「同意があった」を証明できるか|風俗トラブルの証拠と限界
本記事は、当事務所が実際にお受けした事例をもとに作成しています。ご依頼者のプライバシーに配慮し、状況の細部には一部変更を加えています。
メンズエステを利用した直後、店舗のスタッフから「被害届を出すか、示談にするか」と迫られ、治療費と示談金をあわせた約27万円を翌日までに支払うと約束してしまった男性からのご依頼です。弁護士が受任したその日のうちに受任通知を相手方へ届けたところ、請求は止まり、約束していた金銭を支払わないまま終結しました。どのような経過をたどったのか、また同じような場面でどのような点に気をつけるとよいのかを、順にご紹介します。
事案の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ご相談者 | メンズエステを複数回利用していた男性 |
| 相手方 | 利用していたメンズエステの店舗(スタッフ) |
| ご相談のきっかけ | 利用直後に店舗スタッフから「被害届を出すか、示談にするか」と迫られ、治療費約7万円と示談金20万円を翌日までに支払うと約束した |
| 懸念事項 | 被害届を出されること、事態が大きくなること |
| 解決金 | 支払いなし(約束していた約27万円は支払わずに終結) |
| 解決までの期間 | 受任から半年以上の経過確認を経て終結 |
「被害届か示談か」と迫られ、その場で支払いを約束した
ご依頼者は、同じキャストから継続して施術を受けていた男性です。ご依頼者のお話では、2回目以降の利用で、双方の同意のうえで店舗のルールに違反する行為があったとのことでした。
深夜の利用を終えた直後、店舗のスタッフから連絡が入りました。キャストが泣きながら禁止されている行為があったと訴えている、病院で治療を受けさせている、という説明とともに、被害届を出すか示談にするかの選択を求められたのです。
ご依頼者はそのまま路上でスタッフと直接話をすることになりました。大ごとにしたくないという気持ちから、いくらなら払えるのかという問いに対し、治療費として約7万円、示談金として20万円を翌日までに用意すると答え、その場は解散となりました。
帰宅後も動揺が収まらないまま、ご依頼者はその日の午前中に当事務所へご相談くださいました。支払いの期限は翌日に迫っており、時間の余裕がほとんどない状況でした。
弁護士の対応と解決までの流れ
店舗が電話に応じないため、メッセージアプリで受任通知を届ける
ご相談を受けた当日に受任し、弁護士からすぐに相手方の店舗へ電話で連絡を試みました。しかし、何度かけても店舗は応答しませんでした。
翌日の支払い期限を前に、窓口が弁護士に移ったことを相手方へ確実に伝える必要がありました。そこで弁護士は受任通知を作成し、ご依頼者がそれまで相手方とのやり取りに使っていたメッセージアプリを通じて送付する方法をとりました。相手方が通知を読んだことを確認したうえで、ご依頼者が以後直接連絡を受けることのないよう、その連絡経路を遮断しています。
刑事手続に備えた体制を整える
相手方は被害届の提出を口にしていたため、金銭の請求とは別に、刑事手続に進む可能性も考えておく必要がありました。そこで、万一ご依頼者が捜査の対象となった場合にも、弁護士がすぐに接見などの対応に入れる体制を整えました。
請求が途絶えた後も経過を確認し、半年以上を経て終結
受任通知の送付後、相手方から当事務所への連絡はなく、ご依頼者に対する請求もありませんでした。約束していた金銭を支払うこともありませんでした。
ただ、示談書を取り交わして終わったわけではないため、すぐに終結とはせず、介入から1か月後、半年後と節目ごとにご依頼者へ経過をご報告しました。その間に、相手方の店舗が閉店の表示になっていることも確認しています。半年以上にわたって相手方に動きがないことを踏まえ、本件は終結としました。
解決結果と対応のポイント
- 翌日に支払う約束をしていた約27万円を、支払わないまま終結しました。
- 受任通知の送付を境に、相手方からの請求と連絡は途絶えました。
- 店舗が電話に応じないため、ご依頼者が使っていたメッセージアプリで受任通知を届けました。
- 万一の刑事手続にも対応できる体制を整えたうえで、半年以上にわたり経過を確認しました。
- 当事務所の介入後、ご依頼者が相手方と直接やり取りする場面はありませんでした。
同じような場面で知っておきたいこと
被害届を出すかどうかと、支払う義務があるかどうかは別の問題
「被害届を出すか、示談にするか」という言い方は、二つに一つを選ばなければならないように聞こえます。しかし、被害届は捜査機関に被害を申告するものであり、金銭を支払う義務があるかどうかは、実際に何があったのか、どのような損害が生じたのかによって別に判断されます。
また、被害届が出されたからといって、それだけで直ちに逮捕や起訴に結びつくわけではありません。一方で、事実関係によっては刑事事件として扱われる可能性もあるため、どちらの問題についても、早い段階で状況を整理しておくことに意味があります。
その場で決めた金額と期限は、一度立ち止まって確認する
深夜の路上で、相手方から繰り返し問われるなかで決めた金額は、治療費の内訳や示談金の根拠が示されないまま決まっていることが少なくありません。治療費であれば、どのような治療にいくらかかったのかを示す資料があるのが通常です。
口頭の約束であっても合意として扱われる場合はありますが、相手方から畏怖させられた状況での約束については、経緯によって効力を争える場合もあります。支払う前に、その約束がどのような状況で交わされたのかを振り返ることが大切です。
相手方が電話に出なくても、受任通知を届ける方法はある
受任通知は、以後の窓口が弁護士であることを相手方に伝えるための書面です。受任通知を送っただけで相手方の請求権そのものがなくなるわけではありませんが、当事者同士の直接のやり取りを止め、話を落ち着いた場に移すきっかけになります。本件のように相手方が電話に応じない場合でも、それまで使われていた連絡手段を工夫して届けることで、窓口の切り替えを伝えられることがあります。
示談書を交わさずに終わる場合は、一定期間の見守りが要る
請求が止まったとしても、示談書で清算を確認していない以上、相手方が後から連絡してくる可能性はゼロではありません。そのため本件では、期間を区切って経過を確認し、状況を見たうえで終結としました。いつまで様子を見ればよいのかを一人で抱え込まずに済むことも、弁護士が関わる意味の一つです。
担当弁護士からのコメント
まず前提として、店舗のルールに違反する行為は行うべきではありません。そのうえで申し上げると、「被害届を出すか、示談するか」という言葉は、その場で支払いを約束させるための圧力として使われることがあります。動揺したまま、金額と支払期限をその場で約束してしまうことは、できる限り避けていただきたいと考えています。
相手方が弁護士からの電話に応じないケースもありますが、受任通知を届ける方法を工夫することで、窓口が弁護士に移ったことを伝えることはできます。本件では、受任通知の送付を境に相手方からの請求が止まりました。
もっとも、示談書を取り交わして解決したわけではないため、一定期間は相手方の動きを見守る必要がありました。弁護士が経過を確認し、万一の刑事手続にも備えておくことで、ご依頼者が不安を抱えたまま一人で待ち続ける負担を軽くできたと考えています。
メンズエステや風俗店の利用後に「被害届を出す」と言われ、支払いを求められている方は、支払ってしまう前に一度ご相談いただくことをおすすめします。当事者同士でのやり取りは相手方のペースで進みやすいため、弁護士が窓口になることで、状況を落ち着いて整理したうえで対応を考えられる場合があります。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


