【男女トラブル】有償の恋愛代行サービス(レンタル彼氏・彼女)のトラブル

若井亮

若井亮

テーマ:男女トラブル

この記事は、2026年9月時点の民法、消費者契約法、特定商取引法、風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)、売春防止法、刑法にもとづいて作成しています。個別の事情によって結論が変わることがありますので、具体的な判断は弁護士にご相談ください。


「レンタル彼氏を利用したら、説明になかった料金を求められた」「規約違反だと言われて違約金を請求されている」。男女間のトラブルのご相談では、サービスを利用した側からこうした声が寄せられます。反対に、「キャストとして登録しただけなのに、何年も経ってから高額な利用料を請求された」という、サービスを提供する側からのご相談もあります。

 レンタル彼氏・レンタル彼女は、恋人のような時間を過ごすことを有償で提供するサービスです。インターネット上には安心できる業者の選び方を紹介する情報が多く、それ自体は役に立つものです。ただ、トラブルが起きたときに「そもそも何が契約されていたのか」「どこからが法律の規制を受ける行為なのか」という整理は、あまり語られていません。

 この記事では、恋愛代行サービスを契約の面から位置づけたうえで、料金・規約・私的な関係・性的な行為のそれぞれについて、トラブルの性質がどう変わるかを整理します。風俗店の利用に固有の問題や、交際相手との金銭の清算の詳細は、関連する記事に譲ります。

恋愛代行サービスで契約されているもの

対象は「恋愛感情」ではなく「時間と同行」

 レンタル彼氏・彼女の契約は、決められた時間、利用者と一緒に食事や買い物、散歩などをして過ごすという役務(サービス)の提供を内容とするものです。法律上は、仕事の完成ではなく一定の行為をすることを引き受ける契約として、準委任(民法656条)に近い性質をもつと考えられます。

 ここで押さえておきたいのは、契約の対象は恋人らしく過ごす時間の提供であって、相手が本当に恋愛感情を抱くことまでは含まれていないという点です。そのため、「本気ではなかった」と後から分かっても、それだけで契約違反になるわけではありません。一方で、約束した時間に来なかった、説明と違う内容だったという場合は、契約どおりの提供がなかったものとして扱われる余地があります。

誰と契約しているのかを確かめる

 トラブルになったときに請求や交渉の相手となるのが誰かは、サービスの仕組みによって変わります。

サービスの形主な契約の相手確かめておきたい点
運営会社がキャストを手配する型運営会社料金・キャンセル規定・禁止事項が会社の規約に定められているか
キャストが個人で登録するサイト型キャスト本人(サイトは仲介)サイト運営者がどこまで責任を負うと規約に書いているか
個人がSNSなどで単独で活動する型その個人本名や連絡先が分からないまま支払っていないか


 運営会社や、サービスとして反復継続して活動する個人は、消費者契約法の「事業者」にあたるのが通常です。そのため、規約に利用者に一方的に不利な定めがあっても、そのまま効力が認められるとは限りません。

料金・キャンセル・規約違反をめぐるトラブル

説明のなかった料金を求められた

 恋愛代行サービスでは、時間あたりの料金のほかに、延長料金、交通費、デート中の飲食代などを利用者の負担とする例が多く見られます。事前に示されていなかった費目を当日になって求められた場合は、その費目について合意があったといえるかが問題になります。予約時の画面や料金表、やり取りのメッセージは、合意の範囲を確かめる手がかりになります。

キャンセル料や違約金の額が大きい

 キャンセル料や規約違反の違約金を契約で定めること自体は認められています。ただし、消費者契約では、解除に伴う損害賠償額の予定や違約金のうち、同種の契約で事業者に生じる平均的な損害を超える部分は無効とされています(消費者契約法9条1項1号)。また、利用者の利益を一方的に害する条項も無効となることがあります(同法10条)。

 「連絡先を交換したら違約金」「規約違反なので罰金」といった請求を受けたときは、その金額が何に対する補償として設定されているのかを分けて考えることが出発点になります。規約の効力の確かめ方は、「規約に書いてある」と言われたとき|約款が客を拘束する条件で詳しく解説しています。

キャストが来なかった・説明と違った

 予約したキャストが来なかった場合や、プロフィールと大きく異なる人物が来た場合は、提供されなかった部分の料金の返還を求めることが考えられます。前払いの場合は、運営会社とキャスト個人のどちらに支払ったのかによって請求先が変わります。写真やプロフィールとの違いの評価については、「写真と違う」容姿詐欺・サービス不履行|返金は求められるかも参考になります。

キャストとの私的な関係が生むトラブル

「運営を通さずに会いたい」と言われた

 多くのサービスでは、連絡先の交換や、運営を通さない私的な約束(いわゆる裏引き)を禁止しています。運営を通さずに会うと、料金や禁止事項のルールが働かなくなり、トラブルが起きても運営会社に間に入ってもらうことが難しくなります。規約違反として、利用者の側が違約金を求められることもあります。持ちかけられた側に生じるリスクは、【風俗トラブル】『店を通さずに会おう』と持ちかけられた|裏引きの当事者になる危険で整理しています。

個人的な事情を理由にお金を求められた

 「生活費が足りない」「借金がある」などと言われ、料金とは別にお金を渡すケースもあります。渡したお金が贈与なのか貸付なのかによって返還を求められるかが変わり、はじめから返すつもりがないのに借りたといえる事情があれば、詐欺の問題にもなりえます。

 また、社会生活上の経験が乏しいために、勧誘する相手に恋愛感情を抱き、相手も同じ気持ちだと誤信していることを知りながら、「契約しなければ関係が終わる」と告げて契約させる勧誘は、消費者契約法で取消しの対象とされています(同法4条3項6号)。ただし、恋愛代行サービスは恋人らしい時間が有償であることを前提に利用するものなので、この規定が当てはまるかは、勧誘の中身を具体的に見て判断することになります。キャストとの金銭のやり取りと詐欺の境界は、キャストに金銭をだまし取られた|疑似恋愛と詐欺の境界をご覧ください。

関係が終わった後の連絡や個人情報

 私的な連絡先を交換した後に関係がこじれると、繰り返しの連絡や、職場・家族に知らせるといった言動につながることがあります。本名や勤務先を伝えている場合は、その情報がどう使われうるかを早めに確認し、やり取りの記録を残しておくことが大切です。つきまといが続く場合は、ストーカー規制法による警告や禁止命令も検討の対象になります。相手に個人情報を知られている場合の対応は、風俗店・キャストに個人情報を握られた|悪用・晒しを防ぐにはで解説しています。

性的な行為に踏み込んだときに変わる法的な位置づけ

 恋愛代行サービスは、性的な行為を含まないことを前提に運営されているのが一般的です。デートと会話だけであれば、風営法の風俗営業の規制は設備を設けて客を接待する営業を対象としているため、直接の対象にはならないと考えられます。しかし、サービスの中身が性的な方向に進むと、法的な位置づけは段階的に変わります。

行為の範囲法的な位置づけ利用者に生じうる問題
食事・買い物・会話などのデート有償の役務提供契約料金・キャンセル・規約をめぐる民事上の問題
規約で禁止された身体への接触本人の同意がなければ不同意わいせつ罪(刑法176条)の問題キャストからの被害の申告、違約金の請求
ホテルや自宅への派遣で性的な接触を伴うサービスを提供事業者に無店舗型性風俗特殊営業の届出が求められる営業(風営法2条7項1号、31条の2)届出のない営業が摘発された場合に、利用者として事情を聴かれること
対価を払って性交に至る売春防止法が禁じる売春(同法2条、3条)対価の約束や支払ったお金が法的に保護されにくいこと
相手が18歳未満で性的な行為に及ぶ児童買春・児童ポルノ禁止法や青少年健全育成条例の問題利用者自身が刑事責任を問われること


お金を払っても同意があったことにはならない

 有償のサービスであっても、身体への接触や性的な行為についての同意は、料金とは別に、その場で本人が示すものです。規約で禁止されている行為であればなおさら、「料金を払っているから」「デートの流れだったから」という理由で同意があったとは評価されにくくなります。反対に、利用者が望まない行為をキャストから受けた場合は、利用者が被害を申告する立場になります。同意の有無がどのように判断されるかは、「同意があったと思っていた」|不同意性交等罪で争点になる事情で解説しています。

性的な行為の対価をめぐる約束

 売春防止法には、売春の相手方となった客を処罰する規定はありません。しかし、性交の対価としてお金を支払う約束は、法律が禁止する行為を内容とするもので、公序良俗に反し無効と考えられます(民法90条)。そのため、約束した対価を請求されても法的な支払義務は生じにくい一方、すでに支払ったお金は、不法な原因のために支払ったものとして返還を求めることが難しくなります(同法708条)。

 つまり、性的な行為に踏み込むと、利用者はお金の面でも法的な保護を受けにくい立場に移るということです。売春防止法上の客の位置づけは、対価を払って本番に至った場合|売春防止法上、客はどう位置づけられるかをご覧ください。

相手や自分の年齢を確かめる意味

 恋愛代行サービスの多くは、キャストと利用者の双方に18歳以上であることを求めています。しかし、個人で活動する相手の場合は、年齢の確認が行われていないこともあります。相手が18歳未満であれば、デートの範囲を超えた行為は利用者自身の刑事責任に直結します。詳しくは、JKビジネス・パパ活で相手が18歳未満だったら|客に問われる刑事責任のすべてで解説しています。

 なお、利用者が18歳未満の場合、親権者の同意を得ずに結んだ契約は、原則として取り消すことができます(民法5条)。

キャストとして登録する側に起きているトラブル

登録料・掲載料と長期の利用契約

 「レンタル彼氏として収入が得られる」と勧誘されて登録料やサイト掲載料を支払ったものの、ほとんど依頼が来なかったというトラブルが報道されています。登録を解除しようとしたところ数年分の利用料を求められた、何年も経ってから裁判所を通じて請求を受けた、という相談も見られます。

 仕事の提供やあっせんによって収入が得られると誘い、登録料などの負担を伴う契約を結ばせる取引は、特定商取引法の「業務提供誘引販売取引」にあたる可能性があります。この取引では、法律で定められた書面を受け取った日から20日以内であればクーリング・オフができ、書面が交付されていない場合や記載に不備がある場合は、20日を過ぎてもクーリング・オフが認められる余地があります(特定商取引法58条)。勧誘の際に事実と異なる説明があった場合は、契約の取消しも検討できます(同法58条の2)。

裁判所から支払督促が届いたとき

 支払督促を受け取ってから2週間以内に督促異議を申し立てないと、相手の申立てにより仮執行宣言が付され、財産の差押えを受ける可能性があります(民事訴訟法391条1項)。身に覚えの薄い請求であっても書類をそのままにせず、同封された異議申立書の提出を検討してください。督促異議が申し立てられると、通常の訴訟の手続に移ります(同法395条)。

トラブルに備えて残しておきたい記録

 恋愛代行サービスのサイトやキャストのアカウントは、トラブルの後に削除されることがあります。次の記録は、早めに手元に保存しておくと、請求の根拠や合意の範囲を確かめる際の材料になります。

  • 予約時の料金表、利用規約、禁止事項の画面を、日付が分かる形で保存したもの。
  • 予約・変更・キャンセルに関するメッセージのやり取り。
  • 振込明細やカード明細などの支払いの記録と、支払先の名義。
  • 待ち合わせの時刻、実際の利用時間、当日に追加で求められた費用のメモ。
  • 請求や要求を受けた場合の文面や、通話の日時と内容の記録。


よくあるご質問

デート中に延長を持ちかけられて応じた場合、料金は払わなければなりませんか。

 延長に応じた時点で、延長分の料金について合意が成立していると考えられます。ただし、延長料金の額が事前に示されていなかった場合や、示された額と異なる請求を受けた場合は、合意した範囲を超える部分について争う余地があります。

規約で禁止された連絡先の交換をしてしまい、違約金を請求されました。

 規約違反があったとしても、違約金の額がそのまま認められるとは限りません。平均的な損害を超える部分や、利用者の利益を一方的に害する定めは、無効となる可能性があります。支払う前に、規約の文言と請求の根拠を確認してください。

レンタル彼氏と本当に交際するようになった場合、それまでの料金は返してもらえますか。

 交際に発展したことだけを理由に、過去のサービス料金の返還を求めることは難しいと考えられます。それらはサービスとして提供された時間の対価だからです。交際を始めた後に渡したお金は、交際相手との金銭の問題として整理することになります。詳しくは、交際中に立て替えた生活費・プレゼント代は返してもらえる?をご覧ください。

まとめ


  1. 恋愛代行サービスの契約は、恋人らしく過ごす時間の提供を内容とするもので、準委任(民法656条)に近い性質をもちます。
  2. 事業者との契約には消費者契約法が適用され、平均的な損害を超える違約金やキャンセル料の定めは無効となりえます(消費者契約法9条1項1号、10条)。
  3. 恋愛感情に乗じた勧誘は取消しの対象となりえますが、恋愛代行サービスへの当てはめは勧誘の中身によって判断されます(同法4条3項6号)。
  4. 身体への接触や性的な行為への同意は料金とは別の問題で、同意がなければ不同意わいせつ罪などの問題となります(刑法176条)。
  5. ホテルなどへの派遣で性的な接触を提供する営業には、無店舗型性風俗特殊営業の届出が求められます(風営法2条7項1号、31条の2)。
  6. 性交の対価の約束は公序良俗に反し無効と考えられ、支払ったお金の返還も難しくなります(民法90条、708条)。
  7. キャストの登録契約は業務提供誘引販売取引にあたる可能性があり、書面に不備があれば20日を過ぎてもクーリング・オフの余地があります(特定商取引法58条)。


弁護士法人若井綜合法律事務所では、男女間のトラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。レンタル彼氏・レンタル彼女の利用をめぐって料金や違約金を請求されている方、キャストとの関係がこじれてしまった方、キャストとして登録した契約について請求を受けている方は、請求に応じる前にご相談ください。

提供されなかったサービスの返金を求めたい方など、請求する側からのご相談にも対応しています。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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