【ストーカートラブル】無言電話・非通知の着信が続く|記録と止め方

若井亮

若井亮

テーマ:ストーカートラブル

この記事は、2026年10月時点のストーカー行為等の規制等に関する法律(以下「ストーカー規制法」)、東京都の迷惑防止条例(公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例)、刑法をもとに記載しています。2025年6月1日施行の刑法改正により、懲役・禁錮は「拘禁刑」に一本化されており、罰則はその表記で記載しています。電話会社や端末の機能は、提供会社・機種・契約内容によって異なります。


ご相談の場では、「非通知の電話が夜中に何度も鳴り、出ると何も言わずに切れる。誰からなのかまったく見当がつかない」というお声と、「別れた相手からではないかと思うが、確証がないので警察に言いにくい」というお声の両方をお聞きします。どちらの方も、着信のたびに気持ちが削られ、電話そのものが怖くなっていることが少なくありません。

 無言電話への対処として、「出ない」「着信拒否にする」という説明がよく見られます。それ自体は誤りではなく、まず身を守るための方法として有効です。ただ、設定の仕方によっては着信の記録そのものが残らなくなり、後で警察や弁護士に相談するときに「いつ、何回かかってきたのか」を示せなくなることがあります。

 この記事では、無言電話・非通知の着信がストーカー規制法や条例でどう扱われるのかを整理したうえで、「止めること」と「記録を残すこと」を両立させる方法、発信元を特定できる範囲、相手に心当たりがある場合の止め方を順に説明します。相手がまったく分からないつきまといの全体像や、証拠の残し方の一般論は、それぞれ別の記事に譲ります。

無言電話・非通知の着信は法律上どう扱われるのか

ストーカー規制法が定める「無言電話」

 ストーカー規制法は、規制の対象となる「つきまとい等」の一つとして、電話をかけて何も告げないこと、拒まれたにもかかわらず連続して電話をかけることを挙げています(ストーカー規制法2条1項5号)。つまり、無言電話は、法律の条文に名前が挙がっている行為の一つです。

 ただし、この法律が適用されるのは、恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で行われた場合に限られます(同法2条1項柱書)。元交際相手や、一方的に好意を寄せている相手からの無言電話は、典型的にこの枠組みで扱われます。また、本人だけでなく、その配偶者や親族、職場など密接な関係にある人に向けた行為も対象に含まれます。

恋愛感情が動機でない場合|迷惑防止条例と刑法

 恨みやねたみといった、恋愛とは別の感情から無言電話が続くこともあります。東京都の迷惑防止条例は、ねたみ、恨みその他の悪意の感情に基づくつきまとい行為等を禁止しており(東京都迷惑防止条例5条の2)、電話をかけて何も告げない行為もその類型に含まれています。他の道府県にも同様の規定がありますが、内容は都道府県ごとに異なります。

 このほか、店舗や事務所に無言電話が繰り返されて業務に支障が出た場合には偽計業務妨害罪(刑法233条)が、無言電話が原因で通院が必要な精神的な不調が生じた場合には傷害罪(刑法204条)が問題になった例があります。どの法令が当てはまるかは、動機・回数・期間・被害の内容によって変わります。

1回の着信と、続いている着信の違い

 無言電話が1回あっただけで、すぐに処罰の対象になるわけではありません。ストーカー規制法では、つきまとい等を同じ相手に対して反復して行うことが「ストーカー行為」とされ、これに対して罰則(1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金)が定められています(同法2条4項、18条)。回数や期間が重なっていることを示すうえで、後で説明する記録が意味を持ちます。1回の行為と反復した行為の違いは、連絡は1回だけだった|つきまとい等とストーカー行為の違いで詳しく扱っています。

止めることと、記録を残すことを両立させる

着信拒否が記録を消してしまう場面

 着信拒否や非通知拒否は、電話が鳴らなくなるという点で、生活を取り戻すために有効な方法です。一方で、機種や設定によっては、拒否した着信が履歴に一切残らないことがあります。そうなると、拒否した後も相手がかけ続けていたのか、それとも止んだのかが分からなくなります。

 また、相手に「拒否された」ことが伝わる形にすると、番号を通知してかけ直してきたり、メッセージや訪問など別の手段に移ったりする場合もあります。それが相手をたどる手がかりになることもありますが、身の安全の面では注意が必要です。設定を変える前に、それまでの着信履歴を画面の写真やスクリーンショットで残しておくことをおすすめします。端末に保存される履歴には件数の上限があることが多く、古いものから消えていくためです。

鳴らさずに受ける設定と留守番電話

 スマートフォンには、連絡先に登録されていない番号や非通知からの着信を鳴らさずに留守番電話へ回す機能を備えたものがあります。機種によっては、この方法だと着信履歴には残るため、「鳴らないが記録は残る」状態をつくることができます。どの設定で履歴が残るかは機種や電話会社によって異なりますので、設定後に一度、履歴の表示を確かめておくと安心です。

 留守番電話に残った無音の録音も記録になります。数秒で切れていても、日時が自動で残り、周囲の物音や息づかいが入っていることがあります。録音は消さずに保存し、可能であれば別の機器にも複製しておきます。

固定電話の場合|番号通知を求めるサービス

 自宅の固定電話には、電話会社が提供する非通知着信への対応サービスがあります。たとえばNTT東日本・西日本の「ナンバー・リクエスト」は、非通知でかかってきた相手に番号を通知してかけ直すよう案内する仕組みで、他社にも同様のサービスがあります。公衆電話からの着信は「非通知」とは別に扱われる場合があるため、公衆電話からの着信も続いているときは、その対応も含めて電話会社に確認するとよいでしょう。

何を記録するか|後で警察・弁護士に通じる形

着信の一覧をつくる

 記録は、手帳やメモアプリに時系列で並べる形が扱いやすいです。次のような項目をそろえておくと、警察や弁護士が状況を短時間で把握できます。

記録する項目書き方の例
日時着信のあった年月日と時刻(分まで)
表示非通知・公衆電話・通知不可能・番号表示(番号を控える)
応答の有無出た・出なかった・留守番電話に残った
通話の様子無音、息づかい、周囲の物音、何秒で切れたか
そのときの状況帰宅した直後だった、外出先から戻ったところだったなど
生活や体調への影響眠れなかった、通院したなど


 着信のたびに細かく書くのが負担であれば、スクリーンショットを撮っておき、週に一度まとめて一覧に書き写す方法でも構いません。続けられる形にすることが大切です。

心当たりと前後の出来事を書き添える

 非通知の電話は、それだけでは誰からのものか分かりません。そのため、着信が始まった時期と、その前後に何があったのかを書き添えておくことが重要になります。別れ話をした直後から始まった、特定の人と連絡を絶った日から増えた、着信の直後に相手のSNSに思わせぶりな投稿があった、といった事情は、相手を推し量る材料になります。

 ただし、記録には見聞きした事実だけを書き、「〇〇に違いない」といった推測は事実と分けて書くようにします。推測と事実が混ざっていると、記録全体の信用性が下がってしまうためです。

体調の変化も記録の一部になる

 眠れない、電話が鳴ると動悸がするといった変化が続いて医療機関を受診した場合は、受診日と診断の内容を記録に加えておきます。慰謝料などを請求する場面や、刑事手続で被害の程度を示す場面で意味を持つことがあります。証拠の残し方全般については、証拠の残し方|あとで警察・弁護士に通用する記録とはも参考にしてください。

着信に出てしまったとき・避けたい対応

 無言電話に出てしまったときは、こちらから名乗らず、話しかけ続けずに切って構いません。反応を引き出すこと自体が目的になっている場合もあるためです。そのうえで、次のような対応は避けたほうがよいと考えます。

  • 非通知以外の番号から無言電話があった場合に、その番号へ折り返しをすること。
  • 心当たりのある相手に直接連絡をして、問いただしたり抗議したりすること。
  • 「犯人は〇〇だ」とSNSなどに書き込むこと。
  • 怒りにまかせて着信履歴や録音を消してしまうこと。


 特に、確証がないまま特定の人を名指しすると、こちらが名誉毀損などの責任を問われるおそれがあります。相手に心当たりがあっても、直接のやり取りは控え、記録を持って警察や弁護士に相談する流れをおすすめします。ストーカー被害で避けたい行動については、ストーカートラブルに遭ったら絶対にやってはいけない5つのこと|早期・穏便に解決するためにでもまとめています。

発信元は特定できるのか

番号が表示されている場合

 番号が表示されている着信であれば、その番号の契約者を調べる道があります。弁護士が事件を受任している場合には、弁護士会照会(弁護士法23条の2)を通じて電話会社に契約者の情報を照会する方法があり、回答が得られることもあります。もっとも、照会は受任した事件の処理に必要な範囲で行うものであり、照会への回答の可否は電話会社の判断になります。

非通知・公衆電話の場合

 非通知の着信について、誰がかけたのかを電話会社から教えてもらうことは、通信の秘密との関係で難しいのが実情です。被害を受けた方ご本人が問い合わせても、弁護士会照会を使っても、発信者の情報は開示されないことが多いと考えておいたほうがよいでしょう。

 一方、警察が事件として捜査する場合には、裁判所の令状に基づいて通信の記録を調べることがあります。非通知の着信の発信元をたどる現実的な道は、警察による捜査であることが多いといえます。電話会社が保存している記録には期間の限りがあるため、着信が続いている段階で早めに警察へ相談し、記録を見せておくことに意味があります。相手がまったく分からない場合の考え方は、【ストーカートラブル】相手が誰か分からない|匿名のつきまといで相手をたどる方法と、たどれないときの守り方で詳しく扱っています。

相手に心当たりがある場合の止め方

警察への相談と警告・禁止命令

 恋愛感情などが背景にある無言電話であれば、警察に相談したうえで、ストーカー規制法に基づく警告(同法4条)や、都道府県公安委員会による禁止命令(同法5条)を求める道があります。禁止命令に違反してストーカー行為をした場合には、2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金という重い罰則が定められています(同法19条1項)。電話やメッセージが続く場面での警告・禁止命令の流れは、SNS・LINEの執拗な連絡はストーカーになる?警告・禁止命令の流れで説明しています。

 警察への相談は、最寄りの警察署のほか、警察相談専用電話(#9110)でも受け付けています。着信と同時に家の周りに人の気配があるなど、身の危険を感じるときは、ためらわずに110番してください。

弁護士から通知を送る

 相手が特定できている場合には、弁護士が代理人として相手に通知を送り、連絡をやめるよう求める方法もあります。窓口を弁護士に一本化することで、相手がご本人へ直接連絡する理由をなくし、それでも続く場合には警察の手続へ移る際の材料にもなります。代理人を立てる意味については、【ストーカートラブル】弁護士に依頼すると何が変わるのか|ストーカー被害で代理人を立てる意味をご覧ください。

被害届・告訴、民事の手続

 無言電話が長く続いている場合には、被害届や告訴によって刑事手続を求めることも考えられます。どちらを選ぶかによって手続の進み方が異なりますので、被害届と告訴の違い|ストーカー・脅迫でどちらを選ぶも参考にしてください。また、刑事手続とは別に、裁判所に接触の禁止を求める民事の手続や、精神的苦痛に対する損害賠償の請求(民法709条、710条)を検討できる場合もあります。警察の手続と民事の手続の使い分けは、接近禁止を実現する2つの道|ストーカー規制法(警察)と民事保全(裁判所)の使い分けで整理しています。

よくあるご質問

数回程度の無言電話でも、警察に相談してよいのでしょうか。

 相談して構いません。回数が少ない段階では、すぐに警告や捜査に進まないこともありますが、相談した記録が警察に残ることで、その後に着信が増えたときの対応がつながりやすくなります。相談の際には、作成した着信の一覧と、心当たりの有無を伝えるとよいでしょう。

非通知を拒否したら、番号を通知した着信に変わりました。どうすればよいですか。

 番号が表示されるようになったことは、相手をたどる手がかりになります。その番号に折り返したり、出て問いただしたりはせず、番号と日時を記録してください。番号が分かれば、警察への相談や、弁護士による照会・通知といった次の手段を検討しやすくなります。

職場に無言電話がかかってくる場合はどうすればよいですか。

 職場への無言電話は、ご本人だけでなく業務にも影響が出るため、会社の担当部署と情報を共有し、職場側でも着信の記録をとってもらうことが考えられます。業務への支障が大きい場合には、偽計業務妨害罪が問題になることもあります。元交際相手などから職場へ連絡がある場面の対応は、元恋人が職場へ電話・押しかけ|会社を巻き込む嫌がらせへの対応で扱っています。

まとめ


  1. 無言電話は、ストーカー規制法の「つきまとい等」として条文に挙げられている行為です(ストーカー規制法2条1項5号)。
  2. 恋愛感情が動機でない場合も、東京都の迷惑防止条例(5条の2)や刑法(233条、204条)が問題になることがあります。
  3. 反復して続くとストーカー行為となり、罰則の対象になります(同法2条4項、18条)。
  4. 着信拒否の前に履歴を画面で保存し、鳴らさずに履歴が残る設定や留守番電話を活用します。
  5. 記録には日時・表示・通話の様子・前後の出来事・体調の変化を、事実と推測を分けて残します。
  6. 非通知の発信元をたどる現実的な道は警察の捜査であることが多く、早めの相談に意味があります。
  7. 心当たりがある場合は、警告・禁止命令(同法4条、5条)、弁護士からの通知、被害届・告訴、民事の手続を組み合わせて検討します。


弁護士法人若井綜合法律事務所では、ストーカー被害や無言電話・つきまといに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。着信の記録の整え方から、警察への相談の進め方、相手方への通知まで、状況に応じた対応をご一緒に考えます。

誰からの電話か分からず不安を抱えている方も、相手に心当たりがあり直接のやり取りを避けたいとお考えの方も、記録がそろっていない段階で構いませんので、どうぞお気軽にご相談ください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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