけの相手が職場まで来たときに、法律上どう扱われ得るのか、その日のうちにできること、勤務先・警察・弁護士への相談の進め方を整理します。
この記事は、2025年12月30日に施行された改正ストーカー規制法(職権による警告の創設、被害者の勤務先を援助の努力義務の主体に加える改正など)を踏まえて記載しています。個別の事案での扱いは、事情によって異なります。
交際していない相手でも、職場への来訪は相談の対象になります
ストーカー規制法は、交際していた相手だけを対象にした法律ではありません。特定の人への恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことへの恨みの感情を満たす目的で行われる「つきまとい等」を規制しています。SNS上で一方的に好意を寄せられ、返信をしなくなった後に職場まで来られたという場合も、この目的にあたるかどうかが検討されます。
また、同法の「住居等」には自宅だけでなく勤務先も含まれます。職場付近での見張り、職場への押し掛け、職場の近くをみだりにうろつくことは、規制対象の行為として挙げられています。同じ行為が繰り返されると「ストーカー行為」として刑事罰の対象となり、1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金が定められています。
一方で、好意ではなく、SNS上の口論をきっかけとした逆恨みなどが動機と見られる場合もあります。そのような場合でも、東京都の迷惑防止条例は、ねたみや恨みなどの悪意の感情によるつきまといを禁止しており、相談の入口がなくなるわけではありません。さらに、会社から退去を求められても居座る、業務を妨げるほど騒ぐといった行為があれば、規制法とは別に不退去罪や業務妨害罪が検討されることもあります。
| 相手の行動 | 検討される主な法律 |
|---|---|
| 職場の前で待つ、出入りを見ている | ストーカー規制法(見張り・待ち伏せ)、迷惑防止条例 |
| 受付や店舗に来て面会を求める | ストーカー規制法(押し掛け・面会の要求) |
| 退去を求められても帰らない | 不退去罪 |
| 大声を出す、繰り返し電話して業務を止める | 威力業務妨害罪・偽計業務妨害罪 |
| SNSで「職場を知っている」と伝えてくる | ストーカー規制法(監視していると告げる行為) |
どの法律にあたるかは、来訪の回数や様子、それまでのやり取りの内容によって変わります。「交際していないから対象外だろう」と自分で判断せず、起きたことを記録したうえで相談先に伝えることが大切です。
相手が職場に来たその日にできること
一人で応対せず、周囲に伝える
相手が来ていると分かった時点で、上司や受付、警備担当者など、近くにいる人に事情を伝えてください。「SNSで少しやり取りしただけの人」と説明しにくく感じるかもしれませんが、知らない人が来ているという事実を共有するだけでも、周囲は取り次がない、席を外してもらうといった対応を取りやすくなります。
話し合いで終わらせようとしない
「一度きちんと話せば分かってもらえるのでは」と考え、外で会って話をつけようとする方もいます。しかし、直接会うことで相手が関係が続いていると受け止め、来訪が繰り返されるきっかけになることがあります。応対が必要な場合も、会社の担当者から「本人は対応できない」「お引き取りください」と伝えてもらう形にとどめるのが無難です。
危険を感じたら110番をためらわない
退去を求めても帰らない、大声を出している、帰り道で待っている様子があるといった場合は、その場で110番通報することも検討してください。退勤時は同僚と一緒に出る、通用口を使うなど、帰宅経路の安全を確保することも優先度の高い対応です。
職場をどのように知られたのかを確かめる
SNSで知り合っただけの相手が職場にたどり着く経路は、いくつか考えられます。経路が分からないままだと、転居先や新しい勤務先も同じように知られるおそれがあるため、心当たりを確かめておくことが大切です。
- プロフィールや過去の投稿に、勤務先名や業種、最寄り駅が書かれていた。
- 制服や名札、職場周辺の景色が写った写真を投稿していた。
- 共通のフォロワーや知人を通じて、勤務先の情報が伝わった。
- やり取りの中で、職場の場所や勤務時間を話していた。
- 位置情報の付いた投稿やチェックイン機能を使っていた。
思い当たる経路があれば、投稿の公開範囲の変更や、写真・プロフィールの見直しを進めます。ただし、相手とのやり取りや、相手が職場を知っていることをほのめかした投稿などは証拠になり得るため、削除や非公開化の前に画面を保存しておいてください。
記録の残し方
警察や弁護士に相談する際、もっとも役に立つのは、いつ、どこで、何があったかの記録です。来訪が一度だけでも、その日のうちに次の事項を書き留めておくと、後の手続で使いやすくなります。
- 来訪した日時と、職場に滞在していた時間。
- 相手の服装や様子、話した内容。
- 応対した同僚や受付担当者の名前。
- 職場の防犯カメラに映っている可能性と、その保存期間。
- SNSのアカウント名・ID・プロフィール画面と、やり取りのスクリーンショット。
防犯カメラの映像は、一定期間で上書きされることが多いため、早めに会社へ保存を依頼しておくと安心です。SNSのアカウントは、相手が削除や名前の変更をすると追えなくなることがあるため、ブロックする前にIDやURLまで控えておくことをおすすめします。
勤務先にどこまで伝えるか
職場に知られたくないという気持ちから、会社への報告をためらう方もいます。ただ、相手が職場に来ている以上、受付や警備担当者が事情を知らないと、取り次いでしまったり、勤務時間を答えてしまったりするおそれがあります。
2025年12月の法改正では、ストーカー行為等の相手方を雇用する者が、被害者への援助に努める主体として位置づけられました。警察庁も、勤務先と警察との連携を進める方針を示しています。会社に伝える範囲は、相手の特徴、来訪の事実、取り次がないでほしいという要望といった、対応に必要な事項にとどめても差し支えありません。SNSでのやり取りの詳細まで説明する必要があるとは限らないため、伝える内容を事前に整理しておくと話しやすくなります。
来訪が続く場合には、勤務場所や勤務時間の変更を相談できることもあります。会社としてどのような配慮が可能かは、職場の規模や業務内容によって異なります。
警察と弁護士に相談したときの流れ
警察に相談すると、事情を聞いたうえで、相手への警告や、公安委員会による禁止命令が検討されます。法改正により、警告は被害者からの申出がなくても警察の判断で行えるようになりました。相手の本名や住所が分からない場合も、SNSのアカウントや防犯カメラの映像などから相手の特定が進められることがあります。
弁護士に依頼した場合は、相手が特定できていれば、代理人として接触をやめるよう求める書面を送ることができます。来訪がやまない場合には、裁判所に接近禁止の仮処分を申し立てる方法もあります。また、職場付近で長時間待つ、退去を求めても帰らないといった行為については、警察への被害申告や告訴を弁護士がサポートすることも可能です。
SNSの情報しか手がかりがない場合、相手の特定には時間がかかったり、使える手段が限られたりすることがあります。そのため、警察への相談と弁護士への相談を並行して進め、それぞれの手段を組み合わせて考えることが現実的です。
避けておきたい対応
相手の行動を止めたい一心で、かえって状況を難しくしてしまう対応もあります。次のような対応は、なるべく避けてください。
- 相手に一人で会い、直接やめるよう話をつけること。
- 相手のアカウントや来訪の様子をSNSで公開し、注意喚起すること。
- 証拠を残さないまま、やり取りやアカウントを削除すること。
- 相手の自宅や勤務先を自分で調べ、連絡すること。
特にSNSでの公開は、内容によっては名誉毀損などの問題を生じさせることがあり、相手を刺激するおそれもあります。止めるための働きかけは、警察や代理人を通じて行うほうが安全です。
よくあるご質問
一度来ただけでも相談してよいのでしょうか
相談して差し支えありません。ストーカー規制法の警告や禁止命令は、「つきまとい等」が繰り返されるおそれがあるかどうかも踏まえて判断されます。一度目の段階で記録を残し、相談しておくことで、二度目以降に動きやすくなります。
相手の本名や住所を知らなくても対応できますか
SNSのアカウント情報や防犯カメラの映像、来訪時の様子などから、警察が相手を特定できる場合があります。弁護士が対応する場合も、手元にある情報から取れる手段を検討します。分からないことが多い段階でも、まずは持っている情報を整理してご相談ください。
会社に迷惑をかけるのが心配です
来訪は相手の行為であり、相談者の方に責任があるわけではありません。むしろ、早めに会社と情報を共有しておくほうが、職場全体の安全確保にもつながります。会社への伝え方に迷う場合は、弁護士と伝える範囲を相談してから報告する方法もあります。
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SNSで知り合っただけの相手が職場に来たという出来事は、交際の有無にかかわらず、法律上の手段で対応できる可能性があります。記録を残し、職場と情報を共有したうえで、警察や弁護士に早めにご相談ください。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


