所持していないのに立件された|使用のみで問われる場合
警察での取調べが一区切りし、「事件は検察庁に送ります」と告げられたあと、何の連絡もないまま日が過ぎていく。書類送検の後に、そうした時間を過ごしている方は少なくありません。
調べてみると「法律上の期限はない」という説明が並びます。それ自体は正しいのですが、それだけでは、いま自分がどのあたりにいるのかは分かりません。連絡がないことが、手続が止まっているのか、進んでいるのに見えていないだけなのかも判断できません。
この記事では、書類送検から処分が決まるまでの時間を、1本の長い待ち時間としてではなく、順に進んでいくいくつかの区間に分けて整理します。逮捕されずに手続が進んでいる方とそのご家族に向けた内容で、事件の内容や、事実を認めているかどうかは問いません。
「書類送検」で何が引き継がれたのか
刑事訴訟法246条本文は、司法警察員が犯罪の捜査をしたときは、原則として書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならないと定めています。例外は限られており、警察が捜査した事件は原則としてすべて検察官に送られます。このうち、身体を拘束されていない方の事件について、書類と証拠物だけが送られるものが、報道などで「書類送検」と呼ばれています。法律上の言葉ではありません。
そして、起訴するかどうかを決める権限は検察官にあります(法247条)。書類送検は、その判断をする人のところに材料が届いた、という段階です。処分が決まったわけでも、警察の見立てが結論になったわけでもありません。
送致書には警察の「意見」が付いている
犯罪捜査規範195条は、事件を送致するにあたり、犯罪の事実及び情状等に関する意見を付した送致書を作成し、関係書類及び証拠物を添付すると定めています。この意見の結論部分は、実務では「厳重処分」「相当処分」「寛大処分」「しかるべき処分」といった言い回しで書かれてきました。順に、起訴を求める、判断を検察官に委ねる、起訴猶予が相当と考える、起訴は難しいと考える、といった意味合いで用いられます。
もっとも、この4つの言い方は運用上の慣行であって、規範が定めているものではありません。検察官がこの意見に拘束されることもありません。警察の見立てを伝える参考資料という位置づけです。
送検された日は本人に知らされないことが多い
送致したことを本人に通知する定めはありません。取調べの終わりに「これから検察庁に送ります」と説明を受けることはあっても、実際に送られた日を知らされないまま、検察庁からの連絡で初めて分かる、という流れが一般的です。この時点ですでに、本人が把握できる情報と手続の進み具合との間にずれが生じています。
なぜ「いつまでに決まる」という決まりがないのか
逮捕された事件では、48時間、24時間、10日間といった時間が法律に書かれています(法203条1項、205条1項、208条)。ただしこれらは、身体の拘束をいつまで続けてよいかという上限であって、捜査を終える期限ではありません。逮捕されずに進む事件には、その前提となる身体の拘束がないため、対応する上限も置かれていないという構造です。
外側の枠として働くのは公訴時効です。公訴時効は犯罪行為が終わった時から進行し(法253条1項)、その期間は罪名ごとに異なります。つまり、処分までの期間は「時効までのどこか」という、かなり幅のある枠の中に置かれていることになります。
送検後に進む区間を分けて見る
処分が決まるまでの時間は、次のような区間に分かれています。連絡がない期間も、このどこかにいると考えると整理しやすくなります。
| 区間 | そこで行われること | 本人から見えるか |
|---|---|---|
| 検察庁での受理 | 送られた記録が受理され、担当する検察官が決まる | 見えない |
| 記録の検討 | 送致書と証拠を読み、足りない点がないかを確かめる | 見えない |
| 補充捜査 | 検察官が自ら調べ、または警察に指示して調べ直す | 一部だけ見える |
| 本人の取調べ | 検察庁に呼び出され、検察官の取調べを受ける | 見える |
| 終局処分の決定 | 起訴、略式命令請求、不起訴などを決める | 見えない |
| 処分の伝達 | 処分の種類に応じた形で本人に伝わる | 見える |
検察官は、送られた記録を検討したうえで、必要に応じて自ら捜査を行い、また司法警察職員に対して指示や指揮をすることができます(法193条)。待たされていると感じる時間の多くは、この表の「見えない」区間に当たります。連絡がないことは、必ずしも何も動いていないことを意味しません。
期間が長くなりやすい事情
同じような事件でも、次のような事情があると、処分までの時間は長くなりやすい傾向があります。
- 共犯者がいて、関係する人の捜査がそろうのを待つ必要がある場合。
- 余罪が見つかり、その捜査の結果を待つ場合。
- 鑑定や資料の分析に時間がかかる場合。
- 被害者側の意向を確かめる必要がある場合。
- 事件が別の検察庁に移される場合。
- 身体を拘束されている事件の処理が先に進められる場合。
犯罪捜査規範194条は、少年事件の特則がある場合を除き、関連する事件は原則として一括して送致又は送付するものと定めています。共犯者がいる事件で時間がかかりやすいのは、この扱いとも関係しています。
送検された後も警察の捜査が続くことがある
見落とされやすい点ですが、書類送検は「警察の捜査がすべて終わった」という区切りではありません。犯罪捜査規範196条は、警察官は事件の送致後においても常にその事件に注意し、新たな証拠の収集及び参考となるべき事項の発見に努めなければならないとし、新たな証拠物その他の資料を入手したときは速やかに追送しなければならないと定めています。
さらに同197条は、送致後にその被疑者について余罪があることを発見したときは、検察官に連絡するとともに速やかに捜査を行い、追送致しなければならないとしています。送検後に警察から連絡が入ることがあるのは、こうした仕組みがあるためです。
処分の種類によって「決まった」と分かる時期が違う
処分が決まった日と、本人がそれを知る日は同じではありません。分かり方は、処分の種類によって次のように異なります。
公判請求されたとき
公開の法廷で裁判が開かれる場合、裁判所から起訴状の謄本が送達されます(法271条1項)。あわせて、出頭すべき期日の召喚状が届きます。書面が届くことで、はっきりと分かる形になります。
略式命令が請求されるとき
罰金や科料を書面審理で科す略式手続では、検察官は請求に先立って被疑者に必要な事項を説明し、通常の裁判を受けることができる旨を告げたうえで、略式手続によることに異議がないかどうかを確かめることとされています(法461条の2)。そのため、この段階で検察官から説明を受けることになります。
不起訴になったとき
検察官は、公訴を提起しない処分をした場合、被疑者の請求があるときに速やかにその旨を告げるとされています(法259条)。請求をしなければ通知は届きません。連絡がないまま実は終わっていた、ということが起こり得るのはこのためです。処分が確定した後であれば、不起訴処分告知書の交付を求めることができます。
なお不起訴は、裁判で無罪が確定した場合と同じ効力を持つものではありません。新たな証拠が現れれば、改めて捜査や起訴の対象となる余地は残ります。実際にそうなる例は多くありませんが、性質としては別のものだと理解しておくとよいでしょう。
20歳未満の場合は流れが変わる
20歳未満の方の事件は、原則としてすべて家庭裁判所に送られます(少年法41条、42条)。この場合、検察官が起訴か不起訴かを決めるのではなく、家庭裁判所の調査と審判に進みます。呼び出しの主体も、その後の手続も異なるため、成人の事件と同じ時間感覚では考えられません。
待っている間にできること
結果を早める方法があるわけではありませんが、この時期にしておける準備はあります。
- 電話や郵便を受け取れる状態を保っておく。呼出しに気づかないまま時間が経つと、対応が難しくなります。
- 呼出しを受けた日程の都合が悪いときは、その旨を申し出る。平日の日中が中心になりますが、調整に応じてもらえることはあります。
- 被害者がいる事件では、被害の弁償や示談の話を進める余地があるかを検討する。
- 検察官に伝えたい事情がある場合、意見書や資料の形で提出することを検討する。
- 検察庁に問い合わせても、見通しまでは説明されないことがあると理解しておく。
なお、逮捕・勾留されていない方は、出頭を拒み、また出頭後にいつでも退去することができるとされています(法198条1項ただし書)。もっとも、呼出しに応じない状態が続けば、身体を拘束する必要があるという評価につながることもあります。断ること自体は可能でも、その先の見通しは別に考える必要があります。
よくある受け止め方と実際のずれ
「半年連絡がないから、もう終わったのだろう」
連絡がないことは、終わったことの証明にはなりません。不起訴は請求しなければ告知されず、一方で、補充捜査に時間がかかっているだけということもあります。確かめたい場合は、事件を担当している検察庁に問い合わせるという方法があります。
「書類送検で済んだのだから、処分は軽いはずだ」
逮捕されるかどうかは、逃亡や証拠隠滅のおそれといった観点から判断されるもので、罪の重さの評価そのものではありません。逮捕されなかった事件でも、起訴されることはあります。
「一度呼び出されて終わったから、もう決まった」
検察官の取調べを受けたことと、処分が決まったことは別です。1回で終わることもあれば、その後に補充捜査が入り、改めて呼び出されることもあります。
まとめ
- 書類送検は法律上の言葉ではなく、身体を拘束せずに事件を検察官に送ることを指す(法246条本文)。
- 送致書には警察の処分に関する意見が付くが、検察官はこれに拘束されない(犯罪捜査規範195条)。
- 逮捕された事件の時間制限は身体拘束の上限であり、在宅の事件には対応する期限が置かれていない。
- 処分までの時間は、受理・記録の検討・補充捜査・取調べ・処分の決定・処分の伝達という区間に分かれている。
- 送致後も警察は新たな資料の追送や余罪の追送致を行うことがある(同196条、197条)。
- 処分が決まった日と本人が知る日はずれることがあり、不起訴は請求しなければ告知されない(法259条)。
連絡を待っている時間は長く感じられ、見通しが立たないこと自体が負担になります。手続のどこにいるのかを確かめたい、この期間にできることを整理したいという場合は、弁護士にご相談ください。
当事務所では、初回のご相談を無料でお受けしており、24時間体制でご相談の受付を行っています。ご本人からでも、ご家族からでもかまいません。


