どこからが『公然』なのか|露出・排尿・着替えの場面
性犯罪の事件に関わった方やそのご家族から、「再犯防止プログラムというものがあると聞いたが、どこに行けば受けられるのか」というご質問をいただくことがあります。調べてみると、刑事施設や保護観察所で行われている専門的なプログラムの説明は見つかります。ただ、その説明を読み進めても、自分がその対象になるのかどうかまでは書かれていないことが少なくありません。
実のところ、公的に用意されているプログラムは、受けたい人が申し込む形の制度ではありません。その一方で、その枠に入らなかった方が相談できる窓口は別に用意されています。この記事では、どこにどのような受け皿があり、それぞれどうすれば届くのかを整理します。
この記事で扱うこと
- 刑事施設と保護観察所で行われるプログラムの入り方の違い。
- 罰金や起訴猶予で終わった場合に、どこへ相談できるのか。
- 地方公共団体の窓口が地域によって違うこと。
- 民間の医療機関や自助グループの位置づけ。
同じ「プログラム」でも根拠が違う
「再犯防止プログラム」という言葉は、いくつかの別々の仕組みを指して使われています。刑事施設で行われる性犯罪再犯防止指導、保護観察所で行われる性犯罪再犯防止プログラム、そして民間の医療機関が行っている集団療法は、名前は似ていても、根拠となる制度も、そこに入るきっかけも、費用の扱いも別のものです。
ですから「どこで受けられるのか」という問いには、場所を挙げるだけでは答えになりません。その場所に入るきっかけが何なのかをあわせて見ておく必要があります。
受け皿と、そこに入るきっかけ
| 受け皿 | そこに入るきっかけ | 自分から申し込めるか |
|---|---|---|
| 刑事施設の性犯罪再犯防止指導 | 施設側の調査で受講の対象と判定されること | 申し込む仕組みではない |
| 保護観察所の性犯罪再犯防止プログラム | 保護観察に付され、特別遵守事項として定められること | 申し込む仕組みではない |
| 保護観察所の地域相談窓口 | 本人や家族からの相談 | 電話で申し込める |
| 更生緊急保護 | 身体の拘束を解かれた後の本人の申出 | 申し出ることができる |
| 民間の医療機関や自助グループ | 本人の受診や参加の申込み | 申し込める |
上の2つと下の3つでは、入り方の性質がまったく違います。上の2つは手続の結果として決まるもので、下の3つは自分から動いて届くものです。
刑事施設の指導は、希望した人が受けるものではない
刑事施設で行われている性犯罪再犯防止指導は、拘禁刑の言渡しを受けて収容された方を対象とするものです。ただし、性犯罪で収容された方の全員が受けるわけではありません。罪名や動機といった事件の内容、常習性、性犯罪につながる問題の大きさなどから受講の優先度が判断され、優先度が高いとされた方について、あらためて調査が行われます。
調査では、再犯につながる要因、処遇によって変えることが期待できる事項、本人の状態からみた受講への適性が見られます。その結果に応じて、指導の密度が高いものから低いものまで振り分けられ、1回あたり100分程度のグループワークを週に1回から2回という形で進めていきます。
ここで押さえておきたいのは、受講のための刑期が足りない場合には対象から外れる扱いになっている点です。刑期が短い場合には、収容されていても受けられないことがあります。希望しても受けられないことがある一方で、希望していなくても対象になることがある。それが公的な指導の性質です。
保護観察所のプログラムは、遵守事項として定められて始まる
保護観察所で行われる性犯罪再犯防止プログラムは、保護観察に付された方が対象です。保護観察付きの執行猶予、仮釈放中、家庭裁判所の保護観察処分などがこれにあたります。
更生保護法は、専門的な知識に基づく体系化された処遇を受けることを特別遵守事項として定めることができるとしています(同法51条2項4号)。また、保護観察における指導監督の方法の1つとして、特定の犯罪的傾向を改善するための専門的処遇を実施することが挙げられています(同法57条1項3号)。特別遵守事項として定められた場合、受講は本人の希望とは別に守るべき事項になります。
| 段階 | そこで行われること | 位置づけ |
|---|---|---|
| 導入 | 目的の説明、事件当時の状況やこれからの目標の確認 | 中心部分に入る前の準備 |
| コア | 性加害の過程、それに結び付いた考え方、対処の方法、被害の実情の理解、繰り返さないための計画 | 中心となる過程 |
| メンテナンス | 終了後の定期的な面接 | 続けるための部分 |
| 家族プログラム | 家族に向けた知識の提供と相談 | 本人以外に向けたもの |
コアの部分は、おおむね2週間に1回程度の面接を重ねる形で進みます。家族に向けた部分が用意されている点は、ご家族から相談を受けることの多い私どもの実務感覚からも、知っておいていただきたいところです。
保護観察に付かなかった場合はどこへ行けるのか
ここまでの2つは、いずれも刑事施設に収容されるか、保護観察に付されるかしなければ届きません。ところが実際には、罰金、起訴猶予、保護観察の付かない執行猶予といった形で手続が終わる事件のほうが数のうえでは多くなります。この場合、公的なプログラムそのものは受けられないことになります。
ただし、それで行き先がなくなるわけではありません。
保護観察所の地域相談窓口
保護観察所では、犯罪や非行に関する地域の方や関係機関からの相談を受け付けています。刑事施設を出た方や保護観察を受けていた方に加えて、そのご家族や支援者からの相談も対象とされており、困りごとを聴いたうえで、関係機関と連携しながら情報提供や支援の調整を行うという内容です。「りすたぽ」という名称が付けられています。
受付は平日の日中で、相談は無料、最寄りの保護観察所に電話で申し込む形です。保護観察所は各都府県に1か所、北海道に4か所の全国50か所に置かれています。保護観察の対象になっていない方でも相談できるという点が、ほかの入口との大きな違いです。
更生緊急保護
更生緊急保護は、身体の拘束を解かれた方が、親族からの援助や公的機関からの保護を受けられない場合などに、緊急に援護を行う制度です(更生保護法85条1項)。対象には、刑の執行を終えた方、保護観察の付かない執行猶予の言渡しを受けた方、起訴猶予となった方、罰金や科料の言渡しを受けた方などが挙げられており、処分保留のまま釈放された方についても対象に加えられました。
この制度は本人からの申出を出発点とし、保護観察所の長が必要と認めたときに行われます(同法86条1項)。検察官や刑事施設の長には、身体の拘束を解く際に制度と申出の手続を教示することが求められています(同条2項)。期間は、身体の拘束を解かれた後6か月を超えない範囲が原則です。
ここで注意しておきたいのは、更生緊急保護は宿泊場所や金品の給与、就職の援助といった生活の立て直しのための制度であって、性犯罪に特化したプログラムそのものではないという点です。もっとも、相談の中で必要な機関につないでもらえることがあり、入口の1つにはなり得ます。
勾留されている間から動かせる仕組み
勾留されている被疑者について、検察官が罪を犯したと認めた場合には、本人の同意を得たうえで、保護観察所が釈放後の住居や就業先などの生活環境の調整を行うことができる仕組みが設けられています(更生保護法83条の2)。この調整を行うにあたっては検察官の意見を聴くこととされ、捜査に支障が生じるおそれがあり相当でないという意見が述べられたときは行えません。
釈放を待たなければ何も動かせないわけではない、という点は知っておいてよいところです。
地方公共団体の窓口は地域によって違う
法務省は、性犯罪をした方への地域での支援について、都道府県などに向けたガイドラインを作成しています。そこでは、刑事司法手続を離れた方への支援は地方公共団体が主体となって行うことが期待される一方、性犯罪のように専門的な対応が求められる分野では、必要な知識や技術を十分に有しているとはいえないのが実情である、という趣旨が述べられています。
同じ資料に掲載された調査では、性犯罪に特化した取組を行っている自治体は全体の一部にとどまり、カウンセリングの提供や医療機関での治療の提供となるとさらに限られていました。取り組んでいない理由として「どのように行ったらよいか分からない」を挙げた自治体が半数近くを占めています。
実際の入口としては、精神保健福祉センターや保健所が挙げられます。依存に関する相談はアルコールや薬物、ギャンブルを中心に扱ってきた経緯があるものの、性に関する問題行動の相談が寄せられている地域もあります。同じ制度の下でも、住んでいる場所によって受けられるものが違う。これが「どこで受けられるのか」という問いの、率直な答えの一部です。
民間の医療機関と自助グループ
民間の医療機関や自助グループは、本人が希望すれば受けられるという点で、公的なプログラムと性質が異なります。個別の面談とグループでの取り組みを組み合わせる形が多く、オンラインでの対応を行っているところもあります。
一方で、費用は自費が基本になり、専門的に扱う医療機関の分布には地域による偏りがあります。近くに見つからないという相談は珍しくありません。
この点について、先ほどのガイドラインは、専門的な治療が支援のすべてではないこと、性の問題に特化した医療機関がないことをもって支援を断念しないでほしいという趣旨を述べています。受け皿を1種類に絞り込まないほうが、続けられる形に近づくということです。
相談先を決める前に確かめておきたいこと
- 今が手続のどの段階か。捜査中か、裁判中か、終わった後か。
- 見込まれる処分の内容。収容や保護観察の可能性があるかどうか。
- 通う場所までの距離と、続けられる時間帯かどうか。
- 費用の負担がどれくらいの期間続くのか。
- 家族がどこまで関わることができるのか。
家族が先に動くこともできる
保護観察所の地域相談窓口は、ご家族や支援者からの相談も受け付けています。保護観察所のプログラムにも家族に向けた部分があり、精神保健福祉センターなどでもご家族からの相談に応じています。本人がまだ動ける状態にない段階でも、受け皿の見当をつけておくことはできます。
あわせて、先ほどのガイドラインが留意点として挙げていることも紹介しておきます。特定の項目が直接の原因であるとか、その行動が改まらなければ問題は終わらないといった、単純な因果でとらえる受け止め方にならないよう気をつけてほしい、という趣旨です。受け皿を探す作業と、原因を1つに決めつけることとは別だとお考えいただければと思います。
弁護士に確認しておけること
- 見込まれる処分の見通しと、公的なプログラムの対象になる可能性。
- 釈放後を見据えて、勾留されている間にできる調整があるかどうか。
- 更生緊急保護の申出を行う場合の段取りと、その申出先。
- お住まいの地域で相談できる窓口と、そこに行くまでの順序。
- ご家族が先に相談する場合の窓口と、伝えておくとよい事柄。
まとめ
- 刑事施設と保護観察所のプログラムは、申し込んで受けるものではなく、手続の結果として対象が決まる。
- 刑事施設の指導は調査を経て振り分けられ、刑期が足りない場合には対象から外れることがある。
- 保護観察所のプログラムは、特別遵守事項として定められた場合に受講することになる。
- 罰金や起訴猶予で終わった場合でも、保護観察所の地域相談窓口には本人も家族も相談できる。
- 更生緊急保護は生活の立て直しのための制度であり、プログラムそのものとは区別して考える。
- 地方公共団体の取組には地域差があり、民間の医療機関や自助グループを含めて複数の受け皿を見ておくとよい。
再犯防止の取組についてお考えの方へ
どこで受けられるのかという問いは、手続のどの段階にいるのか、どの地域にお住まいなのかによって答えが変わります。そして、公的なプログラムの対象になるかどうかは、ご本人の希望とは別のところで決まっていきます。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、性犯罪に関するご相談について、手続の見通しとあわせて、その段階で現実に届く受け皿の整理までを含めてお話ししています。ご本人からのご相談はもちろん、ご家族からのご相談もお受けしています。お一人で抱え込まず、まずはご相談ください。


