【ストーカートラブル】配信者・VTuberへの粘着|ネット上のつきまといへの対応

若井亮

若井亮

テーマ:ストーカートラブル

この記事は、2026年10月時点の法令をもとにしています。ストーカー規制法は、令和7年12月30日施行の改正(紛失防止タグを使った位置情報の取得等の規制、警察の職権による警告の創設など)を反映しています。迷惑防止条例は東京都の条例を例に説明しており、他の道府県では規定の内容が異なる場合があります。


「配信のたびに同じアカウントからコメントが連投され、ブロックしても別のアカウントで戻ってくる」。個人で活動する配信者の方から、このようなご相談をいただくことがあります。所属タレントを抱える事務所のご担当者からも、「タレント本人宛てのDMに、自宅の最寄り駅を言い当てる内容が届いた。どこまで深刻に受け止めるべきか判断がつかない」というお話をうかがいます。

 配信者やVTuberへの嫌がらせについては、投稿の削除や発信者情報開示請求による投稿者の特定といった解説が数多く出ています。それ自体は誤りではありません。ただ、継続的な「粘着」の場面では、相手が好意から動いているのか、悪意から動いているのかによって使える法律が変わること、そしてネット上の行為が現実の居場所に近づいていく段階があることは、誹謗中傷対策の解説だけでは見えにくい部分です。

 この記事では、配信者・VTuberの方が受ける継続的なつきまといに絞り、法律上の線引き、配信者に特有の行為の形、記録の残し方、手段の選び方を整理します。投稿の削除や投稿者の特定の具体的な手順、自宅や位置情報への対策は、それぞれの記事で詳しく扱っていますので、本文中の該当箇所からご覧ください。

配信者への「粘着」が法律上の問題になる線

応援・批判と、つきまといの違い

 配信に毎回コメントをする熱心な視聴者や、内容に厳しい意見を書く視聴者がいること自体は、活動を公開している以上、ある程度は避けられません。裁判例でも、VTuberに対する否定的な批評について、名誉感情の侵害を否定したものがあります(東京地判令和3年6月8日)。

 問題になりやすいのは、次のような要素が重なってきた場合です。

  • やめてほしいと伝えた後や、ブロックした後も、別のアカウントで連絡が続いている。
  • 配信の内容と関係のない、私生活や居場所に関する書き込みが増えている。
  • 交際や面会を求める内容、または応じないことへの不満や怒りが繰り返されている。
  • 配信者本人だけでなく、家族やコラボ相手、所属事務所にまで連絡が及んでいる。


 1回ごとの書き込みは軽く見えても、頻度・内容・拒絶後の継続という3つの点がそろってくると、法律上のつきまといとして扱われる可能性が高まります。1回だけの連絡がどう評価されるかについては、連絡は1回だけだった|つきまとい等とストーカー行為の違いで詳しく説明しています。

相手の動機で、使える法律が変わる

 ストーカー規制法は、恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で行われる行為を対象としています(ストーカー規制法2条1項)。いわゆる「ガチ恋」の視聴者による粘着は、この法律の対象になり得ます。

 一方で、配信者への粘着には、好意ではなく、ねたみや恨みから続けられるものもあります。この場合はストーカー規制法の対象から外れますが、東京都の迷惑防止条例は、ねたみ、恨みその他の悪意の感情に基づくつきまとい行為等を禁止しています(東京都迷惑防止条例5条の2)。

相手の動機主に検討する法律主な内容
好意・恋愛感情、またはそれが満たされなかった恨みストーカー規制法警告・禁止命令、反復した場合の刑事罰
ねたみ・恨みなどの悪意の感情迷惑防止条例(東京都は5条の2)反復したつきまとい行為等への刑事罰
動機を問わず、投稿の内容そのものが問題になる場合刑法(脅迫罪・名誉毀損罪・侮辱罪など)、民法刑事告訴、削除請求、損害賠償請求


 実際の粘着では、最初は好意的だった視聴者が、反応がないことをきっかけに攻撃的になるといったように、動機が途中で変わることも少なくありません。どの法律で扱うかは警察や弁護士が具体的な書き込みを見て判断しますので、ご自身で分類を確定させる必要はありません。相談の際に、書き込みの変化が時系列で分かるようにしておくと、判断がしやすくなります。

VTuberの場合、「中の人」に向けられた行為といえるか

 VTuberはキャラクターの名前とアバターで活動しているため、そのキャラクターへの書き込みが、演じている本人への権利侵害といえるのかが問題になることがあります。

 この点について、VTuberとして活動する方への侮辱的な投稿について、演じている本人の名誉感情の侵害を認めた裁判例があります(大阪地判令和4年8月31日・判例タイムズ1501号202頁)。本名や素顔を公開していなくても、キャラクターとしての活動と本人の人格が結びついていると評価できれば、本人への権利侵害として扱われる余地があります。ただし、評価は事案ごとに分かれますので、複数の演者が関わるキャラクターなどの場合は、個別の検討が必要です。

配信者に特有の粘着のかたち

コメント欄・DMへの連投と、別アカウントでの再開

 ストーカー規制法は、拒まれたにもかかわらず連続して電子メールの送信等をすることを、つきまとい等の一つとしています(ストーカー規制法2条1項5号)。この「電子メールの送信等」には、SNSのメッセージ機能などを使った送信も含まれます(同条2項)。

 配信者の場合、ブロックした後に別のアカウントで連絡が再開されることが典型的です。ブロックや「連絡しないでください」という意思表示があった後に続いているかどうかは、法律上の評価に関わりますので、いつブロックしたのか、その後どのアカウントから何が届いたのかを記録しておくことに意味があります。SNSでの連絡がストーカー行為にあたる場面と警察の手続については、SNS・LINEの執拗な連絡はストーカーになる?警告・禁止命令の流れもあわせてご覧ください。

「見ている」と知らせる書き込み

 配信者への粘着で見落とされやすいのが、行動を監視していると思わせるような事項を告げ、またはその知り得る状態に置く行為です(ストーカー規制法2条1項2号)。たとえば「今日の配信、窓の外に○○が見えたね」「昨日○○駅にいたでしょう」といった書き込みがこれにあたる可能性があります。

 この類型は、DMで直接送られてくる場合に限らず、配信者本人が目にするコメント欄や公開の投稿に書かれる場合も対象になり得ます。一見すると単なる感想のように書かれていることも多いため、居場所や私生活に触れる書き込みは、内容がささいに見えても記録に残しておくことをおすすめします。

配信の内容から居場所が推測される

 配信者の場合、相手が居場所を知る経路は、配信そのものに含まれていることがあります。窓の外の景色や建物、環境音、天候の話題、配信の開始・終了時刻、宅配便の到着、近所の店の話題などの断片が組み合わされると、住んでいる地域がしぼり込まれることがあります。

 過去のアーカイブや切り抜き動画にも同じ情報が残っているため、粘着が始まった段階で、どの配信にどの情報が出ていたかを一度見直しておくとよいでしょう。スマホや共有サービスから居場所が伝わる経路については、【ストーカートラブル】スマホや共有サービスから居場所が漏れている|位置情報以外の経路を止めるで整理しています。

ネット上の粘着が現実に近づくサイン

住所や生活圏への言及が出てきたとき

 ネット上の書き込みにとどまっていた粘着が、最寄り駅や通っている店、住んでいる地域に触れるようになった場合は、対応の段階を一つ上げて考える必要があります。居場所に関する言及は、相手の関心がネット上から現実の生活に移りつつあることを示す場合があるため、この段階で警察に相談しておくことが考えられます。

 相談の時点では、まだ実害が出ていないこともあります。それでも、警察に相談した記録が残っていれば、その後に事態が進んだときの対応の土台になります。

イベント会場やオフ会での待ち伏せ

 ストーカー規制法は、住居や勤務先、学校のほか、相手が現に所在する場所の付近での見張りや押し掛けも対象としています(ストーカー規制法2条1項1号)。リアルイベント、コラボカフェ、オフ会、収録スタジオの周辺などでの待ち伏せや見張りも、この規定の対象になり得ます。

 イベントの日程や会場を事前に告知する場合は、主催者や会場と、出入りの経路や当日の対応を打ち合わせておくことが考えられます。店舗や職場でのつきまといについて事業者側ができることは、【ストーカートラブル】職場や店舗で客からつきまとわれる|従業員を守るために会社ができることで説明しています。

自宅に来られた場合

 自宅の周辺で見かけた、郵便受けに手紙が入っていたといった事態になった場合は、身の安全の確保を最優先にしてください。身の危険を感じる場面では、ためらわずに110番通報をしてください。管理会社やオートロック、防犯カメラの活用については、【ストーカートラブル】自宅マンションに来られている|管理会社・オートロック・防犯カメラでできることで詳しく扱っています。

配信者ならではの記録の残し方

アーカイブやコメントが消える前に残す

 配信のコメントは、アーカイブを非公開にしたり削除したりすると見られなくなることがあります。相手が自分の投稿を削除したり、アカウントを削除したりすることもあります。

 記録を残すときは、次の点を意識してください。

  • 書き込みの画面を、投稿日時とアカウント名・ユーザーIDが分かる形で保存する。
  • 投稿やアカウントのURLを、画面の保存とは別に控えておく。
  • 配信中のコメントは、配信の画面録画や、コメント履歴を保存できる機能を使って残す。
  • いつ、どの配信で、どのアカウントから、何が書き込まれたかを一覧にまとめておく。


 後から投稿者の特定を求める場合、URLや投稿日時が分からないと手続を進めにくくなるため、画面の保存とあわせて控えておくことが大切です。

ブロックする前に相手の情報を控える

 ブロックをすると、相手の投稿やプロフィールが見えなくなるサービスがあります。ブロックする前に、相手のアカウント名、ユーザーID、プロフィールの内容、過去の投稿を保存しておくと、別のアカウントで戻ってきたときに同一人物かどうかを判断する材料になります。

モデレーターや事務所と記録を一本化する

 配信のモデレーターや所属事務所のスタッフが、コメントを削除したり、相手をブロックしたりしている場合もあります。それぞれが別々に対応していると、記録が分散し、全体の経過が分かりにくくなります。誰が、いつ、どの書き込みを削除・ブロックしたかを一つの記録にまとめる担当者を決めておくと、警察や弁護士への相談がしやすくなります。

手段の選び方

警察による警告・禁止命令

 ストーカー規制法の対象となる行為があり、さらに繰り返すおそれがある場合、警察は相手に警告をすることができます(ストーカー規制法4条1項)。令和7年12月30日施行の改正により、被害者からの申出がなくても、警察が職権で警告をできるようになりました。また、公安委員会は禁止命令を出すことができ、禁止命令に違反した場合には刑事罰の対象となります(同法5条、19条、20条)。

 警察での手続と、裁判所に接近禁止を求める民事の手続とでは、それぞれ使える場面が異なります。使い分けについては、接近禁止を実現する2つの道|ストーカー規制法(警察)と民事保全(裁判所)の使い分けで説明しています。被害届と告訴のどちらを選ぶかは、被害届と告訴の違い|ストーカー・脅迫でどちらを選ぶをご覧ください。

投稿の削除と、投稿者の特定

 相手が匿名の場合、名誉やプライバシーを侵害する投稿などについては、発信者情報開示命令などの手続によって投稿者の特定を求めることができます。通信の記録の保存期間には限りがあり、時間がたつと特定が難しくなることがあるため、特定を考える場合は早めの相談をおすすめします。匿名の相手をたどる方法と、たどれないときの備えについては、【ストーカートラブル】相手が誰か分からない|匿名のつきまといで相手をたどる方法と、たどれないときの守り方で詳しく扱っています。

 投稿がすでに拡散している場合に、削除と投稿者の特定のどちらを先に進めるかは、【不当要求対応】拡散された後の順序|削除と発信者特定のどちらを先に動かすかをご覧ください。大規模なプラットフォームへの削除申出の扱いについては、【男女トラブル】削除申出への回答期限|以前と何が違うのかで説明しています。

代理人からの通知と、民事上の請求

 相手が特定できている場合や、特定できた後には、弁護士が代理人として連絡をやめるよう求める通知を送ることが考えられます。配信者ご本人が相手とやり取りをしないまま、窓口を弁護士に移すことができます。損害賠償の請求や、接近・投稿の禁止を求める仮処分の申立ても選択肢になります。代理人を立てることで何が変わるのかについては、【ストーカートラブル】弁護士に依頼すると何が変わるのか|ストーカー被害で代理人を立てる意味をご覧ください。

素性を伏せて活動している方が知っておきたいこと

警察や裁判所に本名を伝えることと、相手に知られることは別

 本名や住所を公開せずに活動している方の中には、警察への相談や裁判の手続をとると、相手に素性が知られてしまうのではないかと心配される方が多くいらっしゃいます。

 警察への相談では本名や連絡先を伝えることになりますが、そのことがそのまま相手に伝わるわけではありません。また、民事訴訟では、住所や氏名が相手に知られることで社会生活に著しい支障が生じるおそれがある場合、申立てによりこれらを秘匿する制度が設けられています(民事訴訟法133条)。どの手続で、どの情報が相手に伝わり得るのかは手続ごとに異なるため、手続を選ぶ前に確認しておくことが大切です。

 なお、ストーカー行為等をするおそれがある者であると知りながら、その者に相手方の氏名や住所などの情報を提供することは禁止されています(ストーカー規制法6条1項)。

所属事務所がある場合と、個人で活動している場合

 事務所に所属している場合は、事務所が窓口となって記録を集め、プラットフォームや警察とのやり取りを担うことが多いでしょう。ただし、事務所と本人とで、どこまで手続を進めたいかの考えが異なることもありますので、本人の意向を確認しながら進めることが大切です。

 個人で活動している場合は、記録の整理から相談先の選択まで、一人で抱え込みやすくなります。早い段階で警察や弁護士に相談し、何を自分で続け、何を任せるかを決めておくと、配信を続けながらの対応がしやすくなります。

反応を返さない運用を決めておく

 粘着する相手は、配信者の反応そのものを求めていることがあります。配信中に相手の書き込みに触れる、相手を名指しで注意するといった対応は、かえって書き込みを増やすきっかけになることがあります。反応はせずに記録だけを残す、モデレーターが淡々と削除するといった運用をあらかじめ決めておくと、落ち着いて対応しやすくなります。相手を刺激せずに関係を断つ方法については、ストーカーを刺激せず関係を断つ|安全な接触遮断と証拠の残し方もご覧ください。

よくあるご質問

ブロックすると、相手が逆上しないか心配です

 その可能性はあるため、ブロックの前に相手のアカウント情報と過去の書き込みを保存し、ブロック後の動きを見られる状態にしておくことをおすすめします。ブロック後に別のアカウントで連絡が続く場合は、拒絶の後も続いている事情として記録に残ります。居場所に関する書き込みが出てきた場合は、早めに警察へ相談してください。

相手の書き込みがまだ一度だけでも、相談してよいですか

 ご相談いただいてかまいません。一度の書き込みだけでは法律上の対応が難しいこともありますが、内容によっては脅迫などにあたる場合がありますし、今後に備えた記録の残し方や、反応しない運用の決め方についてお伝えできることもあります。

投げ銭をしていた視聴者から「返せ」と言われ続けています

 投げ銭の返還を求める連絡が、交際や面会の要求、配信者への不満とあわせて繰り返されている場合は、金銭の問題としてだけでなく、つきまといとしての側面もあわせて検討する必要があります。投げ銭が返還の対象になるかどうかについては、【男女トラブル】配信者・地下アイドルへの投げ銭は取り戻せるかで説明しています。

まとめ


  1. 配信者への粘着は、頻度・内容・拒絶後の継続がそろうと、法律上のつきまといとして扱われる可能性が高まる。
  2. 好意に基づく粘着はストーカー規制法(2条1項)、悪意に基づく粘着は東京都では迷惑防止条例(5条の2)の対象になり得る。
  3. VTuberへの書き込みでも、演じている本人への権利侵害と認めた裁判例がある(大阪地判令和4年8月31日)。
  4. 「見ている」と知らせる書き込みや、イベント会場などでの待ち伏せも、つきまとい等にあたり得る(ストーカー規制法2条1項1号・2号)。
  5. コメントやアーカイブは消える前に、投稿日時・ユーザーID・URLが分かる形で記録しておく。
  6. 令和7年12月30日施行の改正により、警察は職権でも警告ができるようになった(ストーカー規制法4条1項)。
  7. 民事訴訟では、申立てにより住所・氏名を相手に秘匿する制度がある(民事訴訟法133条)。


弁護士法人若井綜合法律事務所では、ストーカー被害に関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。配信者・VTuberとして活動されている方や、所属タレントの被害に対応している事務所のご担当者からのご相談もお受けしています。

コメント欄やDMでの粘着が続いている方、居場所に触れる書き込みが出てきて不安を感じている方、素性を伏せたまま対応できるか知りたい方は、記録が手元にそろっていない段階でも、お気軽にご相談ください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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