【ストーカートラブル】相手が弁護士を通じて「会って謝りたい」と言ってきた|面会を断っても謝罪や示談の道は残る
この記事は、2026年10月時点の法令にもとづいて書いています。ストーカー規制法は、令和7年12月30日に改正法が施行され(紛失防止タグを用いた位置情報の取得の規制、警察の職権による警告の創設、被害者が就学する学校の長などを援助の努力義務の主体に追加など)、令和8年3月10日からは、被害者の情報を第三者が提供しないよう警察が求める仕組みも始まっています。
「高校生の娘が、部活の帰りに同じ人物を何度も見かけると言う」「中学生の息子のSNSに、知らない大人から毎日のようにメッセージが届いていた」。保護者の方からこうしたご相談を受けることがあります。一方で、お子さん本人からは「親に言うと大ごとにされると思った」「スマホを取り上げられるのが嫌で黙っていた」という声を聞くこともあります。
ストーカー被害については「まずは警察に相談を」と案内されるのが一般的で、その説明自体は誤りではありません。ただ、被害を受けているのが未成年の子どもの場合、相手が同級生なのか大人なのか、好意によるものか嫌がらせなのかによって使える枠組みが変わります。また、親が子に代わって動ける範囲は成人の場合より広い一方で、親の動き方によっては子どもがその後何も話さなくなることもあります。
この記事では、18歳未満の子どもがつきまといに遭っていて、親が対応する場面に絞って、最初に親がしておきたいこと、学校への伝え方、警察や相手方への対応で親が担える範囲を解説します。家族が本人に代わって相談する場面の一般的な注意点は【ストーカートラブル】家族がストーカー被害に遭っている|家族が代わりに相談するときで、警察と裁判所の手続の全体像は接近禁止を実現する2つの道|ストーカー規制法(警察)と民事保全(裁判所)の使い分けで解説しています。
子どもへのつきまといは、相手と目的によって使える枠組みが変わる
まず相手が誰かで分けて考える
子どもが受けるつきまといは、相手との関係によっていくつかの型に分かれます。同級生や先輩、別れた交際相手など学校生活の中で知り合った相手、SNSやオンラインゲームで知り合った相手、通学路や駅などで繰り返し見かける見知らぬ人物、といった分け方です。
相手が誰かによって、相談先も、相手に働きかける経路も変わります。同じ学校の生徒であれば学校が関わる余地が大きく、ネット上でしかつながっていない相手であれば、まず相手をたどれるかどうかが問題になります。相手の素性が分からない場合の進め方は、【ストーカートラブル】相手が誰か分からない|匿名のつきまといで相手をたどる方法と、たどれないときの守り方で解説しています。
好意が目的ならストーカー規制法の対象になる
ストーカー規制法が対象とするのは、恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことへの恨みの感情を満たす目的で行われるつきまとい等です(ストーカー規制法2条1項)。待ち伏せや押しかけのほか、拒まれているのに繰り返しメッセージを送ること、紛失防止タグなどで居場所を把握することも含まれます(同条3項)。
この法律は、相手の年齢で適用を分けていません。相手が中学生や高校生であっても、つきまとい等があれば警察が警告などの対応を検討する対象になります。SNSでの繰り返しの連絡についてはSNS・LINEの執拗な連絡はストーカーになる?警告・禁止命令の流れを、位置情報の把握についてはGPS・AirTagで居場所を追跡された|改正ストーカー規制法と位置情報無承諾取得の罪をご覧ください。
好意以外が目的の場合に使える枠組み
子どもの場合、つきまといの動機が好意ではなく、ねたみや恨み、からかいであることも少なくありません。東京都の迷惑防止条例は、ねたみ・恨みその他の悪意の感情にもとづくつきまとい等を禁止しています(東京都迷惑防止条例5条の2)。相手が同じ学校の生徒などで、いじめに当たる場合には、学校がいじめの事実の確認などの対応をとることになります(いじめ防止対策推進法23条2項)。
また、大人がわいせつの目的で16歳未満の子に面会を求める行為などは、それ自体が処罰の対象とされています(刑法182条。相手との年齢差などの要件があります)。性的な画像を求められている、性的な目的がうかがえるといった場合は、つきまといの問題とは別の窓口も使えます。【親子問題】18歳未満の子が性的搾取の被害に遭っている場合の窓口もあわせてご覧ください。
整理すると、おおむね次のようになります。
| 相手と目的 | 主に使える枠組み | まず相談する先 |
|---|---|---|
| 好意・交際の要求が目的 | ストーカー規制法(警告・禁止命令等・刑罰) | 警察(最寄りの警察署・#9110) |
| ねたみ・恨み・嫌がらせが目的 | 迷惑防止条例、いじめ防止対策推進法 | 警察、学校 |
| 大人がわいせつ目的で接近している | 刑法182条など | 警察 |
| 目的が分からない | 事実関係を整理したうえで判断 | 警察、弁護士 |
どの枠組みに当たるかは、警察や弁護士が事実関係を聞いたうえで判断するものです。親が「ストーカーに当たるかどうか」を見極めてから相談する必要はありません。迷った段階で相談して構いません。
最初の数日で親がしておきたいこと
子どもの話を聞くときの姿勢
子どもが打ち明けてくれたときは、まず話してくれたことを受け止めることが大切です。「なぜ知らない人と連絡を取ったのか」「だから言ったのに」と責める言葉や、「スマホは没収する」といった対応を最初に示すと、子どもはその後の出来事を親に話さなくなりがちです。つきまといは続いていくことが多いため、子どもが次に何かあったときに親へ話せる状態を保つことが、結果として安全につながります。
また、細部まで何度も繰り返し聞き出すことは避けたほうがよいでしょう。子どもは聞かれ方によって記憶や説明が揺れやすく、負担も大きくなります。子どもが被害を受けた事件では、警察・検察・児童相談所が連携し、聴き取りの回数を減らす取組みも行われています。親としては、いつ・どこで・誰に・何をされたかの大枠を聞き、詳しい聴き取りは専門の機関に委ねるくらいの距離感が適切です。
記録は子どもの手元にある
メッセージや着信、SNSのやり取りなど、つきまといの記録の多くは子どものスマートフォンの中にあります。相手をブロックしたりアカウントを削除したりする前に、画面の保存を済ませておくことが大切です。相手のアカウント名やID、プロフィール画面、やり取りの日時が分かる形で残しておくと、後で警察や弁護士が状況を把握しやすくなります。
保存は、子どもの了承を得て一緒に行うのが基本です。親が無断で端末の中を見て回ると、子どもとの信頼関係が損なわれるおそれがあります。見かけた日時や場所、相手の特徴など、記録に残らない出来事は、子どもの話をもとに親が時系列でまとめておきます。まとめ方はA4一枚の時系列メモの作り方|相談の質を決める1枚が、記録の残し方はストーカーを刺激せず関係を断つ|安全な接触遮断と証拠の残し方が参考になります。
通学の経路とSNSから漏れる情報を見直す
子どもの行動は、通学の時間や経路、部活や塾の終わる時間などが決まっているため、相手に把握されやすい傾向があります。しばらくの間、送り迎えをする、帰宅の時間や経路を変える、一人になる時間を減らすといった対応を検討します。
SNSへの投稿から、制服や最寄り駅、よく行く場所が分かってしまうこともあります。投稿の公開範囲や、写真に写り込んでいる情報、位置情報の共有の設定を子どもと一緒に確認しましょう。持ち物に見覚えのない紛失防止タグが入っていないかも確認しておくと安心です。端末や共有サービスから居場所が漏れる経路については、【ストーカートラブル】スマホや共有サービスから居場所が漏れている|位置情報以外の経路を止めるで詳しく解説しています。
学校にどう伝えるか
改正法で学校の位置づけが変わった
令和7年12月30日に施行された改正法により、被害者が就学する学校の長も、被害者への援助に努める主体に加えられました(ストーカー規制法9条3項)。警察庁は、学校が生徒の被害を知った場合には速やかに警察へ通報すること、助けを求められたときは警察に引き継ぐまで一時的に保護すること、被害を受けている生徒の氏名等の情報管理に配慮すること、警察官による警戒等に協力することを、学校関係者に呼びかけています。
もっとも、この改正は学校に具体的な措置を義務付けるものではなく、警察と学校が連携しやすくするためのものと説明されています。学校に伝えれば学校が問題を解決してくれる、という性質のものではありませんが、登下校時の見守りや、学校の配布物・ホームページでの氏名の扱いへの配慮など、相談できることの幅は広がっています。
伝える前に決めておきたいこと
学校に伝えるときは、伝える相手と範囲を先に整理しておくと行き違いが生じにくくなります。担任の先生だけでなく、管理職にも状況を共有してもらうか、ほかの先生や生徒にどこまで知られてよいか、相手が同じ学校の生徒である場合に相手の保護者へ連絡してよいか、といった点です。
- 子どもが学校に知られることをどう考えているか。
- 学校に求めたいこと(登下校の見守り、席や動線の配慮、情報管理など)。
- 相手が同じ学校の生徒の場合、相手側への働きかけを学校に任せるかどうか。
- 警察にすでに相談しているか、学校と警察の連携を望むかどうか。
学校に伝えた後に起きること
相手が同じ学校の生徒であれば、学校は被害を受けた生徒と相手の生徒の双方を抱えることになります。学校が事実を確認する過程で、相手やその保護者に話が伝わることは避けられない場合があります。相手に知られた後の反応が心配なときは、そのことを学校に伝え、警察とも情報を共有しながら進めることが大切です。
学校の対応が子どもの希望と異なる方向に進みそうな場合や、学校と相手の保護者との間で話がこじれた場合には、弁護士が間に入って学校とのやり取りを整理することもできます。
警察や相手方への対応で、親が担える範囲
親は法定代理人として動ける
未成年の子どもの場合、親権者は法定代理人として、子に代わって契約などを行う立場にあります(民法824条)。弁護士への依頼は親権者が契約するのが通常で、裁判所に接近禁止の仮処分を申し立てたり、損害賠償を請求したりする手続も、法定代理人である親が子を代理して行います(民事訴訟法31条)。告訴についても、法定代理人は子とは別に独立して行うことができます(刑事訴訟法231条1項)。
警告の申出(ストーカー規制法4条)は被害を受けている本人が行うのが基本ですが、改正法により、警察が職権で警告を出すこともできるようになりました。被害届と告訴のどちらを選ぶかについては、被害届と告訴の違い|ストーカー・脅迫でどちらを選ぶをご覧ください。
ただし、親が代わって手続できる場面であっても、子どもの意見を聞かずに進めると、子どもが手続に協力しにくくなることがあります。年齢に応じて、何をしようとしているのか、子どもに何が起きるのかを説明しながら進めることが大切です。
相手も未成年の場合
相手も中学生や高校生である場合、年齢によって手続の進み方が変わります。14歳未満の者の行為は刑罰の対象とならず(刑法41条)、児童相談所などの福祉の手続が中心になります。14歳以上であっても、少年の事件は家庭裁判所に送られ、処罰よりも立ち直りに重点を置いた手続で扱われるのが基本です。
相手が未成年であるために「大ごとにしたくない」と迷う保護者の方もいらっしゃいます。しかし、警察への相談がそのまま相手の逮捕につながるわけではなく、警告は刑罰ではありません。子どもの安全を確保することと、相手の将来に配慮することは両立しうるものです。
また、相手の行為で損害が生じた場合、相手が自分の行為の責任を判断できない年齢であれば、その監督義務者である親が責任を負うことがあります(民法714条1項)。相手がそれより年長でも、親の監督に落ち度があった場合には、親自身が責任を問われることがあります(最高裁昭和49年3月22日判決)。
相手や相手の保護者に直接会いに行かない
子どもを守りたい気持ちから、相手や相手の保護者に直接抗議したくなることもあると思います。しかし、親が直接働きかけると、相手の行動がかえってエスカレートしたり、言い方によっては親の側が責任を問われたりするおそれがあります。相手の保護者との話し合いがかえって感情的な対立を生み、子ども同士の関係にも影響することがあります。
相手側との連絡が必要な場面では、学校・警察・弁護士を通すことを検討してください。警察の対応が進まないと感じる場合については、警察に相談しても動いてくれないとき|弁護士ができることをご覧ください。
弁護士に依頼すると何ができるか
窓口を一本化し、相手側に接触をやめるよう求める
弁護士が子どもの代理人となれば、相手との連絡の窓口を弁護士に一本化し、接触をやめるよう求める通知を送ることができます。相手が未成年であれば、相手の法定代理人である保護者に宛てて通知を送るのが通常です。親が相手側と直接やり取りする必要がなくなる点は、精神的な負担の面でも大きな違いです。
警察の手続と民事の手続を並行させる
弁護士は、警察への相談に同行して状況を整理して伝えたり、警察の手続と並行して裁判所に接近禁止の仮処分を申し立てたりすることができます。警察の手続と民事の手続を組み合わせて進められる点は、親だけで対応する場合との違いです。学校とのやり取りが必要な場面で、子どもの希望を踏まえて伝える内容を整理することもできます。
弁護士に依頼した場合の変化は【ストーカートラブル】弁護士に依頼すると何が変わるのか|ストーカー被害で代理人を立てる意味で詳しく解説しています。弁護士と警察が連携して付きまといを止めた事例として、【解決事例】一方的に好意を持たれ、ストーカー被害|弁護士と警察の連携により付きまとい・執拗なアプローチを阻止した事例もあわせてご覧ください。
よくあるご質問
子どもに「親には誰にも言わないで」と頼まれています。黙って動いてもよいですか。
身の危険が差し迫っている場合は、ためらわずに110番してください。そうでない場合は、子どもに知らせないまま警察や学校に話を進めるよりも、相談したい理由と、相談した先で何が起きるかを子どもに説明してから動くほうが、その後の協力を得やすくなります。親だけで警察や弁護士に相談し、見通しを聞いてから子どもと話すという順序も考えられます。
相手も高校生です。警察に相談すると相手の将来を壊してしまうのではと迷っています。
警察への相談がそのまま逮捕や処罰につながるわけではありません。警告は刑罰ではなく、少年の事件は立ち直りに重点を置いた手続で扱われるのが基本です。警告を受けた側に何が起きるのかについては、警察から「警告」を受けた|前科はつくのか、次に何が起きるのかで解説しています。相手への配慮を理由に、子どもの安全の確保を後回しにしないことが大切です。
SNSで知り合った相手で、本名も住所も分かりません。相談しても意味がありますか。
相手の素性が分からなくても相談する意味はあります。アカウント名やID、やり取りの記録が残っていれば、警察が捜査の中で相手を特定できる場合がありますし、発信者情報の開示などの手続で相手をたどれる場合もあります。相手がたどれない場合でも、子どもの身を守るための対策を並行して進めることができます。
まとめ
- 好意によるつきまといはストーカー規制法の対象で、相手が未成年でも警告等の対象になりうる(ストーカー規制法2条1項・4条)。
- ねたみや恨みによるつきまといは東京都迷惑防止条例で、学校内のいじめに当たる場合はいじめ防止対策推進法の枠組みでも対応できる(同条例5条の2、同法23条2項)。
- 大人がわいせつ目的で16歳未満の子に面会を求める行為などは、それ自体が処罰の対象となる(刑法182条)。
- ブロックや削除の前に記録を保存し、子どもを責めずに話を聞ける状態を保つ。
- 改正法により学校の長も被害者への援助に努める主体となり、学校を通じた見守りや情報管理を相談しやすくなった(ストーカー規制法9条3項)。
- 親は法定代理人として、弁護士への依頼、民事の手続、告訴を子に代わって行える(民法824条、民事訴訟法31条、刑事訴訟法231条1項)。
- 相手や相手の保護者に親が直接働きかけることは控え、学校・警察・弁護士を通して進める。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、ストーカー被害に関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。お子さんがつきまといに遭っている場合、保護者の方だけでご相談いただくこともできます。
お子さんの気持ちを大切にしながら、今の状況で取れる手段とその順序を一緒に整理します。親として何をすればよいか迷ったときは、一人で抱え込まずにご相談ください。


