風俗嬢と店外・プライベートで会ってトラブルに|「店を通さない」リスク
無許可営業への罰則が引き上げられたという話を見聞きして、以前に利用した店のことが気にかかっている、というご相談をいただくことがあります。許可を受けていない店だったのではないか、客である自分にも何か返ってくるのではないか、という不安です。
結論から申し上げると、2025年6月の改正で引き上げられたのは営業する側に向けられた罰則であり、その店を利用した客が風営法違反として処罰される立場になったわけではありません。この構造は改正の前後で変わっていません。
ただし、罰則が重くなったことで、捜査が及ぶ範囲や、後から振り返られる期間には変化が生じています。立場そのものは変わらなくても、巻き込まれ方は以前と同じではありません。この記事では、改正で何が変わり、何が変わらなかったのかを切り分けて整理します。支払いを免れる方法や、責任を軽く見せるための説明ではありません。
この記事で扱う範囲
- 2025年6月の改正で、どの違反の罰則がどう重くなったのか。
- 罰則の引き上げが、利用した客の責任に及ぶのかどうか。
- 客の側に間接的に及びうる変化は何か。
- 店が摘発された後に連絡が来るとしたら、どの経路をたどるのか。
許可制と届出制の違いそのものや、摘発の場に居合わせた場合の一般的な扱い、店に支払った料金をめぐる考え方については、別の記事で扱っています。本記事は、あくまで改正の前後で何が動いたかという一点に絞って読み進めていただければと思います。
2025年6月の改正で重くなったのは何か
風営法は2025年6月28日に改正法が施行され、許可を受けずに営業した場合などの法定刑が引き上げられました。従来は、短期間の営業でも相応の売上を得られる業態であるため、摘発される見込みと比べて罰則が軽く、抑止として十分に働いていないという指摘がありました。引き上げの幅は次のとおりです。
| 違反の種類 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 許可を受けずに風俗営業を営んだ場合など | 2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金 | 5年以下の拘禁刑または1000万円以下の罰金 |
| 同じ違反が法人の業務として行われた場合 | 200万円以下の罰金 | 3億円以下の罰金 |
引き上げの対象は、無許可での営業のほか、偽りの手段で許可を受けた場合、名義を貸した場合、営業停止の命令に従わなかった場合、禁じられた地域で店舗型・無店舗型の性風俗営業を営んだ場合などです。営業する側に向けられた規定である点は、いずれも共通しています。
引き上げの背景にあったもの
改正の議論では、許可を受けられない立場の者が無許可のまま営業し、その収益が別の組織の資金になっている実態が問題として挙げられていました。営業が禁じられた地域のマンションで、別の名目を掲げながら性風俗の営業が行われていた事例も検挙されています。引き上げは、そうした営業を続ける側の計算を変えることに主眼が置かれたものであり、利用者の責任を問う方向の改正ではありません。
重くなったのは「許可」の側で、届出の側とは差がある
接待を伴う飲食店やゲームセンターなどの風俗営業は許可制、いわゆる性風俗店は届出制と、制度そのものが分かれています。今回の引き上げは許可制の違反を中心としたもので、届出をしていないこと自体の罰則は、この引き上げの対象には含まれていません。ただし、営業が禁じられている地域で性風俗の営業を行った場合は、許可制の違反と同じ枠で重くなった側に入ります。
「改正で風俗関係の罰則がすべて一律に重くなった」という説明を見かけることがありますが、実際には業態と違反の種類によって射程が分かれています。ご自身の関わった店がどの区分に当たるかで、話の前提が変わってきます。
罰則が重くなると、客の責任も重くなるのか
この点についてのご不安を伺うことが多いのですが、罰則の引き上げによって、利用した客が処罰される側に回るという変化は生じていません。
規定が向けられている相手が変わっていない
風営法の許可や届出の規定は、営業を行う者に対して手続を求めるものです。サービスを受ける相手方として当然に登場する立場の人については、別に処罰する規定が置かれていない限り、その手続違反を理由に責任を問われることはないと考えられています。改正はこの規定の名宛人を動かしたものではなく、刑の重さだけを引き上げたものです。
客自身の行為が別に問題になる場面はあります
問題になるとすれば、それは「無許可の店を利用したこと」ではなく、その場での自分自身の行為です。次のような場面は、店の手続の問題とは切り離して評価されます。
- 相手が18歳未満であった場合。年齢について「知らなかった」という説明が通りにくい類型です。
- 店の運営や名義に関わっていた場合。客ではなく営業する側として見られる分岐点になります。
- 周囲から見える状態での行為があった場合。
- 相手の同意がない行為や、無断での撮影があった場合。
それでも客の側に及ぶ三つの変化
責任の枠組みが変わっていないとしても、罰則が重くなったこと自体が実務に及ぼす影響はあります。客の立場から見て意識しておきたいのは、次の三つです。
お金の流れが捜査の対象に入りやすくなった
法定刑が引き上げられたことで、無許可営業は、組織的な犯罪の収益を規制する法律の対象犯罪に含まれることになりました。営業で得た売上そのものが没収や追徴の対象になりうるということです。
その結果、捜査は営業の事実だけでなくお金の動きにも向かいます。帳簿、売上記録、決済に関する資料が調べられる場面が増え、その中に利用者の支払いに関する情報が含まれていることがあります。客が捜査の対象になるという意味ではありませんが、資料の範囲が以前より広くなりやすい、という理解は持っておいたほうがよいと思われます。
後から振り返られる期間が延びた
刑の重さは、起訴ができる期間の長さにも連動します。今回の引き上げにより、無許可営業について捜査や起訴が可能な期間は、従来のおおむね3年から5年へと延びる計算になります。
これは、数年前の営業についても後から手続が進む余地が残るということであり、そのころの予約記録や顧客名簿が資料として参照される可能性も、同じだけ長く残ることを意味します。「もう何年も前の話だから」という前提は、以前ほど当てはまらなくなっています。
店側が姿を消しやすくなった
罰則や処分が重くなるほど、店側は早い段階で営業をたたむ判断に傾きます。連絡先が使われなくなり、法人が実体を失い、担当者と話ができなくなるという展開です。客の側から見ると、料金や対応について言いたいことがあっても、相手方がいなくなるという形で影響が出ます。
摘発の後に連絡が来るとしたら、どの経路か
店が摘発された場合でも、利用客の氏名が公表されるのが通例というわけではありません。もっとも、店に残っていた記録から、後日連絡が入ることはあります。
| 連絡のきっかけ | そこに残っている情報 | 意識しておきたいこと |
|---|---|---|
| 予約記録や顧客名簿 | 氏名、電話番号、利用日 | 自分の行為の話と店の話を分けて答える |
| 通話履歴やメッセージ | やり取りの相手と日時 | 記憶があいまいな点を無理に補わない |
| 決済に関する資料 | 支払いの日時と金額 | 手元の明細で日付を確認しておく |
その場に居合わせた場合
立入りや摘発の場に客がいた場合、身元の確認や事情の聴き取りを受けることがあります。これは店の営業の実態を確かめるための手続で、客が被疑者として扱われることを意味するものではありません。求めに応じるかどうかは任意ですが、その場で店の側と口裏を合わせるような対応をとると、かえって自分の立場を悪くする方向に働きます。
協力を求められたときの位置づけ
自分自身が疑われているわけではない場合、警察からの求めは参考人としての協力にあたります。応じるかどうかは任意ですが、話した内容は記録として残ります。店の営業実態について聞かれているのか、自分の行為について聞かれているのかは、その場で確かめておいて差し支えありません。判断に迷う段階で弁護士に相談しておくと、答え方の見通しを立てやすくなります。
お金の話は改正では変わっていない
「違法な営業なのだから料金を払う必要はない」という理解を耳にすることがありますが、取締りのためのルールと、当事者間の権利義務のルールは別に動きます。営業の手続に違反があったことから、支払いの義務が当然に消えるわけではありません。争えるかどうかは、店が違法かどうかではなく、請求の中身がどうかで決まってきます。この点は今回の改正でも変わっていません。
返してもらう側に回ると、相手にたどり着きにくい
すでに支払った分の返還を求める場面では、非対称が生じます。相手方の氏名や所在が分からず、法人としての実体もはっきりしないことが多いためです。売上が没収や追徴の対象になりうるという事情も加わると、仮に請求が認められても回収の見込みは立てにくくなります。返金を検討するのであれば、記録が残っているうちに動くかどうかが分かれ目になります。
連絡が来たときに整理しておくこと
- いつ、どの店を、何回利用したかを、思い出せる範囲で書き出す。
- 支払いの方法と金額が分かる明細を手元に集める。
- 店とのやり取りが残っていれば、削除せずに保存する。
- 連絡してきた相手の所属と用件を確認し、日時を控える。
- その場で断定的な説明をせず、確認してから答える旨を伝える。
- 自分の行為について不安がある場合は、話をする前に弁護士に相談する。
よくあるご質問
無許可の店だと知って利用していた場合はどうなりますか
知っていたかどうかは、営業する側の手続違反の評価に関わる事情であり、それによって客が風営法違反に問われる構造にはなっていません。ただし、単に利用しただけとは言いにくい関わり方をしていた場合は、位置づけが変わる余地があります。
名簿に名前が残っていると、家族や勤務先に知られますか
捜査の過程で得られた情報が、そのまま周囲に伝えられるわけではありません。もっとも、連絡の受け方によっては同居の家族が先に知ることもあります。連絡先の指定など、事前に整理できることもあります。
払った料金は返してもらえますか
店が手続に違反していたという一事で返還が認められるわけではなく、料金の説明や請求の内容に問題があったかどうかが検討の対象になります。相手方の特定が難しい点も含めて、早い段階で見通しを立てておくことをおすすめします。
こちらから警察に確認しておいたほうがよいですか
連絡が来ていない段階で、ご自身から問い合わせることが有利に働く場面は限られます。利用した事実を伝えることになるうえ、店の摘発の有無をその場で教えてもらえるとも限らないためです。不安が続くようであれば、まずは弁護士にご相談いただき、動くかどうかから検討されることをおすすめします。
まとめ
- 2025年6月の改正で、無許可営業などの罰則が引き上げられた。
- 引き上げの対象は営業する側であり、利用した客が処罰される立場になったわけではない。
- 重くなったのは許可制の違反が中心で、届出制の違反とは射程に差がある。
- 罰則が重くなったことで、捜査がお金の流れに及びやすくなった。
- 後から振り返られる期間も、従来より長くなっている。
- 違法な営業であっても、支払いの義務が当然に消えるわけではない。
- 連絡が来た場合は、自分の行為の話と店の話を分けて考えることが出発点になる。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、風俗店の利用をめぐるトラブルについて、客側の立場からのご相談をお受けしています。摘発された店から連絡が来た、警察から問い合わせがあった、支払いを求められているといった段階でも、まずは事実関係の整理からご一緒します。
ご相談の内容やご相談があった事実そのものについて、当事務所が家族や勤務先へお伝えすることはありません。周囲に知られないかたちで見通しを立てたいという段階でも、お気軽にご相談ください。


