【不貞慰謝料・請求された側】退職・転居・接触禁止まで求められた場合
この記事は、2026年10月時点の民法、刑法、ストーカー行為等の規制等に関する法律(以下「ストーカー規制法」といいます)をもとに作成しています。ストーカー規制法は改正が重ねられており、警察の運用も見直されることがあるため、実際の手続は相談先の警察署でご確認ください。
「もう会うのはやめたいと伝えたのに、毎日のようにメッセージが届く」「最後に一度だけ会ってほしいと言われ続けている」。パパ活・ママ活の関係を終えようとした方から、このようなご相談をいただくことがあります。お金を受け取っていた側だけでなく、「家庭のことを考えて関係を終えたいのに、相手から『奥さんに話す』と引き止められている」という、費用を負担していた側からのご相談も少なくありません。
インターネット上では「ブロックすればよい」「警察に行けば止まる」といった説明が多く見られます。どちらも誤りではありませんが、関係を続けるよう求める行為が法的にどう位置づけられるのか、終わりの意思をどう伝えておけば後の手続につながるのか、という点は見えにくいままになっています。
この記事では、そもそも関係を「続ける義務」があるのかという入口から、続けるよう迫る行為の形ごとの評価、終わりの伝え方と記録の残し方、連絡が止まらないときの窓口までを整理します。脅しを受けている場合に身元を知られずに止める方法や、お金の返還をめぐる問題は、それぞれ別の記事でくわしく扱っています。
関係を続ける義務はあるのか
関係を終えたいと伝えたときに、相手から「約束が違う」「こちらはお金を払ってきた」と言われると、自分に非があるように感じてしまう方がいます。まず、関係を続ける義務があるのかどうかを確認しておきます。
会うことを強いられる性質の約束ではない
性的な関係を含むことを前提に金銭を受け渡す約束は、公序良俗に反するものとして無効と判断される可能性が高いとされています(民法90条)。無効な約束であれば、その約束を根拠に関係の継続を求めることはできません。
食事やデートだけの約束であったとしても、人と会うこと自体は、裁判所の手続で無理に実現させる性質のものではありません。法律は、債務の性質が強制を許さない場合には履行の強制ができないとしています(民法414条1項ただし書)。どのような形の約束であっても、「やめたい」と意思を示した方が、会い続けることを法的に強いられる場面は考えにくいといえます。
「月極」「前払い」の約束があった場合
月単位で金額を決めていた場合や、先にまとめてお金を受け取っていた場合には、期間の途中でやめることに後ろめたさを感じる方もいます。ただ、ここで問題になるのは「続ける義務があるか」ではなく、「受け取ったお金をどう清算するか」という別の問題です。
前払いされたお金や約束したお手当の扱いは、受け渡しの経緯や名目によって評価が分かれます。くわしくはパパ活の「約束したお手当」トラブル|口約束・条件変更でもめたらで解説しています。
「続けないなら返せ」は二つの問題を混ぜている
関係を終えようとすると、「続けないなら今まで渡したお金を返せ」と言われることがあります。この言い方は、関係の継続とお金の返還という本来は別々の問題を、ひとつに結びつけています。
受け取ったお金を返す義務があるかどうかは、関係を続けるかどうかとは無関係に、それが贈与だったのか、貸し借りだったのかといった事情で決まります(民法549条、587条)。「続ければ返さなくてよい」と言われたとしても、それが関係を続ける理由になるわけではありません。返す義務の考え方は別れた途端「これまでの金を返せ」と言われた|贈与と貸付の違いをご覧ください。
続けるよう迫る行為は、形によって評価が変わる
関係の継続を求める行為といっても、その形はさまざまです。どの形にあたるかによって、問題になる法律も、相談先がとれる対応も変わってきます。
| 迫り方の形 | 問題になり得る法律 |
|---|---|
| 「会ってほしい」「戻ってきてほしい」と求め続ける | ストーカー規制法の「つきまとい等」 |
| 拒んだ後も電話・メッセージを連続して送る | ストーカー規制法の「つきまとい等」 |
| 待ち伏せや、自宅・職場への訪問 | ストーカー規制法、住居侵入罪、各都道府県の迷惑防止条例 |
| 「続けないなら家族や職場に話す」と告げる | 強要罪、脅迫罪 |
| 写真や動画の拡散をほのめかす | 強要罪、脅迫罪、画像の内容によっては撮影・提供に関する罪 |
| 脅しによって性的な行為に応じさせる | 不同意性交等罪、不同意わいせつ罪 |
「関係を続けてほしい」はストーカー規制法の典型的な場面
ストーカー規制法は、特定の人に対する恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことへの怨恨の感情を満たす目的で行われる一定の行為を「つきまとい等」として規制しています(ストーカー規制法2条1項)。その中には、面会や交際など義務のないことを要求する行為(同項3号)や、拒まれたにもかかわらず電話やメッセージを連続して送る行為(同項5号)が含まれています。
お金を取り戻すことだけが目的の連絡であれば、この目的の要件にあてはまりにくいとされています。これに対して、関係を終えたいと伝えた相手に「会いたい」「戻ってきてほしい」と求め続ける行為は、好意の感情に基づくものとして、ストーカー規制法の枠組みで評価されやすい場面です。つきまとい等が繰り返されれば「ストーカー行為」にあたり、警察による警告や、公安委員会による禁止命令の対象となり得ます。
「復縁を求めているだけ」という説明との線引きについては、復縁を執拗に迫られる|復縁強要とストーカーの境界もあわせてご覧ください。
「家族や職場に話す」と引き止める場合
パパ活・ママ活をしていたことを周囲に知られたくないという事情は、引き止めの材料として使われやすいものです。名誉などに害を加える旨を告げて、義務のないことを行わせようとする行為は、強要罪にあたる可能性があります(刑法223条1項)。相手が応じなかった場合でも、未遂として処罰の対象になり得ます(同条3項)。
関係を続けるよう求めることに加えて、口止め料や手切れ金などの名目で金銭を求めてくる場合には、恐喝の問題も生じます。写真や動画をもとに脅されている場合の対応は、パパ活で写真を撮られ『拡散する』と脅された|恐喝・撮影罪での反撃で扱っています。
脅しの下で性的な行為に応じさせられた場合
関係をやめたいと伝えたにもかかわらず、脅しによって会うことや性的な行為に応じさせられた場合は、もはやパパ活・ママ活の関係の問題ではありません。脅迫などによって同意しない意思を形成し、表明し、全うすることが困難な状態にさせて性交等をした場合には、不同意性交等罪が問題になります(刑法177条1項、176条1項)。
お金の受け渡しがあったことは、その後の性的な行為への同意を意味するものではありません。この点はパパ活から性的関係に至った後のトラブル|対価と同意の評価でくわしく解説しています。被害に遭った場合は、やり取りを保存したうえで、早めに警察や弁護士にご相談ください。
費用を負担していた側が「やめたい」場合
パパ活・ママ活のトラブルは、お金を受け取っていた側が引き止められる場面で語られることが多いものです。しかし実際には、費用を負担していた側が関係を終えようとして、相手から引き止められるご相談もあります。
引き止めの材料として「家庭」が使われる
費用を負担していた側に配偶者がいる場合、「続けないなら奥さんに話す」「家に行く」といった形で引き止められることがあります。相手が「これまでの関係に対する補償」として金銭を求めてくることもあります。
関係を終えるために一定の金銭を渡すかどうかは当事者が話し合って決めることですが、求められるままに支払っても、それで連絡が止まるとは限らず、追加の要求につながることもあります。手切れ金の考え方は不倫・愛人関係を清算したい|穏便に別れるための手切れ金の考え方をご覧ください。
配偶者に知られた場合のことも視野に入れる
相手が既婚であることを知りながら肉体関係を持っていた場合、その事実が配偶者に伝われば、伝えた側も配偶者から慰謝料を請求される立場になり得ます。こうした事情は、交渉の場面で意味を持つことがあります。
一方で、配偶者に知られた場合の対応を考えておくことも大切です。立場ごとの整理は【不貞慰謝料】パパ活・ママ活の相手が既婚だった場合で解説しています。弁護士が窓口となり関係を解消した例として、【解決事例】別れを受け入れてもらえず「配偶者に伝えて」と求められた|弁護士の介入により金銭の支払いなく関係を解消した事例もご参照ください。
終わりを伝えるときに押さえたいこと
関係を終えるときの伝え方や記録の残し方は、その後に警察や弁護士へ相談することになった場合の出発点になります。
終わりの意思は一度、記録に残る形で伝える
相手を刺激したくないという思いから、「最近忙しくて」「また落ち着いたら」といった言い方で距離を置こうとする方は少なくありません。しかし、含みのある言い方は、相手に「まだ続けられる」と受け取られることがあります。
関係を終える意思は、理由を長く説明せず、短く明確に、メッセージなど記録に残る形で一度伝えておくことをおすすめします。ストーカー規制法の「拒まれたにもかかわらず」という要件や、警察が警告を検討する場面では、拒絶の意思がはっきり示されていたかが確認されます。伝えた後は、相手の反論に一つずつ応じる必要はありません。
「最後に一度会って話したい」への向き合い方
終わりを伝えた後に、「最後に一度だけ会って話したい」と求められることがよくあります。これに応じる義務はありません。
どうしても会う必要がある場合は、次の点に気をつけてください。
- 人目のある場所を選び、相手の車や自宅、ホテルなど二人きりになる場所は避ける。
- 時間を短く区切り、終わりの時刻をあらかじめ決めておく。
- 信頼できる人に、会う場所と時間を伝えておく。
- 話し合いの内容を記録に残せるよう準備しておく。
話し合いを記録に残すことの意味と注意点は、【男女トラブル】別れ話を録音しておくべきか|交際を終える話し合いでの記録の作り方で解説しています。
ブロックの前に残しておくもの
相手の連絡をブロックすると、それまでのやり取りが見られなくなったり、相手のアカウント情報が確認しにくくなったりすることがあります。ブロックする前に、次のものを保存しておくと、後の相談がスムーズになります。
- 関係を終える意思を伝えたメッセージと、その後の相手の返信。
- 相手のアカウント名、ID、プロフィール画面。
- 着信履歴や、メッセージが届いた日時が分かる画面。
- 脅しや引き止めの内容が含まれるやり取り。
ブロックした後、相手が別のアカウントや職場、知人を通じて連絡してくることもあります。接触を断つ際の安全への配慮は、ストーカーを刺激せず関係を断つ|安全な接触遮断と証拠の残し方をご覧ください。
相手の連絡が止まらないときの窓口
終わりの意思を伝えても連絡や要求が続く場合には、一人で対応を続けるよりも、第三者に間に入ってもらうことを検討する段階です。
警察に相談する場合
身の危険を感じる場合や、待ち伏せ・自宅への訪問がある場合は、最寄りの警察署の生活安全課に相談してください。どこに相談すればよいか分からない場合は、警察相談専用電話「#9110」も利用できます。危険が差し迫っているときは110番です。
警察に相談する際は、保存しておいたやり取りや着信履歴を持参すると、状況を伝えやすくなります。相手に本名や勤務先を知られたくないという事情がある場合の進め方は、パパ活相手からストーカー・脅迫被害|身バレを防ぎながら止める方法で解説しています。
弁護士が窓口になる場合
弁護士に依頼すると、相手方に受任通知を送り、今後の連絡は弁護士を通すよう求めることができます。直接のやり取りから離れられることは、気持ちの面でも大きな意味があります。受任通知の効果については受任通知とは何か|送られると相手方との関係はどう変わるかをご覧ください。
お金の返還や手切れ金の要求が絡んでいる場合には、関係の終了とお金の清算をまとめて整理し、接触しないことを約束する合意書を交わすこともあります。合意書に入れる条項の考え方は接触禁止条項の書き方|今後の連絡を止める設計で解説しています。
「別れるなら死ぬ」と言われている場合
関係を終えようとしたときに、相手が自分を傷つけることをほのめかすことがあります。この場合は、相手の言葉に応じて関係を続けるのではなく、相手の家族や警察など、相手の安全を確保できる人に対応を委ねることが大切です。くわしくは「別れたら死ぬ」と言われて別れられない|自傷をほのめかす相手への対応をご覧ください。
よくあるご質問
相手から受け取ったお金を返さないと、関係をやめられないのでしょうか。
関係をやめることと、受け取ったお金を返すかどうかは別の問題です。お金を返していなくても、関係を終える意思を示すことはできます。返す義務があるかどうかは、そのお金が贈与だったのか、貸し借りだったのかといった事情によって決まりますので、関係の継続とは切り離して考えてください。
一度「もう少し続ける」と言ってしまいました。改めてやめることはできますか。
できます。一度引き止めに応じたからといって、関係を続ける義務が生じるわけではありません。改めて、関係を終える意思を短く明確に、記録に残る形で伝えてください。以前のやり取りも、経緯を示す記録として保存しておくとよいでしょう。
相手に本名や勤務先を知られています。警察や弁護士に相談すると、相手を刺激しませんか。
相談や通知をきっかけに相手が反発する可能性は、まったくないとはいえません。だからこそ、相手が知っている情報や、これまでの言動を踏まえて、どの順序で何をするかを相談の段階で組み立てることが大切です。警察への相談と弁護士による対応を並行させることもできます。
まとめ
- 性的な関係を含む金銭の約束は無効とされる可能性が高く(民法90条)、食事だけの約束でも会うことを強制される性質のものではない(民法414条1項ただし書)。
- 「続けないなら返せ」という要求は、関係の継続とお金の返還という別々の問題を結びつけている(民法549条、587条)。
- 関係を終えたいと伝えた相手に面会や交際を求め続ける行為は、ストーカー規制法の「つきまとい等」にあたり得る(ストーカー規制法2条1項3号、5号)。
- 「続けないなら家族や職場に話す」と告げて引き止める行為は、強要罪の問題となり、未遂も処罰の対象になり得る(刑法223条1項、3項)。
- 脅しによって性的な行為に応じさせられた場合は、不同意性交等罪などが問題になる(刑法177条1項、176条1項)。
- 終わりの意思は、短く明確に、記録に残る形で一度伝え、ブロックの前にやり取りを保存しておく。
- 連絡が止まらない場合は、警察(#9110)への相談や、弁護士による受任通知・接触禁止の合意を検討する。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、男女間のトラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。パパ活・ママ活の関係を終えたいのに、相手からの連絡や引き止めが続いてお困りの方は、お一人で抱え込まずにご相談ください。
費用を負担していた側の方、お金を受け取っていた側の方、いずれの立場からのご相談にも対応しています。関係の終わらせ方とお金の清算をまとめて整理したい方も、お気軽にお問い合わせください。


