示談で刑事事件化を防ぐには|被害届提出前の示談がカギになる理由

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

 風俗店の利用中に「本番行為をしただろう」「盗撮しただろう」と指摘され、店やキャストから「被害届を出す」と言われた——。あるいは、その場は収まったものの「後から警察に行かれるのではないか」と不安を抱えている。こうした状況で多くの方が気にされるのが、「これは刑事事件になってしまうのか」という一点です。

 結論から言えば、刑事事件になるかどうかは、被害者が警察に被害届を出す「前」の段階での対応によって大きく変わります。そして、その分かれ目で有効な手段が「示談」です。

 この記事では、風俗トラブルを利用者(客側)の立場から見たときに、なぜ「被害届提出前の示談」が刑事事件化を防ぐカギになるのかを、刑事手続の流れに沿って整理します。過度に不安を煽ることなく、冷静に判断していただくための材料としてお読みください。

風俗トラブルはどのような流れで「刑事事件」になるのか

 まず、刑事事件がどのように進むのか、全体像を押さえておきます。おおまかには次の流れです。

  1. 事件の発生(例:本番行為・盗撮などのトラブル)
  2. 捜査機関による認知(多くは被害者からの被害届がきっかけ)
  3. 捜査(事情聴取・取調べ、証拠の収集など)
  4. 送致(事件が検察官のもとへ送られる)
  5. 起訴・不起訴の判断
  6. 起訴された場合は裁判 → 判決(有罪となれば前科が残る)

 ここで重要なのは、2の「認知」があって初めて、3以降の捜査が本格的に動き出すという点です。そして、風俗トラブルにおいて認知の主な入口となるのが、被害者(店やキャスト)からの被害届です。

 風俗トラブルで問題になりやすい行為と、想定される罪名の例は次のとおりです。

  • 同意のない本番行為の強要:不同意性交等罪(刑法177条)など
  • 相手に無断での撮影:性的姿態等撮影罪(撮影罪)など

 いずれも、被害者側が「被害を受けた」と警察に申告しなければ、警察がそのトラブルの存在を知ることは通常ありません。逆に言えば、申告される前に当事者間で解決できていれば、そもそも捜査の対象にならずに済む可能性があるということです。

被害届が「分岐点」になる理由

被害届と告訴は何が違うのか

 「被害届」と「告訴」は混同されがちですが、法的な意味合いが異なります。

  • 被害届:犯罪の被害に遭った事実を警察に届け出るものです。それ自体に、警察へ捜査を強制する法的な効力はありません。届け出を受けて捜査を始めるかどうかは、原則として警察の判断に委ねられています。
  • 告訴:被害者などが犯人の処罰を求める意思表示です。告訴には被害届にはない効力があり、受理されれば警察には速やかに捜査すべき義務が生じ、原則として事件を検察官へ送致することになります。

 つまり、被害者がまだ警察に何も申告していない段階(=認知される前)は、事件化を避ける余地が最も大きく残されている局面だといえます。

性犯罪は「非親告罪」であることに注意

 かつて強制わいせつ罪・強姦罪などの性犯罪は、被害者の告訴がなければ起訴できない「親告罪」でした。しかし、2017年の刑法改正により、これらの性犯罪は非親告罪へと改められています。現在の不同意わいせつ罪・不同意性交等罪、そして性的姿態等撮影罪も、いずれも非親告罪です。

 これが実務上、意味するところは重要です。性犯罪については「告訴を取り下げてもらえば起訴できなくなる」という仕組みが使えません。 理論上は、告訴がなくても起訴は可能だからです。

 そのため、風俗トラブルで前科を避けたい場合は、「告訴を取り下げさせる」ことよりも、そもそも被害届や申告に至らせない=警察に認知させないことが、実務上の要になります。認知される前に円満に解決していれば、捜査が始まらず、逮捕・取調べ・前科といったリスクが現実化しにくくなるのです。

被害届提出前の示談で期待できること

 被害者との間で、被害届が出される前に示談が成立した場合、次のような効果が期待できます。

  • 事件が警察に発覚しにくくなる:捜査が始まらなければ、出頭要請・取調べ・逮捕・勾留・裁判といった一連の手続に進む可能性そのものが生じにくくなります。
  • 家族や職場に知られずに解決できる可能性が高まる:捜査が動かなければ、周囲に知られるきっかけも生まれにくくなります。
  • 「被害届・告訴をしない」旨を確認できる:示談書に、被害者が今後は被害届や告訴を提出しないことを盛り込めれば、将来の申告を事実上抑える効果が見込めます。

 一方で、示談は「免罪符」ではありません。次の点は冷静に理解しておく必要があります。

  • 前述のとおり性犯罪は非親告罪であるため、示談が成立しても、理論上は捜査・起訴の可能性が完全にゼロになるわけではありません。ただし、被害者が処罰を望まず申告もしていない場合、実際に事件として動くことは多くありません。
  • 事案が重大・悪質な場合、常習性がある場合、同種の前科がある場合などは、示談が成立していても効果が限定的になることがあります。
  • したがって、この記事の内容は「示談さえすれば必ず不起訴になる」という趣旨ではなく、あくまで刑事事件化のリスクを下げるための現実的な選択肢として捉えてください。

なぜ「早さ」が決定的なのか

 示談は、成立するタイミングが早いほど効果が大きくなります。タイミング別に整理すると、次のようになります。

  • 被害届が出される前:事件が認知されないため、逮捕や取調べを受けず、前歴すらつかずに解決できる可能性があります。最も効果が大きい局面です。
  • 被害届が出された後〜送致される前:捜査は始まってしまいますが、示談が成立すれば、不起訴につながる可能性があります。
  • 起訴された後:前科を避けることは難しくなりますが、示談は量刑を軽くする方向の事情として考慮され得ます。

 このように、同じ示談でも、「被害届の前か後か」で得られる結果が大きく変わります。

 特に、逮捕されずに在宅で捜査が進むタイプの事件では、身柄事件のような厳格な時間制限がなく、いつ警察が動くのかを外から読みにくいという特徴があります。「連絡がないから大丈夫」と自己判断して放置しているうちに事態が進んでしまうこともあるため、早めに手を打つことが重要です。

風俗トラブルで示談を進めるときの注意点

 被害届提出前の示談は有効な手段ですが、進め方を誤ると、かえって状況を悪化させることがあります。特に次の点に注意してください。

本人が直接交渉しようとしない

 風俗トラブルでは、相手が店やキャストであるため、「直接連絡して謝れば穏便に済むのでは」と考えがちです。しかし、加害を指摘されている側が被害者側に直接接触することは、二次被害・証拠隠滅・威迫(口止め)とみなされるおそれがあり、逆効果になりかねません。場合によっては、その接触自体が捜査を加速させる要因にもなります。示談交渉は、第三者である弁護士を通じて行うのが安全です。

その場で示談書にサインしたり現金を渡したりしない

 トラブルの現場で、その場しのぎに示談書へサインをしたり金銭を支払ったりすると、後から不利益を被ることがあります。

「不当な請求」と「誠実に対応すべき示談」を切り分ける

 「払わなければ通報する」「罰金○○万円を払え」といった、根拠の乏しい高額請求は、通常の示談とは別の問題です。美人局や恐喝が疑われるケースでは、言われるままに支払うことがかえって被害を拡大させます。「戦うべき不当請求なのか」「誠実に対応すべき事案なのか」を客観的に見極めることが、最初の分岐点になります。

口約束にせず、必要な条項を漏らさない

 合意した内容は、必ず書面(示談書)にします。被害届・告訴をしないことの確認に加え、秘密保持や、撮影データがある場合の削除などを盛り込むことが考えられます。どのような条項が必要かは事案ごとに異なるため、この点も弁護士に確認するのが確実です。

迷ったら、早い段階で弁護士に相談を

 風俗トラブルで刑事事件化を避けたい場合、ポイントは大きく二つです。ひとつは、被害届が出される前という早い段階で動くこと。もうひとつは、当事者間の直接対応で状況を悪化させないことです。

 相手が本当に被害届を出すのか、それとも不当な金銭請求にすぎないのか。誠実に示談を目指すべき事案なのか。こうした見極めは、当事者本人には難しいのが実情です。判断を誤らないためにも、身に覚えのあるトラブルを抱えたときは、早めに専門家へ相談することをおすすめします。

まとめ

 

  • 風俗トラブルが刑事事件になるかどうかは、被害届が出される前の対応で大きく変わる。
  • 被害届は捜査の主な入口であり、認知される前に解決できれば、逮捕・取調べ・前科のリスクが生じにくい。
  • 性犯罪は非親告罪のため、「告訴を取り下げさせる」より「そもそも申告・認知に至らせない」ことが実務上の要。
  • 示談は早いほど効果が大きいが、万能ではない。重大・悪質・常習・前科ありの事案では効果が限定的なこともある。
  • 本人が直接交渉しない、その場でサイン・支払いをしない、不当請求と切り分ける——この3点に注意する。

風俗トラブルのご相談は当事務所へ

 当事務所は、東京・池袋(東池袋)と新橋に拠点を置き、風俗店でのトラブル(本番・盗撮)に、利用者(客側)の立場から対応しています。刑事事件にすると言われている方、高額な金銭を請求されている方の相談を数多くお受けしてきました。

  • 被害届・告訴の提出前に、刑事事件化の回避を目指した交渉を行います。
  • 秘密を厳守し、家族・職場に知られないままの解決を目指します。
  • 年中無休・24時間の無料相談(電話・メール・LINE)を受け付けています。

 「自分にも落ち度があるから」と一人で抱え込む前に、まずは一度ご相談ください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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