16歳未満との性的行為|「5歳差要件」と年齢の錯誤
被害に遭って警察署に足を運んだのに、被害届が作られないまま帰ることになった。そうしたご相談は少なくありません。窓口では「これは民事の話ですね」「証拠がそろってから来てください」といった説明を受けることが多く、では次に何をすればよいのかまでは示されないまま終わってしまうこともあります。
この記事では、被害届の受理についてどのようなルールが置かれているのかを確認したうえで、断られたときに検討できることを順に整理します。ポイントは、「受理してもらえない」と感じている状況が、実際にはいくつかの異なる状態に分かれているという点です。どの状態にいるかによって、次に向く一手が変わります。
なお、事件の内容や地域によって運用には幅があります。ここでは一般的な枠組みをご説明しますので、個別の見通しについては弁護士にご確認ください。
「受理してもらえない」と感じる場面は一つではない
窓口でのやり取りが思うように進まなかったとき、多くの方はまとめて「被害届が受理されなかった」と受け止めます。ただ、経過を詳しく伺うと、次のように状態が分かれていることがよくあります。
| いまの状態 | 窓口で言われやすいこと | 次に向く一手 |
|---|---|---|
| 相談として話を聞いてもらった段階で終わっている | 「様子を見ましょう」「何かあったらまた来てください」 | 届出として扱ってほしい旨を伝え、犯罪事実を書面にして持参する |
| 書き直しや資料の追加を求められている | 「もう少し整理してから」「これを持ってきてください」 | 求められた点を確認し、そろえたうえで同じ担当者に連絡する |
| 受理できないとはっきり言われた | 「これは民事です」「事件性がありません」 | 理由を確認したうえで、告訴への切替えや別の窓口を検討する |
| 受理はされたが動きが見えない | 「捜査中です」 | 受理されていること自体は前提にできるため、進捗の確認や別の手続を検討する |
はじめの二つは、断られたというより、手続が途中で止まっている状態です。三つ目とは、次にすることが変わります。まずは、いつ、どこの警察署で、誰に、何を話したのかを書き出して、自分がどこにいるのかを確かめてみてください。
被害届の受理について定められていること
被害届の受理については、警察内部の規則である犯罪捜査規範に定めがあります。同規範61条1項は、警察官は犯罪による被害の届出をする者があったときは、その届出に係る事件が管轄区域の事件であるかどうかを問わず、これを受理しなければならない、としています。
さらに警察庁は、各都道府県警察に対して「迅速・確実な被害の届出の受理等について」(令和6年3月22日付け警察庁丙刑企発第35号)を発出し、届出の内容が明白な虚偽又は著しく合理性を欠くものである場合を除いて即時に受理するよう求めています。この「明白な虚偽又は著しく合理性を欠くもの」とは、届出人から聴取した内容から容易に判断し得るものを指し、改めて捜査や調査を行って検討することを意味しない、とも示されています。受理しなかったものについては、届出の内容や状況を記録化して所属長に報告することも求められています。
証拠がそろっていることは受理の条件として置かれていない
この枠組みからは、「証拠が足りない」「事件になるか分からない」という事情は、本来、受理そのものを見送る理由としては想定されていないことが分かります。証拠が十分かどうかは、受理した後の捜査で判断される事柄だからです。
もっとも、ルールが置かれていることと、窓口でその場で被害届が作られることとは別の問題です。実際には、丁寧に話を聞いてもらえたものの被害届の作成には至らなかった、という経過をたどる方が一定数おられます。ここで諦める必要はなく、整え直して出し直すことができます。
紙が手元になくても、やり取りが記録されていることがある
断られたと感じた方の多くが、「何も残っていないのだから、また一から説明し直さなければならない」と考えます。しかし、実際にはそうとも限りません。
犯罪捜査規範61条2項は、口頭で届出があったときは被害届(別記様式第6号)への記入を求めるか警察官が代書するものとしたうえで、参考人供述調書を作成したときは被害届の作成を省略することができると定めています。つまり、被害届という表題の書面が作られていなくても、事情を聴かれた内容が供述調書の形で残っている場合があるということです。
また、前述の通達では、受理しなかったものについても、内容や状況を記録化して所属長に報告することが求められています。相談として扱われた場合も、相談の記録として残されるのが一般的な運用です。
ですから、次に警察署へ行くときは、はじめから話し直すつもりで臨むよりも、前回の日付・訪れた警察署・対応した方の氏名や部署を伝えるほうが、話が早く進むことがあります。控えを受け取っていない場合でも、日付と場所は手帳やスマートフォンの記録からたどれることが少なくありません。
断る理由として説明されやすい言葉と、その受け止め方
「これは民事の話です」
いわゆる民事不介入は、条文としてどこかに書かれている原則ではありません。個人間の権利義務をめぐる争いそのものには警察が立ち入らない、という運用上の考え方です。
金銭の貸し借りや契約上の行き違いそれ自体は民事の問題ですが、その過程に暴行、脅迫、詐欺、器物損壊といった行為が混ざっていれば、そこは刑事の話として切り分けられます。窓口で民事の枠に収まってしまう原因の一つは、請求の当否から説明を始めてしまうことです。誰が、いつ、どこで、何をしたのかという行為のほうから話すと、話の輪郭が変わることがあります。
「証拠が足りません」
前述のとおり、証拠が十分かどうかは受理後に判断される事柄です。とはいえ、窓口の担当者が犯罪事実の輪郭をつかめない状態では、話が前に進みにくいのも実情です。
手元にある資料と、まだ手元にはないが存在しているはずの資料とを分けて伝えると、受け止められ方が変わることがあります。店舗や施設の防犯カメラ、通信事業者に残る記録、取引の履歴などは、被害を受けた側では取得できなくても、捜査の中では収集できる可能性があるものです。
「管轄が違います」
犯罪捜査規範61条1項は、管轄区域の事件であるかどうかを問わず受理しなければならないと定めており、前述の通達も、管轄区域外の事件であっても即時に受理するよう求めています。
ただし、受理した警察署がそのまま捜査を担当するとは限りません。事件を扱うのにふさわしい警察署へ引き継がれることがあり、その分だけ連絡の窓口が変わることは想定しておいたほうがよいでしょう。
「時間が経ちすぎています」
被害届それ自体に、法律上の提出期限は定められていません。公訴時効が完成するまでの間は出すことができます。
もっとも、時間の経過とともに、映像や通信の記録は失われていきます。「もう遅い」と考えて何もしないよりも、残っている可能性のある記録を書き出したうえで相談したほうが、選択肢は広がります。
出し直すときに整えておきたいこと
もう一度足を運ぶ前に、次の点を整理しておくと、窓口でのやり取りが短くて済みます。
- 犯罪事実を1件ずつ切り分け、いつ・どこで・誰が・何をしたのかを出来事ごとに書き出す。
- 背景の経緯と、届け出たい行為そのものとを、別の紙に分けて書く。
- 被害品や被害額、けがの有無など、被害の内容を数量が分かる形で書く。
- 手元にある資料は原本の所在とセットで一覧にする(写真は撮影日時、やり取りは日付が分かる形で残す)。
- 相手の特定につながる手がかり(氏名、勤務先、車両、アカウント名など)を、確かなものと推測とに分けて書く。
書面にして持参する方法には、事実が特定されやすいという利点があります。口頭で伝えるよりも、担当者が内容を確認しやすくなるためです。
窓口は一か所ではない
同じ警察署でも担当が分かれている
警察署の中でも、扱う事件の種類によって担当する課は分かれています。相談の入口としては、警察相談専用電話「#9110」もあります。発信した地域を管轄する都道府県警察の相談窓口につながる番号で、受付時間は都道府県によって異なります。危険が差し迫っている場合は110番が先です。
告訴という形に切り替える
告訴は、被害の事実を申告することに加えて、犯人の処罰を求める意思を示すものです。刑事訴訟法241条1項は、告訴又は告発は、書面又は口頭で検察官又は司法警察員にこれをしなければならないと定めています。ここから分かるように、告訴の相手方は警察署に限られておらず、検察庁も窓口になり得ます。
なお、司法警察員に司法巡査は含まれませんが、犯罪捜査規範63条2項は、司法巡査である警察官は、告訴をする者があったときは直ちにこれを司法警察員である警察官に移さなければならないとしています。窓口で最初に応対した警察官の階級によって告訴ができなくなる、という仕組みにはなっていません。
告訴が受理されると、司法警察員は速やかに書類および証拠物を検察官に送付することとされています(刑事訴訟法242条)。検察官が起訴・不起訴の処分をしたときは告訴人に通知され(同260条)、請求があれば不起訴の理由が告げられます(同261条)。
ただし、告訴は処罰を求める重い意思表示であるため、受理までに事実関係の説明を細かく求められることが多く、被害届より手前で時間がかかることもあります。捜査の進み方についても、犯罪捜査規範67条は告訴事件の捜査を「特にすみやかに行うよう努める」と定めており、努力義務として書かれている点は押さえておいたほうがよいでしょう。
都道府県ごとに取扱いの定めが置かれていることがある
告訴・告発の取扱いについて、都道府県警察が独自に要綱を定めている例があります。たとえば愛知県警察が令和7年4月から実施している告訴・告発取扱要綱では、次のような事項が定められています。
- 告訴等を前提とした相談を含めて、管轄区域を問わず直ちに内容を聴取し、可能な限り迅速に受理または不受理の判断を行うこと。
- 判断にあたっては、告訴権の有無・公訴時効・親告罪の告訴期間といった形式面と、処罰の意思・犯罪事実が特定されていることという実質面を確認すること。
- 受理または不受理の判断をしたときは、速やかに届出をした人へ告知すること。
- 不受理としたとき、または判断を保留したときは、対応の経過をシステムに登録し、不受理の理由を記載して所属長に報告すること。
- 初回の対応から2か月を経過しても判断がされていないものは、上位の責任者へ報告すること。
これは愛知県の例であり、他の都道府県が同じ定めを置いているとは限りません。ただ、受理するかどうかの判断には要件があり、判断の結果は伝えられ、断った場合にも理由が記録されるという考え方が示されている点は参考になります。断られた理由をその場で確認しておくことには、こうした意味もあります。
被害を受けた本人以外からの申告
刑事訴訟法239条1項は、何人でも、犯罪があると思料するときは告発をすることができると定めています。本人が高齢や病気で動きにくい場合、勤務先が関係する事案など、被害を受けた本人以外の立場から申告する形が選択肢になることもあります。
受理される前の段階では使えない制度
「警察が動いてくれないときの手段」として名前が挙がりやすい制度のうち、受理そのものを求める場面では使えないものがあります。ここを取り違えると、時間を使ったあとで振り出しに戻ることになりかねません。
検察審査会
検察審査会は、検察官の不起訴処分の当否を審査する機関です。検察審査会法30条は、告訴・告発をした人のほか、犯罪により害を被った人にも審査の申立てを認めています。もっとも、不起訴処分があってはじめて使える制度ですので、被害届が受理されていない段階では、申立ての対象がありません。
付審判請求
刑事訴訟法262条の付審判請求は、対象が刑法193条から196条までの公務員職権濫用等の罪などに限られています。加えて、告訴または告発をした人が、不起訴処分の通知を受けた日から7日以内に請求することとされています。一般の事件で広く使える制度ではありません。
公安委員会への苦情の申出
警察法79条1項は、警察職員の職務執行について苦情がある人は、都道府県公安委員会に文書で申し出ることができると定めています。公安委員会はこれを誠実に処理し、その結果を文書で通知することとされています。
ただし、これは職務執行についての苦情を扱う仕組みであり、個別の捜査を指揮する制度ではありません。東京都公安委員会も、個別の犯罪捜査について直接指揮することはできない旨を案内しています。窓口での対応そのものに問題があったと感じる場合の道筋として理解しておくとよいでしょう。
刑事の手続だけが選択肢ではない
被害届が受理されるかどうかにこだわるうちに、本来望んでいたことから離れてしまう場合があります。何を実現したいのかを先に決めると、入口の選び方も変わります。
| 望んでいること | 主な入口 | 位置づけ |
|---|---|---|
| やめさせたい・近づかせたくない | ストーカー規制法の警告や禁止命令、配偶者暴力防止法の保護命令 | 刑事処分とは別に、行政機関や裁判所の手続として動く |
| お金を取り戻したい | 話し合い、民事調停、民事訴訟、仮差押えなどの保全手続 | 刑事手続の中で被害の回復まで行われるわけではない |
| 記録として残しておきたい | 警察への相談、資料の保存、内容証明郵便 | 後から刑事・民事のどちらへ進む場合でも土台になる |
刑事と民事は、片方を選んだら他方ができなくなるという関係ではありません。並行して進めることもできます。
動ける期間には限りがある
公訴時効が完成すると起訴ができなくなり(刑事訴訟法250条)、名誉毀損罪や器物損壊罪のような親告罪では、犯人を知った日から6か月を経過すると告訴ができなくなります(同235条本文)。
また、防犯カメラの映像や通信の記録は、一定期間で消えていくものがほとんどです。制度上の期限より先に、事実上の期限が来ることのほうが多いといえます。出し直しの準備に時間をかけすぎない、という視点も必要です。
避けたほうがよい対応
断られた直後は気持ちが焦りますが、次のような行動は、後の手続を難しくすることがあります。
- 相手に直接連絡して、認めさせようとする。
- 記録を見やすく編集し直したり、一部を削ったりする。
- 自分に不利な経緯を伏せたまま説明する。
- 窓口で強い言い方をして、話の中身が伝わらないまま終える。
- 危険が差し迫っている状況で、書面の準備を優先する。
資料は、加工せずそのままの形で残しておくほうが、後から説明しやすくなります。なお、弁護士が同行したり書面を作成したりすることはできますが、受理そのものを約束できる立場ではありません。その点も含めてご相談いただくのがよいと考えます。
まとめ
- 「受理されない」と感じている状況は、相談で止まっている・出し直しを求められている・断られた・受理後に動きが見えない、のいずれかに分かれる。
- 犯罪捜査規範61条1項は受理しなければならないと定め、令和6年の警察庁通達も即時受理を求めているが、ルールの内容と窓口での運用は分けて考える。
- 証拠が十分かどうかは、本来、受理した後の捜査で判断される事柄とされている。
- 被害届という書面が作られていなくても、供述調書や相談の記録が残っていることがある。
- 出し直すときは、犯罪事実を1件ずつ特定し、経緯と行為とを分けて書く。
- 告訴は書面または口頭で検察官または司法警察員に対して行うことができ、窓口は警察署に限られない。
- 都道府県によっては、受理・不受理の判断要件や不受理理由の記録まで要綱で定めている例がある。
- 検察審査会や付審判請求は不起訴処分の後の制度であり、受理を求める場面では使えない。
- 公訴時効や親告罪の告訴期間に加えて、映像や通信の記録が消える時期にも注意する。
被害届が受理されなかったという経過そのものが、方針を立てるうえでの手がかりになります。どこで止まっているのかが分かれば、次にできることは残っています。当事務所では、被害を受けた方からのご相談も承っております。初回のご相談は無料で、24時間の受付・全国対応となっておりますので、状況を整理する段階からお気軽にお声がけください。


