【風俗トラブル】請求を払うために借金をしようとしている|借りる前に考えること
この記事は、2026年10月時点の刑法、民法、情報流通プラットフォーム対処法(2025年4月に旧プロバイダ責任制限法から名称が変わった法律)をもとに書いています。刑法の刑罰は、2025年6月施行の改正により「拘禁刑」で表記しています。
「利用した感想を口コミサイトに書いただけなのに、店から『削除しろ、損害を賠償しろ』と電話が来た」「掲示板に女性の源氏名を出して書き込んだら、『開示請求をする』とメッセージが届いた」。風俗店の利用をめぐるご相談のなかには、店の中での出来事ではなく、利用した後の書き込みが発端になっているものがあります。
インターネット上では「悪い口コミを書くと名誉毀損になる」という説明をよく見かけます。それ自体は誤りではありませんが、店から届いた「削除」の求めと「賠償」の求めは性質が異なり、賠償の金額も店が一方的に決められるものではありません。ここを分けずに対応すると、本来は必要のない支払いや約束をしてしまうことがあります。
この記事では、書き込みをした側が店から削除と賠償を求められた段階で、何を確かめ、どう対応するかに絞って整理します。名誉毀損・信用毀損・業務妨害がどのような場合に成立するかの詳しい説明は、風俗店・嬢の口コミに悪評を書いて訴えられた|名誉毀損・信用毀損・業務妨害をご覧ください。
店からの「削除」と「賠償」は分けて考える
店からの連絡は「書き込みを消して、損害も払え」とひとまとめで届くことが多いものの、法的には別々の問題です。対応を考えるときも、二つを切り分けるところから始めます。
削除の求めは、争いを広げずに応じやすい
自分の書き込みを自分で消すことは、店が問題にしている状態を解消する方向の行動です。書き込みが残り続ける期間が短いほど、店や女性に生じたとされる損害も広がりにくく、後の話し合いでも考慮されやすくなります。
ただし、消す前に、書き込んだ内容・日時・掲載されていた場所を手元に保存しておくことが大切です。後で「どこまで書いたのか」「いつから掲載されていたのか」が争点になったとき、自分の側に記録がないと、店の説明をそのまま前提に話が進んでしまうおそれがあります。投稿の削除と記録の関係は、アカウントを消せばよいのか|投稿削除と証拠保全の関係でも触れています。
賠償の求めは、根拠と金額を確かめてから
一方、賠償の求めには慎重に向き合う必要があります。損害賠償は、書き込みが違法といえるかどうか、それによってどのような損害が生じたのかを、請求する側が示していく性質のものです(民法709条)。店が示した金額が、そのまま支払うべき金額になるわけではありません。
「売上が落ちた」「女性が辞めた」といった説明があっても、それが書き込みによるものかどうかは別に確かめる必要があります。店から書面で請求が届いた場合の読み方は、【風俗トラブル】店から届いた請求書面に「法的措置」と書いてある|本当に訴えられるのかで整理しています。
書き込みが問題になるかどうかの分かれ目
店から連絡が来たからといって、書き込みが必ず違法になるわけではありません。反対に、本人は軽い気持ちで書いたつもりでも、内容によっては責任を問われることがあります。分かれ目になりやすい点を見ていきます。
事実を書いたのか、感想を書いたのか
「接客が期待と違った」「また利用したいとは思わなかった」といった感想や評価は、表現が穏当であれば、直ちに違法とされるものではありません。これに対して、「性病を持っている」「本番を強要された」「料金をだまし取られた」など、具体的な事実として受け取られる内容を書くと、名誉毀損(刑法230条1項)や、虚偽であれば信用毀損・業務妨害(同法233条)が問題になります。感想の形をとっていても、人格を否定するような言葉を重ねると、侮辱(同法231条)として扱われる可能性があります。
口コミ一般で問題になる場面は、口コミ・レビューの投稿が業務妨害・信用毀損になる場合もあわせてご覧ください。
女性個人に触れた書き込みは重く見られやすい
風俗店の口コミで特に注意したいのは、源氏名を挙げて女性個人の容姿や体調、プライベートに触れた書き込みです。源氏名であっても、店名や出勤情報と合わせれば特定の女性を指すことは明らかで、店に対する書き込みよりも、個人の名誉やプライバシーの侵害として重く評価されやすい傾向があります。この場合、店だけでなく、女性本人が請求する側になることもあります。
「本当のことだから大丈夫」とは限らない
名誉毀損は、書いた内容が真実であっても成立し得ます。真実であることで責任を免れるには、公共の利害に関わる事実であること、公益を図る目的であることなどの条件も満たす必要があります(刑法230条の2)。風俗店での個別のやり取りや、女性個人の体調などは、この条件を満たしにくいのが一般的です。
書き込みの内容と問題になりやすさの関係を、大まかにまとめると次のとおりです。
| 書き込みの例 | 問題になりやすさ |
|---|---|
| 料金やサービス内容についての穏当な感想 | 直ちに違法とはされにくい |
| 写真と印象が違ったという評価 | 表現が穏当であれば違法とはされにくい |
| 源氏名を挙げた容姿への強い否定 | 侮辱やプライバシー侵害が問題になりやすい |
| 性病・本番・犯罪行為など具体的な事実の摘示 | 名誉毀損が問題になりやすい |
| 事実と異なる内容で店の評判を落とすもの | 信用毀損・業務妨害が問題になりやすい |
表の分類はあくまで目安で、実際には言葉の選び方、書き込みの回数、他の投稿とのつながりなども含めて判断されます。
店はどうやって書き込んだ人を突き止めるのか
匿名で書いたはずなのに、なぜ店から連絡が来たのか。ここを確かめると、相手がどこまで把握しているのかが見えてきます。
書き込みの内容と予約情報から推測している場合
利用日時やプレイの内容、自宅への派遣であれば部屋の様子などを具体的に書くと、その日の利用者が限られるため、店は予約の記録から書き込んだ人を推測できます。弁護士ドットコムにも、自宅に呼んだ客が自分しかいなかったため、すぐに開示請求を予告された、という相談が寄せられています。予約の際に伝えた情報がどのように使われるかは、【風俗トラブル】予約時に伝えた本名・電話番号はどう使われるのかで解説しています。
この段階では、店はあくまで推測しているにとどまることもあります。電話口で問い詰められても、その場で書き込みを認めたり、内容を説明したりする必要はありません。
発信者情報開示の手続を使う場合
店や女性が、サイトの運営者や通信事業者に対して、書き込んだ人の氏名・住所などの開示を求める方法もあります(情報流通プラットフォーム対処法5条)。裁判所の手続を使うこともでき、契約者情報が開示されると、そこから請求書面が届く流れになります。
この手続の途中では、通信事業者から契約者に対し、開示に同意するかどうかを尋ねる「意見照会書」が届くのが通常です(同法6条1項)。回答期限は2週間程度とされていることが多く、同意しない場合は理由を書いて回答します。回答の内容は請求する側の目に触れる可能性もあるため、書き方は慎重に検討します。
「開示請求をする」と言われただけの段階
メッセージや電話で「開示請求する」と告げられても、実際に手続が始まっているとは限りません。この段階でできるのは、書き込みの記録を保存したうえで自分で削除できるものは削除し、相手とのやり取りを残しておくことです。慌てて店に連絡し、自分から名乗り出る必要はありません。
連絡が来たときに控えたい対応
店からの連絡は、強い口調や期限つきで届くことがあります。その場の不安から、次のような対応をとると、後で修正するのが難しくなります。
- 電話口で、書き込んだことや内容をその場で認める。
- 示された賠償額に、根拠を確かめないまま応じると答える。
- 借用書や念書、誓約書にその場で署名する。
- 店の事務所に一人で出向いて話し合う。
- 掲示板やSNSに反論や事情説明を書き込む。
- 記録を残さないまま、投稿やアカウントをすべて消す。
謝罪は、内容と方法を決めてから
書き込みに行き過ぎた部分があったと感じるなら、謝罪を考えることは自然です。ただ、謝罪の文面には事実関係の認め方がそのまま表れるため、口頭や思いつきのメッセージではなく、内容を整理してから伝える方が、話し合いを落ち着いて進めやすくなります。掲示板上で謝罪や訂正を書き込むことについては、謝罪や訂正の投稿をした|示談・処分にどう影響するかで整理しています。
自分で削除できない書き込みの扱い
掲示板によっては、投稿者本人でも書き込みを消せないことがあります。その場合はサイト所定の方法で削除を依頼します。削除を代行するとうたう業者もありますが、注意点は【不当要求対応】口コミの削除を業者に頼んでよいか|非弁とポリシー違反の二重をご覧ください。
話し合いで解決する場合に押さえること
書き込みに問題があったことが否定しにくい場合でも、請求された金額をそのまま受け入れる必要はありません。何に対する支払いなのかを確かめ、合意の内容を書面に残して終わらせることが目標になります。
求められている金額の中身を確かめる
店や女性からの請求には、精神的な苦痛に対する慰謝料、店の信用が損なわれたことによる損害、売上の減少、書き込んだ人を特定するためにかかった調査費用などが含まれていることがあります。費目ごとに、書き込みとの結びつきと金額の根拠を分けて確かめることが、話し合いの出発点になります。特に売上の減少は、書き込み以外の事情でも起こり得るため、結びつきの説明を求めてよい部分です。
合意書に入れておきたい項目
支払いをして解決する場合は、口約束で終わらせず、次のような内容を書面にしておきます。
- 削除の対象となる書き込みと、削除の期限。
- 支払う金額、支払方法、支払期限。
- この合意以外に互いに請求するものはないことを確認する清算条項。
- 刑事告訴をしないこと、すでにしている場合は取り下げること。
- 合意の内容や経緯を第三者に口外しないこと。
- 女性個人が関わる書き込みでは、女性本人も合意の当事者にすること。
店とだけ合意しても、女性本人から別に請求される余地が残ることがあります。誰を相手に合意するのかは、書き込みの内容に応じて最初に確かめておきたい点です。
よくあるご質問
書き込みを削除すれば、賠償の責任はなくなりますか?
削除しても、掲載されていた間の書き込みがなかったことになるわけではありません。ただ、早く削除したことは、損害がどこまで広がったかを考えるうえで考慮されやすく、話し合いを進めるきっかけにもなります。削除は責任を消すものではなく、状況を落ち着かせるための一歩と考えるのが現実的です。
意見照会書を放置するとどうなりますか?
回答しなかった場合、開示に反対する事情が伝わらないまま、手続が進む可能性があります。開示に同意するか、同意しない場合にどのような理由を述べるかは、書き込みの内容や今後の話し合いの方針とあわせて決める必要があるため、期限内に弁護士へ相談することをおすすめします。
刑事事件になって逮捕されることはありますか?
名誉毀損や侮辱は、被害を受けた人の告訴がなければ起訴できない親告罪です(刑法232条)。書き込みの内容が悪質な場合や、削除を求められても書き込みを続けた場合には、告訴を経て捜査が進む可能性があります。一方で、話し合いがまとまり告訴をしない、または取り下げる合意ができれば、刑事手続に進む可能性は低くなります。告訴期間や示談との関係は、名誉毀損は親告罪|告訴期間と示談による解決で解説しています。
まとめ
- 店からの「削除」の求めと「賠償」の求めは、分けて考える。
- 賠償の金額は店が一方的に決めるものではなく、違法性と損害を請求する側が示していく(民法709条)。
- 具体的な事実を書くと名誉毀損(刑法230条1項)、虚偽であれば信用毀損・業務妨害(同法233条)が問題になる。
- 書いた内容が真実でも、公共性や公益目的の条件を満たさなければ責任を免れない(同法230条の2)。
- 開示の手続では、通信事業者から意見照会書が届くのが通常である(情報流通プラットフォーム対処法5条、6条1項)。
- 削除の前に書き込みの内容を保存し、その場で認めたり署名したりしない。
- 合意で解決する場合は、清算条項・告訴をしない旨を入れ、必要に応じて女性本人も当事者にする。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、風俗店の利用をめぐるトラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。口コミサイトや掲示板への書き込みについて、店や女性から削除や賠償を求められた段階のご相談にも対応しています。
店から連絡が来て対応に迷っている方、意見照会書が届いた方、すでに支払いを約束してしまった方は、ご自身で返答する前にご相談ください。書き込みの内容と相手の請求を整理したうえで、削除・交渉・合意書の作成までを一緒に考えます。ご自身で対応するか弁護士に任せるかの目安は、【風俗トラブル】店との交渉を自分でするか弁護士に任せるか|分かれ目になる5つの事情も参考になさってください。


