【ストーカートラブル】配達員を装って家に来たかもしれないときは?

若井亮

若井亮

テーマ:ストーカートラブル

この記事は、2026年11月時点の法令と、令和7年12月30日に施行された改正ストーカー規制法の内容をもとに書いています。個別の事情によって取れる手段は変わるため、具体的な対応は専門家にご確認ください。


インターホン越しに「お荷物です」と言われたものの、心当たりのある荷物がない。モニターに映った人の顔や声が、以前つきまとわれていた相手に似ている気がする。こうした出来事があると、本物の配達だったのか、それとも配達員を装って様子を見に来たのか、判断がつかず不安が続くことがあります。

 警視庁も、宅配事業者を装った訪問者が玄関を開けさせて室内に入る事件について注意を呼びかけており、配達を名乗ること自体は珍しい手口ではありません。一方で、実際には本物の配達だったということも多くあります。この記事では、確かめ方、その日のうちにしておきたいこと、法律上の扱い、相談先の使い分けを順に整理します。

配達員を装った訪問で見られる経過

 つきまといの相談の中で、配達を口実にした訪問として語られる経過には、いくつかの共通点があります。いずれも、それだけで相手を特定できるものではありませんが、記録を残すときの手がかりになります。

  • 注文した覚えのない荷物を届けに来たと名乗ります。
  • 伝票や端末を持たず、社名入りの制服でもない服装で来ます。
  • オートロックのマンションで、他の住人の入館に続いて建物に入ってきます。
  • 受け取りを断ると、時間を変えて何度も来ます。
  • 名前や部屋番号を確かめるような質問をしてきます。


 特に注意したいのは、最後の「確かめる」型の訪問です。相手が住所を確実に知っているわけではなく、在宅かどうかや、本当にここに住んでいるかを確認しに来ている場合もあると考えられます。その場合、ドアを開けて応対すること自体が相手に情報を与えることにつながります。

本物の配達かどうかを確かめる方法


心当たりのある荷物かを先に確認する

 まず、通販サイトの注文履歴やフリマアプリの取引、家族の注文の有無を確認します。配達予定の通知や追跡番号があれば、配達会社の公式サイトで、その日に配達予定があったかどうかを確かめられます。心当たりがまったくない場合は、その場で受け取らなくても差し支えありません。

ドアは開けずにインターホン越しに対応する

 警視庁は、宅配業者の訪問を受けたときは対面せずにインターホン越しで受け取りを希望し、業者が離れてから荷物を受け取るよう案内しています。佐川急便・日本郵便・ヤマト運輸では、非対面での受け取りを希望できるとされています。「置いておいてください」と伝えるだけで済むため、相手の顔を間近で見ずに済み、こちらの姿も見せずに済みます。どうしても開ける必要があるときは、ドアガードを掛けたままにしておきます。

配達会社への問い合わせは公式の窓口で行う

 不在票が入っていた場合でも、不在票に書かれた番号にそのまま電話をかけるのではなく、配達会社の公式サイトに載っている番号から問い合わせるほうが安心です。不在票そのものが偽物であることも考えられるためです。問い合わせの結果、その日に配達の記録がないと分かった場合は、そのこと自体が後で状況を説明するときの材料になります。

本人かもしれないと感じたら、その日のうちにすること

 配達ではなかったかもしれないと感じたときは、記憶が新しいうちに記録を残すことが大切です。後から警察や弁護士に相談するときに、何があったかを具体的に伝えられるかどうかで、取れる手段が変わることがあります。

  1. インターホンの録画を保存します(機種によっては一定期間で上書きされるため、スマートフォンで画面を撮影しておくことも考えられます)。
  2. 日時、相手の服装、名乗った社名、話した言葉をメモに残します。
  3. 配達会社に問い合わせ、配達の記録がなかったことを確認します。
  4. マンションであれば、管理会社に共用部の防犯カメラ映像の保存を依頼します。
  5. 家族や同居人に状況を伝え、しばらくは一人で応対しないようにします。


 管理会社が保管する防犯カメラの映像は、一定期間が過ぎると消えてしまうことが多いため、早めに保存を頼むことに意味があります。映像を自分に開示してもらえるかどうかは管理会社の判断になりますが、警察から照会があった場合に備えて保存だけはしておいてもらう、という頼み方もあります。

 相手がまだ近くにいる、ドアを開けようとしている、立ち去らないといった状況であれば、記録よりも安全の確保が先です。その場合は迷わず110番通報をしてください。急ぎではないものの相談したいという段階であれば、警察相談専用電話「#9110」や最寄りの警察署の生活安全課が窓口になります。

法律上はどのように扱われるのか


ストーカー規制法の「つきまとい等」にあたる場合

 ストーカー規制法では、恋愛感情などの好意や、それが満たされなかったことへの恨みの感情を満たす目的で、住居などへ押しかけることや、住居などの付近をみだりにうろつくことを「つきまとい等」として規制しています。配達を名乗っていても、実際の目的が会うことや様子を見ることであれば、この「押しかけ」や「うろつき」にあたる可能性があります。

 つきまとい等が繰り返されると「ストーカー行為」となり、刑事罰の対象になります。また、繰り返しに至る前の段階でも、警察が相手に警告を出したり、公安委員会が禁止命令を出したりする手続があります。令和7年12月30日に施行された改正法では、被害者の申出がなくても警察が職権で警告できる仕組みが設けられました。申出をためらっている場合でも、まずは相談して状況を伝えておくことに意味があります。

住居侵入罪が問題になる場合

 配達員を名乗ってドアを開けさせ、室内に入った場合は、住居侵入罪(刑法130条)が問題になります。配達を装って開けさせたときは、住んでいる人の本当の意思に反する立ち入りと評価されることがあり、「ドアを開けたのはこちらだから」という理由だけで成立しないとは限りません。

 オートロックのマンションで、共用の廊下や階段まで入ってきた場合も、管理者や住人の意思に反する立ち入りとして問題になることがあります。どこまで入ったか、どのように入ったかによって評価は分かれるため、建物のどこで姿を見たのかも記録に残しておくとよいでしょう。

相手が誰か分からない場合

 顔がはっきり映っていない、声だけでは判断できないといった理由で、相手を特定できないこともあります。それでも、日時と状況の記録、配達の記録がなかったという事実、防犯カメラの映像がそろえば、警察に相談する材料になります。相手が分からないまま一人で調べようとすると、かえって危険な場面に近づくおそれがあるため、確かめる作業は警察や専門家に任せることをおすすめします。

相談先ごとにできること


相談先主にできること
警察(110番・#9110・生活安全課)緊急時の対応、相談記録の作成、警告・禁止命令の手続、捜査
管理会社・大家防犯カメラ映像の保存、共用部の巡回や掲示、オートロックの運用の見直し
配達会社配達記録の確認、非対面受け取りや受け取り方法の変更
弁護士相手が分かっている場合の通知書の送付、接近禁止の仮処分、示談交渉、警察への相談の同行


 警察と弁護士は、どちらか一方を選ぶものではありません。身の安全に関わる部分は警察に、相手との連絡や書面のやり取り、民事上の手続は弁護士に、というように役割を分けて並行して動くこともできます。

住所を知られている前提で整えておく備え

 配達を装った訪問があったときは、相手が住所をすでに知っている、あるいは知りかけているという前提で備えを考えることになります。どのような経路で住所が伝わったのかを振り返ることも、次の被害を防ぐうえで役に立ちます。

  • 配達会社のアプリや会員サービスで、置き配や非対面での受け取りを標準の設定にします。
  • 営業所での受け取りやコンビニ受け取り、宅配ロッカーを使い、自宅で荷物を受け取る機会を減らします。
  • 共通の知人やSNSへの投稿から、住所や生活の様子が伝わっていないかを見直します。
  • 持ち物や車に、心当たりのない紛失防止タグなどが付いていないかを確かめます。
  • 転居を考える場合は、住民票の写しなどの交付を制限する支援措置を、引っ越しの前に申し出ます。


 住民票の写しなどの交付を制限する支援措置は、ストーカー被害を受けている方も申出の対象になります。申出には警察などの意見が必要となるため、転居を考えている場合は、先に警察へ相談しておくと手続を進めやすくなります。

よくあるご質問


一度来ただけでも警察に相談してよいのでしょうか

 一度だけでも相談して差し支えありません。ストーカー規制法の警告などは、つきまとい等が繰り返されるおそれがある場合に出されるもので、回数が重なるまで待つ必要はありません。早い段階で相談記録が残っていれば、その後に同じことが起きたときに経過を説明しやすくなります。

本物の配達員だった場合、失礼にならないでしょうか

 非対面での受け取りは、配達会社自身が用意している受け取り方法の一つです。インターホン越しに置き配を頼むことは通常の対応であり、配達員に対して失礼にあたるものではありません。心当たりがないときに受け取りを保留することも、同じように差し支えありません。

インターホンの録画が残っていなかった場合はどうすればよいでしょうか

 録画がなくても、メモや配達会社への問い合わせの結果、管理会社の防犯カメラ映像など、ほかの記録で補えることがあります。今後に備えて、録画機能のあるインターホンへの交換や、玄関の外を映すカメラの設置を検討することも考えられます。設置するときは、隣の住戸や共用部をどこまで映すかについて、管理会社と相談しておくと後のトラブルを避けやすくなります。

関連する解説記事



 配達員を装った訪問かどうかは、その場ではなかなか判断がつきません。ドアを開けずに応対し、配達の記録を確かめ、残せる記録を残しておくことで、本物の配達だった場合も、そうでなかった場合も、次に取る手段を落ち着いて選びやすくなります。不安が続く場合は、一人で抱え込まずに警察や専門家に状況を伝えてください。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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