【風俗トラブル・ホストクラブ】担当ホストの指示で借りたお金は、自分で返さなければならない?

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

本記事は、2025年6月28日に施行された改正風営法の内容を踏まえて解説しています。個別の事情によって結論が変わることがありますので、具体的な判断は専門家にご確認ください。


担当ホストから「消費者金融で借りてきて」「この人に頼めば貸してくれる」と言われ、言われるままにお金を借りてしまった。あとになって冷静になり、「ホストの指示で借りたのだから、自分が返す必要はないのではないか」と考える方もいらっしゃいます。

 この問いへの答えは、誰から、どのような形で借りたかによって大きく変わります。金融機関から自分名義で借りた場合は、原則として本人が返済の義務を負います。一方で、ホストに紹介された相手から違法な金利で借りた場合や、売掛を借金の形に書き換えさせられた場合などは、返済の義務そのものを争える余地があります。

 法律相談サイトにも、借用書を書かなければ回収の人間が行くと言われて署名したという相談や、ホストに頼まれて自分名義で消費者金融から借りたお金が返ってこないという相談が見られます。本記事では、借り先ごとに返済義務の考え方を整理し、手元に残しておきたい記録や相談のタイミングについて解説します。

答えを分けるのは「誰から借りたか」

 ホストの指示で借りたお金といっても、実際の形はさまざまです。返済の義務を考える出発点は、お金を貸した相手が誰かという点にあります。おおまかには次の4つの形に分けられます。

借りた形返済を求めてくる相手考え方の出発点
消費者金融・銀行カードローンなどから自分名義で借りた金融機関契約したのは本人のため、原則として返済の義務がある
ホストに紹介された個人や業者から借りた紹介された貸主金利や貸主の素性によっては、契約の無効や減額を主張できる余地がある
売掛を借金に切り替える借用書を書かされた店またはホストもとの売掛が有効かどうかが前提になる
ホストに頼まれて自分名義で借り、そのお金をホストに渡した返済は金融機関、返還の請求先はホスト金融機関への返済と、ホストへの返還請求を分けて考える


 ご自身のケースが複数の形にまたがっていることもあります。以下、それぞれの形ごとに見ていきます。

消費者金融やカードローンで自分名義で借りた場合


金融機関に対しては、原則として本人が返済する

 消費者金融や銀行との間で契約を結んだのは、申込みをした本人です。金融機関はふつう、借入れの背景にホストの指示があったことを知りません。そのため、「ホストに言われて借りた」という事情だけで、金融機関への返済の義務がなくなることは通常ありません。

 借りたお金をそのまま店の支払いやホストへの送金に使っていても、この結論は基本的に変わりません。返済が遅れれば遅延損害金が加わり、信用情報にも影響が出るおそれがあります。

脅されたり、だまされたりして借りたとき

 民法は、だまされたり脅されたりしてした意思表示を取り消すことを認めています(民法96条1項)。ただし、ホストのように契約の当事者ではない第三者にだまされた場合、取り消せるのは、金融機関がその事実を知っていたか、知ることができたときに限られます(同条2項)。

 これに対して、脅されて借りた場合は、脅したのが第三者であっても取り消せると解されています。もっとも、金融機関を相手に「脅されて借りた」ことを示すのは簡単ではなく、取り消せたとしても、受け取ったお金をどう清算するかという問題が残ります。金融機関への返済を一切しなくてよくなると考えるのは、避けたほうが無難です。

 現実的には、金融機関への返済とは別に、脅したりだましたりしたホスト側に対して、損害の賠償を求めることを検討する場面が多くなります。

返済が難しいときは債務整理という道もある

 収入から見て返しきれない場合は、任意整理・個人再生・自己破産といった債務整理を検討します。ホストクラブでの支出は、自己破産で免責を認めない理由の一つである「浪費」にあたると判断されることがあります(破産法252条1項4号)。ただし、その場合でも裁判所の裁量で免責が認められることがあり(同条2項)、最初からあきらめる必要はありません。

ホストに紹介された相手から借りた場合

 消費者金融の審査に通らなかったときに、ホストから個人の貸主や、登録の有無がはっきりしない業者を紹介されることがあります。この場合は、金利と貸主の素性が大きな分かれ目になります。

  • 利息制限法の上限(元本10万円未満は年20%、10万円以上100万円未満は年18%、100万円以上は年15%)を超える利息は、超えた部分が無効になります。
  • 貸金業を営む者が年109.5%を超える利息で貸し付ける契約は、契約そのものが無効とされています(貸金業法42条1項)。
  • 著しく高い金利で貸し付けるいわゆる闇金について、借り手が支払ったお金の返還を求めた裁判で、元本にあたる額を差し引くことは認められないとした最高裁判決があります(最高裁平成20年6月10日判決)。


 このように、違法な金利で貸し付けた相手に対しては、借りたお金をそのまま返す必要がない場合があります。ただし、闇金は取立てが厳しく、家族や勤務先に連絡が及ぶこともあるため、自分だけで支払いを止めるのではなく、弁護士を通じて対応することをおすすめします。取立てへの対処については、闇金・ソフト闇金の取り立てを止めるには|法的な根拠と、止まらないときの現実的な選択肢で解説しています。

売掛を借金に切り替える借用書を書かされた場合

 売掛を借金に切り替える借用書は、法律上は準消費貸借(民法588条)と呼ばれる形にあたります。店やホストへの売掛が、借りたお金の返済という形に置き換えられるものです。

 この形で重要なのは、借用書のもとになった売掛が有効かどうかという点です。注文していないボトルが勝手に加えられていた分や、恋愛感情につけ込まれて注文させられた分、脅されて注文した分などは、もとの売掛の支払い義務を争える余地があり、その場合は借用書の金額についても同じように争えることがあります。売掛の支払い義務の見分け方は、【風俗トラブル・ホストクラブ】ホストクラブの売掛を請求された|改正後に『払う必要のある売掛』を見分けるをご覧ください。

 借用書を書いたときの状況も問題になります。帰らせてもらえない状態で書かされた、「書かないと家に行く」と言われて書いたといった事情があれば、脅されてした意思表示として取り消せる可能性があります。この点は、脅されて署名した念書・示談書は有効か|「無効」と「取消し」の違いで詳しく解説しています。

 また、2025年6月28日に施行された改正風営法では、売掛などの支払いのために客を威迫して困惑させる行為や、支払いのために売春や性風俗店での勤務などを求める行為が禁止されました。こうした行為を伴う取立ては、店側の行政処分や刑事罰の対象となりえます。具体的な場面は、【風俗トラブル】売掛の取立てで威迫された|22条の2と刑事罰が使える場面で取り上げています。

ホストに頼まれて自分名義で借り、ホストに渡した場合

 「自分では借りられないから代わりに借りてほしい。返済は自分がする」と頼まれ、自分名義で借りたお金をホストに渡すケースもあります。最初の数回は返済分を受け取っていたものの、途中から連絡が途絶えたという相談も見られます。

 この場合、金融機関との関係では、契約者である本人が返済しなければなりません。ホストが返済を約束していたとしても、その約束を理由に金融機関への返済を拒むことはできません。

 そのうえで、ホストに対しては、渡したお金の返還を求めることになります。ポイントになるのは、渡したお金が「貸したもの」なのか「あげたもの」なのかという点です。「返済は自分がする」「毎月いくらずつ返す」といったLINEのやり取りや、返済を受けていた振込記録があれば、貸したことを示す材料になります。貸したのか贈ったのかの整理については、キャバ嬢・ホストと店外で深い関係に|貢いだ金銭は返してもらえるかも参考になります。

 なお、借入れの申込みの際に使い道や収入などを偽っていた場合には、別の問題が生じるおそれがあります。まだ借りる前の段階であれば、ホストから頼まれても自分の名義で借りて渡すことは避けてください。

返済の義務を整理するために手元に残したいもの

 返済の義務を争えるかどうかは、当時の経緯を示す記録によって左右されます。次のような資料は、削除や処分をせずに保管しておいてください。

  • 金融機関との契約書や利用明細、返済の記録。
  • 借入れを指示されたときのホストとのLINEやメッセージ、通話の履歴。
  • 借用書や念書の控え、または写真。
  • 売掛の伝票や請求書、店からの連絡。
  • 借りたお金を店やホストに渡した振込記録や、受け渡しの日時のメモ。
  • 紹介された貸主の名前、連絡先、振込先の口座。


 手元にない資料があっても、相談はできます。どの記録が残っているかを確認しながら、取れる手段を検討していきます。

追い詰められたときに避けたい対応

 返済を迫られると、とにかくお金を用意しようと考えがちです。しかし、返済のために別の業者から借りる、ホストに紹介された店で働く、連絡を絶って放置するといった対応は、いずれも状況を悪くするおそれがあります。

 とくに、支払いのために性風俗店での勤務などを求められた場合、それは改正風営法が禁止した行為にあたる可能性があり、応じる必要はありません。【風俗トラブル】『売掛を返すために働け』と言われた|53条2項が正面から禁じた要求もあわせてご覧ください。請求に応じるために新たな借入れを考えている段階であれば、【風俗トラブル】請求を払うために借金をしようとしている|借りる前に考えることで考え方を整理しています。

 身の危険を感じる場合は、ためらわずに110番通報をしてください。

弁護士に相談するとできること

 ホストの指示で借りたお金の問題は、金融機関、紹介された貸主、店、ホスト本人と、関係する相手が複数にわたることが多く、相手ごとに対応を分けて考える必要があります。

 弁護士に依頼すると、借入れごとに返済の義務があるかを整理したうえで、違法な金利の契約や脅されて書いた借用書については無効や取消しを主張し、ホストに渡したお金については返還を求めることができます。代理人として窓口になることで、店やホスト、貸主からの連絡を弁護士に集約することもできます。返しきれない借入れが残る場合には、債務整理もあわせて検討します。

 脅迫や監禁にあたる行為があった場合は、警察への相談と並行して民事上の対応を進めることもできます。ホストが刑事責任を問われても、借入れの問題が自動的に解決するわけではないため、両面から整理しておくことが大切です。

ホストの指示で借りたお金に悩んだら

 「ホストに言われて借りたのだから、自分は返さなくてよい」という考えも、「借りたのは自分だから、すべて返すしかない」という考えも、状況を正確にとらえているとは限りません。借りた相手と経緯によって、返さなければならない部分と争える部分が分かれます。返済の期日が迫っている、取立てが始まっているといった段階でも、まずは事実の整理から始めることができます。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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