施術中に手を出してしまった|被害届・示談の流れを客側の弁護士が解説
この記事は、2026年10月1日時点のストーカー規制法(令和7年改正のうち、令和7年12月30日・令和8年3月10日施行分を反映)、刑法などの規定と、警察庁の解釈通達(令和8年5月13日)に基づいて書いています。個別の事情によって見通しは変わりますので、具体的な対応はご相談のうえで判断してください。
「店長から『○○が怖がっているので、今後は個人的に連絡しないでください』とLINEが来た。返事ももらっていたので、そこまで嫌がられているとは思わなかった」「出禁と言われたが納得できないので、理由を聞きに一度だけ店に行きたい」。ガールズバーを利用していた方からは、キャストへの私的な連絡について、店から警告を受けた段階でのご相談をいただくことがあります。
ガールズバーやキャバクラでのつきまといについては、働く側がどう身を守るかという解説が多く、それ自体は大切な情報です。ただ、警告を受けた客の側が、この後に何をして、何を控えればよいのかは、あまり整理されていません。店からの警告は警察の警告とは性質が違いますが、受け流してよいものでもなく、警告の後の行動がその後の評価を左右します。
この記事では、ガールズバーでキャストに店外の私的な連絡を続け、店から連絡をやめるよう告げられた客の方を想定して、警告の意味と、その後の動き方を整理します。キャバクラやコンカフェでも共通する部分が多いと考えられます。警察から警告を受けた場合、キャスト側の弁護士から書面が届いた場合、前科の問題は、それぞれ別の記事に譲ります。
まず結論|警告を受けた後にすること・しないこと
最初に、この記事の結論をまとめておきます。詳しい理由は後の章で説明します。
- キャスト本人への連絡は、LINE・電話・SNSのコメントやDMを含め、すべての経路で止める。
- 店からの警告には、反論よりも「今後は連絡しない」という意思を短く書面で返す。
- 自分が送ったメッセージや店とのやり取りは、削除せずに残しておく。
- 誓約書や金銭を求められたら、その場で応じずに内容を確かめる。
反対に、次のような行動は、警告を受ける前よりも重く受け止められるおそれがあります。
- 「最後に一度だけ」と、謝罪や説明のメッセージを送る。
- 理由を聞くため、あるいは客として、キャストの出勤日に店へ行く。
- 店の近くや帰り道で、キャストを待つ。
- 同僚のキャストや他の客を通じて、連絡先や近況を聞き出そうとする。
店からの警告は何を意味するのか
店の警告そのものに法的な強制力はない
店が客に「キャストへの連絡をやめてほしい」と伝えるのは、店としての申入れです。警察署長などがストーカー規制法に基づいて行う警告(同法4条1項)や、公安委員会の禁止命令(同法5条1項)とは異なり、店の警告に従わなかったこと自体に罰則があるわけではありません。店から警告を受けたことが、それだけで警察の記録や前歴として残るわけでもありません。
それでも「拒まれている」と知ったことになる
ただし、店の警告には別の意味があります。ストーカー規制法は、好意の感情などを充足する目的で、「拒まれたにもかかわらず、連続して」電話をかけたりメッセージを送ったりすることを、つきまとい等の一つとしています(同法2条1項5号)。警察庁の通達では、この拒絶には黙示のものも含まれ、行為者が拒絶を認識していることが必要とされています。また、相手方が直接拒む場合だけでなく、警察を通じて拒絶が伝えられた場合も含まれると解されています。
店から「キャストが連絡を望んでいない」と伝えられた時点で、拒まれていることを知らなかったという説明は、その後は通りにくくなります。警告の前のやり取りがどう評価されるかよりも、警告の後に何をしたかが重く見られるのは、このためです。
誰から、どの形で警告されたかで重さが違う
「警告」という言葉は同じでも、誰が、どの形で伝えてきたかによって、性質と次に起こり得ることが異なります。
| 警告の出どころ | 性質 | その後に考えられること |
|---|---|---|
| 店長やスタッフ(口頭・LINE) | 店としての申入れ | 出入禁止、警察への相談、キャスト側の弁護士への依頼 |
| 店名義の書面・誓約書の提示 | 店としての申入れ(記録に残る形) | 誓約書への署名や金銭の求め、警察への相談 |
| キャスト側の弁護士からの通知 | 代理人による申入れ | 交渉、警察への相談、民事上の請求 |
| 警察署長などによる警告 | ストーカー規制法に基づく行政上の措置 | 禁止命令、検挙 |
| 公安委員会の禁止命令 | 行政処分(有効期間は原則1年) | 違反すれば罰則の対象 |
この記事が扱うのは、表の1行目と2行目の段階です。弁護士からの書面や、警察からの警告を受けた場合の考え方は、次の記事をご覧ください。
【刑事事件】弁護士から警告の書面が届いた|ストーカーと名指しされたときの返し方
警察から「警告」を受けた|前科はつくのか、次に何が起きるのか
ガールズバーならではの事情
営業の連絡と私的な連絡の境目がわかりにくい
ガールズバーでは、カウンター越しの会話をきっかけに、キャストとLINEなどの連絡先を交換することが珍しくありません。来店のお礼や出勤日の案内といった営業の連絡として始まるため、客の側からは「向こうから連絡してくれていた」「返事もくれていた」と受け止めやすい面があります。
しかし、営業として返信していたことは、店外で会うことや個人的な関係を続けることへの同意とは別のものです。キャストが店に相談し、店が客に連絡をやめるよう伝えたのであれば、それまでのやり取りの印象にかかわらず、キャストの意思はそこで示されたと受け止めることが大切です。
「応援していただけ」でも好意の感情にあたり得る
「恋愛のつもりはなく、応援していただけ」とお話しになる方もいます。しかし、警察庁の通達では、ストーカー規制法の「好意の感情」には恋愛感情のほか、女優などへの憧れの感情も含まれると解されています。特定のキャストに向けた特別な感情があれば、恋愛かどうかにかかわらず、この法律の対象になり得ます。
店はキャストを守る立場に置かれている
令和7年のストーカー規制法改正で、つきまとい等を受けている人を雇用する者が、その人への援助に努める主体に加えられました(同法9条3項)。キャストを雇用している店は、キャストを守るために警察と連携する立場にあるということです。
また、同じ改正で、被害を受けている人からの申出がなくても、警察が職権で警告できるようになりました(同法4条1項)。キャスト本人が警察に届け出ていないから問題にならない、とは言えない点に注意が必要です。
ガールズバーやコンカフェの利用をめぐる客側のトラブル全般は、次の記事で扱っています。
コンカフェ・ガールズバーの客側トラブル|高額会計と色恋営業
警告の後の行動がどう評価されるか
キャストへの連絡を続けた場合
警告の後もLINEや電話を続けると、拒まれていることを知りながらの連絡として、つきまとい等にあたると評価されやすくなります。SNSのDMや、キャストの投稿へのコメントも、ここでいう連絡に含まれます(同法2条2項)。つきまとい等を、相手に不安を覚えさせるような方法で反復すると「ストーカー行為」となり(同法2条4項)、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象になります(同法18条)。この罪は、告訴がなくても起訴できます。
警察庁の通達では、不安を覚えさせる方法かどうかの判断にあたり、行為の回数や頻度のほか、警察による警告などとの先後関係も考慮するとされています。店からの警告はこれと同じものではありませんが、拒絶を知った後の連絡であることは、評価に影響し得る事情です。1回の連絡がただちにストーカー行為になるわけではないものの、反復にあたるかどうかは、警告の前後を通じた全体で判断されることがあります。
連絡は1回だけだった|つきまとい等とストーカー行為の違い
しつこいDM・メッセージを送った|脅迫とストーカー規制法の重なり
店に行く・店の近くで待つ
店は、キャストにとっての勤務先です。勤務先に押し掛けることや、その付近で見張りをしたり、みだりにうろついたりすることも、つきまとい等の一つです(同法2条1項1号)。理由を聞くため、あるいは客として飲みに行くだけのつもりでも、警告を受けた後にキャストの出勤日に合わせて来店すれば、そのように受け止められるおそれがあります。
また、店は客の入店を断ることができます。出入禁止を告げられた後に入店すれば、管理者の意思に反する立入りとして建造物侵入罪(刑法130条前段)が、退去を求められても応じなければ不退去罪(同条後段)が問題になり得ます。
同僚や他の客を通じて接触する
本人に連絡できなくなった後、同僚のキャストや店のスタッフにキャストの様子を尋ねたり、伝言を頼んだりする方もいます。しかし、ストーカー規制法は、本人だけでなく、本人と社会生活において密接な関係にある人に対する行為も対象としています(同法2条1項柱書)。警察庁の通達では、その例として職場の上司などが挙げられています。
また、ストーカー行為をするおそれがある人と知りながら、その人に相手の勤務先や連絡先などの情報を提供することは禁じられています(同法6条1項)。同僚に連絡先やシフトを尋ねることは、その同僚を難しい立場に置くことにもなります。店への電話を繰り返して営業に支障を生じさせれば、業務妨害罪(刑法233条・234条)が問題になる場面もあります。
警告を受けた後にできること
すべての経路で連絡を止める
まず、キャスト本人への連絡を止めてください。LINEをブロックされていなくても、電話番号やSNSのアカウントが分かっていても同じです。別のアカウントから連絡することや、謝罪や説明のためと考えて「最後に一度だけ」と送ることも、拒まれた後の連絡にあたります。謝りたい気持ちがあるときは、自分で伝えるのではなく、弁護士を通じて店に伝えられるかを検討する方法があります。
キャストのSNSを閲覧すること自体は、それだけでつきまとい等にあたるわけではありません。ただし、投稿へのコメントや、見ていることを知らせるような反応・メッセージは、別の評価を受けるおそれがあります(同法2条1項2号・5号)。
店への返事は短く、書面で残す
店からの警告に返事をするときは、事実関係について長く反論するよりも、「承知しました。今後、○○さんへの連絡はしません」と短く伝える程度にとどめるのが一つの方法です。電話で伝えた場合も、同じ内容をLINEやメールで送っておくと、いつ、どう応じたかが記録に残ります。
店の説明に事実と違う点があると感じても、その場で言い争う必要はありません。自分が送ったメッセージは削除せず、そのまま残しておくことも大切です。後で警察や弁護士から連絡があったとき、実際に何を、いつ、何回送ったのかを正確に示す材料になります。
誓約書や金銭を求められたとき
店から、今後連絡しないことを約束する誓約書を求められることがあります。将来の連絡をしないという約束自体は、警告を受け入れた意思を示す方法として意味がありますが、署名の前に次の点を確かめてください。
- 事実と異なる行為や、「ストーカー行為をした」といった評価を認める文言が入っていないか。
- 違反した場合の違約金が定められていないか、定められている場合はその金額がいくらか。
- 身分証のコピーや勤務先など、必要以上の個人情報を求められていないか。
- 金銭の支払いと一緒になっていないか。
「迷惑料」などの名目で金銭を求められた場合は、店が受けた損害とキャスト個人が受けた損害を分けて考える必要があり、どちらについても根拠と金額を確かめることが出発点になります。店の規約を根拠に示された場合も、その規約が客との関係で効力を持つのかを確かめる順序があります。
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渡したお金やプレゼントを返してほしいとき
関係が終わったことで、それまで渡したお金やプレゼントを返してほしいと考える方もいます。ただ、警告を受けた後に、その話をするためにキャストへ連絡することは控えてください。警察庁の通達では、実際に請求できる権利がある場合でも、その要求が権利の濫用にあたるときは「義務のないこと」の要求(同法2条1項3号)に該当すると解されています。返還を求められるかどうかの見通しを先に立て、求める場合も弁護士を通じて行うのが安全です。
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警察や弁護士が関わる段階になったら
警察から連絡があった場合
店やキャストが警察に相談すると、警察から事情を聴きたいという連絡が来ることや、警告を受けることがあります。警告は刑罰ではなく、それだけで前科がつくものではありませんが、警告の後にさらに行為を重ねれば、禁止命令(有効期間は原則1年。同法5条8項)や検挙へ進むことがあります。禁止命令に違反してストーカー行為をすれば、2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金の対象です(同法19条1項)。
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弁護士に相談すると何が変わるのか
店から警告を受けた段階で弁護士に相談すると、店とのやり取りを弁護士が引き受け、ご本人が直接対応する必要がなくなります。誓約書を求められている場合は、将来の約束に絞った文面になるよう調整し、金銭を求められている場合はその根拠を確かめます。
また、これまでの連絡の回数や内容、警告を受けた経緯を伺ったうえで、警察が関わる可能性がどの程度あるか、関わった場合にどう対応するかの見通しを立てることができます。キャストに伝えたいことがある場合も、伝えるべきかどうかを含めて一緒に検討します。
よくあるご質問
店から警告されただけで、警察に記録が残るのでしょうか
店からの警告は店としての申入れであり、それだけで警察の記録が作られるわけではありません。ただし、店やキャストが警察に相談していれば、その相談は警察に記録されます。令和7年の法改正で、警察が職権で警告できるようにもなっているため、店から警告を受けた後は、連絡を止めることを優先してください。
出入禁止にはなっていません。普通の客として店に行くのも控えるべきですか
出入禁止を告げられていなければ、来店そのものがただちに違法になるわけではありません。ただ、警告を受けた後に、そのキャストの出勤日に合わせて来店すれば、勤務先への押し掛けや見張りと受け止められるおそれがあります。少なくとも当面は来店を控え、利用したい事情がある場合は、事前に店の意向を確かめるほうが安全です。
警告の後、キャストのほうから連絡が来ました。返事をしてもよいですか
警告の後に、キャスト本人から連絡が来ることもあります。その場合でも、店から警告を受けている以上、長いやり取りや会う約束に進むことは控え、返事をするとしても短くとどめるのが無難です。連絡が来たことと自分の返事は、記録として残しておいてください。判断に迷うときは、返事をする前にご相談ください。
まとめ
- 店からの警告に法的な強制力や罰則はないが、キャストが連絡を拒んでいることを知った時点として、その後の行動の評価に影響する(ストーカー規制法2条1項5号)。
- 「応援していただけ」という気持ちでも、特定のキャストへの好意や憧れの感情があれば、同法の対象になり得る。
- 令和7年改正で、キャストを雇用する店が援助に努める主体に加わり(同法9条3項)、警察は申出がなくても職権で警告できるようになった(同法4条1項)。
- 警告の後の連絡やSNSでの反応、出勤日に合わせた来店は、つきまとい等にあたるおそれがあり、反復すればストーカー行為罪(同法18条)の対象になり得る。
- 出入禁止の後の入店は建造物侵入罪(刑法130条)が問題になり得るほか、同僚を通じた接触も控える(ストーカー規制法2条1項・6条1項)。
- 店への返事は短く書面で残し、自分の送信履歴は削除しない。誓約書は、文言・違約金・個人情報を確かめてから署名する。
- 渡した金品の返還を求める場合も、自分でキャストに連絡せず、弁護士を通じて検討する(同法2条1項3号)。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、ガールズバーやキャバクラ、風俗店などの利用をめぐるトラブルのご相談を、池袋と新橋の事務所でお受けしています。店から警告を受けた段階、警察から連絡が来る前の段階でのご相談も承っています。
キャストへの連絡について店から警告を受け、この後どう動けばよいか迷っている方、誓約書や金銭を求められている方は、店やキャストに返事をする前に、お電話・メールでご連絡ください。


