万引きで警察を呼ばれる前に店から示談を求められた
家族が逮捕された、あるいは警察から連絡があったという段階で、多くの方が最初につまずくのは「どこに、何を聞けばよいのか分からない」という点です。弁護士に相談しようとしても、事件を特定する番号も、担当している検察官の名前も分からず、説明のしようがないという声をよくうかがいます。
刑事事件には手続の段階ごとに番号が付けられ、担当する人も入れ替わっていきます。番号や担当者の名前は、それ自体が事件の中身を教えてくれるものではなく、事件がいま手続のどこにあるのかを示す目印です。ここを取り違えると、問い合わせ先も、聞くべきことも噛み合わなくなります。
この記事では、刑事事件に付く番号の種類、担当検察官が決まる時期、そして家族の立場で問い合わせるときの窓口と、そこで答えてもらえる範囲を整理します。
この記事で扱う範囲
- 刑事事件に付けられる番号にどのような種類があるか。
- 検察庁の事件番号がいつ付き、どのような形で呼ばれるか。
- 担当検察官が決まる時期と、途中で替わることがある理由。
- 家族が問い合わせたときに答えてもらえる範囲と、その背景にある決まり。
- 段階ごとの問い合わせ先と、手元にそろえておく情報。
処分の見通しや、身柄が解放されるかどうかの判断には立ち入りません。ここで扱うのは、事件の所在を確かめるという一点です。
刑事事件の「番号」は一つではない
「事件番号」という言葉は、日常の会話では一つのものとして語られます。しかし刑事手続では、場面ごとに別の番号が使われます。家族どうしの会話や弁護士との相談で行き違いが起きるのは、たいていこの点です。
| 段階 | 番号の呼ばれ方 | 付けるところ |
|---|---|---|
| 警察が捜査している段階 | 送致番号などの管理番号 | 警察 |
| 検察庁に送られた後 | 「◯年検第◯号」 | 検察庁 |
| 地方裁判所に起訴された後 | 「◯年(わ)第◯号」 | 裁判所 |
| 簡易裁判所の略式手続 | 「◯年(い)第◯号」 | 裁判所 |
| 家庭裁判所に送られた少年事件 | 「◯年(少)第◯号」 | 裁判所 |
検察庁が付ける番号は、実務では「検番」と呼ばれます。検察庁の事件事務を定めた規程に、事件番号は「◯年検第◯号」と呼ぶという定めがあり、そこから生まれた通称です。
これに対して裁判所の番号は、起訴された後に裁判所が新たに付けるものです。かっこの中のひらがなは事件の種類を表す符号で、最高裁判所の規程で定められています。起訴されると、検察庁の番号とは別に裁判所の番号が加わるため、同じ事件について番号が二つ存在する状態になります。
同じ人の同じ出来事でも、番号が一つとは限らない
検察庁の事件番号は、事件ごとではなく被疑者一人につき一つ付けられ、暦年ごとに番号を改めるとされています。関与を疑われている人が複数いる場合、同じ出来事であっても人ごとに別の番号になります。
また、事件が他の検察庁に移されたとき、いったん不起訴になった事件について再び捜査が始まったときなどには、あらためて受理の手続がとられ、そのたびに番号が付け直されます。以前に聞いた番号を伝えたのに話が通じない、という場面はここから生じます。
担当検察官が決まるのはいつか
担当検察官が決まるのは、事件が検察庁に送られた後です。警察に逮捕された直後の段階では、まだ検察庁が事件を受理していないため、検察庁に問い合わせても担当者は決まっていません。
逮捕された当日には分からないことが多い
逮捕された人は、法律で定められた時間制限の中で検察官に送致されます。送致は日ごとにまとまった時間帯で行われることが多く、逮捕された時刻によって、送致が翌日になるか翌々日になるかが変わります。そのため、逮捕の当日に検察庁へ電話しても事件が見つからないという結果になりやすいのが実際のところです。
この段階で家族が確かめやすいのは、本人がどこの警察署に留置されているかという点です。留置施設は夜間や休日でも連絡がつくため、検察庁の窓口が開いていない時間帯であっても、所在の確認ができる場合があります。
担当は途中で替わることがある
検察庁の事件事務を定めた規程には、検察官が他の検察官に事件を引き継ぐときは、速やかにその旨を事務官に通知するという定めが置かれています。担当検察官が最初から最後まで同じとは限らないことが、制度の側で前提とされているわけです。
人事の異動や事務分担の見直しによって担当が替わることはあり、以前に聞いた検察官の名前で連絡しても取り次ぎができない場合があります。日をおいて連絡するときは、名前だけでなく事件番号もあわせて伝えられるようにしておくと、行き違いが減ります。
家族が問い合わせても答えが限られる理由
家族が検察庁や警察署に電話をしても、「お答えできません」と言われることは珍しくありません。これは家族を軽んじているというより、捜査機関の側に守るべき決まりがあるためです。
刑事訴訟法には、捜査に関係する者は被疑者その他の人の名誉を害しないように注意し、かつ捜査の妨げにならないように注意しなければならない、という定めがあります。加えて、公務員には職務上知り得たことについての守秘義務があります。電話の相手が本当に家族であるかを確かめる手段が乏しいことも、回答が慎重になる理由の一つです。
書類を公開しないことと、口頭で説明しないことは別の話
刑事訴訟法には、訴訟に関する書類は公判が開かれる前には公にしてはならない、という定めもあります。ただしこれは書類そのものを公にすることについての規定であって、捜査の進み具合を口頭で伝えることまでを直接に規制したものではない、と整理する立場もあります。
窓口で「法律で決まっているので言えない」と説明されたときも、何が、どの決まりによって言えないのかは場面によって違うと考えておくと、聞き方を組み立て直しやすくなります。
答えてもらえないことが、悪い状況を意味するわけではない
回答が得られないことを、事態が深刻だからだと受け止める方は少なくありません。しかし窓口の対応は、事件の見通しと連動しているものではありません。同じ内容の問い合わせであっても、庁や担当者、時期によって対応が変わることがあります。
段階ごとの問い合わせ先
| 段階 | 主な問い合わせ先 | 確かめられることがある事項 |
|---|---|---|
| 逮捕直後から送致まで | 本人が留置されている警察署 | 在所の有無、面会や差し入れの可否 |
| 送致後から処分まで | 事件が送られた地方検察庁 | 事件が受理されているか、担当の部署 |
| 起訴された後 | 裁判所の刑事訟廷係 | 期日の日時と法廷の場所 |
| 処分が出た後 | 処分をした検察庁 | 処分がされたという事実 |
検察庁の代表電話は取り次ぎの窓口です。代表番号にかけて、そこで結論が示されるわけではありません。各検察庁の連絡先は、検察庁のウェブサイトで公開されています。
どの段階にも共通するのは、家族という立場は、本人に関する事項を尋ねる側であって、知らせを受ける側ではないという点です。勾留されたことについては、弁護人がいないときに本人が指定した親族などへ通知される仕組みがありますが、その後の経過が家族に自動的に届くわけではありません。
問い合わせる前にそろえておく情報
- 本人の氏名と生年月日。
- 逮捕された日、または警察から連絡があった日。
- 取調べを受けた警察署の名前。
- 分かっていれば罪名。
- 検察庁に送られた時期の見当。
- 自分が本人とどのような関係にあるか。
これらは、事件を探してもらうための手がかりです。氏名と生年月日が分かれば事件を特定できることが多く、逆にここがそろっていないと、話が先に進みません。
聞く順序を決めておく
電話がつながっている時間は長くありません。「事件が受理されているか」「担当の部署はどこか」「面会や差し入れができるか」というように、事実の確認を先に置き、見通しに関する質問は後ろに回すと、答えられる範囲の回答を得やすくなります。
処分がどうなるかという質問は、その場で答えが返ってくる種類のものではありません。ここに時間を使いすぎると、確認できたはずの事実まで聞きそびれることになります。
弁護人がつくと情報の出方が変わる
弁護人として選任された弁護士は、手続の当事者として扱われます。弁護人選任届が捜査機関や裁判所に提出されると、担当検察官や事件番号は弁護人に伝えられ、以後の連絡もそこを通じて行われるようになります。
これは家族を締め出す仕組みではなく、手続上の地位が違うということです。家族が同じ内容を尋ねても答えが得られない一方で、弁護人からの照会には応じられる、という差はここから生じています。
家族に何がどこまで伝わるかは、入口で決めておく
弁護士に依頼した場合でも、その弁護士が守秘義務を負う相手は本人です。本人が家族への説明を望まないときには、家族に伝えられる内容が限られることがあります。
依頼の入口の段階で、家族にどこまで報告してもらえるのか、連絡はどの方法で受けるのかを確かめておくと、後から食い違いが生じにくくなります。
起訴された後に分かること
起訴されると、起訴状の謄本が本人に送達されます。ここには裁判所の事件番号や罪名が記載されているため、書面が届いた時点で事件の所在ははっきりします。略式の手続がとられた場合には、簡易裁判所からの書面が本人あてに届きます。
本人が身体を拘束されている場合、これらの書面は収容されている施設に届きます。自宅に届く郵便物だけを見ていても分からないことがある点には、注意しておいてください。
公判期日の調べ方
裁判所の建物には、その日に開かれる裁判の一覧が備え置かれています。事件名や被告人の名前、法廷の番号、審理の段階が書かれていますが、掲示されるのは当日の分に限られ、先の期日は載っていません。
先の期日を知りたいときは、事件が係属している裁判所の刑事訟廷係に問い合わせるという方法があります。被告人の氏名から期日を調べてもらえることがありますが、事件の内容に関する質問には答えてもらえません。裁判員裁判の対象となる事件については、期日の情報が裁判所のウェブサイトで公開されている地域もあります。
番号が分かると何ができるのか
- 連絡や書面を出すときに、事件を取り違えられずに済む。
- 弁護士に相談するとき、どの段階の話なのかを正確に伝えられる。
- 処分が出た後、不起訴の処分がされたことの告知を請求する手続につながる。
- 裁判が終わった後、記録の閲覧を求めるときの手がかりになる。
不起訴の処分がされたことを書面で示してもらう請求ができるのは、本人と弁護人です。裁判が確定した後の記録の閲覧については別の制度があり、対象や手続の扱いも異なります。
番号が分かってもできないこと
番号は事件を特定するための記号であって、鍵ではありません。番号が分かったからといって、捜査の内容や集められた証拠、処分の見通しを教えてもらえるようになるわけではありません。
また、家族が担当検察官に連絡を取ったこと自体が、処分の判断を動かすものでもありません。伝えたいことがあるときは、何を、どの立場で、どの時期に伝えるのかを整理してからのほうが、内容を受け止めてもらいやすくなります。
被害を受けた側の家族である場合
ここまでは、捜査を受けている本人の家族を想定してきました。被害を受けた側の家族である場合は、たどる道筋が変わります。
検察庁には、被害を受けた方などに対して、事件の処理結果、起訴された事実の要旨、加害者とされる人の身柄の状況、裁判の期日や結果などを知らせる通知の制度があります。希望を申し出ることが前提で、事件の性質などから知らせないほうがよいと検察官が判断した場合には、その全部または一部が知らされないことがあるとされています。担当の検察官や検察事務官、被害者支援の担当者に希望を伝えるのが窓口です。捜査の早い段階で申し出ておくと、その後の連絡が届きやすくなります。
よくある受け止め方
「番号さえ分かれば、中身も分かる」
番号は所在を示すもので、内容を開く鍵ではありません。中身に近づけるのは、手続上の地位を持つ人か、記録の閲覧が認められる場面に限られます。
「教えてくれないのは、隠しているからだ」
窓口の回答が限られるのは、名誉や捜査への配慮、守秘義務、本人確認の難しさが重なっているためです。個別の事件の中身とは切り離して考えたほうが、次の一手を決めやすくなります。
「担当検察官の名前が分かれば、直接話ができる」
名前が分かったとしても、家族からの連絡にどこまで応じるかは担当者の判断です。取り次いでもらえないことも、折り返しがないこともあります。名前を得ること自体を目的にせず、何を伝えたいのかを先に整理しておくことをおすすめします。
おわりに
刑事事件の番号と担当者は、手続の段階ごとに変わっていきます。家族が最初に確かめるとよいのは番号そのものではなく、事件がいまどの段階にあるのかという点です。段階が分かれば、問い合わせ先も、聞ける内容も自然に定まります。
- 番号は段階ごとに別のものが付き、起訴されると裁判所の番号が加わる。
- 検察庁の番号は被疑者一人につき一つで、移送や再起があると付け直される。
- 担当検察官が決まるのは事件が検察庁に送られた後で、途中で替わることもある。
- 家族への回答が限られるのは、名誉や捜査への配慮と守秘義務によるもの。
- 問い合わせの前に、氏名と生年月日、逮捕された日、警察署の名前をそろえておく。
- 弁護人が選任されると、担当検察官や事件番号は弁護人に伝えられる。
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