【親子問題】祖父母が孫にお金を渡し続けている、止めてもらうには?

若井亮

若井亮

テーマ:親子問題

祖父母が孫にお金を渡すこと自体は、多くの家庭で見られるありふれた光景です。ただ、成人した子(祖父母から見た孫)が働かずに家にいる、浪費が止まらない、親が金銭の要求を断り始めたといった事情があると、祖父母からの援助が「親が閉じた入口とは別の入口」になってしまうことがあります。親が距離を取ろうとしているのに、祖父母が渡し続けているために子の生活が変わらない、という悩みは珍しいものではありません。

この記事では、ひきこもりや浪費、金銭の無心といった問題を抱える成人した子に、その祖父母がお金を渡し続けている場面を中心に、親の立場から取れる手立てを整理します。未成年の孫へのお小遣いについては、一部で触れるにとどめます。


祖父母からの援助が、子の自立を遠ざけることがある

 祖父母にとって孫はいつまでもかわいい存在で、「困っているなら少しくらい」「親が厳しすぎるのではないか」と感じて援助を続けることがあります。多くの場合、そこにあるのは孫を思う気持ちです。
 一方で、親が金銭の要求を断ったり、生活費の援助を段階的に減らしたりしている最中に祖父母からお金が届くと、子にとっては「親に断られても、別のところから手に入る」状態が続きます。親子のあいだで決めた方針が、祖父母の援助によって形だけのものになってしまうおそれがあります。
 祖父母自身の生活への影響も見過ごせません。年金で暮らす祖父母が孫への援助を続けた結果、自分の老後資金が少しずつ減っていくことがあります。さらに、子が祖父母に強い口調で求めたり、断ると機嫌を損ねたりするようになると、援助は「祖父母の好意」から「断りにくい支払い」へと性質が変わっていきます。

祖父母のお金の使い道を、親が決めることはできるのか


祖父母の財産の使い道は祖父母が決める

 前提として、祖父母のお金は祖父母自身の財産です。判断能力に問題がない限り、誰にいくら渡すかは祖父母が決めることであり、子どもである親であっても、法的にそれを止める権限はありません。成人した孫が祖父母からお金を受け取ること自体も、それだけで違法になるものではありません。
 そのため、親にできるのは祖父母に「止めさせる」ことではなく、祖父母自身に納得してもらい「止めてもらう」ことが基本になります。

孫が未成年の場合

 孫が18歳未満であれば、親は親権者として子の財産を管理する立場にあります(民法824条)。祖父母から渡されたお金を親が預かって管理することはできますが、祖父母が渡すこと自体を禁じられるわけではないため、話し合いが中心になる点は変わりません。

祖父母の判断能力が衰えている場合

 祖父母に物忘れが目立つ、言われるままにお金を渡している、渡したこと自体を覚えていないといった様子がある場合は、事情が異なります。判断能力が十分でない状態でお金が流れ出ているのであれば、祖父母本人を守る必要がある問題です。
 このような場合、家庭裁判所に成年後見・保佐・補助の開始を申し立てる方法があり、申立ては四親等内の親族も行えます(民法7条・11条・15条1項)。補助の開始には本人の同意が必要です。後見人などが選ばれると、祖父母の財産は後見人などが管理し、孫への援助を続けるかどうかも、祖父母の生活を守る観点から判断されることになります。まずはかかりつけ医に、祖父母の様子を伝えて相談してみるのも一つの方法です。

援助が「求められて渡すもの」になっているとき

 祖父母が自分の意思で渡しているのではなく、子が繰り返しお金を求めている、断ると大声を出したり物に当たったりする、という状況であれば、問題は家族の考え方の違いにとどまりません。
 高齢者虐待防止法は、高齢者の親族が高齢者の財産を不当に処分したり、高齢者から不当に財産上の利益を得たりすることを、虐待の一つとして定めています(同法2条4項2号)。祖父母が65歳以上であれば、市町村や地域包括支援センターがこうした相談を受け、事実の確認や支援を行う窓口になります。行政の対応については【親子問題】高齢の親が被害者の場合|行政が動く仕組みでも解説しています。
 また、脅してお金を出させる行為は恐喝罪にあたることがあります。ただし、祖父母と孫は直系血族にあたるため、恐喝については刑が免除される親族間の特例が及びます(刑法251条・244条1項)。一方で、暴行・傷害・脅迫にはこの特例はなく、身の危険を感じる場面では警察への相談を優先してください。

祖父母の状況考えられる窓口・手立て
自分の意思で渡していて、判断能力に問題はない家族での話し合い、窓口の一本化
判断能力の衰えがうかがわれるかかりつけ医への相談、成年後見などの申立て
子から繰り返し求められ、断りにくくなっている地域包括支援センター・市町村への相談、弁護士による窓口の代行
暴力や脅しを伴っている警察への相談、安全の確保


祖父母に止めてもらうための話し合い方


責めるのではなく、方針を共有する

 「甘やかすからいつまでも自立しない」と伝えると、祖父母は孫をかばう側に回りやすくなります。援助を見直してほしい理由は、子が自分で生活を回せるようになるため、そして祖父母自身の暮らしを守るため、という形で伝えるほうが受け入れられやすいでしょう。親がいま何を進めていて、その中で祖父母の援助がどう影響しているのかを、具体的に説明することが出発点になります。

誰が話すかを決めておく

 祖父母にとって、自分の子から言われるのと、子の配偶者から言われるのとでは、受け止め方が違うことがあります。一般には、祖父母と直接の親子関係にある側から話すほうが角が立ちにくいと考えられます。その前提として、夫婦の考えがそろっていることが欠かせません。意見が分かれているときの整理については【親子問題】夫婦で方針が割れる|一方の親が子をかばうときをご覧ください。

祖父母が断れる言葉を用意する

 祖父母が援助をやめられない理由の一つに、「断ったら孫に嫌われる」という心配があります。「お金のことは親に任せている」「親に確認してからにする」など、祖父母がそのまま孫に返せる言葉を一緒に決めておくと、祖父母一人で断る負担を軽くできます。

 話し合いでは、次のような点を共有しておくと、その後の対応がそろいやすくなります。

  • 子の現在の状況と、親が進めている方針。
  • 援助を見直してほしい理由(子の自立と、祖父母の生活の両方)。
  • これまでに渡した金額や頻度の大まかな把握。
  • 子から求められたときの断り方と、断った後に親へ知らせてもらう連絡の流れ。
  • 医療費など、どうしても必要な支出が生じたときの判断役。


 親戚など周囲の家族との方針の共有については、【親子問題】親戚から子の問題に口出しされる|家族の方針を守る伝え方も参考になります。

止めてもらえないときに、親が備えておくこと


渡された金額を記録に残す

 話し合いをしても祖父母の援助が続く場合は、分かる範囲で、いつ、いくら、どのような名目で渡されたのかを記録しておくことをおすすめします。祖父母の判断能力の問題や、子からの無心が強まったときに相談先へ状況を説明する材料になり、将来の相続の場面で家族の間の事情を整理する手がかりにもなります。記録の意味については【親子問題】金銭要求に応じ続けた記録は、後で意味を持つかでも触れています。

税金や相続の面での整理

 祖父母から孫への贈与には、年110万円の基礎控除を超えると贈与税がかかることがあります。扶養義務者のあいだで生活費や教育費に充てるために通常必要な範囲で渡されたお金は非課税とされていますが(相続税法21条の3第1項2号)、遊興費や貯蓄に回る部分までこの扱いになるわけではありません。
 相続については、孫は通常は祖父母の相続人ではないため、孫への援助がそのまま相続分の調整の対象になるとは限りません。それでも、ほかの子やその家族との間で不公平感が生じ、相続の際の話し合いがこじれる原因になることがあります。祖父母が自身の考えを遺言に残しておくことも含め、早い段階で整理しておくと安心です。税金の具体的な計算は、税理士などの専門家にご確認ください。

家族の窓口を一本化するという選択

 祖父母、親、きょうだいがそれぞれ別々に子からお金を求められている状態では、誰か一人が断っても別の誰かが応じる、という形が続きやすくなります。家族の一人ひとりが個別に対応するのではなく、子との金銭のやり取りの窓口を一つにまとめることが、援助の流れを止める近道になることがあります。
 当事務所では、弁護士が親の代理人となって子との窓口を担い、金銭の要求は弁護士を通すよう子に伝える形で介入しています。祖父母のもとにも要求が向かっている場合は、祖父母ご本人のご意向を確認したうえで、祖父母への連絡の流れも含めて窓口の整理を検討します。窓口を代えることの意味については【親子問題】弁護士に頼むと何が変わるのか|窓口を代えるという選択で詳しく説明しています。
 あわせて、自立支援カウンセラーが子の住まい探しや仕事探し、日々のお金の管理を支え、「家族からお金をもらわなくても生活が回る」状態を目指します。弁護士とカウンセラーの役割分担は【親子問題】弁護士とカウンセラーはどう介入するのか|4つの事例で見るサービスの実際で紹介しています。

よくあるご質問


祖父母に「自分のお金だから口を出さないで」と言われたら、どうすればよいですか

 祖父母に判断能力があり、自分の意思で渡している限り、法的にはその判断が尊重されます。強く迫るよりも、子の状況や親の方針を折にふれて伝え続け、援助が子の生活にどう影響しているかを祖父母自身に見てもらうほうが、考えが変わるきっかけになりやすいでしょう。判断能力の衰えや子からの無心がうかがわれる場合は、前述の窓口への相談を検討してください。

子に「祖父母からお金をもらうのはやめなさい」と言ってもよいですか

 伝えること自体に問題はありません。ただ、子の側から援助を断ることは期待しにくく、かえって親への反発が強まることもあります。子への働きかけだけに頼らず、祖父母との話し合いや窓口の整理と組み合わせて考えることが大切です。

祖父母が遠方に住んでいても相談できますか

 ご相談いただけます。当事務所では、遠方のご家庭からのご依頼にも対応しています。詳しくは【親子問題】遠方でも依頼できるのか|全国対応の実際をご覧ください。

祖父母との関係を保ちながら援助を見直すために

 祖父母からの援助は、多くの場合、孫を思う気持ちから始まっています。その気持ちを否定せずに、子の自立と祖父母自身の生活を守るという共通の目的を確かめ、家族で方針をそろえていくことが大切です。家族だけで話し合うのが難しいときや、援助が求められて渡すものになっているときは、第三者が間に入ることで整理が進むこともあります。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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