【親子問題】18歳未満の子が性的搾取の被害に遭っている場合の窓口

若井亮

若井亮

テーマ:親子問題

子どもが性的な被害に遭っているかもしれないと気づいたとき、親としてまず戸惑うのは「どこに連絡すればよいのか」という点ではないでしょうか。警察、児童相談所、学校、ネット上の削除窓口など関わる機関が多く、どれから動くべきかが見えにくいのが、この問題の特徴です。本記事では、18歳未満の子が性的搾取の被害に遭っている、またはその疑いがある場合に保護者が頼れる窓口と、緊急性の見極め方、親が法的にとれる手段を整理します。

本記事は2026年9月時点の法令と公的機関の情報に基づいています。相談窓口の番号や受付時間は変更されることがあるため、各機関の案内もあわせてご確認ください。


「性的搾取」とはどのような被害を指すのか

 法律上、18歳未満の者は「児童」として特別に保護されています。性的搾取という言葉に一つの法的な定義があるわけではありませんが、政府の「児童の性的搾取等に係る対策の基本計画」では、児童買春や児童ポルノ、性的な画像を送らせる行為など、子どもの性を利用する行為を広く対象にしています。主な被害の形は次のとおりです。

  • 大人から性的な行為をされる、または求められる被害。
  • 金銭や物と引き換えに性的な関係を持たされる被害(児童買春)。
  • 裸や下着姿などの画像を撮られる、送らされる、ネット上に出回る被害。
  • 性的なサービスを伴う仕事や撮影に引き込まれる被害。


 注意しておきたいのは、子が自分から相手に会いに行った、やり取りに応じていた、お金を受け取っていたといった事情があっても、法律上は保護されるべき被害者として扱われるという点です。児童買春で処罰されるのは対価を払った大人の側です。子どもの落ち度を問う受け止め方をすると、子は次に何かあったときに相談しにくくなってしまいます。

最初に確認したいのは緊急性

 窓口を選ぶ前に、今どの段階にあるのかを見極めることが大切です。状況によって、最初に連絡すべき先が変わります。

危険が差し迫っている・被害を受けて間もない場合

 子が今まさに加害者と一緒にいる、連れ出されている、身の危険があるといった場合は、ためらわずに110番通報をします。被害を受けて間もない場合は、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター(#8891)に連絡すると、医療機関での診察や検査、証拠の採取、警察への同行などを一か所で調整してもらえることがあります。性的な被害では、時間がたつほど医療面の対応や証拠の確保が難しくなっていくため、受診はできるだけ早めが望ましいとされています。

画像などを材料に脅されている場合

 「画像をばらまく」などと言われ、さらに画像を送るよう求められたり、金銭を要求されたりしている場合は、要求に応じず、相手とのやり取りを消さずに警察へ相談します。子が慌ててアカウントを削除すると、相手を特定する手がかりが失われることがあります。初動の考え方はセクストーション(性的脅迫)に遭ったら|最初の1時間で決まることでも解説しています。

被害が続いているが差し迫ってはいない場合

 しばらく前から続いている、あるいは過去に被害があったと分かったという場合は、次に述べる窓口の中から、加害者との関係に応じて相談先を選びます。被害届を出すかどうかをすぐに決められなくても、相談すること自体は可能です。

加害者との関係によって窓口が変わる

 同じ性的被害でも、誰から受けているかによって中心になる機関が異なります。

加害者との関係中心になる窓口押さえておきたい点
同居の家族・親族児童相談所、警察保護者やそれに準じる人からの被害は児童虐待として扱われ、気づいた人には通告が求められる(児童福祉法25条)
学校・塾・部活動・習い事の関係者警察、学校や事業者2026年12月25日施行のこども性暴力防止法により、学校などには被害が疑われる場合の調査や被害児童の保護・支援が求められる
SNSなどで知り合った相手警察16歳未満の子に対し、わいせつ目的で面会を求めたり性的な映像の送信を求めたりする行為自体が、年齢差などの要件のもとで処罰の対象になった(刑法182条)
金銭のやり取りを伴う関係や仕事警察、児童相談所児童買春・児童ポルノ禁止法などの対象となる。子の生活環境の立て直しも並行して考える必要がある


 家庭内での被害の場合、加害者と同じ家で暮らし続けること自体が子の安全を損なうおそれがあります。児童相談所には一時保護などの権限があり、もう一方の親が子を連れて家を離れる選択肢も含めて相談できます。

 主な相談窓口は次のとおりです。

窓口連絡先主な役割
警察の性犯罪被害相談電話#8103(24時間)性犯罪・性暴力の被害相談。発信地を管轄する都道府県警察につながる
ワンストップ支援センター#8891医療、心理的支援、警察への同行、弁護士の紹介などを一か所で調整
児童相談所189(虐待の通告)/0120-189-783(相談)子どもの保護、家庭への支援、一時保護
性暴力に関するSNS相談「Cure time」内閣府のウェブサイトから電話で話しにくい場合のチャット相談
法テラス 犯罪被害者支援ダイヤル0120-079714支援機関や弁護士費用の援助制度の案内
法務局(子どもの人権110番)0120-007-110子どもの人権に関する相談、ネット上の画像の削除要請


 窓口ごとに受付時間が異なり、一つの窓口ですべてが終わるわけでもありません。警察と児童相談所、学校が並行して動くこともあります。親子の問題全般の相談先の考え方は、【親子問題】親子の問題はどこに相談すればよいのか|警察・行政・弁護士の役割分担も参考にしてください。

子から打ち明けられたときに親が気をつけたいこと

 子どもが被害を話してくれたとき、親の受け止め方は、その後の回復にも手続にも影響します。

  • 話を疑ったり否定したりせず、「話してくれてありがとう」「あなたは悪くない」と伝えます。
  • 「誰に」「何をされたか」の概要が分かれば十分とし、細かく聞き出そうとしないようにします。
  • 子が自分から話した言葉を、そのまま日時とともにメモに残します。
  • 子のスマートフォンのやり取りや記録を消させないようにします。
  • 親が加害者に直接連絡したり、問い詰めに行ったりすることは避けます。


 細かく聞きすぎないほうがよいのは、子どもは質問の仕方に影響を受けやすく、何度も聞かれるうちに記憶が変わってしまうおそれがあるためです。捜査の場面では、警察・検察・児童相談所が事前に協議したうえで、代表者が録音・録画をしながら聴取する「代表者聴取(司法面接)」という取組が行われています。2023年の刑事訴訟法改正では、こうした聴取の録音・録画記録を、一定の要件のもとで法廷での主尋問に代えて証拠とできる規定も設けられました(刑事訴訟法321条の3)。親がすべてを聞き出さなくても、専門家に委ねる道が用意されています。

親が法的にとれる手段


被害届と告訴

 子が18歳未満の場合、親は法定代理人として、子とは独立して告訴をすることができます(刑事訴訟法231条1項)。2017年の刑法改正以降、性犯罪の多くは告訴がなくても起訴できる罪になっていますが、告訴は処罰を求める意思をはっきり示す手続として今も意味があります。手続の違いは事件は『いつ』始まるのか|相談・被害届・告訴・立件の違い、受理されない場合の対応は被害届を受理してもらえない|断られたときにできることで解説しています。被害届を出すか決めかねている段階でも、相談した事実が記録に残ること自体に意味がある場合があります(【親子問題】警察に相談した記録を残す意味|相談票と後の手続)。

時効の考え方

 2023年の刑事訴訟法改正で、性犯罪の公訴時効は5年延長され、さらに被害者が18歳未満の場合は、18歳に達するまでの期間に相当する期間が上乗せされることになりました。子どもが被害をすぐに言葉にできない実情を踏まえた改正です。一方、加害者に損害賠償を求める民事の請求には別の期間制限があり、刑事と同じようには延びていません。いずれも、いつから数えるのかが問題になることがあるため、「もう遅いのでは」と自己判断せず、早めに相談することをおすすめします。

示談と損害賠償

 加害者側から示談を申し入れられることもあります。子が未成年の場合、示談書の当事者として署名するのは親権者であることが一般的です。条件によっては刑事処分や今後の接触の制限に影響するため、内容を十分に確認しないまま応じないことが大切です。書面の当事者については未成年の被害者と示談する|親権者の同意と書面の当事者も参照してください。また、親の考えと子の気持ちが食い違う場面もあります。年齢に応じて子の意向を聴きながら進めることが望ましいでしょう。

費用面の支援

 2026年1月13日から、法テラスによる「犯罪被害者等支援弁護士制度」の運用が始まりました。不同意性交等や不同意わいせつなど一定の性犯罪の被害者が、資力などの要件を満たす場合に、被害届や告訴状の作成、示談交渉、損害賠償請求、捜査機関や裁判所への付添いなどについて、原則として費用の負担なく弁護士の支援を受けられる制度です。対象や要件は、法テラスの犯罪被害者支援ダイヤルで確認できます。

性的な画像が出回っている・送ってしまった場合

 18歳未満の子の性的な画像は、本人が撮影したものであっても児童ポルノにあたり得ます。そのため、証拠として残そうと親が画像を自分の端末に転送したり、第三者に見せたりすることは避け、投稿されている場所のURLや日時を控えたうえで、扱いを警察に相談するのが安全です。

 ネット上からの削除については、法務局が削除依頼の方法を助言したり、事案に応じてプロバイダに削除を要請したりしているほか、違法・有害情報相談センターやセーフラインといった窓口もあります。大規模なプラットフォームに削除申出への対応を求める仕組みは【男女トラブル】情報流通プラットフォーム対処法で削除依頼はどう変わったのか、削除と投稿者の特定をどの順で進めるかは【不当要求対応】拡散された後の順序|削除と発信者特定のどちらを先に動かすかで解説しています。

弁護士に相談する意味

 この問題では、警察、児童相談所、学校、削除の窓口、加害者側と、親が同時に向き合う相手が多くなりがちです。子どものケアをしながらそのすべてに対応するのは、親にとって大きな負担になります。

 弁護士は親の代理人として、被害届や告訴の準備、捜査機関とのやり取りへの付添い、加害者側からの示談の申入れへの対応、学校や事業者への事実確認の求めなどを担うことができます。どの窓口を先に動かすかを整理するだけでも、見通しが立ちやすくなることがあります。当事務所は親子の問題に継続して取り組んでおり、遠方からのご相談もお受けしています。

よくあるご質問


子に「誰にも言わないで」と頼まれています。相談してよいのでしょうか。

 子の気持ちは尊重したいところですが、被害が続いている場合や身の安全に関わる場合には、専門の窓口につなぐことが子を守ることにつながります。相談の段階では、子の名前を出さずに状況を伝えることもできます。相談したことを子にどう伝えるかも含めて、窓口の担当者と一緒に考えるとよいでしょう。

被害から何年もたってから分かりました。今からでも動けますか。

 性犯罪の公訴時効は延長されており、被害者が18歳未満だった場合はさらに長くなります。民事の請求にも期間制限がありますが、いつから数えるかが争点になる場合もあります。まずは被害の時期と、今残っている記録を整理したうえでご相談ください。

加害者が同じ学校の生徒です。学校に伝えるべきでしょうか。

 学校には在籍する子の安全を確保する責任があり、同じ学校内での被害であれば、接触を避けるための配慮などを求めることが考えられます。一方で、刑事手続に進む可能性がある場合、学校での聞き取りが先行すると子の負担が重なることもあります。警察への相談と学校への連絡の順序は、状況に応じて検討が必要です。

 子が性的な被害に遭ったと知ったとき、親が一人で抱え込む必要はありません。緊急性を見極め、加害者との関係に応じた窓口につなぎ、子の話を聞きすぎずに記録を残すことが、最初の一歩になります。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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