【男女トラブル】パパ活の相手が職場に来た|職場でのトラブルを止める

若井亮

若井亮

テーマ:男女トラブル

この記事は、2026年10月時点の刑法、ストーカー行為等の規制等に関する法律(令和7年の改正を反映)、民事保全法、東京都の迷惑防止条例をもとに、一般的な考え方を整理したものです。個別の事情によって結論が変わることがあります。


「パパ活で会っていた相手が、勤務先の受付に来て自分の名前を出した」「会社の前で待たれていて、同僚に見られたかもしれない」。当事務所には、パパ活の関係をめぐって職場に来られたというご相談が、男性・女性の双方から寄せられています。約束したお手当を払ってほしいと言いに来た、渡したお金を返せと言いに来た、連絡を絶ったら会いに来たなど、来訪の理由もさまざまです。

 こうした場面については、「警察に相談する」「ストーカー規制法で止められる」といった説明がよく見られます。それ自体は誤りではありません。ただ、パパ活の場合は、職場で起きたことを止めるには会社の協力が要る一方で、関係の中身は会社に知られたくないという板挟みが生じやすく、ここが押しかけ一般の解説では見えにくい部分です。

 この記事では、パパ活の相手が職場に来た場面に絞り、当日の対応、来訪がどの法的な枠組みで評価されるか、会社にどこまで話すか、来訪を止める手段を順に整理します。押しかけ全般で問題になる罪名の詳細は職場・自宅に押しかけられた|住居侵入・不退去・業務妨害の使い方、パパ活の相手からのつきまといや脅し全般はパパ活相手からストーカー・脅迫被害|身バレを防ぎながら止める方法で扱っています。

職場に来られた当日にしておきたいこと

その場で話を決めない

 相手が職場に来た直後は、早く帰ってもらいたい一心で、その場で話をまとめようとしてしまいがちです。しかし、職場で話し合いに応じると周囲に事情が伝わりやすく、焦りから不利な約束をしてしまうおそれもあります。当日は、話の中身には入らず、場を離れることを優先するのが基本です。

  • 受付や警備の担当者に、私的な用件の来訪なので取り次がないでほしいと伝え、ひとりで応対しない。
  • 相手と二人きりになる会議室や、建物の外で話をしない。
  • その場で現金を渡したり、相手が用意した書面に署名したりしない。
  • 来訪の日時、相手の言動、居合わせた人を、当日のうちにメモに残す。
  • 身の危険を感じる言動があれば、ためらわずに110番する。


記録の一部は会社の手元にある

 来訪の記録は、ご本人のメモだけでなく、受付の来訪者記録や入館記録、防犯カメラの映像として会社側にも残ります。防犯カメラの映像は一定の期間で上書きされる運用が多いため、後で警察や裁判所に事情を示す材料にするには、早めに保存をお願いしておく必要があります。会社にしか残らない記録がある以上、会社にいつ、どこまで相談するかを早めに決めておくことが、その後にとれる手段の幅を左右します。

相手が職場に来た目的を見立てる

目的によって最初に当たる物差しが変わる

 同じ「職場に来た」という出来事でも、相手が何を求めて来たのかによって、最初に確認すべきことが変わります。

来訪の目的相手の言い分の例最初に確認すること
約束したお手当の支払い約束した分をまだもらっていない約束の有無と中身、求め方が相当か
渡したお金の返還これまで渡した金を返せ贈与か貸付か、渡し切ったお金か
関係の継続や再会もう一度会って話がしたい好意やそれが拒まれた恨みが動機か
暴露をほのめかす要求払わないなら会社の人に話す脅迫や恐喝にあたる言動か


請求の中身と、職場に来るというやり方は分けて考える

 相手の請求に一定の根拠がある場合でも、勤務先に押しかけて支払いを迫るやり方まで許されるわけではありません。判例も、権利の行使であっても、その方法が社会通念上許される範囲を超えれば違法となり得るという立場をとっています。お金を払う義務があるかどうかと、職場に来ることをやめてもらえるかどうかは、別々に判断されます。請求の中身については、パパ活の「約束したお手当」トラブル|口約束・条件変更でもめたらや「渡した金を返せ」と言われた女性へ|返済義務があるケース・ないケースで整理しています。

来られる側は男性にも女性にもなる

 パパ活の職場トラブルというと、女性が男性の勤務先に来る場面を想像されがちですが、ご相談では、男性が女性の勤務先に来て返金を求めるケースも少なくありません。どちらの立場でも、以下の考え方は共通です。

職場への来訪はどの枠組みで評価されるか

建物に入る、退去しない場合

 正当な理由なく人の看守する建造物に入ったり、退去を求められたのに居座ったりすれば、建造物侵入や不退去の罪が問題になります(刑法130条)。もっとも、誰でも出入りできる受付ロビーに入っただけで直ちに罪になるとはいえず、立入りが管理する側の意思に反するか、退去を求められた後も居座ったかが分かれ目になります。ここで退去を求めるのは、建物を管理している会社の側であって、来られた社員個人ではありません。会社の協力が欠かせない理由のひとつがここにあります。

大声や居座りで業務が止まった場合

 受付で大声を出す、長時間居座るなどして業務に支障が出れば、威力業務妨害が問題になり得ます(刑法234条)。また、同僚や上司にパパ活の関係を言いふらすような行為は、内容が事実であっても名誉毀損にあたる可能性があり(刑法230条)、民事上の損害賠償の対象にもなり得ます(民法709条)。職場に知らせると告げられている段階の考え方は、「家族と職場にバラす」と言われた|告知の中身別に見る違法性で扱っています。

好意が動機の来訪が繰り返される場合

 勤務先の付近で見張る、勤務先に押し掛ける、付近をみだりにうろつくといった行為は、ストーカー規制法の「つきまとい等」に含まれています(ストーカー行為等の規制等に関する法律2条1項1号)。ただし、この法律は、恋愛感情その他の好意の感情や、それが満たされなかったことへの恨みを充足する目的で行われる場合を対象としています。パパ活の関係でも、相手が好意を抱いていて、関係を断たれたことをきっかけに来るようになった場合は対象になり得ますが、お金を回収することだけが目的であれば当てはまりにくいのが一般的な考え方です。

 対象になる場合、警察による警告(同法4条)や、公安委員会による禁止命令(同法5条)といった手段があり、現在は被害を受けている方からの申出がなくても警告ができる仕組みも設けられています。対象にならない場合でも、東京都の迷惑防止条例が、ねたみや恨みその他の悪意の感情からのつきまとい等を禁じているほか(東京都迷惑防止条例5条の2)、上で述べた刑法や民事の手段が残ります。

会社にどこまで話すか

会社に伝える必要がある理由

 職場への来訪を止めるには、入館を断る、退去を求める、必要に応じて会社として警察に通報する、防犯カメラの映像を保存するといった対応が必要になります。いずれも会社の判断で行うものです。また、会社は社員が安全に働けるよう配慮する立場にあり、外部の人からのつきまといに対して会社がとれる措置は、【ストーカートラブル】職場や店舗で客からつきまとわれる|従業員を守るために会社ができることで整理しています。

関係の中身まで話す必要があるか

 会社に協力を求めるにあたって、パパ活の関係をすべて説明しなければならない場面は多くありません。私的なトラブルの相手が来訪していること、弁護士に対応を依頼していること(または依頼する予定であること)、来訪があった場合は取り次がずに知らせてほしいこと、の3点を伝えれば足りることがほとんどです。話す範囲をあらかじめ決め、相談先を上司や総務・人事の担当者のひとりに絞っておくと、社内に話が広がりにくくなります。なお、事実と異なる説明をすると、後に相手が社内で話をした際に食い違いが生じ、かえって説明が難しくなるため、話さない部分は話さないままにしておくほうが無難です。

会社から処分を受けることはあるか

 私生活上の行為を理由とする懲戒は、会社の社会的な評価に相当重大な影響が生じた場合などに限られるというのが判例の考え方です。パパ活の関係があったことだけで直ちに処分の理由になるとは限りませんが、就業規則の定めや職種によって評価が変わる余地はあります。考え方の枠組みは、不貞の場面を扱った【不貞慰謝料】不倫を理由に会社から処分を受けることはあるかが参考になります。なお、相手が18歳未満だった可能性がある場合は、職場の問題とは別に刑事上の問題を先に検討する必要があり、パパ活相手が未成年だった|男性側の児童買春リスクと対応で扱っています。

職場への来訪を止める手段

弁護士が窓口になり、来訪と連絡をやめるよう求める

 相手が職場に来る背景には、ほかに話をする場所がない、連絡しても返事がないという事情があることが少なくありません。弁護士が代理人として窓口になり、今後は職場や自宅への来訪や連絡をやめ、用件は弁護士に伝えるよう求めることで、相手にとって職場に来る理由そのものがなくなります。お手当や返金をめぐる相手の言い分は、弁護士との間で話し合う場を設けることになります。この通知の効果と限界は、受任通知とは何か|送られると相手方との関係はどう変わるかで解説しています。

警察への相談

 身の危険を感じる言動がある場合や、来訪が繰り返されている場合は、警察署の生活安全課などに相談しておくことが考えられます。その時点ですぐに動きがなくても、相談の記録が残ることで、後に警告や事件として扱われる際の経過として意味を持ちます。警察と弁護士のどちらに先に相談するかは、警察に相談すべきか、弁護士に相談すべきか|窓口の使い分け早見表を参考にしてください。

裁判所の仮処分

 通知をしても来訪が続く場合は、裁判所に対し、勤務先への立入りや面談の強要などを禁じる仮処分を求めることも考えられます(民事保全法23条2項)。申立てでは、来訪の日時や態様を示す資料が求められるため、当日のメモや会社に残る記録がここで生きてきます。警察の手段と裁判所の手段の使い分けは、接近禁止を実現する2つの道|ストーカー規制法(警察)と民事保全(裁判所)の使い分けで整理しています。

話し合いがまとまる場合は合意書に残す

 お金の問題を含めて話し合いがまとまる場合は、職場や自宅への来訪と連絡をしないことを合意書に明記しておくと、その後の歯止めになります。条項の作り方は接触禁止条項の書き方|今後の連絡を止める設計をご覧ください。職場への押しかけが弁護士の介入で収まった例として、【解決事例】警察に相談しても止まらなかった職場への押しかけが、弁護士の迅速な介入により約2週間で解決した事例もあります。

勤務先が知られた経路を確認する

経路が分かれば、次の広がりを見通せる

 パパ活では本名や勤務先を伝えていないことも多いため、相手がどうやって職場を知ったのかを確認することは、自宅や家族にまで話が広がるおそれがあるかを見通すうえで役に立ちます。ご相談で多い経路は次のとおりです。

  • 名刺や社員証、社名の入った持ち物を見られた。
  • SNSの投稿や写真に写り込んだ情報から割り出された。
  • 会話の中で話した職種や最寄り駅などの断片がつながった。
  • 待ち合わせの後をつけられた。
  • 調査会社などに調べてもらった。


新たな情報を渡さない

 経路の見当がついたら、同じ経路から新たな情報が流れないよう、SNSの公開範囲や投稿内容を見直します。連絡先を変えることも考えられますが、窓口を決めないまま連絡を絶つと、相手が職場に来る理由を強めることもあるため、弁護士が窓口になった後に行うのが一つの順序です。連絡を断つことと、相手が話をする場所を用意することは、セットで考える必要があります。

避けたい対応

その場を収めるための行動が、次の来訪を招くこともある

 職場に来られたときにとりがちな対応の中には、かえって状況を長引かせるものがあります。

  1. 職場で騒ぎを収めるために、その場で現金を渡す。来れば払ってもらえるという印象を相手に与え、再来訪の理由になりやすくなります。
  2. 相手が用意した誓約書や借用書に署名する。後で支払い義務の根拠として持ち出されることがあります。
  3. 相手の家族や勤務先に連絡し返したり、SNSに相手のことを書いたりする。こちらが名誉毀損などを問われる側に回るおそれがあります。
  4. 同僚に頼んで力ずくで連れ出す。退去を求めるのは会社の判断で行い、応じなければ警察に委ねるのが基本です。
  5. 相手からのメッセージや着信履歴を削除する。来訪に至った経過を示す材料がなくなってしまいます。


よくあるご質問

会社に事情を聞かれたら、パパ活のことを話さなければなりませんか。

 会社が必要とするのは、来訪を止めて職場の安全を保つための情報であり、関係の詳しい中身まで説明する義務が一般にあるわけではありません。私的なトラブルの相手であること、弁護士に対応を任せていることを伝え、詳しい事情は差し控えたいとお話しすることで足りる場面が多いと考えられます。ただし、業務に具体的な影響が出ている場合などは、説明の範囲を弁護士と相談して決めるのが安心です。

一度来ただけで、その後は来ていません。何かしておくべきですか。

 一度きりで収まることもありますが、相手が職場を知っているという状況は続いています。当日のメモを整理し、防犯カメラの映像の保存を会社に依頼しておくことや、相手の目的を見立てておくことは、再び来られたときの備えになります。お金の請求が残っているようであれば、職場に来る理由がなくなるよう、話をする窓口を早めに決めておくことが考えられます。

警察に相談すると、会社に連絡が行きますか。

 相談をしただけで、警察から勤務先に連絡が入ることは通常は考えにくいところです。ただし、職場で起きた出来事を事件として扱う場合には、会社の関係者が事情を聞かれることがあります。会社への伝わり方が心配な場合は、相談の段階でその旨を警察に伝えておくとよいでしょう。

まとめ


  1. 職場に来られた当日は話の中身に入らず、ひとりで応対せず、現金の交付や書面への署名をしないことが基本です。
  2. 相手の来訪の目的によって、最初に当たる物差しが変わります。請求の中身と職場に来るやり方は別々に判断されます。
  3. 建物への立入りや居座りは建造物侵入・不退去(刑法130条)、業務への支障は威力業務妨害(刑法234条)が問題になり得ます。退去を求めるのは建物を管理する会社の側です。
  4. 勤務先への押し掛けやうろつきはストーカー規制法の対象行為に含まれますが(同法2条1項1号)、好意やその転化した恨みが動機であることが必要で、金銭の回収だけが目的なら当てはまりにくいのが一般的です。
  5. 会社には、私的なトラブルの相手の来訪であること、弁護士に対応を任せていること、取り次がないでほしいことを伝えれば足りる場面が多くあります。
  6. 来訪を止める手段には、弁護士による窓口の一本化、警察への相談、裁判所の仮処分(民事保全法23条2項)があり、話がまとまれば合意書に接触禁止を明記します。
  7. 勤務先が知られた経路を確認し、連絡を断つときは、相手が話をする場所を用意することと合わせて進めます。


弁護士法人若井綜合法律事務所では、男女間のトラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。パパ活の相手が職場に来た、職場に行くと言われているといった場面で、会社への伝え方の整理から、相手方との窓口の引き受け、警察や裁判所の手続の検討まで、状況に応じた対応をご提案します。

職場に来られてお困りの方はもちろん、相手の対応に納得がいかず職場を訪ねようか迷っている方も、行動に移す前にご相談ください。勤務先やご家族に知られないよう配慮してお話を伺います。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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