パパ活から性的関係に至った後のトラブル|対価と同意の評価

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

パパ活で知り合った相手と性的な関係を持った後になって、相手から連絡が来た。「実は未成年だった」「同意はしていなかった」「渡したお金を返してほしい」。内容はさまざまですが、こうした連絡を受けたとき、多くの方が最初に思い浮かべるのは「こちらはお金を払っている」ということではないでしょうか。

 ところが法律の場面では、「対価を払った」という事実と「相手が同意していた」という事実は、別々に評価されます。しかも同じ「お金を払った」という一つの事実が、場面によって自分を守る方向にも、逆の方向にも働きます。ここを区別しないまま説明を始めると、伝えたかったこととは違う受け取られ方をすることがあります。

 この記事では、性的な関係に至った後にトラブルになった場面で、対価と同意がそれぞれどのように評価されるのかを整理します。パパ活を勧めるものでも、責任を軽く見せるためのものでもありません。

この記事で扱う範囲


  • 相手が18歳以上であることを前提にした説明です。
  • 相手が18歳未満だった可能性がある場合は扱いが大きく変わるため、自己判断をせず弁護士に相談してください。
  • 成立し得る罪名の一覧や、逮捕された後の手続の流れは扱いません。
  • 相手を特定する方法や、責任を免れるための手順は書きません。
  • すでに警察や相手方の代理人から連絡が来ている場合は、記事を読むよりも先に相談してください。


対価と同意は、別々の物差しで測られる

 お金を渡したことと、相手が性的な行為に応じていたことは、どちらも事実として存在し得ます。しかし法律の判断では、この二つはそれぞれ別の場所で使われます。次の表は、場面ごとに二つの事実がどのように働くかを整理したものです。

場面「対価を払った」という事実「同意があった」という事実
成人同士で同意の有無が問題になる場面同意があったことの証明にはならない中心的な争点になる
相手が18歳未満だった場合責任を基礎づける要素になる相手が応じていても結論は変わらない
渡したお金の返還を求める場面返還を求めにくくする方向に働くことがある返還の可否を直接は左右しない
後から金銭を請求された場面請求の根拠として持ち出されることがある請求を当然に否定する材料にはならない


 表からわかるのは、「お金を払っている」という一つの説明が、どの場面でも自分を守る方向に働くわけではないということです。以下、順に見ていきます。

支払いは、同意の証明にはならない

 性的な行為をめぐる刑事の条文は、「同意があったかどうか」を直接の判断基準にしていません。現在の条文は、一定の行為や事情によって、同意しない意思を持つこと、それを口に出すこと、そのとおりに通すことのいずれかが難しい状態になっていたかどうかを見る組み立てになっています。

 つまり問われているのは、「相手は同意していましたか」ではなく、「相手が断りにくい状態になっていなかったか」です。料金を払ったこと、条件を事前にやり取りしていたこと、相手が自分の足でホテルに入ったことは、いずれもこの問いに直接答えるものではありません。

 もう一つ、支払いには「どの行為に対する対価なのか」がはっきりしないという性質があります。会う時間に対して渡したのか、関係を続けることに対して渡したのか、その日の特定の行為に対して渡したのか。金額だけを見ても区別はつきません。当日の途中で相手の態度が変わった場合、先に渡していたお金は、その後の展開まで含めて相手が納得していたことを示すものにはなりません。

経済的な関係そのものが検討の対象になり得る

 条文が挙げる事情の中には、経済的または社会的な関係の上での立場に基づく影響力によって、不利益を心配させること、あるいは相手がそれを心配していることが含まれています。金銭のやり取りが関係の前提になっているパパ活は、この点が検討の対象に上がりやすい構造を持っています。

 もっとも、お金のやり取りがあれば直ちにこれに当たるというものではありません。法務省の説明では、こうした行為や事情があることに加えて、それによって相手が実際に断りにくい状態になっていたことが必要とされています。二段階で判断されるため、経済的な関係があるという事実だけで結論が決まるわけではありません。

事前のやり取りが持つ意味と限界

 事前のメッセージは、当日までの経過を裏づける資料にはなります。ただしそれは、行為の時点で相手がどういう状態だったかを示すものではありません。事前に条件を決めていたことと、その場でそのとおりに進めてよいこととは別の問題です。どの記録が何を示せるのかという点は、証拠を扱った別の記事で整理しています。

「対価を払った」ことが不利に働く場面


相手が18歳未満だった場合

 18歳未満の相手との関係では、お金を渡したこと、あるいは渡すと約束したこと自体が、責任を基礎づける要素になります。児童買春を禁じる法律は、対価を渡し、または渡す約束をして性的な行為をすることを問題にしているからです。この場面では、「相手も応じていた」「相手のほうから誘われた」という説明は結論を変えません。

 年齢を知らなかったという主張については、18歳未満かもしれないと思いながら進めた場合には認められにくく、年齢を確かめないまま進めた経緯そのものが判断の材料として扱われることがあります。年齢の問題は別の枠組みが重なるため、この記事では立ち入らず、専門の記事に譲ります。

「割り切った関係だった」という説明の副作用

 対価があったことを説明すれば、関係の性質は伝わります。しかしそれは、相手が同意していたことの説明にはならない一方で、行為があったこと自体は認めることになります。何を認め、何を争うのかを決めないまま話し始めると、後から整理し直すことが難しくなります。

 特に、経済的な関係があったことを自分から強調すると、先に述べた「立場に基づく影響力」という論点を自分で持ち出す形になりかねません。同じ事実でも、どの文脈で述べるかによって働き方が変わります。

「支払った」と述べること自体が、直ちに罪を認めることになるわけではない

 誤解されやすい点ですが、成人同士の売買春そのものについては、買った側を処罰する規定は置かれていません。この点は売春防止法の条文構造を扱った別の記事で詳しく整理しています。支払いの事実を述べたからといって、それだけで自分の処罰につながるわけではない場面もあります。

 ただし、「罰則がない」ことと「問題がない」ことは違います。年齢、同意、撮影、その後の金銭のやり取りは、それぞれ別の枠組みで判断されます。売買春そのものに罰則がないという一点だけを根拠に安心してしまうと、実際に問題になっている部分を見落とします。

渡したお金は戻るのか

 性的な関係の対価とする合意は、社会の秩序に反するものとして効力を認められない可能性があります。そして、効力が認められない場合の影響は双方向に及びます。受け取る側が未払い分を請求しにくくなるのと同時に、渡した側もすでに払った分の返還を求めにくくなります

 また、相手の心変わりや関係の解消それ自体は、だまし取ったこととは違います。「約束と違う」という気持ちは自然なものですが、それが直ちに法的な請求につながるとは限りません。お手当の約束や条件の変更をめぐる問題は、別の記事で扱っています。

性的関係の後に起きやすい三つの言われ方

 実際の相談では、次のような形で連絡が来ることが多くあります。いずれも、対価と同意のどちらの話をしているのかを分けて考えることが出発点になります。

「実は未成年だった」と言われる

 事後に年齢を告げられ、金銭を求められる形です。年齢が本当かどうかという問題と、その要求に応じるべきかどうかという問題は別です。相手の年齢に不安がある場合、要求への対応を決める前に確認が必要ですが、確認の仕方によっては相手を追い詰める行為と受け取られることもあります。一人で連絡を取り続けないほうがよい場面です。

「同意していなかった」と言われる

 ここで問われるのは支払いの有無ではなく、その場の状況です。「お金を払っているのだから同意していたはずだ」とだけ説明すると、証明にならない上に、経済的な関係を自分から強調する結果になりかねません。当日の時間の流れを順に説明できるよう整理しておくことが先です。

体調や妊娠を理由に金銭を求められる

 実際に生じた損害と、要求されている金額は別のものです。誰が、何を根拠に、いくらを、いつまでに求めているのかを書面で確認しないまま支払うと、一度で終わらないことがあります。この点は請求内容の見極めを扱った別の記事に譲ります。

その場と直後に避けたいこと

 どの類型でも共通して、後から取り返しがつきにくくなる行動があります。

  1. その場で金額を決めて支払うこと。
  2. 内容を確認しないまま書面や誓約書に署名すること。
  3. 身分証や勤務先がわかるものを相手に渡すこと。
  4. 一人で連絡を取り続け、相手を説得しようとすること。
  5. やり取りの履歴や画像を消すこと。
  6. 相手の家族や知人に連絡を取ること。


しておきたいこと


  • まず自分の安全を確保し、その場を離れられる状況をつくることを優先する。
  • 誰が、何を根拠に、いくらを、いつまでに求めているのかを、文字が残る形で確認する。
  • やり取りの履歴、支払いの記録、当日の移動の記録をそのまま残す。
  • 連絡の窓口を一つにまとめ、以後は同じ経路でだけやり取りする。


 履歴を消さないほうがよい理由は二つあります。一つは、消したこと自体が後ろ暗い事情があったのではないかと受け取られること。もう一つは、自分に有利な材料まで同時に失ってしまうことです。

相談する前に整理しておくこと


  1. 相手と知り合った経路と、最初にやり取りをした時期。
  2. 事前に決めていた条件と、実際にそのとおりだったかどうか。
  3. 当日の時間の流れ。会った場所、移動、別れた時刻まで。
  4. 支払いの方法と金額、渡したタイミング。
  5. 相手から現在求められている内容と、その期限。
  6. 相手が知っている自分の情報。氏名、連絡先、勤務先、自宅の場所など。


 最後の項目は見落とされがちですが、その後にとれる選択肢を大きく左右します。相手がこちらについて何を知っているかによって、応じる範囲も、連絡を止める方法も変わってくるためです。

まとめ


  • 対価を払ったことと、相手が同意していたことは、別々に評価される。
  • 刑事の場面で問われるのは、同意という言葉のやり取りではなく、相手が断りにくい状態だったかどうか。
  • 経済的な関係が前提になっている場合は、その関係自体が検討の対象になり得る。
  • 相手が18歳未満なら、対価のやり取りは責任を基礎づける要素になり、相手が応じていたことは結論を変えない。
  • 渡したお金は、合意の効力が否定される場面では、返還を求めにくくなる。
  • 「売買春そのものに罰則がない」ことは、年齢や同意の問題に答えるものではない。
  • その場で払わない、確認せずに署名しない、履歴を消さない。
  • 当日の経過を時間の流れで説明できるよう整理してから相談する。


 弁護士には守秘義務があります。相談された内容が家族や勤務先に伝わることはありませんので、言いにくい経緯も省かずにお話しいただいて構いません。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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