未成年の被害者と示談する|親権者の同意と書面の当事者
警察での事情聴取から数か月が過ぎたころ、検察庁から電話や書面で出頭を求められることがあります。このとき多くの方が最初に思うのは、「この日に起訴か不起訴かが決まってしまうのか」という不安ではないでしょうか。
実際には、呼び出しの日に決まるものと、その日には決まらないものがあります。この二つを分けずに考えると、当日に何を気をつければよいのかが見えにくくなります。
この記事では、検察庁からの呼び出しがどの規定に基づくものなのか、当日その場で形になるものは何か、処分はどこで決まるのかを、条文と公的な説明に沿って整理します。呼び出しまでの期間や回数の目安ではなく、当日に起きることの中身に絞って説明します。
この記事で扱う範囲
検察庁からの呼び出しといっても、置かれている状況によって意味が変わります。ここでは次の範囲を前提にしています。
- 身体の拘束を受けずに、在宅のまま捜査が進んでいる場面を前提にしています。
- 逮捕や勾留をされている場合は、時間の区切り方が異なります。
- 事実を認めている場合も、認めていない場合も対象にしています。
- 出頭を避ける方法や、事実を伏せるための受け答えは扱いません。
- 成人の事件を前提にしており、少年事件は手続の流れが異なります。
呼び出しには根拠の違う三つの場面がある
検察庁からの呼び出しは、ひとまとまりの手続のように見えます。しかし、法律上の根拠は同じではありません。どの規定に基づく呼び出しなのかによって、その日の中心になる作業が変わります。
| 呼ばれ方 | 根拠となる規定 | その日の中心になること |
|---|---|---|
| 被疑者として取調べを受ける | 刑事訴訟法198条1項 | 事件についての説明と供述調書の作成 |
| 被疑者以外の立場で話を聞かれる | 同法223条1項 | 見聞きした事実の確認と調書の作成 |
| 略式手続などの説明を受ける | 同法461条の2、350条の16 | 手続の説明と、同意するかどうかの確認 |
一度の呼び出しの中で、取調べと手続の説明が続けて行われることもあります。自分がどの場面にいるのかは、聞かれている内容と、示された書面の表題から見当をつけることになります。
電話で呼ばれても書面で呼ばれても扱いは変わらない
出頭の求め方について、方式を定めた規定は置かれていません。電話で日時を伝えられることもあれば、呼出状と呼ばれる書面が郵送されることもありますが、求められていることに違いはありません。連絡をしてくるのが検察事務官である場合もあり、これは検察事務官が検察官の指揮を受けて捜査を行うと定められているためです(同法191条2項)。
日時と場所、担当者の名前、持参を求められた物は、その場で書き留めておくと、後の確認がしやすくなります。
呼び出しの日に決まること
その日に固まるのは処分そのものではなく、処分を判断するための記録です。何が記録として残るかは、当日の受け答えでおおむね決まります。
供述調書に何が残るか
話した内容は供述調書にまとめられます。調書は閲覧させられるか読み聞かせられ、誤りがないかを尋ねられ、増減変更の申立てをしたときは、その供述が調書に記載されることになっています(同法198条3項から5項)。誤りがない旨を申し立てたときに署名押印を求められますが、これを拒むこともできるとされています。
記憶にない部分を「たぶんそうだと思います」と受け入れると、その表現がそのまま記録になります。分からないことは分からないまま伝えるほうが、後から説明を補うときに食い違いが生じにくくなります。
同意するかどうかの確認
罰金や科料が相当と判断された場合、公開の法廷を開かずに書面で審理する略式手続が用いられることがあります。この請求に先立って、検察官は手続の内容を説明し、通常の規定に従い裁判を受けられる旨を告げて、異議がないかどうかを確かめます。異議がないときは、その旨を書面で明らかにすることとされています(同法461条の2)。
一定の事件では、即決裁判手続の申立てについて同意を求められることもあります。この同意の確認は書面で行うこととされ、弁護人がいる場合には弁護人の同意か意見の留保も必要とされています(同法350条の16)。
いずれも取調べとは性質の異なる手続です。事件について話す場面ではなく、手続の進め方を選ぶ場面であり、署名した時点で進み方が決まります。
- 示された書面の表題と、何についての書面かを確かめる。
- その場で署名を求められているものかどうかを尋ねる。
- 同意しなかった場合にどうなるのかを聞いておく。
- 判断がつかないときは、即答が難しい旨を伝えて時間をもらえないか尋ねる。
次に何をするかの段取り
追加で確認したいことがある場合や、資料の提出を求められる場合には、その日のうちに次の予定が示されます。提出の期限と連絡先を控えておくと、後になって連絡が取れずに困る事態を避けやすくなります。
呼び出しの日には決まらないこと
法務省は、検察官が行う事件の処理には終局処分と中間処分があると説明しています。終局処分は、必要な捜査を遂げた後に公訴を提起するかどうかを最終的に決める処分をいい、中間処分は、将来の終局処分を予想して、その前に行う暫定的な処分をいうとされています。
| 処理の呼び名 | 内容 | 本人に見える形 |
|---|---|---|
| 公判請求 | 公開の法廷での審理を求める起訴 | 裁判所から起訴状の謄本が届く |
| 略式命令請求 | 書面審理で罰金や科料を科す手続の請求 | 同意の確認と、後日届く略式命令 |
| 不起訴 | 公訴を提起しない処分 | 請求があったときに告げられる |
| 中間処分 | 終局処分の前に行われる暫定的な処分 | その日には結論が示されない |
呼び出しの日は、終局処分の材料がそろう日であって、処分が確定する日とは限りません。取調べの最後に見通しを伝えられることはありますが、それは処分そのものとは別のものです。
担当検察官の言葉は庁の決定と同じではない
検察官は一人ひとりが独立して職務を行う立場にあります。もっとも検察庁法は、検事総長や検事長、検事正が検察官を指揮監督し、指揮監督する検察官の事務を自ら取り扱い、又は他の検察官に取り扱わせることができると定めています(検察庁法7条1項、9条2項、12条)。実務では、事件の処理は上席の検察官の決裁を経て確定するのが一般的とされています。
このことは、どちらの向きにも働きます。「不起訴になると思う」と言われても、それだけで確定したことにはなりません。反対に、厳しい見通しを告げられた後に事情が加わり、判断が動く場合もあります。
呼び出しが終わっても捜査が終わるとは限らない
検察官は自ら犯罪を捜査することができ、必要があるときは司法警察職員を指揮して捜査の補助をさせることができるとされています(刑事訴訟法191条1項、193条3項)。呼び出しの後に確認したい点が出てくれば、追加の照会や関係者からの聴取が行われ、処分までにさらに時間がかかることもあります。
検察官の調書が重いと言われる理由
「検察官の調書は警察の調書より重い」と説明されることがあります。ただし、この説明は、誰の供述かによって当てはまり方が変わります。
本人自身の供述を録取した書面については、不利益な事実の承認を内容とするとき、又は特に信用すべき情況の下にされたものであるときに証拠とすることができると定められています(同法322条1項)。この規定は、作成したのが警察官か検察官かによる区別を設けていません。
これに対し、本人以外の人の供述を録取した書面については、検察官の面前における供述を録取した書面についての定めが別に置かれています(同法321条1項2号)。法廷で前の供述と異なる供述がされた場合などに証拠として扱われる場面があり、警察官が作成した書面とは要件が異なります。
つまり、自分の調書について慎重に確かめるべき理由は、作成者の肩書そのものではありません。終局処分を判断する検察官自身が直接聞き取った記録であるという点にあります。
呼び出しがあったことの意味
呼ばれた=不起訴の見込みがなくなった、ではない
呼び出しは、事件の処理を進めるために必要だと判断されたことを示すものであり、結論が決まったことを示すものではありません。公訴を提起するかどうかは、犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは提起しないことができるとされており(同法248条)、当日までに整った事情も判断の材料に入ります。
呼ばれない=不起訴、でもない
一度も呼び出されないまま処分がされることもあります。公訴を提起しない処分がされた場合、その旨が告げられるのは被疑者の請求があったときとされており(同法259条)、連絡がないこと自体が結論を示すわけではありません。
日程が合わない場合の伝え方
被疑者は、逮捕又は勾留をされている場合を除き、出頭を拒み、又は出頭後にいつでも退去することができるとされています(同法198条1項ただし書)。もっとも、連絡をしないまま応じない状態が続けば、逃亡や証拠隠滅のおそれの評価に影響することがあります。都合がつかないときは、その旨を伝えて別の日を相談するのが現実的な対応です。
この記事は、事実を伏せたり、出頭を先延ばしにしたりするための説明ではありません。伝えるべきことを正確に伝えるための準備として読んでいただくことを想定しています。
当日までにしておけること
- 事件当時の出来事を、時刻や場所を含めて時系列で書き出しておく。
- 警察の取調べで話した内容と食い違いが出そうな点を確かめておく。
- 求められた持ち物と、身分証や印章の要否を確認しておく。
- 勤務先や家族への影響で気になっている点を整理しておく。
当日の受け答えで気をつけたいこと
- 記憶が曖昧な部分を、質問の言い回しに合わせて埋めない。
- 実際より軽く述べることも、広く認めることも、後の説明を難しくする。
- 調書を読み聞かせられたときは、表現の細部まで確かめる。
- 納得できない記載があるときは、その場で申し出る。
- 提出したい資料があるときは、受け取ってもらえるかを尋ねる。
よくある受け止め方
印鑑を求められたから罰金で決まりだ
印章は供述調書の署名押印にも使われます。何のための書面かは表題と説明で決まりますので、用途が気になるときは、その場で尋ねるとはっきりします。
一度呼ばれたのだから、もう終わったはずだ
補充の捜査が続いている場合もあり、追加の呼び出しがされることもあります。呼び出しの回数は事件の内容によって変わります。
その日に何も言われなかったから不起訴だ
処分は決裁を経て確定するのが一般的とされており、当日に結論が示されないことは珍しくありません。結論を確かめたいときは、担当の検察庁に問い合わせるか、代理人を通じて確認することになります。
相談を考える時期
呼び出しの連絡を受けた時点では、当日までに動ける時間が限られていることが多くあります。被害を受けた方との話し合いを検討している場合や、事実関係に争いがある場合は、当日を迎える前に方針を決めておくほうが選択肢を残しやすくなります。
早く相談したからといって、望んだ結論が約束されるわけではありません。ただ、当日に何を確かめ、何を伝えるのかを整理しておくことはできます。
まとめ
- 検察庁からの呼び出しは、被疑者の取調べ、被疑者以外の方からの聴取、手続の同意確認と、根拠となる規定が分かれている。
- その日に固まるのは、供述調書の記載と、同意書面に署名するかどうかという記録の中身である。
- 終局処分は必要な捜査を遂げた後に決まるもので、当日に確定するとは限らない。
- 担当検察官の見通しは、決裁を経た庁の結論とは別のものである。
- 本人の調書の証拠としての扱いは、条文上、作成者が警察官か検察官かで区別されていない。
- 呼ばれたことも、呼ばれないことも、それだけで結論を示すものではない。
当事務所では、刑事事件について初回のご相談を無料でお受けしています。検察庁からの連絡を受け取った段階でも、これまでの経過の整理からご一緒に検討します。


