【親子問題】子が親の通院や服薬を管理すると言って、親を思いどおりにしようとするときは?

若井亮

若井亮

テーマ:親子問題

この記事は、ご自身で物事を判断できる親御さんが、子による通院や服薬の「管理」に困っている場面を想定して、一般的な考え方を整理したものです。薬の飲み方や治療の内容そのものについては、主治医や薬剤師にご確認ください。


親が年齢を重ねると、通院の付き添いや薬の受け取りを子が引き受けることは珍しくありません。多くの場合は助かる関わりですが、なかには「薬は自分が預かる」「病院には自分が連れて行くときだけ行けばいい」と言って、親の行動や判断を子の意向に沿わせようとする場面があります。拒むと薬を渡さない、主治医との話に必ず割り込む、お金の話を持ち出すといった形で、通院や服薬が親を動かすための手段になってしまうことがあるのです。

 この記事では、手助けと支配の境目、受診や服薬を決めるのは誰か、法律上の扱い、親御さんが今日からできることを順に整理します。

手助けと支配の境目はどこにあるか

 同じ「管理」という言葉でも、親の意思を支えるための管理と、親の意思に置き換わる管理とでは意味が大きく異なります。目安として、次のように分けて考えることができます。

場面手助けにとどまる関わり注意が必要な関わり
受診親の希望に合わせて予約や送迎をする子の都合や意向で受診の可否を決め、親が一人で行くことを認めない
服薬飲み忘れを防ぐために声をかける、薬を仕分ける薬を預かったまま渡さない、言うことを聞かないと薬を出さないと告げる
医師との話親が頼んだときに同席し、説明を一緒に聞く親が話す前に答えてしまう、親抜きで説明を受けようとする
情報親が共有したい範囲で病状を知るお薬手帳や診察券を取り上げ、親が自分の治療を把握できない状態にする


 判断の分かれ目は、最終的に決めているのが親自身かどうかという点にあります。子に悪気がなく、「心配だから」という気持ちから始まっている場合も少なくありません。ただ、出発点が善意であっても、親が自分の受診や服薬を自分で決められなくなっているなら、関わり方を見直す時期に来ていると考えられます。

受診や服薬を決めるのは誰か


判断できる親であれば、決めるのは親自身

 どの病院にかかるか、どの治療を受けるか、処方された薬をどう飲むかは、本来、患者本人が医師の説明を受けたうえで決めることです。子であっても、判断する力のある親に代わってこれを決める一般的な権限が法律で与えられているわけではありません。

 ですから、「家族が管理するのが当然」と言われても、親が自分で通院し、自分で薬を受け取り、自分で飲むことを選ぶことは差し支えありません。手伝ってほしい部分だけを頼む、という線の引き方も十分に成り立ちます。

医師からの説明を誰が聞くか

 病名や処方の内容は、個人情報保護法上の要配慮個人情報にあたり、医療機関は本人の意思に配慮して扱うことが求められています。厚生労働省などのガイダンスでも、家族への病状説明について、説明する相手の範囲をあらかじめ本人に確認しておくなどの配慮が示されています。

 そのため、親から主治医や病院の窓口に「説明は自分に直接してほしい」「子への説明は控えてほしい」と伝えておくことができます。医療機関の側でも、本人の希望が分かれば対応を考えやすくなります。

法律上どう扱われるか


高齢者虐待防止法の類型に重なる場合

 親が65歳以上で、子が同居するなどして世話をしている立場にある場合、高齢者虐待防止法(2条)の「養護者による高齢者虐待」にあたるかどうかが問題となり得ます。自治体のマニュアルでは、たとえば次のような行為が具体例として挙げられています。

  • 本人が必要とする介護や医療のサービスを、相応の理由なく制限したり使わせなかったりする行為(介護・世話の放棄・放任の例)。
  • 意図的に薬を過剰に服用させるなどして行動を抑える行為(身体的虐待の例)。
  • 怒鳴る、子どものように扱うなど、威圧的な態度で精神的な苦痛を与える行為(心理的虐待の例)。
  • 日常生活に必要なお金を渡さない、使わせない行為(経済的虐待の例)。


 虐待にあたるかどうかは、行為の内容や頻度、親の心身の状態などを踏まえて個別に判断されます。通院や服薬の管理があったというだけで直ちに虐待とされるわけではありませんが、親自身が市町村に届け出ることができ(9条1項)、周囲の人が気づいた場合の通報の仕組みも設けられています(7条)。行政が関わる流れについては【親子問題】高齢の親が被害者の場合|行政が動く仕組みで解説しています。

薬を盾にして何かをさせようとする場合

 「言うとおりにしないなら薬を渡さない」と告げて、お金を出させる、書類に署名させるといった、親が本来する必要のないことをさせようとする場合には、強要罪(刑法223条)などの刑事上の問題となり得る場面もあります。また、親の年齢にかかわらず、暴力や物を取り上げる行為があれば、通常の刑事・民事のルールで考えることになります。

 ただし、どの段階で警察や行政に相談するかは、親子の関係やその後の生活への影響も含めて考える必要があります。いきなり結論を出すより、まず状況を記録し、相談先と順序を検討することをおすすめします。

お金や遺言の話と結びついているとき

 通院や服薬の管理が、年金や預貯金の管理、遺言や贈与の話と一緒に持ち出されることがあります。「薬の管理は自分がしているのだから、通帳も預かる」「病院代がかかるから年金を渡してほしい」といった形です。

 健康の管理とお金の管理は、本来は分けて考えられるものです。体調の面で手助けを受けていても、財産の管理まで同じ人に任せる必要はありません。年金の管理を求められている場合は【親子問題】子に年金の管理を任せろと言われている|渡す前に確かめておくこと、すでに通帳やカードを持ち出されている場合は【親子問題】通帳・カードを取り上げられた場合の対応も参考にしてください。

 また、親が自分で管理を任せる相手を選んでおく方法として、任意後見契約や財産管理等の委任契約があります。日常的なお金の出し入れを第三者が手伝う仕組みについては【親子問題】金銭管理を第三者が担う仕組み|日常生活自立支援事業と民間の支援者の違いで整理しています。財産や遺言をめぐる話が出ているときほど、親が自分の意思で受診し、主治医と直接話している記録が、後に意味を持つことがあります。

親が今からできること

 大きく関係を変えようとすると、子の反発を招くおそれがあります。次のように、親の側で確保できるところから一つずつ整えていく方法が考えられます。

  1. 主治医と薬局に直接つながる経路を確保します。診察の際に一人で話す時間をもらえないか相談し、薬局には自分で電話できるようにしておきます。
  2. お薬手帳と診察券を自分の手元に置きます。どの薬をいつ飲むのかを自分で確かめられる状態を保ちます。
  3. 説明を受ける相手を自分で決めて伝えます。主治医や病院の窓口に、誰にどこまで説明してよいかを伝えておきます。
  4. 薬の管理の負担を減らす工夫を医療側に相談します。一包化や服薬カレンダーのほか、介護保険を使っている場合は薬剤師が自宅を訪れる居宅療養管理指導などを利用できることがあります。
  5. 介護サービスを使っていればケアマネジャー、使っていなければ地域包括支援センターに状況を伝えます。子以外の人の目が入るだけでも、状況が変わることがあります。
  6. 日付と出来事を記録します。薬を渡されなかった日、受診を止められた日、そのとき言われた言葉などを簡単に書き留めておきます。


 子が家の中で親の発言を録音し、それを材料にしてくる場合の考え方は【親子問題】子が家の中で親を録音・撮影し、それを材料に脅してくる|録音の評価と親が避けたい対応で解説しています。

親の判断する力が落ちてきている場合

 物忘れが増えるなどして、親が一人で服薬を続けることが難しくなっている場合には、誰かが管理を手伝う必要性そのものは高まります。この場合に問題となるのは、管理が一人の子に集中し、ほかの家族や支援者から見えなくなることです。

 主治医やケアマネジャーと情報を共有する、ほかのきょうだいも状況を知っておく、必要に応じて成年後見制度の利用を検討するなど、管理を複数の目で見られる形にしておくことが大切です。親が動けない状態で、きょうだいが心配して相談する場合については【親子問題】きょうだいが相談者になる場合|親が動けないとき、きょうだいの一人による財産の使い込みが疑われる場合については【親子問題】親が高齢で、きょうだいの一人が親の財産を使っているもご覧ください。

弁護士が関わる意味

 親子の間では、親が直接「管理をやめてほしい」と伝えても、話し合いにならないことがあります。弁護士が親の代理人となれば、子との連絡の窓口を弁護士に移し、親が直接やり取りする負担を減らすことができます。通院や服薬、お金の管理についての取り決めを書面にまとめる場面でも関わることができます。

 当事務所では、親子の問題について、弁護士が親の側に立って子との窓口を担い、必要に応じて自立支援のカウンセラーと役割を分けて対応しています。相談したことが子に知られないかが心配な方は【親子問題】相談内容は子に伝わるのか|守秘義務と連絡の取り方を、窓口を代えることで何が変わるのかは【親子問題】弁護士に頼むと何が変わるのか|窓口を代えるという選択をご覧ください。

 子が通院や服薬を手伝ってくれることには、親にとって助かる面も確かにあります。そのうえで、受診や服薬を最後に決めるのは親自身であるという原則を手放さないことが、親子双方にとって無理のない関係を保つことにつながります。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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