年齢を偽られていた|児童買春事件で年齢の不知はどこまで通るか
この記事は2026年9月時点の法令および公表されている資料にもとづいています。犯罪捜査規範については令和6年4月1日施行の改正後の条文によっています。取調べの所要時間や呼出しの回数は事件の内容によって幅があり、ここでの目安がそのまま当てはまるとは限りません。具体的な事案については、個別の事情を踏まえた検討が必要です。
「午前中に来てくださいと言われたのですが、半休で足りるでしょうか」。「1回で終わるものなら有給を1日使いますが、何度も続くなら職場への説明を考え直さなければなりません」。警察署や検察庁から呼出しを受けた方から、当事務所にはこうしたご相談が寄せられます。日程そのものより、当日どれだけ拘束されるのか、そして何回続くのかが分からないことに困っておられる、という共通点があります。
インターネット上には「日程は相談できる」という説明が数多くあります。その説明自体は誤りではありません。ただ、日を動かせたとしても、当日に何時間かかるのか、その日で終わるのかが分からなければ、有給の残り日数もシフトの組み方も決められません。日程の交渉ができることと、仕事の予定が立つことは、同じではないということです。
この記事では、出頭日が決まった後の時間の使われ方と、呼出しが複数回に及ぶ場合の組み立てを整理します。日程を相談してよい根拠や、連絡の仕方そのものについては警察からの呼出しの日程は調整できるのか|仕事との両立で扱っていますので、本記事はその先に絞ります。呼出しを受けた直後の対応は警察から呼び出しの電話が来た|任意同行・出頭要請への対応をご覧ください。
当日にどれだけ時間がかかるのか
時間の目安は「1日8時間」のところに置かれている
犯罪捜査規範168条3項は、取調べについて、やむを得ない理由がある場合のほか、深夜に、または長時間にわたり行うことを避けなければならないと定めています。そのうえで、午後10時から午前5時までの間に、または1日につき8時間を超えて被疑者の取調べを行うときは、警察本部長または警察署長の承認を受けなければならないとしています。
ここで注意しておきたいのは、この規定が上限を設けたものではなく、一定の時間帯や長さに及ぶ場合に組織としての承認を求める仕組みだという点です。8時間を超えることが禁じられているわけではありませんが、そこが一つの区切りとして意識されていることは、予定を組むうえでの手がかりになります。なお、この条項は被疑者の取調べを名宛てにしたものです。
時間を使うのは、質問に答えている場面だけではない
当日に時間がかかる理由は、聞かれる内容の多さだけではありません。手続としての段取りが積み重なるためです。
| 当日の場面 | 根拠・性質 | 時間の読みにくさ |
|---|---|---|
| 受付と待機 | 定めはない | 担当者の都合で前後する |
| 供述を拒める旨の告知 | 刑事訴訟法198条2項 | 短時間で終わる |
| 事情の聴取 | 任意の捜査 | 聞かれる範囲で大きく変わる |
| 供述調書への録取 | 同条3項 | 作成するかどうかで分かれる |
| 読み聞かせと増減変更の申立て | 同条4項 | 訂正のやり取りで延びる |
| 署名押印の求め | 同条5項 | 拒むこともできる |
刑事訴訟法198条4項は、調書を閲覧させ、または読み聞かせて誤りがないかを問い、増減変更の申立てがあったときはその供述を調書に記載しなければならないと定めています。同条5項は、誤りがないと申し立てたときに署名押印を求めることができるとしつつ、これを拒んだ場合はその限りでないとしています。つまり、書面ができてからの確認と訂正にも時間が割かれる建て付けになっています。作られる書面の種類については取調べで作られる書面は調書だけではない|供述書・上申書・捜査報告書の違いをご覧ください。
在宅では、当日の時間が書面に残らない
犯罪捜査規範182条の2は、逮捕または勾留により身柄を拘束されている被疑者などを取調べ室等で取り調べたときに、取調べを行った日ごとに取調べ状況報告書を作成しなければならないと定めています。裏を返すと、身柄を拘束されていない在宅の事件では、この書面が作成されません。
何時に入って何時に出たのかが公式の記録として残らない以上、後から時間の経過を確認する手がかりは、手元のメモや交通の記録に限られます。予定が読みにくい日ほど、入退出の時刻を自分で控えておく意味があります。録音や録画がどこまで行われるかは取調べの録音・録画はどこまで行われるのかで整理しています。
1回で終わるとは限らない
回数を定めた規定はない
取調べを何回行うかについて、回数を定めた規定はありません。身柄を拘束されている事件には期間の上限がありますが、在宅のまま進む事件にはそうした制限が置かれていないため、警察の段階だけで複数回になることもあります。全体の時間の流れは在宅事件になった場合|見えない時間の進み方をご覧ください。
加えて、警察の捜査が一区切りついた後は、呼出しをする側が検察庁に移ります。書類が送られた後に検察官から改めて出頭を求められる流れになるため、警察署での回数と検察庁での回数は別に数えることになります。送致後の進み方は書類送検されてから処分が決まるまでの期間、検察庁での位置づけは検察庁からの呼び出しで何が決まるのかで説明しています。
同じ日に、取調べ以外のことを求められる場合
出頭した日に、聴取以外の求めが重なることがあります。現場への同行を求められる場合や、所持している物の提出を求められる場合です。任意に提出された物は捜査機関が領置することができます(刑事訴訟法221条)。
いずれも応じるかどうかを判断する場面であり、応じれば移動や立会いの分だけ時間が延びます。午後の予定を入れていると、その場で判断を急ぐことになりかねません。
参考人として呼ばれている場合
被疑者以外の方に対する出頭の求めは刑事訴訟法223条1項が根拠で、同条2項により198条1項ただし書などが準用されます。出頭を拒めるという建て付けは同じですが、先に触れた犯罪捜査規範168条3項は被疑者の取調べを対象とした規定です。
また、捜査に欠くことのできない知識を有すると明らかに認められる方が出頭または供述を拒んだ場合には、第1回の公判期日前に限り、検察官が裁判官に証人尋問を請求できるとされています(同法226条)。参考人としての立場が途中で変わる場面については『参考人』として呼ばれた|被疑者に切り替わる瞬間をご覧ください。
仕事の側をどう組み立てるか
年次有給休暇は、理由を説明して取るものではない
年次有給休暇は、労働基準法39条の要件を満たすことで労働者に生じる権利です。最高裁も、年次休暇の利用目的は労働基準法の関知しないところであり、休暇をどのように利用するかは使用者の干渉を許さない労働者の自由である、としています(最高裁昭和48年3月2日判決)。
したがって、出頭のためだと申告しなければ休暇が取れない、という関係にはありません。ただし、請求された時季に与えることが事業の正常な運営を妨げる場合には、使用者が他の時季に与えることができるとされています(同法39条5項ただし書)。日を動かされる可能性は残るということです。勤務先に事情が伝わる経路そのものは勤務先に伝わる経路|通知制度と事実上の伝達を分けるで扱っています。
半休や中抜けを前提にしない
午前の指定であっても、調書の作成まで進めば午後に食い込むことがあります。途中で切り上げる必要が生じると、確認の途中で判断を迫られる場面も出てきます。半日から1日の単位で空けておくほうが扱いやすくなります。
そのうえで、当日のうちに次の見込みを尋ねておくと、後の予定が立てやすくなります。次があるのかどうか、あるとしてどのくらい先かが分かるだけでも、休暇の配分は考えやすくなります。
繁忙期やシフト勤務の場合
時季変更権が働きやすい時期と、捜査側の都合が重なると、調整の幅は狭くなります。候補日を1つだけ示すと折り合いがつかず、やり取りが長引くことがあります。幅を持たせて示すほうが、結果として早く決まる傾向があります。
出頭日の前後で押さえておきたいこと
当日の時間と回数を見通すために、次の点を意識しておくと扱いやすくなります。
- 警察署または検察庁に入った時刻と出た時刻を、自分で控えておく。
- その日の終わりに、次の呼出しの見込みがあるかどうかを尋ねる。
- 調書を作る場合は、読み聞かせを最後まで聞き、違う部分はその場で申し立てる(刑事訴訟法198条4項)。
- 勤務先に伝える範囲を先に決めておき、そこから広げない。
- 移動時間と交通費を含めて、1回あたりの負担を把握しておく。
黙秘をどう考えるかは黙秘したほうがよいのか|黙秘の効果とリスクの整理、弁護人の立会いについては取調べに弁護人は立ち会えるのかで整理しています。
よくあるご質問
午前中と言われました。半休で足りますか
足りることもありますが、見込みにくいところです。事情を聞く時間そのものが延びる場合もあれば、調書を作成する段階に進んで時間がかかる場合もあります。午後に外せない予定があるなら、その旨をあらかじめ伝えておくと、当日の進め方の相談がしやすくなります。とはいえ、希望どおりに終わると決まっているわけではないため、余裕を見ておくほうが安全です。
あと何回呼ばれるのか、先に教えてもらえますか
捜査の見通しにかかわる部分であり、確定した回数を示してもらえるとは限りません。ただ、その日の聴取が一区切りなのか、続きがある前提なのかを尋ねること自体は自然な問いかけです。回答が得られない場合でも、警察の段階と検察庁の段階が別にあることを前提に、複数回を織り込んで予定を組んでおくと、後から慌てずに済みます。
仕事があるので短時間で終えてほしいと伝えてよいですか
伝えること自体に差し支えはありません。もっとも、どこまでの範囲を聞くかは捜査側の判断によるため、希望が通るとは限りません。時間を気にするあまり、確認しないまま署名押印に進んでしまうと、後で説明が食い違ったときに扱いが難しくなります。時間の都合と、内容の確認のどちらを優先するかは、あらかじめ決めておくことをおすすめします。供述が変わることの評価については供述が途中で変わると不利になる理由|変遷の評価をご覧ください。
まとめ
- 取調べは、やむを得ない理由がある場合のほか、深夜または長時間にわたることを避けるものとされ、午後10時から午前5時までの間、または1日8時間を超えて被疑者の取調べを行うときは警察本部長または警察署長の承認を要する(犯罪捜査規範168条3項)。
- 当日の時間は聴取だけでなく、調書の録取、読み聞かせと増減変更の申立て、署名押印の求めにも割かれる(刑事訴訟法198条3項から5項)。
- 署名押印は求められるものであり、拒んだ場合はこの限りでないとされている(同条5項ただし書)。
- 取調べ状況報告書は身柄を拘束された被疑者等を対象としており(犯罪捜査規範182条の2)、在宅の事件では当日の時間が書面に残らない。
- 取調べの回数を定めた規定はなく、警察の段階の後に検察庁からの呼出しが別に生じる。
- 出頭した日に、現場への同行や物の任意提出(刑事訴訟法221条)を求められて時間が延びることがある。
- 参考人への出頭の求めは同法223条1項が根拠で、同条2項により198条1項ただし書が準用される。
- 年次有給休暇の利用目的は労働基準法の関知しないところとされる一方(最高裁昭和48年3月2日判決)、時季変更権の行使はあり得る(同法39条5項ただし書)。
出頭の求めに応じないまま時間が過ぎた場合に何が起きるかは逃亡・不出頭に対する罰則|出頭しなかった場合に起きること、どの段階で弁護人を入れるかは弁護人を頼むタイミング|捜査段階で差がつく理由で説明しています。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、刑事事件に関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。警察署や検察庁から呼出しを受け、仕事との両立に悩んでおられる方について、当日にかかる時間の見込みや、次の呼出しまでの間に整理しておくべきことを、事案に即してご説明します。
すでに出頭日が決まっている場合でも、当日までにできる準備は残っています。日程の伝え方だけでなく、その後の予定の組み立てを含めて検討できますので、まずはお気軽にお問い合わせください。


