交際・パパ活相手の妊娠|認知・養育費・中絶同意書の基礎知識
交際が終わったとたん、元交際相手から「これまでのデート代を返せ」「プレゼント代を返せ」「生活費を返せ」「貸した金を返せ」と請求される——。こうした金銭トラブルは、性別を問わず起こります。
このとき多くの方が抱く疑問は、「本当に払わなければいけないのか」という一点でしょう。結論から言えば、支払義務があるかどうかは、そのお金が「贈与」だったのか「貸付」だったのかで決まります。相手が「貸したお金だ」と言っているかどうかではなく、実態と証拠がものを言う場面です。
この記事では、請求された側の立場から、贈与と貸付の違い、返す義務の有無、そして慌てて対応して不利にならないための初動を整理します。
まず整理すべきは「贈与か貸付か」
同じ「10万円」でも、渡された経緯によって法的な意味はまったく変わります。
- 贈与(もらったお金):好意で出したデート代、プレゼント、おごり、負担してもらった家賃・光熱費など。無償で相手に財産を渡す契約で、口頭でも成立します(民法549条)。
- 貸付(借りたお金):「必ず返すから」と約束して受け取ったお金。金銭消費貸借契約にあたり、返済義務が生じます(民法587条)。
交際中の男女間では、この線引きが曖昧なまま金銭が動くことが少なくありません。だからこそ、請求されたときは「これは贈与か、貸付か」をまず落ち着いて見極めることが出発点になります。
贈与なら、返さなくてよいのが原則
デート代やプレゼント、好意で負担した生活費は、通常は贈与にあたります。そしていったん成立した贈与は、渡した側の一存で「やっぱり返せ」と撤回することはできません。
民法550条は、書面によらない贈与について「各当事者が解除をすることができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない」と定めています(2020年4月1日施行の改正で「撤回」から「解除」に文言が整理されました)。
ポイントはただし書です。すでに渡し終えたもの——受け取ってあなたのものになった金品——は、「履行の終わった部分」にあたり、後から解除して取り戻すことはできません。契約書を交わしていなくても同じです。
したがって、交際中にごちそうしてもらった食事代や受け取ったプレゼント、相手が好意で払ってくれた家賃・光熱費について「別れたから返せ」と言われても、原則として応じる義務はありません。
例外として、相手が「だまされて贈与させられた」(詐欺)「強要された」(強迫)といった事情を主張して取消しを求めてくる場合はあります。ただし、その事情を立証する責任は請求する側にあり、受け取った側が積極的に何かを証明する必要はありません。
貸付なら、返還義務がある
一方で、「必ず返すから貸してほしい」と頼んで受け取ったお金は、金銭消費貸借契約が成立しており、返済義務があります。借用書がなくても契約は成立し得ます。
もっとも、「贈与か貸付か」が争いになったとき、「貸したお金である」ことを立証する責任は、請求する側(貸したと主張する側)にあります。振込の事実だけでは足りず、返済の約束があったこと(借用書、返済期日のやり取り、一部返済の履歴など)を示す必要があります。
ここで注意したいのが、あなた自身の言動が「貸付だった」証拠になってしまうリスクです。たとえば、請求されて動揺し、LINEで「返すね」と送ってしまう、少額でも一部を返してしまう——こうした対応は、返済義務を認めた(債務の承認)とみなされたり、貸付の存在を裏づける材料になったりします。心当たりがない請求に、その場で安易に「返す」と応じないことが大切です。
「罰金」「慰謝料」名目の請求に、応じる義務は原則ない
請求の中には、贈与でも貸付でもない名目のものもあります。
**「振られた腹いせの罰金」**のような請求には、法的根拠がありません。刑罰を科す権利は国が独占しており(罪刑法定主義/憲法31条)、私人が相手に制裁として金銭を科すことはできません。どれほど不本意な別れ方をされたとしても、それを理由に金銭を請求する権利は生じませんし、請求された側が応じる必要もありません。
**「慰謝料」**についても、単に別れただけで発生するものではありません。交際関係を解消すること自体は違法ではないからです。慰謝料が問題になるのは、暴力や、悪質な二股のように別れ方に特別な違法性がある例外的な場面に限られます。
ただし、あなたの側に婚約破棄や、既婚を隠して交際していたなどの貞操権侵害にあたる事情がある場合は、話が別になります。こうしたケースは支払義務の有無が個別に判断されるため、別途検討が必要です。
度を越えた「金返せ」は、恐喝・脅迫になり得る
問題は、請求の「中身」ではなく「やり方」がエスカレートするケースです。
「払わないと家族や職場にバラす」「会いに行く」といった害悪の告知を伴って支払いを迫る行為は、**恐喝罪(刑法249条)や脅迫罪(刑法222条)**にあたる可能性があります。恐喝罪は、2025年6月1日施行の刑法改正(拘禁刑への一本化)を反映し、10年以下の拘禁刑が定められています。
不当な要求に押し切られて払ってしまう前に、まずは距離を取ることが重要です。連絡がやまない、身の危険を感じるといった場合は、警察への相談も選択肢になります。執拗な連絡や接触への具体的な対応方法については、当事務所の関連記事でも取り上げています。
請求されたときの初動|やること・避けること
冷静な初動が、その後の展開を大きく左右します。
やっておきたいこと
- 請求の内容を整理する(誰が・何を・いくら・どんな根拠で求めているか)
- 当時のLINEやメール、振込履歴、レシートなどを確認し、そのお金が贈与か貸付かを見極める材料をそろえる
- 一次的なやり取りは、記録の残る書面(メール・文書)で冷静に行う
- 危険を感じる、話が通じないと感じたら、早めに専門家に相談する
避けたいこと
- その場で「返す」と口約束したり、少額でも支払ったりする(返済義務を認めた証拠になり得ます)
- 感情的な長文の応酬に持ち込む
- 判断材料になるやり取りを削除する
なお、「返さないなら詐欺で訴える」と言われて不安になる方もいますが、恋愛関係でのお金のやり取りが、それだけで詐欺になるわけではありません。詐欺というためには、相手が「最初からだますつもりだった」ことなどの立証が必要で、ハードルは低くありません。過度に恐れる必要はない一方で、結婚を口実にした金銭の受け渡しなど、実態として結婚詐欺が疑われる複雑なケースは別途の検討が必要です。
まとめ
- 返す義務があるかどうかは、そのお金が贈与か貸付かで決まる。相手のつけた名目ではなく、実態と証拠が判断の分かれ目になる。
- 贈与なら、渡し終えたものは原則として取り戻せない(民法550条ただし書)。デート代・プレゼント・好意で負担した生活費は、多くが贈与にあたる。
- 貸付なら返還義務があるが、それを立証するのは請求する側。安易に「返す」と認めないことが、身を守ることにつながる。
- 「罰金」「慰謝料」名目の請求に応じる義務は原則なく、度を越えた要求は恐喝・脅迫になり得る。
別れた後の金銭請求は、感情がからむほどこじれやすく、当事者同士の話し合いでは冷静さを保ちにくいものです。「払う義務があるのか分からない」「相手の要求が過大に思える」と感じたら、早めに専門家へご相談ください。当事務所では、男女間トラブルで請求を受けた側の対応についてもサポートしています。


