【解決事例】デリヘル利用後にキャストの怪我を主張された男性が、店舗との合意書締結で解決した事例
本記事は、2023年7月施行の改正刑法(不同意わいせつ罪・不同意性交等罪)と性的姿態撮影等処罰法、2025年6月施行の拘禁刑への切替えを反映した内容で記載しています。
メンズエステを利用した後、店から「セラピストが被害を訴えている」「警察に相談するつもりだ」と連絡が来ることがあります。施術の最中には何も言われなかったのに、帰宅後や翌日になって突然このような連絡を受け、どうしてよいか分からなくなる方は少なくありません。
結論からいえば、店が「警察に相談する」と言ったことだけで、すぐに逮捕されたり、家族や職場に知られたりするわけではありません。ただし、連絡を放置したり、言われるままに支払いや署名に応じたりすると、後から取り返しのつきにくい状況になることがあります。この記事では、「警察に相談する」という言葉の意味、実際に警察が動いた場合の流れ、言われた直後に確かめておくこと、示談や弁護士への相談で何が変わるのかを順に整理します。
「警察に相談する」という言葉が意味すること
相談・被害届・告訴は別のもの
警察への「相談」は、困りごとを警察に伝えて助言を受ける段階のものです。相談を受けた警察がすぐに捜査を始めるとは限らず、相談記録が残るだけで終わることもあります。
これに対し、被害届は「犯罪の被害に遭った」という事実を正式に申告する手続で、受理されると警察は捜査に着手するのが通常です。さらに告訴は、処罰を求める意思まで示すものです。なお、不同意わいせつ罪や不同意性交等罪は、被害者の告訴がなくても起訴できる罪(非親告罪)とされています。
つまり、店が「警察に相談する」と言っている段階では、実際に被害届が出されるのか、出されるとしていつなのかは、まだ決まっていないことが多いといえます。
警察に行くのは誰か
刑事手続のうえで被害者にあたるのは、店ではなくセラピスト本人です。店の担当者が「警察に行く」と伝えてくる場合でも、それがセラピスト本人の意向をそのまま伝えているのか、店としての交渉上の言い方なのかは、連絡の内容だけでは見分けにくいことがあります。
また、メンズエステの中には届出の状況がはっきりしない店もあり、店側にも警察の関与を避けたい事情があるのではないか、と考える方もいます。しかし、そうした見込みを前提に行動を決めるのは避けた方がよいでしょう。店の思惑とは別に、セラピスト本人が自ら警察に相談することは十分にありえるからです。
翌日以降の具体的な動き方については、【風俗トラブル】店から「警察に行く」と言われた翌日にすること|被害届が出る前の時間でも解説しています。
実際に警察が動いた場合の流れ
被害届が受理された場合、警察はセラピストから事情を聞き、店の予約記録や連絡先などから利用者を特定していくことになります。予約に使った電話番号やメールアドレスが手がかりになるため、偽名で利用していた場合でも、特定に至ることはあります。
特定された後は、まず警察署への出頭を求められ、任意の事情聴取を受ける形が多いとされています。一方で、行為の内容が重いと判断された場合や、逃亡や証拠隠滅のおそれがあると見られた場合には、逮捕に至ることもあります。どちらになるかは、問題とされた行為の内容や、その後の対応によって変わります。
問題とされる行為と、成立が問われうる主な罪名は次のとおりです。
| 問題とされる行為 | 問われうる主な罪名 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 胸や下半身など身体に触れた | 不同意わいせつ罪(刑法176条) | 6月以上10年以下の拘禁刑 |
| 性交等に及んだ | 不同意性交等罪(刑法177条) | 5年以上の有期拘禁刑 |
| 施術中の様子を撮影・録画した | 性的姿態等撮影罪(性的姿態撮影等処罰法2条) | 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金 |
ここで注意したいのは、「セラピストの方から誘われた」「その場では嫌がっていなかった」と感じていた場合でも、後になって「同意していなかった」と申告されることがある点です。改正後の刑法は、同意しない意思を形成・表明・全うすることが難しい状態にあったかどうかを問題にしているため、密室での施術という場面では、双方の受け止め方が食い違いやすい面があります。
被害届が出された後の見通しは【風俗トラブル】被害届が受理されたと言われた|その後の流れと呼び出しまでの期間、捜査の始まり方は風俗トラブルで警察が動くきっかけ|被害届・通報・摘発から捜査が始まる流れで詳しく取り上げています。
言われた直後に避けたい対応
「警察に相談する」と言われると、何とかその場で話を終わらせたいと考えるのは自然なことです。ただ、焦って動いた結果、かえって状況を難しくしてしまう例も見られます。次のような対応は、一度立ち止まって考えることをおすすめします。
- 求められた金額を、内容を確かめないまま支払うこと。
- 金額や事実関係が書かれた念書・借用書・示談書に、その場で署名すること。
- 身分証の写真、勤務先、家族の連絡先などを求められるまま渡すこと。
- セラピスト本人に直接連絡して謝罪したり、口外しないよう頼んだりすること。
- 店からの連絡をすべて無視し続けること。
- 弁護士に相談する前に、自分から警察へ説明に出向くこと。
セラピスト本人への直接の連絡は、謝罪のつもりであっても、相手に恐怖を与えたり、働きかけと受け取られたりするおそれがあります。また、連絡を一切絶つことが、店やセラピストが警察への相談を決めるきっかけになることもあります。支払いを保留することと、連絡を断つことは分けて考える必要があります。
自分から警察に出向くことについては、状況によって意味が変わります。警察から呼ばれた段階で、自分の言い分と裏付けを整理して伝えることは大切ですが、連絡が来ていない段階で出向くと、必要のない範囲まで話してしまうこともあります。どの時点で、何を、どう伝えるかは、弁護士と相談したうえで決める方が安全です。
まず確かめておくこと
落ち着いて対応を考えるために、次の点を確かめ、記録しておきます。
- 連絡してきた相手(店名、担当者名、電話番号やLINEのアカウント)。
- 問題とされている行為の内容と、それがいつの利用のことか。
- 求められていること(金額、支払期限、来店や面談の要求の有無)。
- すでに警察に相談したのか、これから相談するという話なのか。
- 自分が店に伝えている情報(予約時の名前、電話番号、身分証の提示の有無)。
あわせて、通話の内容はできるだけ早くメモに残し、LINEやメールのやり取りは削除せずに保存しておきます。店のウェブサイトに掲載されている利用規約や禁止事項も、後から変更されることがあるため、画面を保存しておくとよいでしょう。こうした記録は、店との話し合いでも、警察から連絡があった場合でも、事実関係を整理する土台になります。
示談で何が変わるのか
被害届の前と後で意味が異なる
被害届が出される前に示談が成立し、その中で「被害申告をしない」ことが合意されれば、刑事手続に進む可能性は低くなると考えられます。ただし、先に触れたとおり不同意わいせつ罪などは非親告罪であり、示談をしたからといって刑事手続が必ず止まるわけではありません。
被害届が出された後の示談は、検察官が起訴するかどうかを判断する際の重要な事情の一つとして扱われます。示談が成立していることで、不起訴となる可能性が高まることがあります。示談の時期による違いは示談で刑事事件化を防ぐには|被害届提出前の示談がカギになる理由、示談後に被害届が出された場合の考え方は【風俗トラブル】示談金を払ったのに被害届を出された|合意の効果と刑事手続で解説しています。
誰と、何について合意するのか
メンズエステのトラブルでは、店が交渉の窓口になることがほとんどです。しかし、刑事手続との関係で意味を持つのは、被害者であるセラピスト本人の意思です。店とだけ合意しても、本人が納得していなければ、別に請求されたり、警察に相談されたりする余地が残ります。示談の際には、本人が合意の当事者になっているか、あるいは本人の意思が書面で確認できるかを見ておく必要があります。
また、店が求める金額の中には、規約違反を理由とする「罰金」や違約金と、セラピストへの賠償が混ざっていることがあります。両者は性質が異なるため、何に対する支払いなのかを分けて確かめることが大切です。
身に覚えがない場合
指摘された行為に身に覚えがない、あるいは事実と異なる内容を言われている場合には、安易に認めたり支払ったりせず、自分の認識を整理しておくことが出発点になります。支払いを拒むことと連絡を断つことは別の問題であり、窓口を弁護士に移して事実関係を争いながら対応する、という進め方もあります。軽い接触が後から問題にされる場面については、【風俗トラブル】プレイ中のキスや軽い接触でも、後から問題にされることはある?もご参照ください。
弁護士が窓口になると何が変わるか
弁護士にご依頼いただいた場合、店やセラピストとの連絡は弁護士が引き受けます。ご本人が直接やり取りをする必要がなくなるため、その場の勢いで不利な約束をしてしまうことを防ぎやすくなります。
事案によっては、本名や住所などを必要以上に相手方に伝えないまま示談の協議を進められることもあります。また、示談書に入れる条項(被害申告をしないこと、口外しないこと、追加の請求をしないことなど)を、こちらの立場から確認・調整することができます。
警察からすでに連絡が来ている場合や、今後連絡が来る可能性がある場合には、事情聴取に向けて、話すべきことと慎重に扱うべきことを事前に整理しておくことも大切です。当事務所で扱った例としては、【解決事例】メンズエステでのトラブルで「警察を呼ぶ」と告げられた男性が、示談金10万円で早期解決した事例、【解決事例】メンズエステで「被害届か示談か」と迫られ約27万円の支払いを約束|受任通知で請求が止まり支払わずに終結、【解決事例】メンズエステでの身体接触で警察の事情聴取|示談成立により不起訴処分となった事例などがあります。いずれも個別の事情に応じた結果であり、同じ経過をたどるとは限りません。
よくあるご質問
店が「もう警察に相談した」と言っていますが、本当かどうか確かめられますか
警察が、被害届の有無を相談者以外の第三者に教えることは通常ありません。そのため、店の言葉が事実かどうかを利用者の側から直接確かめるのは難しいのが実情です。確かめ方の考え方は【風俗トラブル】キャストが警察に相談したと聞かされた|本当かどうか確かめる方法はあるかで整理しています。
マンションの一室で営業している店でも、同じように考えてよいですか
店の営業形態や届出の有無によって、店側の事情や交渉の進み方が変わることはあります。ただ、セラピスト本人が被害を申告できることに変わりはありません。営業形態による違いは【風俗トラブル】メンズエステの『無店舗型』と『店舗型』|届出の有無で客のリスクはどう変わるかをご覧ください。
その後、店から連絡が来なくなりました。終わったと考えてよいですか
連絡が途絶えた理由は、請求をあきらめた、店の中で方針を検討している、すでに警察に相談した、などさまざまに考えられます。連絡がないことだけで終わったと判断するのは難しいため、記録を手元に残しておくことをおすすめします。詳しくは【風俗トラブル】風俗トラブルの後、数日たっても連絡が来なければ終わったと考えていい?で解説しています。
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ご相談について
メンズエステの店から「警察に相談する」と言われた段階は、まだ手続が始まっていないことも多く、対応を考える時間が残されている段階でもあります。慌てて支払いや署名に応じる前に、何を言われているのか、何が求められているのかを整理するところから始めてみてください。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


