略式命令が届いた|罰金の納付と正式裁判の申立て

若井亮

若井亮

テーマ:刑事事件

簡易裁判所から「略式命令」と書かれた書面が届くと、罰金の額と条文が並んでいるだけで、何をいつまでにすればよいのかがつかみにくいものです。書面の終わりの方には、告知を受けた日から14日以内に正式裁判を請求できる旨が書かれています。この14日は、罰金を用意するための期間ではなく、このまま納付して終えるか、それとも公開の法廷で審理を求めるかを決めるための期間です。

 この記事では、略式命令を受け取ったあとに何が起きるのかを、罰金を納付して手続を終える場合と、正式裁判を請求する場合に分けて整理します。あわせて、納付の方法、期限までに用意できないときの連絡先、納付しないまま時間が経った場合に進む手続についても触れます。

 なお、ここで扱うのは、すでに略式命令を受け取ったあとの流れです。検察官から略式手続について説明を受け、同意するかどうかを確かめられる段階の話や、罰金の金額の見通しは扱いません。金額や手続の進み方は事件の記録によって変わるため、具体的な見通しは記録を前提に検討することになります。

まず、届いた書面が何かを確かめる

 略式命令は、簡易裁判所が公判を開かずに、書面の審理だけで罰金または科料を科す裁判です。刑事訴訟法461条は、簡易裁判所が検察官の請求により、公判前に略式命令で100万円以下の罰金または科料を科すことができると定めています。刑の執行猶予や没収など、付随する処分をあわせて行うこともできます。

 受け取り方には二つの形があります。一つは、簡易裁判所から略式命令の謄本が郵送されてくる形です。もう一つは、検察庁で手続をしたその日のうちに略式命令が出され、その場で告知を受ける形で、実務では在庁略式などと呼ばれています。在宅のまま捜査が進んでいた事件では、前者のように書面が自宅に届くことが多くなります。

 このとき、封筒の中に略式命令だけが入っている場合と、罰金の納付書があとから検察庁から届く場合があります。略式命令と納付書は別の書面で、出どころも裁判所と検察庁で異なります。届いた書面がどちらなのかは、発行元の記載で確かめられます。

略式命令に書かれていること

 略式命令に記載する事項は、刑事訴訟法464条に定められています。手元の書面と照らし合わせながら読むと、次のような構成になっています。

記載されている事項書面での見え方
罪となるべき事実いつ、どこで、どのような行為をしたとされているかが特定して書かれています
適用した法令どの法律の何条を適用したのかが書かれています
科すべき刑罰金または科料の金額が書かれています
完納できないときの留置期間罰金を納められない場合に、何円を1日として労役場に留置するかが書かれています
附随の処分没収や仮納付など、あわせて行う処分があるときに書かれています
正式裁判の請求ができる旨告知を受けた日から14日以内に請求できることが書かれています


 このうち「完納できないときの留置期間」は、刑法18条4項が、罰金の言渡しと同時に、完納できない場合の留置期間を定めて言い渡さなければならないとしていることによるものです。罰金を納めないと当然にこの期間だけ留置されるという意味ではなく、納められなかった場合の換算をあらかじめ示しておくという趣旨の記載です。

 もう一つ確かめておきたいのが、罪となるべき事実として書かれている内容が、自分が説明してきた事実と食い違っていないかという点です。日付や場所、行為の内容が想定と違う場合、そこが後の判断の出発点になります。

受け取ったあとの道は二つに分かれる

 略式命令を受け取った人が選べるのは、罰金を納付して手続を終えるか、正式裁判を請求するかの二つです。検察庁も、略式命令を受けた人は罰金または科料を納付して手続を終わらせるか、不服がある場合には受け取ってから14日以内に正式裁判を申し立てることができる、と説明しています。

比べる点罰金を納付する場合正式裁判を請求する場合
どこに対して行うか検察庁の徴収の担当窓口略式命令をした簡易裁判所に書面を提出
期限確定後に通知される納付期限告知を受けた日から14日以内
公開の法廷開かれません通常の公判手続で審理されます
刑の内容略式命令に書かれたとおり裁判所は略式命令に拘束されません
終わるまでの期間短く終わります期日を重ねるため長くなります


 どちらを選ぶかは、書かれている事実そのものを争うのか、事実は争わないが手続の負担を避けたいのかによって変わります。事実に争いがない場合、正式裁判を請求しても結論の枠組みが大きく変わるとは限りません。

14日という期間の数え方

 刑事訴訟法465条1項は、略式命令を受けた者または検察官は、その告知を受けた日から14日以内に正式裁判の請求ができると定めています。起算点は、書面が発せられた日ではなく、告知を受けた日、つまり書面を受け取った日です。

 期間の計算については、刑事訴訟法55条1項が初日を算入しないと定めています。また同条3項は、期間の末日が日曜日、土曜日、国民の祝日、1月2日、1月3日、12月29日から31日までに当たるときは、その日を期間に算入しないとしています。数え方を誤ると一日の差で期限を過ぎることがあるため、受け取った日を書面の控えに記録しておくと確認しやすくなります。

 なお、転居などで書面を受け取れていない場合、告知がされていないため期間は進みません。ただし、受け取らないことで手続が終わるわけではありません。刑事訴訟法463条の2は、請求があった日から4か月以内に略式命令が告知されないときは公訴の提起がさかのぼって効力を失うと定めていますが、これは告知ができない状態が続いた場合の処理を定めた規定であり、連絡がつかないままにしておけば済むという趣旨のものではありません。住所の変更などで書面が届いていないことに心当たりがあるときは、記載された連絡先に確認しておくほうが手続は整理しやすくなります。

「もう払った」と「納付が終わった」は別のことがある

 略式命令を受けたその場で金銭を納めることがありますが、これは仮納付と呼ばれる扱いであることがあります。刑事訴訟法348条は、罰金などを言い渡す場合に、判決の確定を待っては執行できないおそれなどがあると認めるときは、仮に相当額を納付すべきことを命じることができるとしており、この裁判は直ちに執行することができるとされています。在庁略式では、その日のうちに仮納付まで済ませる形がとられることがあります。

 一方、略式命令そのものは、正式裁判の請求期間が経過したときなどに確定判決と同一の効力を生じます(刑事訴訟法470条)。つまり、納めた時点ではまだ確定していないという状態があり得るということです。すでに納めたのに検察庁から書面が届いた、という状況が生じるのはこのためです。自分の納付が仮納付だったのか確定後の納付だったのかが分からないときは、納付の際に受け取った書面と検察庁からの通知を並べて確認することになります。

罰金の納め方

 検察庁の説明によると、罰金は、検察庁が指定する方法で検察庁指定の金融機関に納めるか、検察庁に直接納めることになります。詳細は、通知をした検察庁の徴収事務担当者に確認することとされています。

 納付先は事件を扱った検察庁であり、裁判所ではありません。通知に記載された納付期限と納付先を取り違えると、納めたつもりで未納のままになることがあります。納付が済んだら、領収の記載がある書面を残しておくと、後日の確認に使えます。

期限までに用意できないとき

 罰金は刑罰であるため、定められた期間内に一括して納付するのが原則とされています。検察庁も、分割で納付することはできるかという質問に対し、定められた期間内に一括して納付しなければならないと説明したうえで、定められた期間内に納付できないときは、納付の通知をしている検察庁の徴収事務担当者に尋ねてほしいとしています。

 実務上は、事情を説明したうえで納付の時期について相談が行われることがあります。ただし、分割や猶予が権利として認められている制度ではないため、申し出れば通るというものではありません。連絡をしないまま期限を過ぎてしまう状態を避けることが出発点になります。用意が難しいと分かった時点で、通知に記載された連絡先に本人から連絡しておくことになります。

納付しないまま放置するとどうなるか

 検察庁は、罰金などの徴収金を任意に納付しない場合は財産に対し強制執行を行い、罰金・科料を納付せず、強制執行をすべき財産がない場合に労役場に留置されると説明しています。納付しないと直ちに身体を拘束されるという順序ではなく、まず財産に対する手続が想定されているという点は、押さえておきたいところです。

 この強制執行の根拠は刑事訴訟法490条にあります。同条は、罰金などの裁判は検察官の命令によって執行し、この命令は執行力のある債務名義と同一の効力を有するとしたうえで、その執行は民事執行法その他強制執行の手続に関する法令の規定に従うと定めています。

 労役場留置については、刑法18条1項が、罰金を完納することができない者を1日以上2年以下の期間、労役場に留置すると定めています。検察庁の説明では、現在は多くの裁判で1日の留置を罰金5,000円相当と換算しており、最長の期間は2年間とされています。

 あわせて知っておきたい定めが二つあります。一つは刑法18条5項で、罰金については裁判が確定した後30日以内は、本人の承諾がなければ留置の執行をすることができないとされています。もう一つは同条6項で、一部を納付した場合の留置日数は残額を基準に計算されます。全額をそろえられない場合でも、納めた分は日数の計算に反映されるという構造です。

正式裁判を請求するとどうなるか

 正式裁判の請求は、略式命令をした簡易裁判所に対し、書面で行います(刑事訴訟法465条2項)。請求があると、事件は通常の手続に戻り、公開の法廷で審理されます。判決があったときは、略式命令は効力を失います(刑事訴訟法469条)。

 ここで確認しておきたいのが、正式裁判では裁判所が略式命令の内容に拘束されないという点です。刑事訴訟法468条3項がそのように定めており、事実の認定、法令の適用、刑の量定のいずれについても改めて判断されます。控訴について定められている不利益変更の禁止(刑事訴訟法402条)の規定は、略式命令に対する正式裁判の請求には及ばないと解されており、略式命令より重い刑が言い渡される可能性が残ります。逆に、審理の結果として異なる結論に至る可能性もあります。

 手続の公正さを確保する仕組みも置かれています。略式命令をした裁判官は、その事件の正式裁判に関与できないとされています。また、正式裁判の請求は、被告人の明示した意思に反しない限り、弁護人も行うことができるとされています。

 請求は、第一審の判決があるまで取り下げることができます(刑事訴訟法466条)。ただし、いったん取り下げると、同じ事件について改めて正式裁判を請求することはできないと解されています。取下げは戻せない判断であるため、請求する時点と取り下げる時点の双方で検討が要ります。なお、簡易裁判所の判決に不服がある場合には、その判決に対して控訴を申し立てる道があります。

14日が過ぎたあと

 正式裁判の請求期間が経過したとき、請求を取り下げたとき、請求を棄却する裁判が確定したときは、略式命令は確定判決と同一の効力を生じます(刑事訴訟法470条)。確定した後は、書かれている事実や刑の重さを争う手段は、再審など限られたものになります。

 期間の経過は、納付を済ませたかどうかとは別に進みます。罰金を納めていないから確定していない、ということにはなりません。書面を受け取った日を起点に、まず期限を確認しておくことになります。

罰金を納めたあとに残るもの

 略式命令による罰金も有罪の裁判ですので、前科として記録に残ります。刑法34条の2は、罰金以下の刑については、その執行を終わった日などから罰金以上の刑に処せられないで5年を経過したときに刑の言渡しが効力を失うとしています。記録上の扱いが直ちになくなるわけではありませんが、期間の経過によって法律上の効果が変わる仕組みになっています。

 いわゆる資格制限については、拘禁刑以上を基準にする定めが多く、罰金がその基準に当たらない場合があります。一方で、罰金を含めて確認の対象とする仕組みも分野ごとに設けられています。職業や資格ごとに設計が異なるため、関係する法令の定めを個別に確認することになります。

 なお、出国については、拘禁刑以上の刑が言い渡された場合に裁判所の許可を要するという定めがありますが、罰金はその対象とはされていません。また、罰金の言渡しに執行猶予が付される余地も制度上はあり、刑法25条1項は50万円以下の罰金の言渡しについて執行猶予をつけうるとしています。

書面が届いたら確認しておきたいこと

 受け取った直後に確かめておくと、その後の判断がしやすくなります。

・封筒に押された日付と、実際に受け取った日を控えておく
・書面の発行元が裁判所か検察庁かを確認する
・罪となるべき事実として書かれている内容が、自分の記憶や説明と食い違っていないか読む
・科すべき刑の金額と、完納できない場合の換算額を確認する
・正式裁判の請求期限が具体的に何月何日になるかを数えておく
・納付書が同封されているか、別に届く予定なのかを確認する

弁護士に確認できること

 判断に迷う場面では、次のような点を整理する形で相談できます。

・書かれている事実と、これまで説明してきた内容との食い違いの有無
・正式裁判を請求した場合に想定される審理の流れと期間
・請求することで生じ得る不利益と、争う場合の材料が手元にあるか
・期限までに納付できない見込みであるときの検察庁への連絡の仕方
・すでに納めた金銭が仮納付なのか確定後の納付なのか
・罰金が確定した場合に、仕事や資格の関係で確認しておくべき定め

まとめ

 略式命令が届いた時点で決めることは、多くありません。

・略式命令は公判を開かずに罰金または科料を科す裁判で、上限は100万円と定められている
・受け取った後の道は、納付して終えるか、14日以内に正式裁判を請求するかの二つである
・14日は告知を受けた日から数え、初日は算入せず、末日が休日等に当たるときは算入しない
・その場で納めた金銭が仮納付であることがあり、納付と確定は別に進む
・罰金は検察庁に納めるもので、一括が原則とされ、難しいときは徴収事務担当者に連絡する
・納付しない場合はまず財産に対する強制執行が行われ、労役場留置はその先に置かれている
・正式裁判では裁判所は略式命令に拘束されず、結論が軽くなるとは限らない

 書面に書かれた期限は、争うかどうかを決めるための時間として設けられたものです。判断がつかないまま日が過ぎると、選べる選択肢そのものが減っていきます。手元の書面を持って、早い段階で内容を整理しておくことが、その後の対応の幅につながります。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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