【ストーカートラブル】相手が人を雇って見張らせている|探偵を使ったつきまとい
この記事は、2026年11月時点の個人情報保護法・ストーカー規制法などの規定と、公表されている行政の解説をもとに書いています。個別の事情によって結論が変わることがあります。
つきまといに悩んでいる方から、「会社のホームページに顔写真と名前が出ている。あれを見られて勤務先を知られたのではないか」というご相談を受けることがあります。社員紹介や採用ページ、役員紹介、担当者紹介などに載っている情報は、本人にとっては仕事の一部でも、相手にとっては居場所を絞り込む手がかりになりえます。
この記事では、会社のサイトに載っている顔写真や名前を消してもらえるのか、どのような根拠で求められるのか、会社にどう伝えればよいのか、消した後に何が残るのかを順に整理します。
会社のサイトの顔写真や名前が手がかりになる場面
会社のサイトの情報は、それだけで自宅の住所が分かるものではありません。ただ、ほかの情報と組み合わさると、相手が接触する場所を特定しやすくなることがあります。
- 名前で検索すると会社のページが表示され、勤務先と勤務地が分かる。
- 顔写真から、職場の近くで本人を見分けられる。
- 社員インタビューに書かれた担当業務や出身地、趣味などから行動範囲が推測される。
- 画像検索で、同じ写真が使われている別のサイトやSNSにたどり着かれる。
すでに職場の近くで待たれている、勤務先に電話がかかってくるといった状況であれば、写真の削除だけでは足りず、警察への相談と身の安全の確保を先に考える必要があります。一方で、相手がまだ勤務先を知らないと考えられる段階や、転職・異動の直後であれば、掲載情報を減らしておくことに意味が出てきます。
削除を求めるときの法的な手がかり
掲載は本人の同意を前提としている
顔写真をみだりに撮影・公表されない利益は、法律の条文に明記されたものではありませんが、裁判例を通じて肖像権として認められてきました。会社が社員の顔写真をサイトに載せるには、本人の同意があることが前提と考えられています。
また、一度同意をしていたとしても、その同意が期限なく続くとは限りません。労働問題を扱う弁護士の解説では、掲載期間を定めずに同意を得ていた場合には在職中でも本人の申出があれば削除に応じるべきだとする見方や、退職によって同意の前提が失われるとする見方が示されています。上下関係の中で断りにくかった事情があれば、同意の有効性そのものが問題になることもあります。
個人情報保護法の利用停止等の請求
2022年4月に施行された改正個人情報保護法により、本人の権利または正当な利益が害されるおそれがある場合などには、本人が会社に対して保有個人データの利用停止や消去を求められるようになりました(個人情報保護法35条5項)。個人情報保護委員会のガイドラインでも、退職した従業員の情報を現在も在籍しているかのようにホームページに載せ、本人に不利益が生じている場面が、利用停止等が認められる例として挙げられています。
つきまといを受けていて、掲載が続くことで居場所を知られるおそれがあるという事情は、この「正当な利益が害されるおそれ」を説明する材料になりえます。ただし、削除に多額の費用がかかるなど対応が難しい場合には、会社が代わりの措置をとることも法律上認められているため、具体的な対応は話し合いで決まることになります。
会社が負っている安全への配慮
会社は、従業員が生命や身体の安全を確保しながら働けるよう配慮する義務を負っています(労働契約法5条)。社外の人物からのつきまといであっても、会社が事情を知ったうえで、それを助長しうる掲載を続けることは、この配慮の観点から見直しが求められる場面があります。削除を法的に強制できるかという問題とは別に、会社にとっても応じる理由がある事柄として伝えると、話が進みやすくなります。
立場によって変わる点
| 立場 | 削除の求めやすさ | 気をつけたい点 |
|---|---|---|
| 在職中の社員 | 同意の撤回や安全への配慮の申出として求めやすい | 業務上名前を出す必要がある部署かどうかで、代わりの方法を相談する |
| 退職した社員 | 在籍の前提がなくなっているため、比較的求めやすい | 採用媒体や業界誌など、会社のサイト以外の掲載先も確かめる |
| 役員・代表者 | 会社の顔としての掲載のため、全面的な削除は難しい場合がある | 写真だけを外す、経歴を簡略にするなど範囲を絞った対応を検討する |
| 資格者として名前を出している人 | 業種によっては氏名の表示が求められる場面がある | 表示が必要な部分と、写真や詳しい経歴のように任意で載せている部分を分けて考える |
役員の氏名は商業登記にも記載されるため、会社のサイトから消しても情報がまったくなくなるわけではありません。代表取締役の住所については、2024年10月から、登記事項証明書などで住所の一部を表示しないよう申し出る制度も設けられています。それでも、顔写真と結びついた情報を減らしておくことには、一定の意味があります。
会社への伝え方
削除を求める相手は、まず直属の上司か人事・総務の担当者です。サイトを管理しているのが広報部門や外部の制作会社であっても、窓口は社内の担当者に一本化してもらうほうが、話が広がりにくくなります。
被害の詳しい中身をすべて話す必要はありません。会社に伝えておきたいのは、次のような事項です。
- 社外の人物からつきまといを受けていること。
- サイトの掲載が手がかりになっているおそれがあること。
- 削除してほしい情報の範囲(顔写真・氏名・経歴など)。
- 対応してほしい時期。
- 社外からの問い合わせに在籍の有無を答えないでほしいこと。
- この件を知る社内の範囲を限ってほしいこと。
口頭で伝えた後に、メールなどで依頼の内容を残しておくと、対応の経過を後から確かめやすくなります。全面的な削除は難しいと言われた場合でも、写真をイラストや後ろ姿に替える、氏名をイニシャルにする、部署名だけを残すといった代わりの方法を相談する余地があります。
会社に事情を話すことへの不安があるとき
つきまといの相手が元交際相手である場合など、私生活に関わる事情を職場に知られたくないと感じる方は少なくありません。削除をお願いする理由として、相手との関係や被害の経緯まで説明しなければならないわけではなく、「社外の人物からつきまといを受けており、身の安全のために掲載を外してほしい」という程度でも、会社が検討するには足りることが多いと考えられます。
相手が同じ職場の人や取引先の関係者である場合には、事情が異なります。社内での接触や業務上のやり取りにも配慮が必要になるため、削除の依頼だけでなく、担当の変更や連絡経路の見直しもあわせて相談することになります。誰にどこまで話すかを自分だけで決めにくいときは、会社に伝える前に、伝える範囲と順序を弁護士と整理しておく方法もあります。弁護士が代理人として会社とやり取りすれば、本人が繰り返し説明する負担を減らすこともできます。
サイトから消した後に残るもの
会社のページから写真を外しても、すぐに検索結果から消えるとは限りません。見落としやすいのは次のような場所です。
- 検索エンジンのキャッシュや画像検索の結果。
- 過去のページを保存しているウェブアーカイブ。
- 採用媒体、業界誌、プレスリリース配信サイトなど、会社が外部に提供した記事。
- 会社の公式SNSや動画サイトへの投稿。
- PDFで公開されている会社案内や社内報。
検索結果については、元のページが削除・変更された後に、検索サービスの所定の手続から古い情報の更新を求められる場合があります。外部媒体の記事は、会社から各媒体に削除を依頼してもらうのが通常の流れです。会社に依頼するときに「サイト以外の掲載先も含めて」と伝えておくと、漏れが少なくなります。
会社が応じてくれないとき
会社が削除に応じない、対応を先延ばしにされるといった場合には、弁護士から会社に書面で削除を求める方法があります。肖像権やプライバシー、個人情報保護法の利用停止等の請求、安全への配慮といった根拠を整理して伝えることで、会社の側も法的な問題として検討しやすくなります。それでも応じない場合には裁判所の手続を使うことも考えられますが、時間と費用がかかるため、まずは話し合いでの解決を目指すのが一般的です。
あわせて、相手の行動そのものへの対応も欠かせません。ストーカー規制法は、勤務先など通常いる場所の付近での見張りや押しかけ、うろつきを規制の対象としています。警察に相談すれば、警告や禁止命令といった手続につながる可能性があります。写真の削除は相手に情報を与えないための手段であり、相手の行動を止める手続とは役割が違うことを意識しておくとよいでしょう。
写真の削除と並行して進めたいこと
勤務先を知られているかもしれないと感じたら、掲載情報の見直しと並行して、相手の行動を記録すること、警察に相談すること、勤務先に通勤や勤務の面での配慮を求めることを検討してください。どれを先に進めるかは、相手との距離や危険の度合いによって変わります。
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まとめ
会社のサイトに載っている顔写真や名前は、在職中か退職後かを問わず、つきまといへの不安を理由に削除や掲載方法の変更を求められる余地があります。会社にとっても従業員の安全に関わる事柄として受け止めやすいため、範囲と時期をはっきりさせて、早めに伝えることが大切です。相手の行動が続いている場合には、掲載情報の見直しだけで終わらせず、警察や弁護士への相談もあわせてご検討ください。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


