【ストーカートラブル】職場の上司・同僚からの執拗な好意|会社に伝える前に
この記事は、2026年10月時点の法令に基づいて作成しています。ストーカー規制法は、令和7年12月30日施行の改正(紛失防止タグを用いた位置情報の取得の規制、警察の職権による警告、学校の長による被害者援助の努力義務など)を反映しています。大学・専門学校ごとの相談窓口や学内規程の名称・内容は、学校によって異なります。
「同じ授業を取っている学生に、食事の誘いを断ったあとも教室の前で待たれるようになった」「サークルを辞めたのに、別れた相手が部室の近くで様子をうかがっている」。大学や専門学校に通う方から、このようなご相談をいただくことがあります。また、保護者の方から「子どもが学校で困っているようだが、親がどこまで関わってよいのか分からない」とご相談を受けることもあります。
ストーカー被害については、警察に相談すること、証拠を残すことが広く勧められています。その説明自体は誤りではありません。ただ、相手と同じ学校に通い続けなければならない学生の場合、授業やサークル、研究室で顔を合わせる状況が続くため、一般的な対処法だけでは手当てしきれない場面があります。
この記事では、学生同士のつきまといに絞って、法律上の扱い、学校に相談するときに知っておきたいこと、警察・学校・弁護士の組み合わせ方を整理します。SNSでの連絡そのものへの対応や、接近禁止の手続の詳細は別の記事に譲ります。なお、ストーカーだと言われた学生側の学内処分については、学生・内定者の場合|大学の処分と内定取消で扱っています。
学生同士のつきまといは法律上どう扱われるのか
ストーカー規制法は「学校」を明記している
ストーカー規制法は、規制の対象となる「つきまとい等」の一つとして、住居や勤務先、学校など、相手が普段いる場所の付近での見張り、押し掛け、うろつきを挙げています(ストーカー行為等の規制等に関する法律2条1項1号)。キャンパスの門や教室の前で待たれる、授業の終わる時間に合わせて現れるといった行為は、条文が想定している場面に含まれます。
このほか、断られているのに面会や交際を求め続けること、拒まれたあとも連続して電話をかけたりメッセージを送ったりすることも対象です(同法2条1項3号・5号)。同じ学校に通っていることは、つきまといを正当化する理由にはなりません。同じ授業に出席すること自体は問題になりませんが、授業の外で待ち伏せる、行く先々に現れるといった行為は別に評価されます。
恋愛感情が関わっているかどうかが分かれ目になる
ストーカー規制法の対象になるのは、恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことへの恨みの感情を満たす目的で行われる行為です(同法2条1項柱書)。交際を断ったあとの待ち伏せや、別れたあとも続く接触は、通常この目的に当たると考えられます。
一方で、成績や研究上の対立から生じた嫌がらせ、グループ内での仲間外れなど、好意や恋愛と関係のないものは、ストーカー規制法の外側にあります。その場合は、学校のハラスメント防止規程による対応や、内容によっては脅迫や名誉毀損など別の法律での対応を検討することになります。
また、ストーカー規制法では、つきまとい等が1回あれば警告などの対象になり得ますが、刑罰の対象となる「ストーカー行為」は、同じ相手に対してつきまとい等を繰り返すことを指します(同法2条4項、18条)。この違いは連絡は1回だけだった|つきまとい等とストーカー行為の違いで詳しく説明しています。
相手が未成年の場合
大学生の多くは18歳以上で、法律上は成人です。ただ、高等専修学校など、10代の学生が通う学校では、相手が18歳未満であることもあります。相手が未成年であっても、ストーカー規制法による警告などの対象から外れるわけではありません。刑事手続に進む場合は少年事件としての手続になりますが、被害を受けている側が記録を残し、相談する手順は年齢にかかわらず変わりません。
同じ学校に通い続けることから生じる難しさ
相手と顔を合わせる場面を避けきれない
職場のつきまといであれば部署の異動、自宅であれば転居という選択肢もありますが、学生の場合は卒業まで同じ学校に通い続けることが前提になります。履修している授業や所属するサークル、研究室が重なっていると、時間割から行動を読まれやすく、相手を避けるために自分の学業を犠牲にせざるを得なくなることもあります。
学生間のつきまといでは、「相手の行動を止めること」と「自分の学業を続けられるようにすること」を分けて考えると、相談先の使い分けが見えやすくなります。前者は主に警察や法的手続、後者は主に学校との調整が担う部分です。
共通の知人を通じて情報が伝わる
学生同士の人間関係は重なり合っていることが多く、友人に事情を打ち明けた内容が相手に伝わってしまう、友人を通じて相手からの伝言が届くといったことが起こります。相談する相手は信頼できる人に絞り、伝わる可能性があることを前提に話す内容を選ぶことが大切です。第三者を介した接触への対応は別れた相手が家族や友人に接触してくる|第三者を巻き込む嫌がらせへの対応で取り上げています。
「穏便に済ませたい」という気持ちが対応を遅らせることがある
狭い人間関係のなかで角を立てたくない、相手を処分に追い込みたくないと考えるのは自然なことです。ただ、曖昧な返事を続けていると、相手が「はっきり拒まれてはいない」と受け取り、行動が続くことがあります。拒絶の意思は、感情的な言葉を避けつつ一度はっきりと、できれば記録に残る形で伝えておくことが、その後の手続でも意味を持ちます。伝え方と接触の断ち方はストーカーを刺激せず関係を断つ|安全な接触遮断と証拠の残し方を参考にしてください。
大学・専門学校に相談するときに知っておきたいこと
学校の窓口でできること
多くの大学には、ハラスメント相談窓口や学生相談室、学生課などの窓口が設けられています。専門学校でも、担任や学生支援の担当部署が相談を受けるのが一般的です。学校の規程や事案の内容によって異なりますが、次のような対応が考えられます。
- 授業のクラスやゼミ、実習のグループを分けるなど、学内での接点を減らす調整。
- 試験の座席や時間割への配慮。
- 相手の学生に対し、接触しないよう求める指導や注意。
- 事実関係を調査したうえでの、学内規程に基づく懲戒処分の検討。
これらがすべて実現するとは限りませんが、日常の接点を減らすという点では、学校にしかできない調整が多くあります。
学校にできないこと
学校は、つきまといをしている側の学生とも在学関係にあります。そのため、学校が被害を受けた学生の代わりに相手と交渉したり、損害の賠償を求めたりする役割を担うことは難しいのが一般的です。また、学内の処分は学校に在籍している人に対するものであり、学外での行動を直接止める強制力はありません。
学校への相談は、法的な手続の代わりではなく、学内での生活を守るための手段と位置づけておくと、期待と結果のずれが生じにくくなります。
令和7年の改正で学校の役割が法律に書き込まれた
令和7年12月30日に施行された改正ストーカー規制法により、被害者が通う学校の長が、被害者を援助するよう努める主体として加えられました(同法9条3項)。改正前は、援助の努力義務の主体は、つきまといが行われている地域の住民とされていましたが、学校で被害に遭う事案が生じていることを受けた改正です。
警察庁は学校関係者に向けて、被害を知った場合の警察への連絡、助けを求められた場合に警察に引き継ぐまでの一時的な保護、被害を受けている学生の氏名などの情報管理への配慮、警察の警戒活動への協力を求めています。もっとも、この改正は学校に特定の措置を義務付けるものではないとされています。
学校に相談するときは、警察への連絡を希望するかどうか、相談内容を誰にまで共有してよいかといった自分の意向も、あわせて伝えておくとよいでしょう。
警察・学校・弁護士をどう組み合わせるか
それぞれの窓口が担える範囲
学生間のつきまといでは、一つの窓口だけで解決しようとせず、役割を分けて並行させることが現実的です。主な窓口の役割は次のように整理できます。
| 窓口 | 主に担えること | 届きにくいこと |
|---|---|---|
| 大学・専門学校 | 授業やゼミの調整、相手への指導、学内規程に基づく処分 | 学外での行動、卒業・退学した相手への対応 |
| 警察・公安委員会 | 警告、禁止命令、ストーカー行為としての検挙 | 恋愛感情が関わらない嫌がらせなど、法の要件に当たらない行為 |
| 弁護士 | 相手への通知、接触しない旨の合意、裁判所への仮処分の申立て、学校との調整の補助 | 裁判所の手続を経ない限り強制力はない |
警察への相談と警告・禁止命令
警察に相談すると、事案に応じて相手への警告や、都道府県公安委員会による禁止命令が検討されます(同法4条・5条)。改正前は、警告をするには被害者からの申出が必要でしたが、改正後は警察の職権による警告も可能になりました。相手が同じ学校の学生であることを理由に申出をためらっていた方にとっても、相談しやすくなった点といえます。
禁止命令に違反してストーカー行為をした場合は、2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金の対象となります(同法19条1項)。警告・禁止命令の流れはSNS・LINEの執拗な連絡はストーカーになる?警告・禁止命令の流れで、警察が動きにくい場合の対応は警察に相談しても動いてくれないとき|弁護士ができることで説明しています。
学内の調整と法的な手続を並行させる
学校による調整は日常の接点を減らすもの、警察や法的手続は学外を含めた相手の行動を止めるものです。両方を並行させることで、学業を続けながら被害を止める道筋をつけやすくなります。
弁護士が代理人となる場合は、相手に通知を送って直接の接触をやめるよう求めたうえで、接触しないことを約束する合意書を作ることが考えられます。学生同士の場合は、同じ授業に出席するときの距離の取り方、話しかけないこと、SNSや共通の知人を通じた接触をしないことなど、学内で顔を合わせることを前提とした取り決めを具体的に書き込むことが大切です。相手が応じない場合は、裁判所に接近禁止の仮処分を申し立てる方法もあります。警察と裁判所の手続の使い分けは接近禁止を実現する2つの道|ストーカー規制法(警察)と民事保全(裁判所)の使い分けを、代理人を立てる意味は【ストーカートラブル】弁護士に依頼すると何が変わるのか|ストーカー被害で代理人を立てる意味をご覧ください。
保護者が関わるときの注意点
学生が成人している場合、学校への相談や法的手続の判断は、基本的に本人の意思が出発点になります。保護者が心配のあまり相手の学生やその家族に直接連絡すると、話がこじれたり、新たなトラブルを招いたりすることがあります。保護者としては、本人の話を聞いたうえで、どの窓口にどの順番で相談するかを一緒に考える立場で関わることが、結果として本人を守ることにつながります。
学内でのつきまといを記録に残す方法
時間割と重ねて記録する
学内で相手と遭遇した日時と場所を、自分の時間割と重ねて記録しておくと、偶然ではないことを示しやすくなります。相手が履修していない授業の教室の前にいた、自分が行動の時間をずらしても現れた、といった事情は、つきまといの評価にとって重要な手がかりです。記録は、日付・時刻・場所・相手の行動・自分の対応を一行ずつ時系列で残す形が整理しやすく、作り方はA4一枚の時系列メモの作り方|相談の質を決める1枚で紹介しています。
学内のシステムや第三者の記録
学内のメールや授業支援システムのメッセージ機能を通じて連絡が来ている場合は、画面の保存に加えて、送信日時が分かる形で残しておきます。建物の入退館記録や防犯カメラの映像は、学校が管理しているため、必要になりそうな場合は早めに学校へ保存を相談してください。防犯カメラの映像は一定期間で上書きされることが多いため、時間がたつと確認できなくなることがあります。友人や教員が場面を見ていた場合は、誰が、いつ、何を見たかを自分のメモに書き留めておくと、後で協力を求めるときに役立ちます。
相手や手段がはっきりしない場合
匿名のアカウントからメッセージが届く、学内の誰かだとは思うが特定できないという場合は、【ストーカートラブル】相手が誰か分からない|匿名のつきまといで相手をたどる方法と、たどれないときの守り方を参考にしてください。持ち物に見覚えのない機器が入っていた、行き先を知られているといった場合は、紛失防止タグも規制の対象に加わっているため、GPS・AirTagで居場所を追跡された|改正ストーカー規制法と位置情報無承諾取得の罪もあわせてご確認ください。
よくあるご質問
大学に相談すると、自分が相談したことは相手に伝わりますか
相談しただけで、ただちに相手に伝わるわけではありません。ただ、学校が事実関係の調査や相手への指導に進む場合は、相手から話を聞く必要があるため、一定の範囲で相談の事実が伝わることになります。相談だけにとどめるのか、調査や指導まで求めるのかを窓口とよく確認し、自分の安全の確保を先に整えてから次の段階に進むのが安心です。
相手が処分を受けると、逆恨みされないか心配です
その心配はもっともなものです。学校が相手に指導や処分を伝える時期や方法について、事前に学校と相談しておくことができます。あわせて警察にも状況を伝えておく、通学の経路や時間を一時的に変える、一人で行動する時間を減らすといった備えをしておくと、相手が態度を変えた場合にも対応しやすくなります。
相手が卒業・退学した後も続く場合は、もう対応できませんか
学内の処分は在籍している人に対するものなので、相手が学校を離れると学校による対応は難しくなります。一方で、ストーカー規制法による警告・禁止命令や、裁判所への仮処分、接触しない旨の合意といった手段は、相手が学生かどうかに関係なく使えます。在学中に残した記録は、学外での手続でもそのまま役立ちます。
まとめ
- ストーカー規制法は、学校の付近での見張りや待ち伏せを、規制対象となる「つきまとい等」として明記しています(ストーカー規制法2条1項1号)。
- 規制の対象となるのは、恋愛感情などの好意やそれが満たされなかったことへの恨みを満たす目的の行為で、それ以外の嫌がらせは学内規程や別の法律での対応になります(同法2条1項柱書)。
- 学生間のつきまといでは、相手の行動を止めることと、自分の学業を続けられるようにすることを分けて考えると、相談先を使い分けやすくなります。
- 学校は学内の接点を減らす調整ができますが、相手との交渉や学外の行動を止める役割は担いにくいのが一般的です。
- 令和7年12月30日の改正で、被害者が通う学校の長が被害者援助の努力義務を負う主体に加わりました(同法9条3項)。
- 警察の職権による警告が可能になり、禁止命令に違反したストーカー行為は2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金の対象です(同法4条・5条・19条1項)。
- 学内での遭遇は時間割と重ねて記録し、防犯カメラなど学校が管理する記録は早めに保存を相談しておくことが大切です。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、ストーカー被害に関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。同じ学校に通う相手からのつきまといについても、学内での調整を進めながら、相手への通知や接触しない旨の合意、警察への相談の進め方をご一緒に検討します。
大学や専門学校に通うご本人だけでなく、お子さまの状況を心配されている保護者の方からのご相談もお受けしています。学校に相談するかどうか迷っている段階でも、状況を整理するところからお手伝いしますので、お一人で抱え込まずにご相談ください。


