【ストーカートラブル】加害者の様子を確かめに行ったら、こちらが問題になる?

若井亮

若井亮

テーマ:ストーカートラブル

この記事は、2026年11月時点のストーカー行為等の規制等に関する法律(令和7年12月30日施行の改正を反映)、東京都の公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(迷惑防止条例)、刑法、民法をもとに作成しています。個別の事情によって結論が変わることがありますので、具体的な対応は専門家にご相談ください。


「相手が本当に引っ越したのか、まだ近くにいるのか、一度自分の目で確かめておきたい」。ストーカー被害のご相談では、このようなお気持ちをうかがうことが少なくありません。反対に、つきまといを疑われている方から「相手のほうも、こちらの家の近くまで来ていた」というお話が出ることもあります。

 被害を受けている方が、不安から相手の様子を知りたいと考えるのは自然なことです。「被害者なのだから、確かめに行くくらいは問題にならない」という受け止め方も、多くの場面ではその通りです。ただ、行った場所や回数、相手との接触の有無によっては、法律上の評価や、その後の警察対応・交渉の場面で思わぬ影響が出ることがあります。

 この記事では、被害を受けている方が加害者の様子を確かめに行く場面に絞って、問題になりうる点と、自分で動かずに必要な情報を得る方法を整理します。警告や禁止命令など、相手の行動を止める手続そのものについては、それぞれの解説記事に譲ります。

様子を確かめたくなる場面と、その行動の受け止められ方

ご相談でよくうかがう場面

相手の様子を確かめたくなるきっかけは、人によってさまざまです。ご相談では、次のような場面がよく見られます。

  • 相手が引っ越したと聞き、本当に転居したのかを家の前まで行って確かめたい。
  • 処分や釈放の後に、相手が自宅に戻っているかを見ておきたい。
  • 自宅の周りで相手の車を見た気がして、相手の家に車があるかを確かめたい。
  • 相手の勤務先やよく行く店に、今も出入りしているかを知りたい。
  • 相手のSNSを見て、今の生活や行動を把握しておきたい。


 いずれも「次に何が起きるのかを知って、身を守りたい」という気持ちから出てくるものです。その気持ち自体が否定されるものではありません。

被害者であることと、行動の評価は別に扱われる

法律は、行動した人の立場ではなく、何をどのような目的で行ったかを見て評価します。被害を受けている側であっても、相手の住まいの前に繰り返し立ったり、相手に詰め寄ったりすれば、その行動は行動として検討の対象になります。

 実際に、調停に備えた証拠集めのつもりで相手方の実家を訪ねたところ、警察から警告を受けたという相談も見られます。訪ねる理由に一定の事情があっても、相手方から見れば「突然来られた」という受け止め方になることがあります。「被害者だから何をしても問題にならない」とは限らず、行った場所・回数・相手との接触の有無によって評価が変わります。被害を受けたときに避けておきたい行動の全体像は、ストーカートラブルに遭ったら絶対にやってはいけない5つのこと|早期・穏便に解決するためにで解説しています。

法律上、問題になりうるのはどんな場面か

ストーカー規制法の対象になる場面は限られる

ストーカー規制法が規制する「つきまとい等」は、特定の人に対する恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことへの怨恨の感情を満たす目的で行われるものに限られています(ストーカー規制法2条)。身の安全を確かめるために相手の様子を見に行くことは、通常はこの目的には当たりません。

 もっとも、以前に交際していた相手のもとへ出向き、その場で関係の話を持ち出したり、恨みの言葉を伝えたりすると、事情は変わってきます。相手方が「好意や恨みから来ている」と主張する余地が生まれ、警察もやり取りの中身を確認することになります。

迷惑防止条例の「悪意の感情」による規制

東京都の迷惑防止条例は、恋愛感情が絡まない場面も対象にしています。正当な理由なく、専ら特定の人へのねたみや恨みなど悪意の感情を満たす目的で、住居等の付近で見張りをしたり、みだりにうろついたりすることを禁じています(東京都迷惑防止条例5条の2)。

 安全を確かめるために一度様子を見たというだけで、この規定に当たると判断される場面は多くないと考えられます。ただ、何度も相手の家の前で待つ、相手に恨みを伝える、相手の家族に詰め寄るといった行動が重なると、「悪意の感情」によるものと評価される可能性は否定できません。問題になりやすいのは、一度の確認よりも、それが繰り返されることや、相手への働きかけを伴うことです。

敷地への立ち入り・撮影・位置情報の取得

つきまといの規制とは別に、行動の中身によって次のような問題が生じることがあります。相手の住まいの敷地やマンションの共用部分に、管理者の意思に反して入れば、住居侵入罪(刑法130条)が問題になりえます。相手の家や車を撮影してSNSに投稿すれば、名誉毀損(刑法230条)やプライバシーの侵害(民法709条)が問題になることがあります。

 相手の車や持ち物に紛失防止タグを付けて居場所を把握しようとすることも、避けておきたい行動です。東京都では、ねたみや恨みなどの感情に基づいて紛失防止タグで位置情報を取得する行為を、迷惑防止条例の規制対象に加える改正が検討されており、2027年4月の施行が予定されています。目的が自分の身を守ることであっても、民事上の責任を問われる余地は残ります。

行動問題になりうる点
相手の家の前で様子をうかがう(一度)通常は大きな問題になりにくいが、相手に気づかれると争点になりやすい
相手の家の前に繰り返し行く・待つ迷惑防止条例の見張り・うろつきとして扱われる可能性がある
敷地やマンションの共用部分に入る住居侵入罪が問題になりうる
相手や相手の家族に詰め寄る条例違反や、相手方からの損害賠償請求の材料になりうる
相手の家や車を撮影して投稿する名誉毀損やプライバシーの侵害が問題になりうる
相手の持ち物に紛失防止タグを付ける民事上の責任が問われうる(東京都では条例改正が予定されている)


法律上の問題とは別に、不利に働きやすい点

相手に「こちらがつきまとわれている」と言う材料を与える

ストーカー事案では、加害者とされる側が「相手のほうから近づいてきた」と主張することが珍しくありません。様子を見に行ったことが相手に知られると、その事実がこうした主張の材料として使われることがあります。

 相手方がSNSで「ストーカーされている」と書き込んだり、逆に損害賠償を求めてきたりする場面では、こちらの行動も細かく取り上げられます。そうした場面での向き合い方は、【ストーカートラブル】相手が「ストーカーされた」とSNSに書いている|反論してよいかや【ストーカートラブル】相手から逆に損害賠償を求められた|請求の中身を仕分け、住所や連絡先を渡さずに対応するで解説しています。

警告・禁止命令や示談の場面での見え方

警告や禁止命令は、相手方の行為を対象として判断されるものです。こちらが一度様子を見に行ったことで、直ちに手続が止まるわけではありません。ただ、相手方が「相手も家の近くに来ていた」と述べれば、事実関係の確認に時間がかかることがあります。

 示談の場面でも注意が必要です。接触禁止の条項は、双方が互いに近づかない形で定めることが多く、合意の後に様子を見に行けば、相手方から約束に反すると主張されるおそれがあります。

鉢合わせしたときの安全

最も重く考えておきたいのは、安全面です。相手の家の近くに行けば、相手と顔を合わせる可能性が生じます。執着を持っている相手にとっては、こちらから来たこと自体が接触の機会と受け止められ、行動が強まるきっかけになることもあります。確かめに行くことで得られる安心よりも、鉢合わせによって生じる危険のほうが大きくなりやすい点は、押さえておきたいところです。

自分で行かずに、知りたいことを確かめる方法

警察を通じて確かめる

警察は、ストーカー規制法に基づく禁止命令等の措置をとった加害者全員に警察官から連絡を入れ、近況や被害者への執着の程度を把握する取組を、令和6年4月から全国で行っています。この連絡を行うことは、禁止命令等を出す際に被害者にも説明されることになっています。相手の様子が気になるときは、まず担当の警察署に「最近の様子を把握しているか」を尋ねてみることが考えられます。

 また、被害を受けている方は、警察に援助を求める申出をすることができます(ストーカー規制法7条)。令和7年12月30日施行の改正では、被害者からの申出がなくても警察が警告を出せる仕組みも設けられました。警察と弁護士のどちらに先に相談するかで迷う場合は、【ストーカートラブル】警察と弁護士のどちらに先に相談するか|ストーカー被害での順序が参考になります。

処分や釈放の時期は通知制度で知る

相手が逮捕・起訴された事件では、検察庁の被害者等通知制度を使うことで、処分の結果や釈放・出所の時期について通知を受けられる場合があります。「相手が家に戻っているかどうか」を知りたいという不安の多くは、この制度で確かめられる情報と重なります。

 制度の使い方は【ストーカートラブル】被害者等通知制度を使う|相手の処分や出所の時期を知るで、釈放の日に備えることは【ストーカートラブル】相手が釈放される|時期を知る方法と、その日に備えることで解説しています。

弁護士を通じて確かめる・伝える

弁護士に依頼すると、相手方への連絡や交渉を弁護士が窓口として担います。受任した事件の処理に必要な範囲で、相手方の住所を確認する手続をとることもあります。自分が相手に近づかないまま、必要な事実を確かめ、相手方に求めることを伝えられる点が、代理人を立てる意味の一つです。

 相手の様子を知るために探偵業者へ調査を頼むことも考えられますが、調査の方法によっては相手に気づかれ、かえって状況が動くことがあります。依頼する前に、警察や弁護士に相談しておくと安心です。代理人を立てることで何が変わるかは、【ストーカートラブル】弁護士に依頼すると何が変わるのか|ストーカー被害で代理人を立てる意味で解説しています。

すでに様子を見に行ってしまった場合

まずは繰り返さないことを優先する

一度様子を見に行ったからといって、それだけで直ちに責任を問われる場面は多くありません。大切なのは、そこから先に繰り返さないことです。相手の家の近くを通る用事がある場合も、経路や時間帯を見直し、立ち止まって様子をうかがうことは控えるようにします。

行ったことは隠さず、相談先に伝えておく

見に行ったことを相談先に伏せておくと、後で相手方から指摘されたときに、説明が後手に回ることがあります。いつ、どこへ行き、相手や相手の家族と接触したかどうかを、覚えているうちにメモに残しておきます。相手から何か言われた、連絡が来たといった変化があれば、それも記録したうえで、警察や弁護士に早めに伝えておくことが望ましい対応です。

よくあるご質問


相手の公開されているSNSを見るだけでも問題になりますか?

公開されている投稿を閲覧すること自体は、通常は問題になりません。ただ、別のアカウントを作ってフォローする、コメントやメッセージを送る、投稿の内容をもとに相手のいる場所へ出向くといった行動は、相手方から問題にされることがあります。見続けることで気持ちの負担が大きくなる場合は、見る頻度を減らすことも考えてみてください。

生活圏が重なっていて、相手の家の近くを通らざるを得ません

通勤や通学など、正当な理由のある通行は、見張りやうろつきとは区別して考えられます。気をつけたいのは、通行のついでに立ち止まって様子をうかがうことです。住まいの位置関係そのものに不安がある場合は、【ストーカートラブル】相手の家の近くに住んでいる|引っ越すべきかの判断もあわせてご覧ください。

家族や友人に代わりに見てきてもらうのはどうですか?

代わりに見に行く家族や友人にも、同じ問題が生じえます。迷惑防止条例の規制は誰が行ったかを問わず適用されるうえ、相手と鉢合わせしたときの危険は、家族や友人にも及びます。ご家族が力になりたいときは、現地に向かうよりも、相談に同行するなどの形が考えられます。【ストーカートラブル】家族がストーカー被害に遭っている|家族が代わりに相談するときも参考にしてください。

まとめ


  1. 被害を受けている方でも、加害者の様子を確かめに行く行動は、場所・回数・接触の有無によって法的に評価される。
  2. ストーカー規制法は恋愛感情等を満たす目的を要件としており(ストーカー規制法2条)、安全を確かめるための行動は通常これに当たらない。
  3. 東京都の迷惑防止条例は、ねたみや恨みなど悪意の感情による見張りやうろつきを禁じており(東京都迷惑防止条例5条の2)、繰り返しや詰め寄りがあれば問題とされる余地がある。
  4. 敷地への立ち入りは住居侵入罪(刑法130条)、撮影や投稿は名誉毀損(刑法230条)やプライバシーの侵害(民法709条)が問題になりうる。
  5. 見に行った事実は、相手方がつきまといを主張する材料や、示談・禁止命令の場面での争点になりやすい。
  6. 相手の近況は、警察の加害者への連絡や援助の申出(ストーカー規制法7条)、被害者等通知制度、弁護士を通じて確かめられる場合がある。
  7. すでに見に行ってしまった場合は、繰り返さず、日時・場所・接触の有無を記録して相談先に伝える。


弁護士法人若井綜合法律事務所では、ストーカートラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。相手の様子が気になって落ち着かないとき、すでに見に行ってしまい今後が不安なときも、状況を整理するところからお手伝いします。

つきまといの被害を受けている方はもちろん、相手方から「つきまとわれている」と言われてお困りの方も、お一人で抱え込まずにご相談ください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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