【風俗トラブル】利用中に体調が急変し救急搬送された|店と家族に知られること
この記事は、2026年10月2日時点の民法にもとづいて作成しています。個別の事情によって見通しが変わることがありますので、具体的な対応は弁護士にご相談ください。
「示談は済んだはずなのに、示談書は店が持っていったままで、手元には何もない」「毎月支払いを続けているが、あと何回で終わるのかを書面で確かめられない」。風俗店やメンズエステの利用をめぐるご相談では、示談書の原本が店の側にしかないという状況を伺うことがあります。
示談書は当事者が1通ずつ持つもの、という説明はよく見かけます。それ自体は誤りではありませんが、なぜ持っておく必要があるのか、持っていないと何が困るのかまでは語られないことが多く、「示談が済んだのなら紙はなくてもよいのでは」と考える方もいらっしゃいます。
この記事では、示談がまとまった後や、支払いの途中にある方を念頭に、控えを求めるべき理由と、求めるときの段取りに絞って説明します。何に署名したのか内容そのものが分からない場合は【風俗トラブル】店の事務所で書かされた紙の写真を撮っていない|内容を後から確かめる方法、署名した書面の効力を争いたい場合は脅されて署名した念書・示談書は有効か|「無効」と「取消し」の違いで扱っていますので、あわせてご覧ください。
この記事で扱うこと
この記事では、次のことを順に扱います。
- 控えがないことで、示談の成立や効力が変わるのか、変わらないのか。
- 控えが必要になる場面と、それぞれの場面で控えが果たす役割。
- 完済の前後で受け取っておきたい書面。
- 受け取るべき控えの形と、受け取ったときに確かめる点。
- 控えを求めにくいとき、断られたときの考え方。
控えがなくても示談が消えるわけではない
合意は書面がなくても成り立ち得る
示談は、当事者が互いに譲り合って争いを終わらせる約束であり、法律上は和解契約にあたります。契約は、法令に特別の定めがある場合を除き、書面を作らなくても当事者の合意によって成立します(民法522条2項)。そのため、示談書の控えを持っていないことだけを理由に、示談がなかったことになるわけではありません。
問題は「示す手段」が相手方の側にしかないこと
他方で、示談書は、どのような内容で合意したのかを後から示すための、最も確かな手段です。原本が店の側にしかないということは、合意の中身を示す手段を、もともと利害が対立していた相手方だけが持っている状態だといえます。控えを求める理由は、示談の効力を生じさせるためではなく、この偏りをなくしておくことにあります。
2通作って1通ずつ持つのが通常の形
双方が署名する示談書は、同じものを2通作り、各自が1通ずつ保管する形が一般的です。部数や署名・押印の整え方は示談書の日付・署名・押印・部数|書面を整えるときの実務で説明しています。客が店に差し入れる「誓約書」「念書」のような書面は、原本を受け取った側が保管するのが通常ですが、その場合でも、自分が何を約束したのかを示す写しを手元に残しておく意味は変わりません。
控えが必要になる場面
控えの意味は、示談がまとまったその日よりも、後になって分かることがほとんどです。次の表は、控えが必要になる典型的な場面を、時間の流れに沿って並べたものです。
| 場面 | 控えが果たす役割 | 控えがないと起きやすいこと |
|---|---|---|
| 支払いの途中 | 金額・回数・期日・振込先を照らし合わせる | 残額や支払回数について、店の説明に頼るしかなくなる |
| 完済のとき | 約束した支払いを終えたことを確かめる | どこで終わりなのかを自分で確かめられない |
| 完済の後に再び請求されたとき | 清算の趣旨の条項があることを示す | 「そのような約束はしていない」と言われたときの材料が乏しい |
| キャスト本人などから連絡が来たとき | 誰と何について合意したのかを示す | 店との示談で何が片づいたのかを説明しにくい |
| 警察から連絡が来たとき | 示談の成立と、その内容を示す | 示談に関する資料を自分の側から出せない |
| 弁護士に相談するとき | 正確な文言をもとに見通しを立てる | 記憶に頼った検討になり、判断に時間がかかる |
以下、それぞれの場面について順に説明します。
支払いの途中と完済のとき
分割払いでは照らし合わせる場面が毎月ある
分割で支払っている場合、控えがないと、毎回の支払いが約束どおりなのかを自分で確かめることができません。「支払いが遅れたので残りを一括で」「振込先が変わった」などと告げられたときも、書面の条項と照らし合わせることができず、店の説明をそのまま受け入れるしかなくなります。分割払いの条項の考え方は分割払いの示談書|期限の利益喪失条項と公正証書で扱っています。
完済のときに受け取る書面
支払いをする側は、支払いと引き換えに受取証書、つまり領収書の交付を求めることができます(民法486条1項)。また、念書や借用書のように、客が支払いを約束する形で差し入れた書面については、全額を支払ったときに、その書面の返還を求めることができます(同法487条)。これに対し、示談書のように双方が約束を交わす書面は、完済した後も清算の内容を示す資料として意味を持つため、控えを手元に残しておくことが大切になります。領収書の作り方は【風俗トラブル】示談金の領収書・受領書をどう作るか|後日の否認に備えるをご覧ください。
控えは完済の前にそろえておく
完済した後は、店とこれ以上関わりたくないと考えるのが自然です。ただ、その時点で控えを求めようとすると、連絡を取り直すこと自体が大きな負担になります。控えは、支払いが残っていて店の側にも連絡を取る理由があるうちにそろえておくのが現実的です。
示談の後に別の請求や連絡が来たとき
清算の条項を示すのは、請求を受けた側になる
示談で争いが終わったことを主張し、その内容を示していくのは、多くの場合、再び請求を受けた側です。示談書に、この件についてほかに債権債務がないことを確認する清算の趣旨の条項があっても、その文言を示せなければ、話は「どのような合意をしたのか」から始まり直すことになります。清算条項の働きは清算条項の意味|後から追加請求されないために、条項があっても蒸し返される場面は清算条項を入れても蒸し返される場面|条項の射程の限界で説明しています。
店とキャスト本人は別の当事者
風俗トラブルでは、店が交渉の窓口となり、示談書も店が用意することがよくあります。この場合、示談書の当事者が店なのか、キャスト本人なのか、本人の署名があるのかは、書面を見なければ分かりません。店との示談でキャスト本人との関係まで片づいているとは限らず、後日キャスト本人から連絡が来たときに、誰と何について合意したのかを示す材料が控えです。この点は誰に払うのか|店の損害とキャスト個人の損害は別、相手方を確かめないまま支払うことの危うさは【風俗トラブル】支払った後に相手が別人だと分かった|本人確認をしない示談の危うさで扱っています。
原本が一つだけ相手方の手元にあるということ
原本が一つしかなく、それが相手方の手元にある場合、後から書き加えられたり、別の書面と差し替えられたりしても、こちらには照らし合わせる材料がありません。実際にそうしたことが起きるかどうかとは別に、照らし合わせられる写しを持っておくこと自体が、書面の内容を固定する働きをします。
警察から連絡が来たとき
示談の成立を示す基本的な資料になる
トラブルの内容によっては、示談の後に被害の申告がされたり、示談の前から警察が動いていたりすることがあります。その場合、示談が成立していることやその内容は、捜査機関が事件の扱いを考えるうえで考慮される事情の一つです。示談書の写しは、そのことを示す基本的な資料になります。
どの条項が入っているかで意味が変わる
示談書に、処罰を求めない旨や、被害届を出さない・取り下げる旨の条項が入っているかどうかで、示談が刑事手続の中で持つ意味は変わります。控えがないまま警察から連絡を受けると、示談の内容を説明する手段が、自分の記憶しか残っていないことになりかねません。示談書に入れておきたい条項については風俗トラブルの示談書に必ず入れる6条項|抜けると後で効かないをご覧ください。
受け取る控えの形と、確かめる点
望ましいのは原本をもう1通
最も確かなのは、双方が署名・押印した原本を2通作り、そのうち1通を受け取る形です。署名の場であれば、「同じものをもう1通作り、こちらにも1通いただけますか」と伝えるのが自然な求め方です。署名の前に確かめておきたい項目は示談書に署名する前の最終確認|後から戻しにくい項目はどこかで説明しています。
原本が難しければ、署名後の全ページの写し
店が原本を1通しか作らない場合でも、署名・押印を終えた後の全ページの写真や写しを受け取っておけば、内容を照らし合わせる材料になります。署名の前の段階の写しでは、その後に書き加えられた部分を確かめられないため、署名を終えた後のものであることが大切です。
受け取ったときに確かめる点
控えを受け取ったら、次の点を確かめておきます。
- ページがすべてそろっていて、抜けているページがないこと。
- 自分の署名だけでなく、相手方の署名・押印もあること。
- 相手方の名義が、店なのか、キャスト本人なのか、その両方なのか。
- 日付、金額、支払回数、期日、振込先が記載されていること。
- 空欄のまま残っている箇所や、手書きで書き足された箇所がないこと。
- 清算の趣旨の条項や、個人情報の扱いに関する条項があるかどうか。
受け取った控えをどこに保管するかも、あわせて考えておく必要があります。郵送で受け取る場合の送付先の決め方は家族に知られずに解決できるか|連絡方法・書面の送付先の設計で扱っています。
控えを求めにくいとき、断られたとき
控えを求めることは、特別な要求ではない
「控えがほしいと言うと、店の機嫌を損ねるのではないか」とためらう方もいらっしゃいます。しかし、自分が当事者となった書面の写しを求めるのは、契約の場面ではごく通常のことです。求める内容は、控えを受け取りたいという一点に絞るのが無難で、金額や経緯の話を改めて持ち出すと、話が別の方向に広がりやすくなります。
断られたときは、その経過も記録に残す
控えを求めても応じてもらえないときは、求めた日時、方法、店の返答を記録しておきます。支払いが残っている場合は、控えが得られないまま支払いや新たな署名を重ねる前に、一度立ち止まって検討することをお勧めします。店に写しを求めるときの具体的な伝え方や、法律上の手段については【風俗トラブル】店の事務所で書かされた紙の写真を撮っていない|内容を後から確かめる方法で説明しています。
弁護士が窓口になる場合
弁護士がご依頼を受けると、相手方に受任を知らせたうえで、示談書の写しの送付を求めます。ご本人が店と直接やり取りする必要がなくなるため、控えを求める過程で別の話に広がることも避けやすくなります。受任を知らせる書面の働きは受任通知とは何か|送られると相手方との関係はどう変わるかをご覧ください。
よくあるご質問
示談書に相手方の署名がなかったように思います。控えもありません。示談は成立していないのでしょうか
示談は書面がなくても当事者の合意によって成立し得るため、相手方の署名がないことだけで、直ちに示談が成立していないことにはなりません。ただし、相手方が何に合意したのかを示す材料が乏しい状態ではあります。支払いを続けている場合は、書面の内容と当事者を確かめたうえで、今後の支払いをどうするかを検討することになります。
すでに完済しました。今から控えを求める意味はありますか
完済した後であっても、再び請求を受けたときや、警察から連絡が来たときに、示談の内容を示す資料として意味があります。店と連絡を取り直すことに負担を感じる場合は、まず手元の振込記録や領収書、やり取りの履歴を整理し、そのうえで控えを求めるかどうかを検討してください。
スマートフォンで撮った写真でも控えになりますか
署名・押印を終えた後の全ページが鮮明に写っていれば、内容を照らし合わせる資料として役立ちます。撮影した日時が分かるよう、元の画像のまま保存しておいてください。原本の控えを受け取れる場面であれば、原本を受け取るほうがより確かです。
まとめ
- 示談は書面がなくても合意によって成立し得るため、控えがないことだけで示談がなかったことにはならない(民法522条2項)。
- 控えを求める理由は、合意の中身を示す手段が相手方の側にしかない状態をなくしておくことにある。
- 分割払いの途中では、金額・回数・期日・振込先を照らし合わせるために控えが必要になる。
- 完済のときは領収書の交付を求めることができ(民法486条1項)、差し入れた念書や借用書は返還を求めることができる(同法487条)。
- 再び請求を受けたとき、キャスト本人などから連絡が来たとき、警察から連絡が来たときに、控えが示談の内容を示す資料になる。
- 望ましいのは原本をもう1通受け取ることであり、難しければ署名後の全ページの写しを受け取る。
- 控えは支払いが残っているうちにそろえ、断られた場合はその経過を記録に残す。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、風俗店やメンズエステの利用をめぐるトラブルのご相談を、池袋と新橋の事務所でお受けしています。示談書の控えを受け取らないまま支払いを続けている方や、完済した後に再び連絡を受けた方のご相談も承っています。
ご相談の方法は、電話・メール・LINEからお選びいただけます。示談の内容を手元で確かめられず不安を感じている方は、まずは一度ご連絡ください。


