【男女トラブル】出産後に相手が「自分の子ではない」と言い張ったら?

若井亮

若井亮

テーマ:男女トラブル

この記事は、結婚していない男女の間に生まれたお子さんを前提に、2026年4月1日施行の改正民法(法定養育費・養育費の先取特権・認知した子の親権)を反映して解説しています。個別の事情によって結論が変わることがありますので、具体的な対応はご相談のうえでご判断ください。


交際相手との間に子どもが生まれたのに、相手から「自分の子ではない」と言われてしまう。結婚していない男女の間では、このような形で話が止まってしまうご相談が少なくありません。言われた側としては、怒りや悲しみと同時に、この先どう動けばよいのか分からないという不安を抱えることになります。

 結婚していない場合、父親と子どもの法律上の親子関係は「認知」がなければ生じません。そのため、相手が否定を続けている間は、戸籍の父の欄は空欄のままとなり、養育費を法的に求める前提も整っていない状態が続きます。ただ、相手が認めないからといって、そこで行き止まりになるわけではありません。相手の同意がなくても、家庭裁判所の手続を通じて父子関係を確定させる道が用意されています。

 この記事では、相手に否定されたときにまず整理しておきたいこと、DNA鑑定の位置づけ、調停と裁判の流れ、認知された後に変わることを順に解説します。

「自分の子ではない」という言葉が法律上持つ意味

 母親と子どもの親子関係は、出産の事実によって当然に生じます。これに対して、結婚していない男女の間に生まれた子どもと父親との法律上の親子関係は、父親が認知することで初めて生じます(民法779条)。夫婦の場合のように「夫の子と推定する」という仕組みは、結婚していない男女には働きません。

 つまり、相手が「自分の子ではない」と言い張っている状態は、生物学上の父親であるかどうかとは別に、法律上はまだ父親になっていない状態ということです。この状態のままでは、相手に対して扶養の義務を前提とした養育費を求めることが難しく、お子さんの相続権も生じません。

 なお、出産の時点でお母さんが別の男性と結婚していた場合や、離婚から300日以内に出産した場合などは、その男性の子と推定される「嫡出推定」の問題が先に生じます。2024年4月の民法改正で推定のルールが見直されていることもあり、この場合は別の検討が必要になります。本記事では、そうした事情がないケースを前提としています。

相手が否定する理由を見分ける


  • 交際期間中に他の異性との関係があったのではないかと、本当に疑いを持っている。
  • 妊娠の時期と交際の時期が合わないと考えている。
  • 養育費などの経済的な負担を避けたいと考えている。
  • 配偶者や家族、勤務先に知られることを恐れている。
  • 妊娠や出産の決め方に不満があり、感情的に反発している。


 相手が否定する理由は、おおむね上のように分かれます。本当に疑いを持っている場合は、DNA鑑定の結果が示されることで態度が変わることがあります。一方で、負担や周囲に知られることを避けたいという理由の場合は、鑑定の話を持ち出しても話し合いが進まず、家庭裁判所の手続に移ることが多くなります。

 どちらの場合でも、言い争いの中で相手を説得しようとしても、かえって感情的な対立が深まりやすくなります。理由を見極めたうえで、話し合いを続けるか、手続に移るかを判断していくことが大切です。

まず手元に整理しておくこと

 相手が否定している段階では、後の手続で役立つ記録を手元にそろえておくことが先決です。父子関係はDNA鑑定で判断されることが多いものの、相手が鑑定に協力しない場合には、交際の経緯を示す記録が重要な意味を持ちます。

  • 交際の期間と妊娠の時期の関係が分かる記録。
  • 妊娠を伝えたときの相手の返信や反応が残っているメッセージ。
  • 母子健康手帳や出生届の控えなど、出産の経緯が分かる書類。
  • 相手の氏名・住所・勤務先など、手続の申立てに必要な情報。
  • 妊娠中や出産前後に相手と交わした金銭のやり取りの記録。


 相手の住所が分からなくなってしまった場合でも、手がかりから相手をたどる方法があります。詳しくは【男女トラブル】妊娠を告げた後に相手と連絡が取れなくなった|相手をたどる方法で解説しています。

気持ちが追い詰められたときに避けたい行動

 否定され続けると、相手の勤務先に連絡したり、SNSに経緯を書き込んだりしたくなることもあると思います。しかし、こうした行動は名誉毀損やプライバシーの侵害として逆に責任を問われるおそれがあり、その後の調停や裁判でも有利には働きにくいと考えられます。

 反対に、相手が「浮気をして他の男性の子を産んだ」などと周囲に言いふらしている場合は、こちらが名誉を傷つけられている可能性があります。その場合の考え方は【男女トラブル】別れた相手が共通の友人に悪口を広めている|名誉毀損になる線もご参照ください。

DNA鑑定をどう位置づけるか


話し合いの段階で行う鑑定

 相手が「本当に自分の子か分からない」という理由で否定している場合は、双方が合意したうえで民間の鑑定機関に依頼し、DNA鑑定を行うことが考えられます。結果が示されることで、相手が任意に認知することもあります。

 ただし、検体の採取の方法や本人確認が曖昧な鑑定は、後に裁判所で証拠としての価値が争われることがあります。また、相手の髪の毛などを本人に無断で採取して鑑定に出すことは、それ自体がトラブルのもとになりやすいため、控えた方がよいでしょう。

調停や裁判の中で行う鑑定

 家庭裁判所の手続の中では、裁判所が関与してDNA鑑定が行われることが一般的です。費用は鑑定機関によって異なりますが、数万円から10万円程度が一つの目安とされ、当事者の負担割合は手続の中で話し合われます。裁判所を通じた鑑定は採取の手順が整えられているため、その結果は父子関係を判断するうえで重く扱われます。

相手が鑑定を拒んだとき

 調停でも裁判でも、相手の体から検体を強制的に採取することはできません。もっとも、相手が正当な理由なく鑑定を拒んでいるという事情そのものが、交際の経緯や妊娠の時期などの事情とあわせて、父子関係を認める方向の判断材料とされることがあります。鑑定を拒まれたからといって、認知を求める道が閉ざされるわけではありません。

相手が認めないときの手続の流れ

 相手が話し合いで認知に応じない場合、いきなり裁判を起こすのではなく、まず家庭裁判所に認知を求める調停を申し立てるのが原則です(家事事件手続法257条)。申立先は、相手の住所地を管轄する家庭裁判所か、当事者が合意で定めた家庭裁判所です。申立ての費用は、子ども1人につき収入印紙1,200円と、裁判所が指定する郵便切手が基本となります。

  1. お子さん(法定代理人であるお母さん)が、家庭裁判所に認知を求める調停を申し立てる。
  2. 調停の中で、必要に応じてDNA鑑定が行われる。
  3. 双方が父子関係について合意し、その原因となる事実にも争いがない場合は、家庭裁判所が調査をしたうえで合意に相当する審判をする(家事事件手続法277条)。
  4. 調停が成立しない場合は、認知の訴えを起こす(民法787条)。
  5. 審判や判決が確定したら、確定の日から10日以内に市区町村役場へ認知の届出をする。


 相手が調停に出てこない場合や、出てきても合意に至らない場合は、調停は不成立となり、認知の訴えに進むことになります。裁判では、DNA鑑定の結果や交際の経緯などをもとに、裁判所が父子関係の有無を判断します。認知の訴えは、父親が生きている間はいつでも起こすことができ、父親が亡くなった後も、死亡の日から3年以内であれば起こすことができます。

手続相手の同意父子関係が確定する仕組み
任意認知必要相手が役所に認知届を出す
調停(合意に相当する審判)父子関係について合意が必要合意と家庭裁判所の調査を踏まえた審判
認知の訴え不要DNA鑑定や交際の経緯をもとにした判決


認知されると何が変わるのか

 認知の効力は、子どもが生まれた時にさかのぼって生じます(民法784条)。父親には子どもを扶養する義務が生じ、お子さんは父親の相続人となります。結婚していない男女の間に生まれた子どもの相続分は、現在では結婚している夫婦の子どもと同じです。

養育費の請求

 認知によって、父親に養育費を求める前提が整います。いつからの分を求められるかについては、請求の意思を示した時からとする扱いがある一方、事情に応じて出生の時までさかのぼって負担を認めた裁判例もあり、個別の判断となります。認知を求める段階から、養育費を求める意思を書面で示しておくことが一つの備えになります。順序の考え方は【男女トラブル】認知はするが養育費は払わないと言われた|いつからの分を、どの順番で求めるかで詳しく解説しています。

 2026年4月1日施行の改正民法では、取り決めがなくても一定額の養育費を求められる「法定養育費」の規定が、父が認知した子どもについても準用されることになりました(民法788条)。また、養育費の債権の一部には先取特権が認められ、不払いのときの回収手段が広がっています。ただし、法定養育費はあくまで暫定的な金額であり、どの時点からどの範囲で使えるかは事案によって確認が必要です。相手の収入に見合った金額を取り決めることを、あわせて検討するのが望ましいでしょう。

 出産にかかった費用の負担については、【男女トラブル】未婚の出産|出産費用を相手に負担してもらえるかをご参照ください。

親権との関係

 認知された子どもの親権は、原則としてお母さんが行います。2026年4月1日施行の改正民法により、父母の協議で父母の双方または父を親権者と定めることもできるようになりましたが、認知されたことによって自動的に親権の形が変わるわけではありません。

「認知しない代わりにお金を払う」と持ちかけられたら

 相手から「認知はしないが、まとまったお金を払うので今後一切求めないでほしい」と持ちかけられることがあります。しかし、子どもが認知を求める権利は放棄できないとするのが最高裁判所の考え方です。お母さんがそのような合意をしても、お子さん自身が後に認知を求めることは妨げられないと考えられています。

 そのため、このような合意は相手にとっても将来の紛争を残すものになりやすく、お子さんの利益の面からも慎重に考える必要があります。相手が既婚であることを隠して交際していた場合は、認知の問題とは別に慰謝料が問題になることもあります。その場合は既婚を隠されて妊娠|貞操権侵害の慰謝料はいくら請求できるもご参照ください。

よくあるご質問


相手は「中絶してほしいと言ったのに産んだのだから責任はない」と言っています

 出産するかどうかの判断をめぐる不満と、法律上の父子関係や扶養の義務は別の問題です。相手が出産に反対していたとしても、父子関係が確認されれば認知を求めることはでき、扶養の義務も生じます。

認知されると、相手が子どもに会いたいと言ってくることはありますか

 認知によって法律上の父親になるため、相手から親子交流(面会交流)を求められる可能性はあります。ただし、親子交流の可否や方法は、お子さんの利益を最も優先して判断されます。相手との接触に不安がある場合は、その事情を手続の中で伝えていくことになります。

弁護士に頼まずに自分で手続を進めることはできますか

 認知の調停や訴えは、ご本人でも申し立てることができます。ただ、相手が強く争っている場合や、相手に代理人がついている場合、相手の住所が分からない場合などは、手続の進め方や主張の組み立てに工夫が必要になります。早めに専門家に相談しておくと、見通しを立てやすくなります。

当事務所がお手伝いできること

 当事務所では、交際関係の解消に伴う金銭や連絡のトラブルについて、ご本人に代わって相手方との窓口となる対応を行っています。相手が感情的になっていて直接の話し合いが難しい場合でも、弁護士が間に入ることで、DNA鑑定の打診や養育費の取り決めに向けた話し合いを落ち着いて進められることがあります。話し合いがまとまらない場合の調停や裁判の手続についても、状況に応じてご案内します。対応の全体像は【男女トラブル】弁護士が交際関係の解消時のトラブルに介入するサービス|金銭の清算・画像の削除・ストーカー・脅迫まで全国対応でご紹介しています。

 あわせて、妊娠や出産をめぐる次の記事もご参照ください。


 相手から「自分の子ではない」と言われても、それだけで法律上の結論が決まるわけではありません。記録を整え、話し合いと家庭裁判所の手続を順に検討していくことで、お子さんの父子関係を確定させる道筋は見えてきます。一人で相手と向き合い続けることに疲れてしまう前に、手続の選び方から一緒に考えていくことができます。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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