【ストーカートラブル】謝りたい|謝罪の連絡そのものが問題になる理由
ストーカー被害について警察に相談を重ね、「相手を処罰してほしい」と考えて告訴状を持って行ったものの、「預かります」「まずは様子を見ましょう」と言われて受理されたのかどうか分からないまま帰ってきた、というご相談は少なくありません。この記事では、ストーカー被害で告訴をするときに警察がどう扱うのか、受理されにくいのはどのような場面か、受理されなかったときに何ができるのかを、順を追って整理します。
この記事は、2025年12月30日に施行された改正ストーカー規制法(職権による警告の創設など)を反映した内容です。個別の事情によって取れる手段は変わるため、具体的な対応は専門家にご相談ください。
告訴とは何か|警察への相談・被害届との違い
告訴とは、犯罪の被害を受けた人などが、警察や検察に犯罪事実を申告し、相手の処罰を求める意思を示すことをいいます(刑事訴訟法230条)。被害届も犯罪の事実を申告する点では同じですが、処罰を求める意思表示までは含みません。また、警察への相談は、それ自体が犯罪の申告として扱われるとは限りません。
告訴には、法律上いくつかの効果が結びついています。告訴を受けた司法警察員は、事件に関する書類と証拠を速やかに検察官へ送付しなければならず(刑事訴訟法242条)、検察官は起訴・不起訴の処分をしたときに告訴人へ通知することになっています(同法260条)。不起訴の場合には、請求すれば理由の告知も受けられます(同法261条)。告訴は、手続を前に進めるための正式な申告といえます。
被害届と告訴のどちらを選ぶかについては被害届と告訴の違い|ストーカー・脅迫でどちらを選ぶで、相談から立件までの段階の違いについては事件は『いつ』始まるのか|相談・被害届・告訴・立件の違いで詳しく解説しています。
警察には告訴を受理する義務がある
警察官の捜査のルールを定めた犯罪捜査規範では、告訴をする人があったときは、管轄区域内の事件かどうかを問わず、これを受理しなければならないとされています(犯罪捜査規範63条1項)。告訴の受理は、警察が自由に断ってよいものとは位置づけられていません。
とはいえ実際には、告訴状を提出しても、その場で受理されず「預かり」や「検討」として扱われることがあります。弁護士ドットコムにも、「明確な証拠がなければ受けられないと言われた」「コピーを取って確認すると言われたまま連絡がない」といった相談が多く寄せられています。受理の義務があることと、実務で即日受理されるかどうかは、分けて考えておく必要があります。
ストーカー規制法違反は、告訴がなくても処罰できる
ストーカー規制法違反の罪は、以前は告訴がなければ起訴できない親告罪でしたが、2016年の改正(2017年1月施行)で非親告罪になりました。現在は、被害者が告訴をしていなくても、捜査や起訴が行われることがあります。
このため、インターネット上で見かける「犯人を知ってから6か月を過ぎると告訴できない」という説明は、現在のストーカー規制法違反には当てはまりません。ただし、書き込みによる名誉毀損など、ストーカー行為とあわせて親告罪が問題になる場合には、告訴期間(刑事訴訟法235条)が関係します。この点は名誉毀損は親告罪|告訴期間と示談による解決で解説しています。
告訴が必須ではなくなった現在でも、告訴をすることには、処罰を求める意思をはっきり示せる、送付や通知といった手続上の効果が生じる、といった意味があります。
告訴状が受理されにくい場面
犯罪事実が特定されていない
告訴状には、誰が、いつ、どこで、何をしたのかを具体的に書く必要があります。ストーカー規制法違反として扱うには、つきまとい等が反復して行われたこと、身体の安全や住居の平穏などが害される不安を覚えさせる方法で行われたことなどが問題になります。出来事が日付や場所とともに整理されていないと、どの罪に当たるのかを警察が判断しにくく、受理が見送られることがあります。
裏付けとなる資料が乏しい
告訴の時点で有罪を立証できるほどの証拠が求められるわけではありません。それでも、申告の内容を裏付ける資料がほとんどないと、警察は捜査の見通しが立たないとして慎重になる傾向があります。
警告や禁止命令などの手続を先に勧められる
ストーカー被害では、刑事手続のほかに、警察による警告や公安委員会による禁止命令といった行政上の手続があります。改正法により、警告は被害者の申出がなくても警察の職権で出せるようになりました。被害の状況によっては、警察がこうした手続を先に進めることを勧める場合もあり、それ自体が告訴を拒んでいるとは限りません。
窓口でのよくある対応と、その意味を整理すると次のとおりです。
| 窓口での対応 | 考えられる意味 | 確認しておきたいこと |
|---|---|---|
| 「受理します」 | 告訴として正式に扱われた | 担当者の氏名と部署 |
| 「預かります」「検討します」 | 受理の判断を保留している | 受理の判断がいつ出るのか |
| 「相談として記録します」 | 告訴ではなく相談として扱われた | 告訴として受理されたかどうか |
| 「先に警告を検討しましょう」 | 行政上の手続を優先する方針 | 告訴を並行して進められるか |
受理されたのか、預かりにとどまったのかがあいまいなまま帰ると、その後の動きが分かりにくくなります。その場で扱いを確認し、日時や担当者名を記録しておくことをおすすめします。
受理してもらうために整えておくこと
告訴状の書き方そのものは告訴状はどう書くのか|受理されやすい書き方と添付資料で解説していますが、ストーカー被害で特に準備しておきたいのは次のようなものです。
- 日付・時刻・場所・相手の行動を一覧にした時系列表。
- LINEやSNSのメッセージ、着信履歴などの画面の保存。
- 防犯カメラの映像や、つきまといの様子を記録した写真・録音。
- 目撃した家族や同僚などのメモ。
- これまでの警察への相談の日時と内容。
- 通院、転居、欠勤など、被害によって生じた影響を示す資料。
防犯カメラの映像の扱いは【ストーカートラブル】防犯カメラの映像を証拠にする|設置と保存の注意点で、過去の相談記録の取り寄せ方は【ストーカートラブル】警察への相談記録を手元に取り寄せる|開示請求の手順と黒塗りの読み方で紹介しています。
受理されなかったときに取れる手段
足りない点を補って改めて提出する
受理されなかった理由を担当者に尋ね、事実の特定が足りないのか、資料が足りないのかを確かめたうえで、補って再度提出する方法があります。断られた理由が分かれば、次に何を準備すればよいかが見えやすくなります。
検察庁に告訴する
告訴は、警察だけでなく検察官に対してもすることができます(刑事訴訟法241条1項)。ただし、検察庁でも内容の特定や資料の有無は確認されるため、提出先を変えれば受理されるというものではありません。
弁護士が代理人として告訴する
告訴は代理人によってもすることができます(刑事訴訟法240条)。弁護士が事実関係と証拠を整理して告訴状を作成し、警察と協議しながら提出することで、受理に向けたやり取りが進みやすくなる場合があります。
刑事手続以外の手段を並行して検討する
告訴の受理を待つ間にも、警告や禁止命令の申出、裁判所への接近禁止の仮処分の申立てなど、身を守るための手段を並行して検討できます。警告が出ない場合の対応は【ストーカートラブル】警察に相談したのに警告が出ない|次に取れる手段、禁止命令については【ストーカートラブル】禁止命令を出してもらうには|申出の方法と出るまでの期間、警察と裁判所の手続の使い分けは接近禁止を実現する2つの道|ストーカー規制法(警察)と民事保全(裁判所)の使い分けで解説しています。
なお、警察の対応に納得できない場合は、警察本部の相談窓口に相談したり、都道府県公安委員会に苦情を申し出たりする方法もあります(警察法79条)。被害届が受理されなかった場合については被害届を受理してもらえない|断られたときにできることもあわせてご覧ください。
告訴が受理された後の流れと注意点
告訴が受理されると、警察から改めて事情を聞かれ、供述調書が作られるのが一般的です。その後、警察の捜査を経て事件は検察官に送付され、検察官が起訴するかどうかを判断します。受理から処分までには相当の期間がかかることもあり、その間の状況はすぐには教えてもらえない場合があります。事情聴取の内容は【ストーカートラブル】被害届を出した後の事情聴取|何を聞かれるのかで、不起訴になった場合の確認方法は【ストーカートラブル】相手が不起訴になった|処分の結果を知る方法と身を守る準備で紹介しています。
告訴の後、相手やその家族から取下げを求められることもあります。働きかけに一人で応じる前に、【ストーカートラブル】相手の家族から被害届を取り下げるよう迫られている|応じる前に考えることと、働きかけを止める順序を参考にしてください。
よくあるご質問
1年以上前のつきまといでも告訴できますか
ストーカー規制法違反は非親告罪のため、告訴期間の制限はありません。ただし、起訴できる期間である公訴時効があり、ストーカー行為罪では3年とされています。時間が経つほど証拠も集めにくくなるため、早めに整理しておくことをおすすめします。
告訴状は自分で書いて提出してもよいですか
ご自身で作成して提出することもできます。ただ、事実の特定や罪名の当てはめが不十分だと受理が見送られることがあるため、不安があれば専門家に内容を確認してもらうとよいでしょう。
告訴すると、相手に自分の住所が知られてしまいますか
刑事手続の中で被害者の情報が相手側に伝わる可能性はあります。一方で、起訴状などで被害者の氏名や住所を伏せる制度も設けられています。心配な点は、告訴の段階で警察や弁護士に伝えておくことが大切です。
ストーカー被害で告訴を考えたら弁護士にご相談ください
告訴は、相手の処罰を求めるための正式な手続ですが、受理されるかどうかは、事実の整理と資料の準備に左右されやすい面があります。また、告訴だけでなく、警告や禁止命令、民事上の手続を組み合わせることで、身の安全を守りやすくなる場合もあります。警察と弁護士のどちらに先に相談するか迷う場合は【ストーカートラブル】警察と弁護士のどちらに先に相談するか|ストーカー被害での順序、代理人を立てる意味については【ストーカートラブル】弁護士に依頼すると何が変わるのか|ストーカー被害で代理人を立てる意味もご覧ください。
当事務所では、告訴状の作成や警察とのやり取り、相手方への対応まで、状況に応じてご依頼をお受けしています。告訴が受理されずに困っている段階でも、これまでの経緯をうかがいながら、次に何ができるかを一緒に考えます。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


