【ストーカートラブル】子どもの面会のために連絡したい|ストーカー扱いされない方法
この記事は、2026年10月時点の法令(ストーカー行為等の規制等に関する法律、情報流通プラットフォーム対処法、刑法、民法、民事保全法)と、警察・自治体が公表している案内をもとに作成しています。個別の事情によって取りうる手段や見通しは変わりますので、具体的な対応は専門家にご相談ください。
「別れた相手と連絡を絶ってから数日後、匿名掲示板に自宅の住所と部屋番号が書かれているのを見つけた」「知らないアカウントが、自宅の外観とおおよその場所をSNSに載せている」。ストーカー被害のご相談では、ネット上の書き込みをきっかけに、自宅の場所を知られたことへの不安を抱えて来られる方が少なくありません。
住所を晒されたときの対処として、サイトへの削除依頼、発信者情報開示による投稿者の特定、損害賠償請求という三つの手段がよく紹介されます。この説明自体は誤りではありません。ただ、これらはいずれも数日から数か月をかけて進む手続であり、書き込みに気づいたその日の夜をどこでどう過ごすかという問題は、手続の説明の中では後回しになりがちです。
この記事では、ネットに自宅の住所を書き込まれたときに、当日に確かめておきたい安全の確保と記録の残し方を先に整理し、そのうえで削除と投稿者の特定をどの順序で進めるかを解説します。投稿される前の段階での対応や、削除に応じてもらえない場合の詳しい手順は、それぞれ別の記事に委ねています。
書き込みに気づいたその日に、まず身の安全を確かめる
住所が書き込まれたことに気づくと、すぐに投稿を消したいという気持ちになるのは自然なことです。ただ、削除は書き込みをこれ以上広げないための手段であって、すでに住所を見た人が来ることを止めるものではありません。当日は、削除よりも先に「今夜、安全に過ごせるか」を確かめることが優先です。
書かれた住所が今の住まいかどうかを確かめる
最初に確かめたいのは、書き込まれた住所が現在の住まいなのか、以前の住所や実家なのかという点です。現在の住まいで、部屋番号や建物名まで書かれている場合、外観の写真が添えられている場合、「行く」「待っている」といった言葉が並んでいる場合は、実際に来られることを前提に動く必要があります。
実家や以前の住所が書かれている場合でも、そこに家族が住んでいるなら、その日のうちに家族へ事情を伝えておくことが大切です。家族が何も知らないまま来訪者に応対してしまうと、現在の居場所を聞き出されるきっかけになりかねません。
危険が差し迫っているときは110番、迷うときは警察相談専用電話へ
自宅周辺に不審な人物がいる、書き込みに危害を加えることをほのめかす表現がある、相手が過去に押しかけてきたことがあるといった事情があれば、ためらわず110番通報をしてください。差し迫った状況ではないものの不安が強いときは、最寄りの警察署の生活安全課や、警察相談専用電話(#9110)に相談することができます。
警察に相談するときは、書き込みの画面を印刷したものやスクリーンショットを持参すると、状況を伝えやすくなります。相手に心当たりがある場合は、その人物との関係やこれまでの経緯も併せて伝えてください。
今夜どこで過ごすかを決めておく
危険が高いと感じる場合は、家族や信頼できる友人の家、ホテルなどに一時的に身を寄せることも選択肢です。自宅で過ごす場合は、次のような点を確かめておくと安心につながります。
- 帰宅は明るい時間帯にし、可能であれば誰かに付き添ってもらう。
- 帰宅前に建物の周囲や出入口に不審な人物がいないかを確かめる。
- 同居している家族や、マンションの管理会社に事情を伝えておく。
- 来訪者には応対せず、インターホン越しに相手を確かめる。
- 宅配便は、身に覚えのないものを受け取らず、置き配や営業所留めも検討する。
オートロックや防犯カメラ、管理会社との連携については、【ストーカートラブル】自宅マンションに来られている|管理会社・オートロック・防犯カメラでできることで詳しく解説しています。
消す前に、書き込みを記録に残しておく
削除が実現すると、書き込みは画面から消えます。その後に投稿者を特定したり、警察に被害を申告したりする場面では、どのような書き込みがいつ、どこに載っていたかを示す必要があります。削除を求める前に記録を残しておかないと、後の手続で被害を示す材料が手元に残らなくなります。
残しておきたい情報
記録を残すときは、書き込みの内容だけでなく、それがどこに載っていたかが分かる形にしておくことが大切です。
- 書き込みが表示されたページのURL。
- 投稿日時と、投稿者のアカウント名やIDの表示。
- 書き込みの本文と、添えられた写真や地図。
- 画面を保存した日時。
- 同じ内容が転載されている場合は、転載先ごとのURLと画面。
スクリーンショットはURLと日時が画面に入るように撮り、可能であれば画面を印刷したものも用意しておきます。記録の残し方の詳細は、証拠の残し方|あとで警察・弁護士に通用する記録とはをご覧ください。
投稿に自分で反応しない
書き込みに対して自分で反論したり、投稿者に削除を直接求めたりすると、相手を刺激したり、書き込みが注目を集めて転載が広がったりすることがあります。自分のSNSアカウントを一時的に非公開にすることは有効な場合がありますが、アカウントそのものを削除すると、相手とのやり取りなど自分の側の記録も失われるおそれがあります。
また、自分のSNSに今いる場所や避難先が分かる投稿をすることは控えてください。
削除を求める順序と、応じてもらえない場合
記録を残したら、次は書き込みの削除です。削除の手段は、サイトの運営者への申出から始めて、応じてもらえない場合に裁判所の手続へ進むのが一般的な順序です。住所や部屋番号のように私生活の平穏に直結する情報は、プライバシーの侵害として削除が認められやすい類型の一つです。
サイトの運営者に削除を申し出る
多くのSNSや掲示板は、他人の住所などの個人情報の投稿を利用規約で禁じており、専用の申出フォームを設けています。申出では、書き込みのURL、どの部分が自分の住所にあたるのか、削除を求める理由を具体的に伝えます。
大規模なプラットフォームについては、情報流通プラットフォーム対処法により、削除の申出に対して一定の期間内に対応を判断し、結果を申出者に通知する仕組みが設けられています。申出から結果の通知までの期間については、【男女トラブル】削除申出への回答期限|以前と何が違うのかで解説しています。
応じてもらえない場合は、裁判所の手続を検討する
運営者が削除に応じない場合や、そもそも申出の窓口が機能していない場合は、裁判所に削除の仮処分を申し立てることが考えられます(民事保全法23条2項)。仮処分は、通常の裁判よりも短い期間で判断が示される手続ですが、権利侵害の内容や削除の必要性を書面で示す必要があります。
運営者が削除に応じないときの具体的な進め方は【不当要求対応】削除を求めたのに応じてもらえない|プラットフォームが動かない場合で、運営会社が海外にある場合の注意点は【男女トラブル】プラットフォームが海外にある場合の削除|届かない請求への備えで取り上げています。
転載や検索結果にも目を向ける
住所の書き込みは、まとめサイトや別の掲示板に転載されることがあります。元の投稿だけを削除しても転載先が残っていれば、住所は引き続き閲覧できる状態になります。転載先ごとに記録を残し、それぞれに削除を求めることになります。
検索エンジンの検索結果に表示される場合には、検索事業者に対して表示の削除を求める方法もあります。検索結果の削除が認められるかどうかは、公表されない利益と情報を提供する理由とを比べて判断されます(最高裁平成29年1月31日決定)。詳しくは検索結果からの削除はどこまで認められるかをご覧ください。
削除と投稿者の特定のどちらを先に進めるかについては、【不当要求対応】拡散された後の順序|削除と発信者特定のどちらを先に動かすかもあわせてご覧ください。
書き込んだ人をたどる手続と、警察に伝える意味
住所を書き込んだのが誰なのかによって、取りうる手段は変わります。相手に心当たりがある場合とない場合とで、警察に伝える内容や弁護士が進める手続も違ってきます。投稿者の特定には期限があるため、削除と並行して早めに方針を決めることが大切です。
発信者情報の開示には時間の制約がある
匿名の投稿者を特定するには、情報流通プラットフォーム対処法に基づく発信者情報開示命令などの手続を使い、サイトの運営者や通信事業者から投稿者の情報の開示を受ける必要があります。
ここで注意したいのは、通信事業者が接続の記録(ログ)を保存している期間が限られている点です。保存期間は事業者によって異なりますが、数か月程度とされることが多く、その間に手続へ着手しないと投稿者をたどれなくなるおそれがあります。匿名の相手をたどる方法と、たどれない場合の守り方については、【ストーカートラブル】相手が誰か分からない|匿名のつきまといで相手をたどる方法と、たどれないときの守り方で解説しています。
ストーカー規制法の対象になる場面
住所を書き込むこと自体を直接処罰する規定はありません。ただ、元交際相手など、恋愛感情やそれが満たされなかったことへの恨みを動機とする人物が書き込んだ場合には、ストーカー規制法の「つきまとい等」にあたる可能性があります。
たとえば、「あなたの家を知っている」と伝わる形で住所を書き込み、それを本人が見られる状態に置くことは、行動を監視していると思わせる事項を知り得る状態に置く行為にあたりうるものです(ストーカー規制法2条1項2号)。住所とあわせて名誉を害する内容が書かれている場合も、つきまとい等の一つとされています(同項7号)。こうした行為が繰り返されれば、警察による警告や、公安委員会による禁止命令の対象となり、反復の程度によっては刑事罰の対象にもなります。
脅迫や名誉毀損にあたる場合もある
住所とともに「家に行く」「思い知らせてやる」といった言葉が書かれている場合は、脅迫罪(刑法222条)にあたる可能性があります。住所とあわせて事実と異なる内容や社会的な評価を下げる内容が書かれていれば、名誉毀損罪(刑法230条)が問題になることもあります。
また、刑事上の罪にあたらない場合でも、住所を本人の同意なく公開することは、プライバシーの侵害として損害賠償の対象となりえます(民法709条、710条)。警察に相談したものの対応が進まない場合の考え方は、警察に相談しても動いてくれないとき|弁護士ができることで取り上げています。
住所がこれ以上知られないために
書き込みの削除が進んでも、住所が知られた経路がそのままになっていれば、同じことが繰り返されるおそれがあります。どこから住所が漏れたのかを確かめ、その経路を閉じることが、再発を防ぐうえで欠かせません。
住所が漏れた経路を確かめる
自分のSNSに載せた写真の背景や窓からの景色、写真に残っていた位置情報、共通の知人を通じた情報、郵便物やフリマアプリの取引など、住所が知られる経路はさまざまです。スマートフォンや共有しているサービスから居場所が漏れていないかについては、【ストーカートラブル】スマホや共有サービスから居場所が漏れている|位置情報以外の経路を止めるで確認の手順を解説しています。
住民票の写しなどの交付を制限する
ストーカー被害を受けている方は、市区町村に申し出ることで、加害者からの住民票の写しや戸籍の附票の写しの交付請求などを制限してもらえる制度(DV等支援措置)を利用できる場合があります。申出にあたっては、警察などの相談機関の意見が求められるため、警察へ相談した記録が役に立ちます。
引っ越しを考える場合の住所の守り方については、引っ越したのに住所を突き止められた|居場所を知られない対策をご覧ください。
ここまでの流れを、時期ごとに整理すると次のとおりです。
| 時期 | 主に行うこと |
|---|---|
| 気づいた当日 | 身の安全の確認、書き込みの記録、危険があれば110番通報や警察への相談 |
| 数日以内 | サイトの運営者への削除の申出、家族や管理会社への共有、弁護士への相談 |
| 数週間から数か月 | 削除の仮処分、発信者情報の開示、警察による警告や禁止命令、損害賠償の請求 |
| 並行して | 住所が漏れた経路の確認、住民票の写しなどの交付制限の申出 |
よくあるご質問
名前は書かれず、住所だけが書き込まれた場合でも削除を求められますか
名前が書かれていなくても、建物名や部屋番号、外観の写真などから住んでいる人が分かる場合や、前後の投稿の流れから誰の住所なのかが読み取れる場合には、プライバシーの侵害として削除を求められる可能性があります。書き込み単体だけでなく、その前後の投稿も含めて記録しておくと、誰の住所かを示しやすくなります。
住所を書き込まれたら、すぐに引っ越したほうがよいのでしょうか
引っ越すかどうかは、相手が実際に来たことがあるか、書き込みに危害をほのめかす内容があるか、警察の警告や禁止命令が出ているかなどを踏まえて判断することになります。すぐに転居できない場合は、一時的な避難先を確保しながら、警察への相談や削除の手続を進めることも考えられます。転居する場合は、新しい住所が知られないための手続を先に整えておくことが大切です。
書き込んだのが元交際相手だと見当がついています。直接やめるよう伝えてもよいですか
直接連絡をすると、相手との接点が復活したり、こちらの反応を受けて書き込みが増えたりすることがあります。相手に心当たりがある場合は、その事情を警察に伝えたうえで警告などの対応を求めるか、弁護士を代理人として相手に削除と接触の中止を求める方法が考えられます。代理人を立てる意味については、【ストーカートラブル】弁護士に依頼すると何が変わるのか|ストーカー被害で代理人を立てる意味で解説しています。
まとめ
- 住所の書き込みに気づいた当日は、削除よりも先に身の安全を確かめ、危険が差し迫っていれば110番通報をする。
- 削除を求める前に、URL・投稿日時・本文・画面の保存日時が分かる形で書き込みを記録しておく。
- 削除は、サイトの運営者への申出から始め、応じてもらえない場合は削除の仮処分を検討する(民事保全法23条2項)。
- 匿名の投稿者を特定する手続には、接続の記録の保存期間という時間の制約がある(情報流通プラットフォーム対処法)。
- 恋愛感情などを動機とする書き込みは、ストーカー規制法のつきまとい等にあたる可能性がある(同法2条1項2号、7号)。
- 危害をほのめかす内容があれば脅迫罪(刑法222条)、住所の公開はプライバシーの侵害として損害賠償の対象となりうる(民法709条、710条)。
- 住所が漏れた経路を確かめ、住民票の写しなどの交付制限も検討して、同じことが繰り返されないようにする。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、ストーカー被害に関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。ネット上の住所の書き込みについて、削除の申出や仮処分、投稿者の特定、警察への相談の進め方まで、状況に応じて一緒に整理します。
自宅の住所を書き込まれて不安を感じている方、誰が書き込んだのか見当がつかずにいる方、警察に相談したものの次の手段が分からずにいる方は、一人で抱え込まずにご相談ください。


