【親子問題】30代のひきこもりの子に、親が最初に声をかけるなら何から?
この記事は2026年11月時点の法令・制度をもとにしています。頼れる身寄りのない高齢者などの入院手続を支援する仕組みを盛り込んだ改正社会福祉法が2026年6月に成立しており、新しい事業は公布から2年以内に始まる予定です。利用できる人の範囲などは今後定められるため、最新の内容はお住まいの地域の窓口でご確認ください。
親が入院するとき、病院の書類には「身元保証人」「連帯保証人」「緊急連絡先」といった欄があり、多くの場合は家族、とくに子の名前を書くことが想定されています。ところが、子がひきこもっていて収入がない、子から暴力やお金の要求を受けている、何年も連絡を取っていないといった事情があると、子に頼むこと自体が難しく、頼まないほうがよい場面もあります。
この記事では、病院が保証人に求めている役割を分けて整理したうえで、子に頼めないときに代わりになりうる人や仕組み、入院の前に親自身で整えておけることを解説します。
病院が保証人に求めているのは、いくつかの役割の組み合わせです
医療機関が入院時に求める「身元保証人等」は、名称が病院ごとに異なり、求める内容も一つではありません。厚生労働省のガイドラインなどでは、主に次のような役割に分けて整理されています。
| 役割 | 主な内容 | 子に頼めないときの代わりの例 |
|---|---|---|
| 緊急の連絡先 | 容体が変わったときなどの連絡 | 子以外の親族・知人、契約した支援事業者 |
| 入院費などの支払 | 入院費が支払われないときの保証 | 本人の預貯金からの支払、預り金、公的な負担軽減の制度 |
| 入院中の必要品・手続 | 着替えや日用品の準備、各種の手続 | 介護保険のサービス、社会福祉協議会、支援事業者 |
| 退院の支援 | 退院先の調整、退院時の付き添い | 医療ソーシャルワーカー、ケアマネジャー、地域包括支援センター |
| 亡くなったときの対応 | 遺体や遺品の引き取り、葬儀 | 死後事務委任契約の受任者、市区町村 |
表のとおり、保証人の役割の多くは、子でなければ担えないものではありません。役割ごとに担い手を分けて考えると、「書ける人が誰もいない」という状態から一歩進められることがあります。
なお、手術などの医療行為を受けるかどうかは、本来は患者本人が決めることです。保証人になった家族が、本人に代わって当然に決められるわけではありません。本人が判断できなくなった場合には、医療機関が本人の意思を推し量りながら方針を決めていくことになるため、元気なうちに自分の希望を伝えておくことが大切だとされています。
保証人がいないことだけを理由にした入院拒否は、医師法に触れると整理されています
厚生労働省は2018年4月の通知で、入院による治療が必要であるにもかかわらず、身元保証人等がいないことのみを理由に入院を拒むことは、医師の応招義務を定めた医師法19条1項に抵触するとの考え方を示しています。
もっとも、この通知は保証人の欄を設けること自体を禁じるものではなく、病院側にも入院費の未収や退院調整の難しさといった現実の負担があります。窓口で保証人を求められたときは、「いません」とだけ伝えるのではなく、事情を説明したうえで、支払の方法や連絡先について代わりの案を示して相談するほうが、話が進みやすい傾向があります。多くの病院には、医療ソーシャルワーカーや入退院支援の担当部署があり、こうした相談を受けています。
子に頼めない事情ごとに考えておきたいこと
子に収入がない・ひきこもっている場合
子に収入がなくても、病院によっては名前を書けば受け付けることがあります。ただ、支払の保証としての実質は乏しく、入院費が払えなかったときに子へ請求が向かうと、子の生活がさらに不安定になるおそれがあります。また、親の入院中は子が自宅に一人で残ることも多いため、保証人の問題とあわせて、その間の子の生活をどう支えるかも考えておく必要があります。
子から暴力や金銭の要求を受けている場合
子から暴力やお金の要求を受けている場合、保証人や緊急連絡先に子の名前を書くと、病院から子に連絡が入り、入院先や容体、支払の状況を子が知ることになります。入院先に押しかけられる、入院中に自宅の通帳や印鑑を持ち出されるといった心配があるときは、子を連絡先にしないことや、子から問い合わせがあった場合の対応について、入院の時点で医療ソーシャルワーカーなどに相談しておくことが考えられます。
病院には守秘義務がありますが、家族を名乗る人からの問い合わせにどこまで応じるかは、病院ごとに運用が異なります。事情をあらかじめ伝えておくことが、対応をそろえてもらう前提になります。
長く連絡を取っていない・頼みたくない場合
子が親に対して法律上の扶養義務を負う場面があるとしても、それは親の入院の保証人になる義務とは別の話です。保証人になるかどうかは子が決めることであり、頼まなかった、あるいは断られたというだけで入院の道が閉ざされるわけではありません。関係が途絶えている子に無理に連絡を取るより、ほかの担い手を探すほうが、親自身の負担が軽くなる場合もあります。
子の代わりになりうる人や仕組み
入院先の医療ソーシャルワーカー
最初の相談先として考えやすいのが、入院先の医療ソーシャルワーカーです。支払の方法、介護保険などの制度の利用、退院先の調整について、病院の事情を踏まえながら一緒に考えてもらえることがあります。入院が決まった段階で「保証人を立てられない事情がある」と伝えておくとよいでしょう。
地域包括支援センター・社会福祉協議会
65歳以上の方であれば、住んでいる地域の地域包括支援センターが、介護や暮らし全般の相談窓口になります。また、社会福祉協議会は、判断能力に不安がある方を対象に、福祉サービスの利用手続や日常的な金銭管理を手伝う日常生活自立支援事業を行っています。地域によっては、社会福祉協議会や自治体が、入院時の手続の支援や身元保証に準じた支援を独自に行っている例もあります。
さらに、2026年6月に成立した改正社会福祉法では、頼れる身寄りのない高齢者などを対象に、日常的な見守りや金銭管理、入院・入所の手続、亡くなった後の葬儀や納骨までを支援する事業が法律に位置づけられました。資力が十分でない方は無料または低額で利用できる仕組みとされていますが、具体的な利用の条件はこれから定められる予定です。
子以外の親族や知人
きょうだいや甥・姪、親しい知人に頼む方法もあります。個人が入院費の連帯保証人になる場合、入院中に生じる費用全般のように保証の範囲が定まっていない契約では、2020年4月施行の改正民法により、保証する金額の上限(極度額)を書面などで定めなければ保証契約は効力を生じないとされています(民法465条の2)。頼む側としても、どこまでの負担になりうるのかを契約書で確認し、相手に説明できるようにしておくと、引き受けてもらいやすくなります。
民間の身元保証サービス
身元保証や亡くなった後の手続を有料で引き受ける民間事業者もあり、高齢者等終身サポート事業と呼ばれています。一方で、事業者の経営破綻により預けたお金が返ってこなかったといったトラブルも報告されており、国は2024年6月に事業者向けのガイドラインを公表しています。契約の前には、次の点を確かめておくと安心です。
- 提供されるサービスの範囲と、それぞれの費用。
- 預託金を預ける場合の管理の方法(事業者の財産と分けて管理されているか)。
- 途中で解約したときの返金のルール。
- 亡くなった後に行う手続の範囲。
- 契約内容を説明した書面の有無。
任意後見や財産管理・死後事務の委任
判断能力があるうちに、信頼できる人や専門職との間で、任意後見契約、財産管理の委任契約、死後事務委任契約を結んでおく方法もあります。後見人や受任者が保証人そのものになるわけではありませんが、本人の財産から入院費を支払う、病院とのやり取りを担う、亡くなった後の手続を行うといった形で、保証人に求められる役割の多くを支えることができます。病院によっては、こうした契約があることを伝えると、保証人に代わる備えとして扱ってもらえることがあります。
入院の前に親自身で整えておけること
- 入院費をどの口座やカードから支払うかを決め、病院に伝えておくこと。
- 高額療養費の仕組みを使えるよう、マイナ保険証や限度額適用認定証を準備しておくこと。
- 緊急連絡先にしてよい人と、連絡してほしくない人を書き出しておくこと。
- 治療や延命についての自分の希望を、書面にしたり信頼できる人に伝えたりしておくこと。
- 退院後の暮らしについて、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談しておくこと。
急な入院では準備の時間がとれないこともあるため、体調が落ち着いているうちに少しずつ整えておくと、いざというときに病院とのやり取りを進めやすくなります。
弁護士に相談できること
子に保証人を頼めない背景に、暴力やお金の要求、長期のひきこもりといった親子の問題がある場合、入院の手続だけを整えても、退院後の生活や親が亡くなった後のことまで含めた見通しが立たないことがあります。
当事務所では、親御さんの代理人として子との連絡の窓口を担うほか、任意後見や死後事務委任、遺言といった備えについてのご相談もお受けしています。子の自立に向けた支援が必要なご家庭では、自立支援カウンセラーと役割を分担して対応することもあります。
よくあるご質問
保証人の欄を空けたまま入院の書類を出してもよいですか
空欄のまま提出するより、窓口で書けない事情を伝え、支払の方法や連絡先について代わりの案を示して相談するほうが現実的です。病院によっては、入院保証金などの預り金を納めることで、保証人に代える扱いをしているところもあります。
生活保護を受けている場合、保証人はどうなりますか
生活保護を受けている方の医療費は、原則として医療扶助によって賄われます。入院が決まったら、担当のケースワーカーに早めに連絡し、病院とのやり取りについて相談してください。
入院したことを子に知られたくありません
入院の手続の際に、子に入院先や容体を伝えないでほしいことを病院に伝えておくことが出発点です。ただし、子が別のきっかけで知る可能性まではなくせないため、知られた場合に誰が連絡の窓口になるかを、あらかじめ考えておくと安心です。
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入院の保証人を子に頼めないという事情は、珍しいものではありません。保証人の役割を分けて考え、病院や地域の窓口、専門職の力を組み合わせることで、子に頼らずに入院や退院後の生活を支える形をつくれる場合があります。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


