別れ際に物を壊された・お金を要求された|器物損壊と恐喝
※本記事は、当事務所が実際に解決した事例をもとに作成しています。ご依頼者のプライバシー保護のため、氏名・年齢・具体的な状況等の一部を変更しています。
関係を終わらせたいと伝えても受け入れてもらえず、「自分の名前は伏せてよいから、配偶者に事実を伝えてほしい」と繰り返し求められる――。双方に家庭がある交際関係では、別れ話がこうした形でこじれることがあります。
本記事では、弁護士が代理人として関係の解消を通知し、相手方からの接触と要求が止まるまでの経緯をご紹介します。通知をどのように届けるか、通知の後にどう動くかという判断が、結果に影響した事案です。
ご相談の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ご相談者 | 男性(会社員・関東地方在住) |
| 相手方 | 以前の職場で知り合い、交際関係にあった女性(双方に家庭あり) |
| ご相談内容 | 交際関係の解消を申し出たものの受け入れてもらえず、ご自身の配偶者に関係を伝えるよう繰り返し求められていた |
| 弁護士の対応 | 受任通知の送付(メッセージアプリ・電話・ショートメッセージ・電子メール)と、その後の定期的な状況確認 |
| 解決結果 | 相手方からの接触と要求が止まり、金銭の支払いなく終結 |
| 解決までの期間 | 受任通知の送付後、3か月以上接触のない状態を確認して終結 |
ご相談までの経緯
ご相談者は、関東地方にお住まいの会社員の男性です。以前同じ職場で知り合った女性(以下「相手方」)と、長い期間にわたって交際関係にありました。ご相談者と相手方には、それぞれ家庭がありました。
ご相談者は、家庭がある以上この関係を続けることはできないと考え、相手方に交際関係を解消したいと伝えました。しかし、相手方はこれを受け入れませんでした。
その後、相手方が繰り返し求めるようになったのが、ご相談者から配偶者へ関係の事実を伝えることでした。しかも、相手方自身の名前は伏せたうえで、事実だけを伝えるようにという内容です。
ご相談者は家庭を壊すつもりはなく、関係を静かに終わらせたいと考えていました。ところが相手方からの連絡は続き、要求も止まりませんでした。対応に迷っているうちに、相手方はご相談者の配偶者について否定的な発言もするようになり、話し合いが進まない状態が続きました。
ご自身でやり取りを続けても関係を終わらせることは難しいと考えたご相談者は、当事務所にご相談のうえ、対応をご依頼されました。
弁護士の対応と交渉の経緯
受任通知をどう届けるかを検討した
本件で最初に検討したのは、弁護士が代理人に就いたことを知らせる受任通知を、どのような方法で相手方に届けるかという点でした。
受任通知は、相手方の住所宛てに郵送するのが一般的です。しかし本件でその方法を採ると、相手方の家庭に書面が届き、ご家族の目に触れる可能性がありました。そうなれば相手方が動揺し、かえってご相談者に向けた強い行動につながるおそれがあります。事態を落ち着かせるための通知が、状況を悪化させるきっかけになりかねない場面でした。
そこで担当弁護士は、まずご相談者のメッセージアプリのアカウントから、押印済みの受任通知書のデータを相手方へ送信する方法を選びました。既読を確認できた時点でアカウントをブロックしていただき、以後の直接のやり取りを止めるという段取りです。
既読がつかないため、連絡手段を重ねた
ところが、送信からしばらく経っても、相手方のアカウントに既読はつきませんでした。
このままでは、通知が届いたかどうか分からないまま時間が過ぎてしまいます。担当弁護士はご相談者と話し合い、数日待っても状況が変わらなければ別の方法に切り替えることにしました。実際に既読がつかないままだったため、次の段階へ進みました。
具体的には、担当弁護士から相手方の携帯電話へ連絡し、応答がなかったため、受任通知と同じ内容をショートメッセージと電子メールで送りました。文字数の制限に収まるよう文面を整え、次の事項を伝えています。
- 弁護士がご相談者の代理人に就いたこと。
- 交際関係を解消すること。
- ご相談者本人やそのご家族を含む関係者に接触しないよう求めること。
- 本件に関する情報を第三者に話さないよう求めること。
- 言い分がある場合は、すべて代理人である弁護士へ連絡すること。
複数の手段を重ねることで、通知の内容が相手方に届いたことを客観的に説明できる状態を整えました。
反応がない段階で、あえて働きかけなかった
受任通知の送付後、相手方から当事務所への連絡はなく、ご相談者本人への接触も止まりました。
この段階で、相手方に改めて連絡して意向を確認したり、誓約書の提出を求めたりすることも考えられます。しかし担当弁護士は、あえて様子を見る方針を採りました。
相手方が沈黙している状況でこちらから働きかけると、落ち着きかけた感情を再び刺激し、かえって接触を招くおそれがあります。ご相談者が望んでいたのは、相手方に何かを認めさせることではなく、関係が終わった状態を静かに保つことでした。この目的に照らすと、動かないことが適切な対応になる場面もあります。
もっとも、何もせずに放置していたわけではありません。担当弁護士はおおむね1か月ごとにご相談者へ状況確認の連絡を入れ、相手方に予想外の動きがあった場合には、刑事手続も視野に入れて対応する用意があることをお伝えしていました。
解決結果と対応のポイント
受任通知の送付後、相手方からご相談者本人への接触も、当事務所への連絡もありませんでした。3か月以上にわたって接触のない状態が続いたことを確認し、事件を終結しています。ご相談者が最も心配されていた、配偶者へ関係を伝えるよう求められる状況も解消されました。
- 弁護士の介入後、相手方からの接触と要求が止まりました。
- 配偶者へ関係を伝えるよう求められる状況が解消されました。
- 相手方のご家族に事情が伝わる形を避けながら、通知を届けることができました。
- 金銭の支払いはなく解決しました。
- 3か月以上接触のない状態を確認して終結しました。
関係の解消に、相手方の同意は必要ない
交際関係を続けるかどうかは、それぞれの当事者が決められることです。相手方が納得しないからといって、関係を続けなければならない法的な義務が生じるわけではありません。
それでも実際には、「相手が別れてくれない」という状態が長く続いてしまうご相談が少なくありません。連絡を断つと何をされるか分からない、職場や家族に知らされるかもしれないという不安から、関係を終わらせる決断ができなくなってしまうのです。
弁護士が代理人として関係の解消を通知すると、解消の意思を客観的な形で示せるうえ、以後の連絡が弁護士を通すことになり、ご本人が直接やり取りをする必要がなくなります。この二つだけでも、状況は変わってきます。
「配偶者に伝えて」という要求に応じる義務はない
配偶者に何をどこまで伝えるかは、ご本人が家庭の状況を踏まえて判断することであり、第三者から強いられるものではありません。求め方によっては、強要罪(刑法223条)などの問題が生じる可能性もあります。
こうした要求に応じてしまう方もいらっしゃいますが、一度応じれば終わるとは限りません。「直接会って話をさせてほしい」「慰謝料を払ってほしい」と、求める内容が広がっていくこともあります。応じる前に、一度専門家にご相談いただくことをおすすめします。
通知の届け方は事案ごとに選ぶ
受任通知は、送ればよいというものではなく、届け方によってその後の展開が変わることがあります。本件のように相手方にも家庭がある場合、住所宛ての郵送では、相手方のご家族が書面を目にするおそれがあります。一方で、メッセージアプリで送るだけでは、相手方が内容を確認したかどうかが分かりません。
本件では、既読がつかない状態が続いたため、電話、ショートメッセージ、電子メールと手段を重ねました。どの方法がふさわしいかは、相手方の生活状況や連絡手段、予想される反応によって異なり、事案の見通しにも関わる判断です。
あえて動かないという選択もある
弁護士に依頼すると必ず何らかの請求や交渉が行われると思われがちですが、常にそうとは限りません。本件では、誓約書の提出を求めれば書面を残すことはできましたが、そのために連絡を取ること自体が、落ち着きかけた相手方の感情を刺激するおそれがありました。
ご依頼の目的が「関係を終わらせ、落ち着いた生活を取り戻すこと」であれば、通知の後に相手方が沈黙した時点で、目的はおおむね達成されています。何をするかと同時に、何をしないかを見極めることが大切な場面があります。ただし、定期的に状況を確認し、相手方が再び動いた場合にはすぐに次の対応を取れるようにしておくことが前提です。
慰謝料の問題は切り分けて考える
双方に家庭がある関係の解消では、別途、慰謝料の問題が生じる可能性も検討しておく必要があります。ご相談者の配偶者から相手方へ、あるいは相手方の配偶者からご相談者へ、慰謝料が請求されることも考えられます。関係解消の交渉とは性質の異なる問題ですので、分けて整理することが大切です。
同種のご相談をお考えの方へ
関係を終わらせたいのに相手が応じてくれない、家族や職場に知らせると言われている、配偶者に伝えるよう求められている、連絡を断ちたいが相手の反応が心配だ――こうしたお悩みは、お一人で抱え込まず、早めに相談先を見つけることが大切です。
受任通知の仕組みや、通知によって相手方との関係がどう変わるかは、受任通知とは何か|送られると相手方との関係はどう変わるかで解説しています。連絡が止まらない場合の対応は別れ話のもつれでLINE・電話が止まらない|接触禁止を実現する方法、別れ話にともなう要求が刑事上どう扱われるかは元恋人からの脅迫・強要|「別れるなら〜」への刑事対応(脅迫罪・強要罪)もあわせてご覧ください。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、男女間のトラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。
関係の解消を申し出ても受け入れてもらえない方、配偶者や職場に伝えるよう求められている方は、要求に応じる前に一度ご相談ください。現在の状況に加えて今後考えられる展開についても見通しをお伝えし、対応の方針をご提案します。


